あなたは今、たった一度だけの不倫でまさか慰謝料を請求されるなんて、と驚きと焦りでいっぱいではないでしょうか。
たった一度だけの不倫であっても、自分の意思で肉体関係に及んだ場合、慰謝料を請求される可能性があります。
夫婦には貞操義務があり、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことは認められていません。たった一度でも、不倫は貞操義務違反に該当します。
あなたが独身の場合でも、配偶者のいる人と肉体関係を持った場合には、婚姻共同生活の平和の維持という相手の配偶者の権利・利益を侵害する不法行為となり得ます。
そのため、不法行為に基づく慰謝料を請求されるおそれがあります。
一度だけの不倫で慰謝料を請求されて大きな不安を感じていることと思いますが、冷静に対処することがとても重要です。
この記事では、一度だけの不倫で慰謝料を請求された場合の慰謝料の相場や対処法について解説します。
目次
一度だけの不倫で慰謝料を請求されたら支払うべき?
一度だけの不倫で慰謝料を請求された場合、支払う必要があるかどうかは個々のケースにより異なります。
一度だけの不倫の場合、請求者のみならず、あなたも不倫相手のことをよく知らない、その場限りの関係であることも少なくありません。相手が既婚者だと知らなかった、請求者が不倫の証拠を持っていないなど、慰謝料を支払う必要がないケースも考えられます。
一度だけの不倫で慰謝料を請求されたら、焦って支払ったり、合意と取れる発言をしたりするのは賢明ではありません。
支払う必要のある慰謝料かどうか、冷静に判断するよう心がけましょう。
判例から見る一度だけの不倫の慰謝料の相場
一度だけの不倫について、判例から導き出される慰謝料の相場は、以下のとおり50〜200万円程度です。
- 東京地裁平成26年12月24日判決|50万円
- 東京地裁平成23年2月24日判決|70万円
- 東京地裁平成26年12月4日判決|180万円
以下で、それぞれの判例について詳述します。
東京地裁平成26年12月24日判決|50万円
被告と原告の妻との不貞行為について、原告・被告の間で2度にわたる示談の合意があったにもかかわらず、その後再び一度だけ不貞行為をした事例です。
2度目の示談の後、原告の妻は一時実家に戻ったが、再び原告と同居を始めています。不貞行為が行われたのは同居を始めてからわずか約2か月後のことで、少なくとも原告は妻との婚姻関係を修復するつもりで夫婦として生活していた時期だと判断されています。
そのため、不貞行為が行われたときに婚姻関係が破綻していたものとはいえないとして、慰謝料50万円の支払いが認められました。
東京地裁平成23年2月24日判決|70万円
被告と原告の元妻との不貞行為について、元妻に夫がいることを知りながら一度だけ不貞関係を持った事例です。元妻の貞操権が侵害され精神的苦痛を被ったとして慰謝料等の支払いを求めました。
不貞行為により原告に多大な精神的苦痛を与えたことは容易に推認できるとする一方、原告と元妻が離婚した原因は不貞行為だけではないこと、原告と元妻の婚姻期間は比較的短期間であることなどから、慰謝料70万円の支払いが認められました。
東京地裁平成26年12月4日判決|180万円
被告と原告の妻との一度だけの不貞行為について、原告と妻との婚姻関係を侵害したとして、不法行為に基づく損害金及び遅延損害金を求めた事例です。
被告が長期かつ複数回にわたり原告の妻との不貞行為を行なっていたと認めるに足りる証拠はないが、一度不貞行為に及んだ事実が原告の婚姻関係上の利益を侵害し、原告と妻との婚姻関係を破綻に至らせる状態を招いたと判断されました。
被告が原告の妻と不貞行為に及んだ時点で原告らの婚姻関係は約19年以上継続していたこと、原告と同居している子らの精神的苦痛や心理的動揺等も看過できないことから、不貞行為により原告には相応の精神的損害が生じたとして、慰謝料180万円の支払いが認められました。
一度だけの不倫の慰謝料を請求されたら確認すべき4つのポイント
一度だけの不倫の慰謝料を請求されたら確認すべき主なポイントは、以下の4つです。
- 請求者が慰謝料請求に必要な不貞行為の証拠を持っているか
- 相手が既婚者だと知っていたか
- 婚姻関係が破綻していないか
- 時効が成立していないか
確認すべき4つのポイントについて、以下で詳述します。
請求者が慰謝料請求に必要な不貞行為の証拠を持っているか
請求者が慰謝料請求に必要な不貞行為の証拠を持っていない場合、原則として慰謝料請求は認められません。
