フランチャイズ契約においては、フランチャイザー(本部)がフランチャイジー(加盟者)に対して、フラチャイズ契約書を交付し、両者間で締結することになります。
では、フランチャイズ契約書の中には、具体的にどのような条項を定めるべきでしょうか?
いくつかの投稿で個別具体的に解説していきます。
本稿では、加盟金不返還特約についてまとめていきます。

加盟不返還特約とは
フランチャイズ契約では、加盟者がフランチャイズ契約を締結する際に本部に加盟金を支払う場面がほとんどです。加盟金とは、判例によれば「フランチャイズ契約を締結したときに加盟者が本部に支払う金銭」です。
(※加盟金・加盟保証金等の性質については別稿「フランチャイズ契約で規定する条項~加盟に際して加盟店が支払う金銭とは~」でまとめています。)
そして、加盟金不返還特約とは、フランチャイズ契約において定められる「加盟金は理由の如何を問わず返還しない」と定めた条項のことです。
加盟金不返還特約の有効性
本部は、フランチャイズ契約締結後、直ちに加盟者に対して出店のサポートや店舗運営のノウハウの提供、商標の利用許諾を行うため、加盟金はそれらの対価としての性質を有するといえるでしょう。そのため、加盟者が本部の商標や経営ノウハウを使用できる状態になりさえすれば、本部は適切に契約上の業務を行ったといえますから、加盟金の支払いを受け取り、また、返還を行わないことも合理性があります。
さらにいえば、仮に加盟金の返還ができるとなれば、本部が持つ店舗運営のノウハウを不当に得る目的でフランチャイズ契約の締結を目論む者も出てこないとも限りません。このような者から本部の権利を守る意味でも、不返還特約は重要な役割があり、実務上でも有効と認められています。
有効性が争われた裁判例
実務上有効性が認められており、裁判例においても有効性が認められる傾向がありますが、中には有効性が全面的に争われ、無効と判断された例もあります。
ステーキワン事件(神戸地判平成15年7月24日)
この事件の概要は以下のとおりです。
原告が被告に対してフランチャイズ契約に基づいて加盟金800万円を支払ったが,原告は被告のフランチャイズチェーンに参加する意味がほとんどないため,本件加盟金は何の対価性もないとして,その金額を不当利得を理由に返還を求めた事案で,裁判所は,本件加盟金が対価性を著しく欠く場合にまで,事由の一切を問わず返還しないということは暴利行為であって,公序良俗に反し,無効と解すべきである。そのような場合,商号・商標の使用許諾料及び営業許諾料の対価としては,いかに高く見積もっても200万円を上回らないと推認し,被告に600万円の支払いを命じた。
判断の中で、裁判所は、以下のとおり判断しています。
「本件においては,商号・商標の使用許諾料及び営業許諾料を合わせても800万円に相当する価値があるとは到底認められない上に,被告は開業準備費用も支出していないのであるから,本件加盟金800万円は著しく対価性を欠き,高額に過ぎると認められる。そうすると,その返還を一切認めないという本件加盟金不返還特約は,暴利行為であって公序良俗に違反し無効というべきである。…
商号・商標の使用許諾料及び営業許諾料の対価としては,いかに高く見積もっても,本件加盟金800万円の4分の1,すなわち200万円を上回ることはない」
以上のように、不返還特約はその一部が無効と判断したうえ、600万円の返還を命じました。
このように、本部が行ったサポートやノウハウ・商標の提供と、加盟金の金額との間で著しい乖離がある場合には、公序良俗等に照らし無効とされる場合もあるのです。
おわりに
本稿では、フランチャイズ契約において、加盟金不返還特約に関する条項について解説を行いました。本部としては、自らの経営ノウハウや商標等を守り、また、サポート等をおこなった対価として加盟金の支払いは確実に受けたいところですから、適切に特約を定める必要があります。その際には、具体的な金額等の運用面についても熟慮する必要があるでしょう。逆に、加盟者としては、不返還特約の定めがないか、あるとして、当該不返還特約が金額及び本部のサポート内容と照らして合理的かどうかといったことを見極めなければなりません。
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