あなたは今、「不貞行為の事実が会社に知られたら、解雇や減給などの懲戒処分を受けるのではないか」との不安と恐怖に苛まれていませんか?
この記事では、不貞行為が会社に知られたら懲戒処分の対象になるかどうか、詳しく解説します。
不貞行為が知られたら下され得る懲戒処分の種類や、懲戒処分を言い渡された場合の対処法も紹介しますので、ぜひご一読ください。
目次
不貞行為が会社に知られたら懲戒処分の対象になる?
不貞行為が会社に知られても、原則として、懲戒処分の対象にはなりません。
労働契約上の労働者の義務は労務の提供であり、勤務時間外の私生活上の言動は労働者の自由です。そのため、勤務時間外の私生活上の非行は、それが重大事犯である場合など特段の事情がない限り、通常は懲戒処分の対象とはなりません。
不貞行為は民法上の不法行為ではあるものの、会社の業務とは無関係のプライベートな行為です。そのため、不貞行為のみを理由に会社が従業員に懲戒処分を下すことはできないと考えるのが一般的です。
ただし、勤務時間外の私生活上の非行でも、会社の社会的評価や信用などに影響を与える場合は懲戒処分の対象となることもあります。
不貞行為を理由とした会社の懲戒処分が有効となるケースについては、次章で詳しく解説します。
不貞行為を理由とした会社の懲戒処分が有効となるケース
不貞行為を理由とした会社の懲戒処分が有効となるケースとして、以下の3つが挙げられます。
- 会社の秩序を乱した場合
- 会社の名誉や信用を著しく毀損した場合
- 職務専念義務違反が認められる場合
もっとも、会社側が上記を理由に懲戒処分を下すには、従業員の不貞行為によって職場の雰囲気が悪化した、会社の名誉・信用が毀損されたことなどを立証しなければなりませんが、簡単なことではありません。そのため、不貞行為を理由に会社が懲戒処分を下せるのは例外的です。
会社の秩序を乱した場合
会社の秩序を乱した場合は、懲戒処分が有効となる可能性があります。
不貞行為の発覚により、勤務先の協調性や業務遂行などに具体的な支障をきたした場合は、会社の業務に支障が生じるおそれがあるためです。
具体的に、以下のようなケースでは、会社の秩序を乱したと判断される可能性があります。
- 不貞行為の事実が拡散したことで社内の雰囲気が悪化し業務に支障が出ている
- 不貞相手やその配偶者が会社に押しかけてきて業務が物理的に妨害された
会社の名誉や信用を著しく毀損した場合
会社の名誉や信用を著しく毀損した場合も、懲戒処分が有効となる可能性があります。
不貞行為の事実が社会的に拡散すれば、企業イメージの低下や経済的な損害を会社にもたらすおそれがあるためです。
具体的に、以下のようなケースでは、会社の名誉や信用を著しく毀損したと判断される可能性があります。
- 不貞行為の事実が取引先や顧客に知られたことで取引を停止された
- 役員や管理職などの立場にある従業員の不貞行為で企業イメージが著しく毀損された
職務専念義務違反が認められる場合
職務専念義務違反が認められる場合も、懲戒処分が有効となる可能性があります。
職務専念義務とは、会社と雇用契約を締結している従業員は、勤務時間中は会社の指揮命令に従い、その職務に専念しなければならない義務のことです。
不貞行為が勤務時間中に行われている、もしくは勤務時間外でも職務に支障をきたしていれば、処分の対象となり得ます。
具体的に、以下のようなケースでは、職務専念義務違反だと判断される可能性があります。
- 勤務時間中に不貞行為をした
- 勤務時間中に不貞相手と私的な連絡をとり職務が疎かになった
不貞行為が会社に知られたら下され得る懲戒処分の種類
不貞行為が会社に知られたら下され得る懲戒処分は、以下の7種類です。
- 戒告
- けん責
- 減給
- 出勤停止
- 降格
- 諭旨解雇
- 懲戒解雇
以下で、詳しく紹介します。
戒告
戒告処分を下される可能性があります。
戒告とは、問題行為があった従業員に対して、会社が厳重注意を行う懲戒処分です。
多くの会社で、軽い懲戒処分として位置付けられています。
けん責
けん責処分を下される可能性もあります。
