刑事告訴とは|刑事告訴されたらどうなる?受理されない理由

刑事告訴とは、犯罪の被害者などが、警察などの捜査機関に対して、犯罪被害の申告し、加害者の処罰を求める意思表示のことを言います。

しかし、告訴状は犯罪の証拠がないとなかなか受理してもらえません。

この記事では、刑事告訴をしたい人や刑事告訴をされそうな人に向けて、次の点を解説します。

  • 刑事告訴と被害届、告発や起訴との違い
  • 刑事告訴をするには?刑事告訴の方法
  • 刑事告訴されるとどうなる?

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刑事告訴とは

先述したとおり、刑事告訴は、被害者などが警察などに対して、犯罪被害の申告と、加害者の処罰を求める意思表示のことを言います。

刑事告訴は、警察で被害を申告した後で警察に告訴状を作成してもらうケースが一般的です。

刑事事件では、裁判で刑事処分を求める権限を検察が持っているため、事件は警察から検察に引き継がれます。

刑事告訴を受理した警察には、事件を検察に引き継ぐ義務があります(刑事訴訟法第242条)。

他にも刑事告訴を行うことで、警察や検察には、下記の義務が発生します。

  • 警察は、告訴を受けたときは告訴調書を作成しなければならない
  • 刑事告訴を受けた捜査機関は捜査を尽くす義務を負う
    刑事告訴を受けた検察は、起訴や不起訴の通知や、告訴した人の求めに応じて、不起訴にした理由を告知する

参考:刑事訴訟法第241条、242条、261条犯罪捜査規範第63条、64条

刑事告訴と似た言葉

刑事告訴とよく似た言葉には被害届などがあります。

ここでは、刑事告訴とよく似た言葉の違いを解説します。

被害届とは

被害届も、犯罪被害者が、捜査機関に犯罪被害を申告するという点では、刑事告訴と同じです。

ただし、被害届はあくまでも被害を申告する書類に過ぎないため、刑事告訴と違い、加害者の処罰を望む意思表示にはなりません

被害届が出された場合、警察には受理する義務があります(犯罪捜査規範第61条)。

しかし、捜査は義務付けられていないため、捜査が行われるかどうかは、警察の判断によります

被害を受けた場合は、被害届だけでなく、刑事告訴をしたいと警察に伝えましょう。

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告発とは

告発とは、犯罪の被害者でない人や、加害者でない第三者が、犯罪事実を申告して、加害者の処罰を求める意思表示のことです(刑事訴訟法第239条)。

起訴とは

起訴とは、検察が疑わしい人物(被疑者)を刑事裁判にかけ、有罪か無罪か、どういう処分にするのか、裁判所に審理を求めることです。

検察は犯罪があったと判断した場合に、国家機関である裁判所に、刑罰を求めて訴えを起こします。

被疑者を起訴する権限は、検察にしかありません。

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民事的な告訴との違い

告訴には、民事的な裁判による告訴もあります。違いは次のとおりです。

刑事告訴 民事事件の告訴
内容 犯罪の被害を申告し、加害者の処罰を求める意思表示のこと 個人のトラブルを解決するために、相手を訴えて裁判で審理すること
法律 刑法 民法
裁判を訴えられる人 検察 個人

刑事告訴は、加害者の処罰を求める意思表示ですが、加害者を訴える権限は検察にしかありません。

民事的な告訴は、個人がトラブルとなっている相手を裁判で訴えることができます。

民事裁判の場合は、刑事裁判のように刑事罰を科すのではなく、金銭的な支払いなどを行いトラブルを解決するケースが多いです。

刑事告訴をするには

刑事告訴できる人

刑事告訴を行うことができる告訴権者は下記のとおりです。

  • 犯罪被害に遭った被害者本人
  • 被害者の法定代理人(被害者が未成年者なら法律上の親権者、未成年後見人、成年後見人など)
  • 被害者から委任された代理人(弁護士、行政書士、司法書士)
  • 被害者が亡くなっている場合は、配偶者、父母や祖父母など直系親族、兄弟姉妹
  • 被害者の法定代理人が加害者の可能性がある場合は、配偶者や直系親族、兄弟

参考:刑事訴訟法第230~232条

未成年者は法的な行為ができないため、法律上の親権者、もしくは亡くなった親の代わりに親権者となっている未成年後見人が行います。

同様に、認知症や精神疾患で判断能力が低下している場合は、成年後見人が行います。

亡くなった被害者が処罰を望んでいない場合は、刑事告訴ができません。

また、犯罪被害者や加害者でない人が可能な告発については、誰でも行うことができます(刑事訴訟法第239条)。

ただし、公職選挙法違反など一部の犯罪に関しては、その法律で定められた特定の公官庁や公的機関でないと告発はできません。

刑事告訴のやり方

告訴や告発は、口頭で伝えるか、書面を作成して、警察や検察に提出します(刑事訴訟法第241条)。

警察署で事情を話し、その場で警察官が告訴状をまとめて作成してくれるケースが多いです。

警察が告訴状をまとめてくれない場合は、告訴権者が告訴状を作成して提出する方法もあります。

告訴状に記載する内容は下記のとおりです。

  • 被害者の氏名、住所、連絡先
  • 加害者の氏名、住所、連絡先(加害者がわかれば)
  • 犯罪の発生日時、場所
  • 犯罪の詳細な状況
  • 被害の内容や程度
  • 証拠となる資料や目撃者の情報