不倫の慰謝料を請求する場合は、不貞行為があったことを立証する必要があります。一度だけの不倫で慰謝料を請求された場合、請求者が不貞行為の証拠を得られる機会も少ないといえます。
請求者が慰謝料請求に必要な不貞行為の証拠を持っているか、確認しましょう。
不貞行為の証拠については、「浮気・不倫の慰謝料請求で有効な証拠|LINEやメールだけでも請求できる?」をご参照ください。
相手が既婚者だと知っていたか
相手が既婚者だと知らなかった、かつ知らなかったことに落ち度がない場合、原則として慰謝料を支払う必要はありません。
一度だけの不倫の場合、その場限りの関係である場合も少なくありません。そもそも相手のことをよく知らなかった、相手が結婚していないと嘘をついていた場合などは、慰謝料の支払義務が発生しない可能性があります。
ただし、相手が既婚者だと知らなかったと言えば、当然に故意・過失がないと認められるわけではありません。判断は慎重に行う必要があります。
既婚者と知らずに交際していた場合の慰謝料の支払い義務については、「既婚者と知らずに交際|慰謝料を払わなくていい可能性を探る18のチェックリスト」をご参照ください。
婚姻関係が破綻していないか
不倫する前から相手の婚姻関係が破綻していた場合、慰謝料を支払う必要はありません。
婚姻共同生活の平和の維持という、守るべき権利や利益が存在しないためです。
ただし、婚姻関係が破綻しているかどうかは、それぞれの状況により判断基準が異なります。婚姻関係が破綻しているかどうかの判断は簡単ではないため、法的知識が必要となる場合も少なくありません。
時効が成立していないか
時効が成立している場合は、慰謝料を支払う必要はありません。
不倫の慰謝料請求権の時効は、以下のどちらか早い時点で完成します。
- 不倫相手と不貞行為を知ったときから3年
- 不倫があったときから 20年
時効期間が経過した不倫の慰謝料を請求することはできないため、支払う必要はありません。
ただし、慰謝料の支払義務があることを認めたり、内容証明郵便で慰謝料請求されたりした場合、時効が更新されている可能性があります。時効が更新されると、それまで進行してきた時効期間が中断し、また初めから数え直しになります。
時効が成立しているかどうか判断できない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
一度だけの不倫の慰謝料を請求された場合の対処法
一度だけの不倫の慰謝料を請求された場合、落ち着いて対処することがとても重要です。
主な対処法として、以下の3つを紹介します。
- 謝罪の意を示す
- 冷静に対応する
- 減額交渉をする
以下に詳述することを、今後の対応の参考にしていただければ幸いです。
謝罪の意を示す
一度だけの不倫の慰謝料を請求された場合、謝罪の意を示し、誠意ある対応を心がけましょう。
たった一度だけの不倫なのに、と開き直って不誠実な態度をとると、請求者の心情を逆撫でし状況をより悪化させる恐れがあります。
話し合いがまとまらない場合、裁判に発展する可能性もあります。
自らの過ちを認め、謝罪の意を示し、真摯に対応しましょう。
冷静に対応する
一度だけの不倫の慰謝料を請求された場合、冷静に対応することがとても重要です。
不倫が発覚した後はお互いに感情的になりやすいため、些細なことでも大きなトラブルになるおそれがあります。
感情的になって不用意な発言をすると、支払義務のない慰謝料を支払うことにもなりかねません。
感情的にならず、落ち着いて対応するよう心がけましょう。
減額交渉をする
一度だけの不倫で高額な慰謝料を請求された場合、減額交渉も検討しましょう。
あなたが請求者から請求された慰謝料の金額は、あくまで請求者の希望額です。一度だけの不倫の場合、相場よりも高額な慰謝料を請求されるケースも少なくありません。
不倫の期間が短い・不倫の回数が少ないなどの事実は、慰謝料の減額事由になり得ます。
不当に高い慰謝料を請求された場合や減額事由がある場合は、減額交渉をしましょう。
不倫慰謝料の減額が可能かどうかについては、「不倫慰謝料の減額を狙えるケースと狙えないケース」をご参照ください。
まとめ
一度だけの不倫で慰謝料を請求された場合、それぞれの状況に合わせた適切な対応が求められます。
どう対応すればいいか分からない、慰謝料の金額が適正かどうか判断できないなど、不安に思っていることはありませんか?
一度の不倫で150万円以上の慰謝料を請求されてお悩みの方は、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
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