けん責とは、従業員の問題行為に対して、始末書の提出を求めて厳重注意を行う懲戒処分です。
戒告と同じく、多くの会社で軽い懲戒処分として位置付けられています。
減給
減給処分を下される可能性もあります。
減給とは、問題行為があった従業員の給与を減額する懲戒処分です。
給与は労働者にとって生活の糧であることから、労働基準法で減給幅や期間に以下の制限が設けられています。
- 減給は平均賃金の1日分の半額まで
- 減給の総額は賃金総額の10分の1を超えてはならない
- 1度の問題行為に対して減給できるのは1回のみ
出勤停止
出勤停止処分を下される可能性もあります。
出勤停止とは、問題行為があった従業員に対して、一定期間、就業を禁止する懲戒処分です。
会社によって、停職、懲戒休職、自宅謹慎処分などと呼ばれることもあります。
出勤停止期間は給与が支給されないため、重い懲戒処分として位置付けられています。
降格
降格処分を下される可能性もあります。
降格とは、問題行為があった従業員の役職または資格等級を引き下げ、与えられていた権限を制限する懲戒処分です。
役職手当や資格給などが不支給になることもあり、減給処分とは異なり、継続的に給与が減少する可能性があります。
諭旨解雇
諭旨解雇処分を下される可能性もあります。
諭旨解雇とは、問題行為があった従業員に対して、会社が退職届の提出を勧告し、労働者に退職届を提出させて解雇する懲戒処分です。
会社によって、諭旨退職、諭旨免職と呼ばれることもあります。
懲戒解雇相当の事由があるものの、従業員に反省が認められるときに下されることが多いです。
懲戒解雇
懲戒解雇処分を下される可能性もあります。
懲戒解雇とは、問題行為があった従業員に対して、会社が労働契約を一方的に解約する懲戒処分です。
懲戒処分の中でも最も重い処分で、解雇予告もなく即時になされるのが一般的です。
退職金の全部または一部が支給されないことが多いだけでなく、従業員の社会的信用にも多大な影響を与えかねません。
判例からみる!不貞行為を理由に会社が下す懲戒処分の有効性
不貞行為が会社に知られたら下され得る懲戒処分の中でも最も重い懲戒解雇は、従業員のキャリアを断ち、経済的な基盤を失わせるため、その法的有効性が争われるケースは少なくありません。
この章では、懲戒解雇の法的有効性が争われた判例を紹介します。
懲戒解雇が有効と判断されたケース
観光バス運転手がバスガイドと情交関係を持ったことを理由とする解雇の有効性が争われた事案です(東京地裁平成5年12月16日判決)。
運転手は40歳を超えた妻子を有する男性で、バスガイドは入社して4か月程度の女性です。
裁判所は、以下の事情から、バス運転手と女性バスガイドとの間における男女関係を就業規則によって原則として禁止し、これに反した場合は解雇できる旨定めることは合理性があるとしています。
- 営業上、女性バスガイドが不可欠で、その確保等のため会社内における規律保持が特に要求されていること
- 男性であるバス運転手と女性バスガイドが長時間同乗する勤務形態や宿泊を伴う旅行に同乗する勤務形態が予想されること
裁判所は、以下の理由から、本件解雇は有効だと判断しています。
- 運転手が、勤務時間中に職務上の関係を利用したり脅迫的な文言を使用したりするなどして女性バスガイドを誘っていること
- 本件解雇が運転手の経済的状況などを考慮して普通解雇にとどまっていること
なお、この事案では、会社が普通解雇する旨の意思表示をした翌月以降の月例賃金および賞与について、運転手が請求する権利を有しないことも明示しています。
懲戒解雇は無効と判断されたケース
水道配管会社の女性事務員に対する同僚男性社員との不貞行為を理由とする懲戒解雇の有効性が争われた事案です(旭川地裁平成元年12月27日判決)。
男性社員と女性事務員は男女関係を含む恋愛関係を継続することは、特段の事情のない限り、その妻に対する不法行為であり社会的に非難される余地のある行為だから就業規則に記載の素行不良に該当しうることは否定できないとしたものの、以下の理由から本件解雇は懲戒事由に該当する事実があるとはいえないから無効であると判断しました。
