不二子が、婚姻期間中の不二夫と愛子が不貞行為に及んだ上、愛子がフェイスブックで不二子を中傷する投稿を行って名誉を棄損し、それぞれ多大な精神的苦痛を被ったとして愛子に対して慰謝料(不貞行為及び名誉棄損につき各200万円)の支払いを求めた事案である。
不二夫と愛子は不二夫が参加した飲食店のパーティーで知り合い、不二夫がフリーのテレビディレクターという職業から頻繁に開催していた交流パーティーの運営の手伝いをするようになり、愛子らはH26年2月頃交際を開始し、不二夫が不二子と婚姻した後のH28年6月頃まで交際を継続した。愛子らは、交際期間中、不二子らが居住する自宅のあるマンションのゲストルーム、ホテル、愛子宅などで継続的に肉体関係を持っていた。
愛子は不二夫が婚姻している事実を知らされないまま交際を継続していたものと認めるのが相当であるが、愛子と不二夫の共通の知人が相当数いて、不二夫が不二子と婚姻していることを知っている者も複数おり、その中には愛子に対して妻帯者である不二夫との交際を止めるよう忠告するものもいたというし、約2年4カ月にわたる交際期間中、不二夫宅に上がって会ったりゲストルームで会った際も愛子1人が宿泊し、愛子の自宅で会った際も基本的には帰宅していたとする複数の事情から不二夫が婚姻している事実を推知することは比較的容易であったといえ、過失があったというべきであり、また婚姻関係が破綻していたことを認めるに足りる的確な証拠はないとされ、慰謝料額は140万円が相当とされた。
また、投稿による名誉棄損の成否についてその投稿は、その内容が真実とは認められない上、不二子が私生活において問題行動を起こす人物であることを、不二子の評価を著しく貶める表現を用いて適示したもので、これが閲覧範囲の制限があるとはいえフェイスブック上で多数人に公開されたことも加味すれば、その行為は配慮を欠いた問題の多い行動であったというべきであり、不二子はかかる愛子の不法行為によって名誉権を侵害され相応の精神的苦痛を被ったものと認められるが、本投稿を1回投稿したのみで10日以内に削除していることや不二子に謝罪するメッセージを送っていること等から非常に悪質とまでは評価し難いものであり、慰謝料10万円が相当とされた。
当事者の情報
不貞期間 | 約2年4カ月 |
請求額 | 400万円 |
認容額 | 150万円 |
子供人数 | 1人(1歳) |
婚姻関係破綻の有無 | 婚姻関係が破綻していたことを認めるに足りる的確な証拠はない |