このように、具体的な情報を盛り込むことで、警察が受理や捜査を行ってくれる可能性があります。

告訴状の提出先

告訴状の提出先は、犯罪被害に遭った地域を管轄している警察署に行うことが一般的です。

上記のように、被害を申告した際に、警察が告訴状をそのまままとめてくれれば特段提出などの手間はありません。

もし自分で告訴状を作成した場合は、管轄の警察署刑事課告訴係に提出しましょう。

告訴状の提出先は、法律で定められていませんし、管轄外の警察署でも受理が義務付けられています。

また、検察に提出することも可能ですが、まず警察に提出するよう指示されることがほとんどです。

犯罪被害に遭った地域の警察に提出した方が、その後の事情聴取や、現場検証などもスムーズでしょう。

刑事告訴できる期間

刑事告訴できる期間は、犯罪によって異なります。

後述しますが、犯罪には、刑事告訴がなければ起訴されない親告罪(しんこくざい)というものがあります。

起訴した場合は公の裁判が行われることになるため、公開の裁判で争いたくないという被害者のために、プライバシーなどに関わる犯罪は親告罪とされているケースが多いです。

親告罪か、親告がなくとも捜査や起訴が行われる非親告罪かどうかによって、刑事告訴できる期間は異なります。

親告罪 犯人を知った日から6か月(刑事訴訟法第235条)
非親告罪 刑事告訴に期限なし

犯人を知った日というのは、犯人の氏名や住所まではわからずとも、見れば犯人かどうか特定できる程度の情報を得ていれば問題ありません。

仮に犯人が特定できなかったとしても、犯行内容の把握や、その犯罪の証拠をつかんでいれば、刑事告訴できる可能性があります。

犯罪が継続して行われている場合は、犯罪行為の終了から告訴期間が進行することになります。

刑事告訴がなければ起訴されない犯罪

先述したとおり、刑事告訴がなければ起訴されない親告罪というものがあります。

例えば、以下の犯罪は親告罪に該当します。

  • 名誉毀損、侮辱罪
  • ストーカー規制法違反
  • リベンジポルノ被害防止法
  • 未成年者略取、未成年誘拐罪
  • 過失傷害罪
  • 器物損壊罪
  • 信書開封、秘密漏示罪
  • 私用文書等毀棄罪
  • 信書隠匿罪 など

名誉毀損や侮辱、リベンジポルノなどは、裁判となると、被害の内容が公になってしまうため、プライバシー保護の観点から、親告罪として定められていることが考えられます。

また、強姦罪(現不同意性交等罪)などの性犯罪は、被害者のプライバシー保護の観点から、親告罪でしたが、法律改正により、非親告罪となりました。

刑事告訴されたらどうなる?

ここでは、刑事告訴された場合の流れを簡単に解説します。

捜査が開始される

告訴状が正式に受理されると、警察は捜査を開始します。

捜査の末、疑わしい人物を特定し、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断すれば、その人物を逮捕することになります。

逮捕されずとも、警察や検察から呼び出しを受けて、事情を聞かれる場合も、捜査が行われている可能性があります。

場合によっては身柄拘束を受ける

逮捕された場合、起訴か不起訴かを判断するために、身柄が警察から検察へと引き継がれます(送致)。

逮捕後、同様に逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどと判断されれば、さらに10~20日間、留置場に入れられる可能性があります(勾留)。