- 職場の風紀・秩序を見出し、その企業運営に具体的な影響を与えたと認めるに足りる疎明はない
- 常軌を逸した行為があったとする主張事実を認めるに足りる疎明はない
なお、この事案では、男性社員が会社から支給を受ける賃金でその生計を維持してきており、賃金の支給を受けられなければ回復し難い侵害を受けるおそれがあることも認めています。
不貞行為を理由に会社から処分を言い渡された場合の対処法
不貞行為を理由に会社から処分を言い渡された場合の対処法として、以下の2つを紹介します。
- 事実確認前の安易な認諾を避ける
- 不当な処分回避のために弁明書を作成する
今後の対応の参考にしてください。
事実確認前の安易な認諾を避ける
事実確認前の安易な認諾を避けましょう。
不貞行為が会社に知られたら、事実確認や聴取を求められることが多いですが、事実確認をする前に、懲戒処分を前提とした謝罪文などの提出を求められることもあります。
不貞行為が知られた焦りや不安から、言われるがままに対応しようと考えるのも無理もありませんが、事実確認前に安易に不貞行為の事実を認めたり、謝罪文を提出したりするのは賢明ではありません。
不当に重い懲戒処分を言い渡されるケースも少なくないため、懲戒処分を受け入れる前に、会社がどのような証拠に基づいて就業規則のどの条項違反を主張しているのか、懲戒処分の根拠や不貞行為の証拠の開示を求めましょう。
不当な処分回避のために弁明書を作成する
不当な処分回避のために弁明書を作成するのも良いでしょう。
弁明書とは、問題行為について、その事実関係や経緯、自身の考えや反論などを正式に表明するための書面です。
弁明書は、裁判になった場合も証拠として提出できるため、会社の主張に立証不足や法的な誤りがある場合は明確に残すことをお勧めします。
弁明書では、以下のような事実を主張すると良いでしょう。
不貞行為は私生活上の行為であり業務関連性が希薄であること
不貞行為自体が私的な領域に属しているため、職務専念義務違反や会社の社会的信用毀損には該当しないこと、またはその影響が軽微である場合は、主張すると良いでしょう。
秩序の乱れが存在しないこと
「会社の秩序を乱した」と主張されたものの、具体的な事実が存在しない、または影響が一時的で軽微であった場合は、具体的に反論すると良いでしょう。
手続きに不備があること
会社の調査が一方的で、十分な証拠収集が行われていない、弁明の機会の付与が形骸化しているなど、手続き上の不備がある場合は指摘すると良いでしょう。
処分が不当に重いこと
不貞行為が事実でも、言い渡された処分が重すぎる場合は、減給や戒告など軽い処分が相当であることを主張しましょう。
不貞行為を理由に会社から処分を言い渡されたら弁護士へ相談を
不貞行為を理由に会社から処分を言い渡されたら、弁護士への相談も検討してみてください。
会社の懲戒処分は、その手続きの適正性や業務への影響の重大性から、厳格な基準に基づいて行われます。
弁護士に依頼すれば、言い渡された処分が妥当かどうか適切に判断してもらえます。不当な処分であれば、会社が立証できない点や手続き上の瑕疵を的確に指摘しつつ交渉してもらえるため、懲戒処分の無効またはより軽い懲戒処分へ軽減される可能性が高まるでしょう。
最も重い懲戒処分である懲戒解雇を免れられれば、退職金の不支給または大幅な減額を回避しやすくなりますし、経歴上の致命傷も負わずに済みます。
あなたのキャリアと生活を守るためにも、不貞行為を理由に会社から処分を言い渡されたら、なるべく早期に弁護士に相談することをお勧めします。
まとめ
不貞行為は民法上の不法行為に該当するものの、私生活上の行為であるため、懲戒処分の対象とならないのが原則です。
そのため、不貞行為を理由に会社から処分を言い渡された場合は、その処分が妥当かどうか適切に判断する必要があります。
不貞行為を理由に会社から処分を言い渡されたら、弁護士に相談して、今後の対応について的確なアドバイスを受けることをお勧めします。









