不二子は愛子に対し、不二夫との不貞行為及び不二子への嫌がらせに対する損害賠償請求(746万0200円)をしたところ、愛子が不二夫に対し、婚約破棄を理由とした損害賠償請求(650万円)、予備的に交際の開始や継続にあたって詐罔されたなどとして損害賠償請求(550万円)を求めた事案である。
不二夫と愛子は職場の同僚であり、愛子は不二夫が既婚者であることを認識したうえで、性的関係を伴う交際を開始した。その後、不二夫らは別居するようになり、離婚協議を開始ししたが、不二子は一貫して離婚には応じない姿勢を示した。不二夫は、愛子との交際が勤務先内で広まり居づらくなり、転職を決意した。同勤務先は愛子の父親の働きかけもあり入社しており、退職することについて、説明する必要があったため、その際に愛子の父親へ離婚し、愛子と結婚したい意向を伝えた。不二夫は転職後、単身赴任となり、離婚協議も進まないため、離婚はせず、愛子と別れる意向を示した。しかし、愛子はこれを受け入れず、不二夫の単身赴任先へ行き、不二夫と愛子の同棲が開始された。また、愛子は不二夫から別れたいとの意向を示されて以降、不二夫と不二子とを別れさせる工作を探偵業者へ依頼したり、不二子へ嫌がらせをするようになった。不二夫と愛子の交際が終了した後も、不二子の携帯電話へ公衆電話から少なくとも769回の発信を繰り返した。
不二夫と愛子の不貞行為は約1年8カ月にわたって続いたものであり、夫婦生活に必要な信頼は棄損され、不二子に多大な精神的苦痛を与えた。加えて、愛子からの迷惑行為によりさらに増幅させた事情があると言える。しかし、本件交際は不二夫からの働きかけが強く寄与したものであり、不二夫の責任が相対的にかなり大きかったといえ、結局破綻までに至ったとは認められないため、不二子の損害は慰謝料100万円、調査費用81万円、弁護士費用10万円の合計191万円が相当とされた。
また、愛子の不二夫に対する婚約破棄を理由とする損害については、法的保護に値する婚約が成立していたと認めることはできず、不二夫は交際開始及び継続にあたり、夫婦関係が破綻していることをうかがわせる事情を虚偽や誇張を交えて繰り返し伝えていたことが認められるが、不誠実であるとしても悪質性が著しく高い行為とまでいうことはできないとし、不二夫の不法行為の成立は認められなかった。
当事者の情報
不貞期間 | 約1年8カ月 |
請求額 | 746万200円 |
認容額 | 191万円 |
子供人数 | 2人(10歳、6歳) |
婚姻関係破綻の有無 | 本件交際の期間を通じて婚姻関係は破綻していなかったと認められる |