この勾留の期間中に、検察は起訴か不起訴か判断します。

起訴されると刑事裁判で裁かれる

もし起訴された場合は、刑事裁判で審理されることになります。

刑事裁判は起訴から1~2か月で行われ、おおよそ月に1回審理が行われ、約4か月ほどで処分が決定するケースが多いです。

ただし、事件を否認している場合や、裁判員裁判など重大事件の場合は、1年以上審理が行われるケースもあります。

起訴後も勾留された場合は、保釈が認められない限り、身柄拘束が続きます。

逮捕や勾留されずに起訴されて、その後刑務所に収容されるケースもあります。

参考:令和4年 司法統計年報(刑事編) – 裁判所

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刑事告訴が受理されないケース

先述したとおり、警察や検察は告訴状を受理する義務を負いますが、預かりとして正式に受理してくれないケースがあります。

一度受理をしてしまうと、捜査を開始して、起訴か不起訴まで結果を出さなければなりません。

しかし、警察が捜査を行うには、人的、金銭的コストが発生します。

そのため、起訴や有罪の見込みがあるのか、捜査する必要があるのかという観点で受理するかどうか判断せざるを得ません。

軽微な事件や、民事と思われる個人間のトラブル、犯罪の証拠がない事件などまで対応できないのが実情です。

ここでは、告訴状が受理されないケースを解説します。

告訴期間を過ぎている

告訴状が受理されない理由の1つは、告訴期間が過ぎてしまっているケースです。

非親告罪であれば、告訴期間に制限はありませんが、親告罪の場合は犯人を知った日から6か月以内に告訴しなければなりません。

犯罪被害に遭った場合は、早めに告訴を行いましょう。

公訴時効が完成している

非親告罪であっても、公訴時効が完成してしまっている場合は、告訴状を受理してもらえません。

公訴時効とは、被疑者を起訴できる期限です。

公訴時効を迎えている事件は、起訴できないため、告訴状も受理されません。

公訴時効は犯罪によって期限が異なります。

刑法などに違反していない

受けた被害が、刑法などに違反しておらず、犯罪ではない場合や、民法で解決すべきトラブルである場合も、告訴状を受理してもらえないでしょう。

例えば、 不倫をしたとしても、無理やり関係を持ったなどの事情がない限り、刑法には違反していません。

このような個人間のトラブルは、慰謝料を請求するなど民事裁判で解決が図れるため、警察は介入しません。

犯罪の証拠がない

犯罪の証拠がない、犯罪の事実がはっきりしないような場合も、告訴状は受理してもらえません。

例えば、知人から殴られたと主張をしても、ケガなどの被害がなく、殴った証拠の動画などがなければ、犯罪が発生したことを立証できません。

犯罪が発生している以上捜査してほしいと考えるのは当然ですが、警察としても、犯罪の事実がないのに捜査を行うことはできないのです。

もし告訴状を受理してもらいたい場合は、以下のような証拠を集めておきましょう。

  • ケガをした場合は医師の診断書
  • トラブルがわかる録音や動画の記録
  • 相手とのLINEなどのやり取り など

どういった証拠を集めるべきかわからない場合は、警察署で事前に相談をして、証拠収集のアドバイスをもらう方法もあります。

また、弁護士に依頼することで、犯罪の事実を立証する証拠の収集方法などの助言を受けられるほか、適切な告訴状の作成や、提出時に同行してもらうなどして、受理してもらえる可能性が高まります。

刑事告訴をするデメリット

刑事告訴を受理してもらえれば、加害者を処罰してほしいという意思表示を受けて、捜査をしてもらえる可能性があります。

加害者が逮捕されれば、精神的な不安も軽減されますし、然るべき処罰が期待できるかもしれません。

一方で、刑事告訴をするデメリットもありますので、解説します。

受理してもらう難易度が高い

先述したとおり、刑事告訴は警察で受理してもらえないケースもあります。

また、告訴状を受理してもらうにも、犯罪の被害者の証拠をしっかりと残して訴える必要があります。

もし受理してもらえない場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。

金銭的な損害が補填されない可能性がある

金銭的な被害を受けた場合、加害者が逮捕されても、被害が補填されない可能性があります。

刑事裁判では、犯罪事実の認定や、有罪の場合に、加害者の処罰を決定しますが、そこで被害者の損害を補填するよう審理が行われるわけではありません。

被害者が受けた被害を補填するには、別途民事裁判を申し立てるか、加害者と示談をする方法があります。

一般的には、加害者から示談の申し入れがあり、加害者が謝罪をして、示談金を支払ってもらうことで、被害額の補填や、慰謝料を受け取れる可能性があります。

ただし、示談を行うと加害者が被害回復に努めたと判断され、刑事処分も軽くなることが考えられます。

また、加害者が厳罰を受けても示談金を支払う意思がない、もしくは示談金を支払うことができない場合は、民事裁判を検討するしかありません。

殺人や傷害、わいせつ事件などであれば、刑事裁判を行っている裁判所に申し立てることで、刑事裁判から民事裁判の審理を行う損害賠償命令制度が利用できる可能性があります。

参考:被害者等支援制度の対象罪名一覧 – 法務省
5. 公判段階での被害者支援 – 法務省

起訴されれば事件が公開で審理される

告訴状が受理され、捜査の末加害者が起訴されれば、刑事処分を科される可能性があります。

ただし、起訴されてしまうと事件は公開裁判で審理されます。

公開裁判の場合、一般人も傍聴可能なので、告訴することで知られたくない事実まで第三者に知られる可能性があります。

刑事告訴は取り下げられる?

刑事告訴は、起訴されるまでなら取り下げが可能です(刑事訴訟法第237条)。

例えば、加害者との示談条件に、告訴の取り下げが盛り込まれると、示談が成立した際に、取り下げてもらえます。

告訴の取り下げができるのは、告訴した本人、もしくは委任した代理人です。

一度告訴を取り下げると、その告訴を再度行うことはできません。

まとめ

刑事告訴は、被害者が加害者の処罰を求めるための重要な手続きです。

しかし、受理してもらうには、告訴期間内に証拠を提示するなど、条件を満たす必要があります。

刑事告訴をすると、場合によっては被害が補填されず、民事裁判が必要なケースもありますが、加害者が逮捕されれば、精神的な不安もなくなるでしょう。

また、告訴を受理された場合、加害者は警察の捜査を受け、起訴される可能性があります。

逮捕されない場合は、突然裁判所から通知が来て、裁判に出席するよう求められるケースもあるため、事情聴取などを受けて不安な場合は、弁護士に相談してください

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