更新日:2026年8月12日 (水)

公開日:2026年8月12日 (水)

借地権の相続手続きと相続税の計算方法、注意点も解説

借地権の相続手続きと相続税の計算方法、注意点も解説 借地権の相続手続きと相続税の計算方法、注意点も解説

サマリー

親などの被相続人が亡くなり、実家などの借地権を相続することになった場合、名義変更や地主(貸主)への連絡など、さまざまな手続きや法的な確認事項が発生します。

相続税の課税対象になるのか、路線価を用いた計算方法は複雑ではないか、地代の支払いや将来の更新料を巡って貸主との間でトラブルに発展しないかなど、不安を感じる方も少なくありません。

借地権は、借地借家法や民法が絡み不動産の中でも権利関係が複雑な傾向にあるため、相続に際しては実務上の運用に基づいた正しい知識と、状況に応じた弁護士等の専門家による対策が求められます。

この記事では、借地権の相続手続きの流れから、相続税評価額の計算方法、貸主との間で注意すべき実務上のポイントまでを網羅的に解説します。

借地権の相続に関する基本知識

親の死亡に伴い、被相続人が借りていた土地の権利である借地権を引き継ぐことになった場合、まずは法的な基本知識を整理しておくことが大切です。

借地権は財産的価値が認められており、民法の規定上、借地権者が亡くなった際に預貯金などと同様に相続の対象となる財産です。

相続人がこの権利を引き継ぐにあたり、生前に第三者へ売却(譲渡)する場合とは異なり、貸主の許可を得る必要や、名義書換承諾料などを支払う法的な義務は原則としてありません。

これは、相続が売買や贈与といった特定承継とは異なり、亡くなった方の財産上の地位を包括的に承継する行為とされているためです。

まずは、借地権も預貯金や所有不動産など他の相続財産と実務上は同様に扱われるという点を理解しておきましょう。

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借地権とは?所有権との違いをわかりやすく解説

借地権とは、借地借家法において、建物の所有を目的として貸主から土地を借りる権利(地上権または土地の賃借権)と定義されています。

土地の所有権が土地そのものを全面的かつ直接支配できる権利であるのに対し、借地権はあくまで貸主から土地を借りて利用する権利に留まるという点に法的な違いがあります。

しかし、駐車場などの単なる土地の賃借とは異なり、借地借家法によって借地人の権利が強く保護されており、実務上も資産としての価値が明確に認められています。

このため、第三者への売買や相続の対象となり、相続税等の計算においても財産として評価されるのです。

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借地権は相続財産に含まれる!貸主の許可や承諾料は原則不要

借地権は実務上金銭的な価値を持つ権利として扱われるため、預貯金や所有不動産と同様に相続財産の対象となります。

被相続人が亡くなった場合、その借地権は法律上、当然に相続人へと引き継がれます。この際、相続は借地人としての地位を含めた包括的な権利義務の承継であるため、原則として貸主の許可を得る必要はありません。

また、貸主に対して名義変更料(名義書換料)や承諾料といった金銭を支払う義務も、法的には発生しないのが一般的です。

相続によって借地権が貸主の承諾なく無償で承継されることは、相続人がトラブルを防ぐために知っておくべき重要なポイントです。

法定相続人以外への遺贈には貸主の許可が必要な場合も

借地権を法定相続人が引き継ぐ場合は貸主の許可は不要ですが、遺言によって法定相続人以外の人へ特定の財産として渡す特定遺贈などの場合は、実務上の扱いが異なります。

法定相続人以外への特定遺贈は、包括的な相続とは異なり、権利の譲渡と同様に見なされて民法の規定が適用される傾向があるためです。

法定相続人ではない親族や第三者が遺言書によって特定の借地権を取得する場合、原則として貸主の承諾が必要になります。

承諾を得る際には、実務上、名義書換承諾料などの支払いを求められるのが一般的です。

もし貸主の承諾が得られない場合は、借地借家法に基づき、家庭裁判所に対して貸主の承諾に代わる許可を求める申し立て(借地非訟事件)を行うことも可能です。

【3ステップ】借地権の相続で必要な手続きの流れ

借地権の相続手続きは、一般的に大きく3つのステップで進めます。

まずは相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が借地権を引き継ぐかを話し合って決定します。

次に、その結果を貸主に通知し、今後の地代支払者や窓口となる人物を明確にします。

最後に、借地の上にある建物の名義変更である相続登記の手続きを法務局で行います。

この一連の流れをスムーズに進めるためには、遺産分割協議書や被相続人が結んでいた土地賃貸借契約書などの必要書類を準備し、相続開始を知った日の翌日から10か月以内という相続税の申告期限なども意識しておくことが重要です。

具体的な手続きの方法を各ステップで確認していきましょう。

ステップ1:誰が借地権を相続するかを遺産分割協議で決める

相続人が配偶者や子、兄弟など複数いる場合、まず誰が借地権を含む遺産を相続するかを話し合う遺産分割協議を開きます。

借地権は物理的な分割が難しく、共有状態にすると権利関係が複雑化しやすいため、実務上は相続人のうちの一人が単独で相続するケースが一般的です。

全員の合意が得られたら、その内容を遺産分割協議書として書面にまとめ、相続人全員が署名し実印で捺印します。

この遺産分割協議書は、後の建物の相続登記手続きや相続税申告でも必要になる法的に重要な書類です。

ステップ2:相続が完了したことを貸主に報告・通知する

遺産分割協議で借地権の最終的な相続人が決まったら、貸主へ名義人が変更となった旨を報告・通知します。

相続による名義変更の通知は直ちに法律上の義務となるわけではありませんが、今後の地代の支払いや契約更新などを円滑に行うために、誰が新しい借地権者になったのかを伝えておくことが実務上非常に重要です。

この通知を怠ると貸主との信頼関係が悪化し、将来的な建て替えや売却時の承諾を得る場面でトラブルの原因となる可能性があります。

内容証明郵便などの書面で通知するか、直接挨拶に伺うなど、証拠を残しつつ丁寧な対応を心がけることが推奨されます。

ステップ3:土地の上にある建物の名義を相続人に変更する(相続登記)

土地の賃借権(借地権)自体を直接登記することは実務上一般的ではありませんが、借地借家法の規定により、土地の上にある建物の所有権登記を相続人の名義に変更しておくことで、土地の新たな取得者などの第三者に対して借地権を対抗(主張)できるようになります。

この家や建物の所有権移転に伴う名義変更手続きを相続登記と呼びます。管轄の法務局で手続きを行い、その際には国に納める登録免許税がかかります。

戸籍謄本の収集など手続きは専門的で複雑なため、一般的には登記の専門家である司法書士に手続きを依頼します。

貸主に支払う名義変更料などの金銭とは異なり、登録免許税は法的手続きに伴い国に納める税金です。

不動産登記法の改正により、相続登記は2024年4月1日から義務化されており、相続を知ってから3年以内に正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

借地権の相続税評価額を自分で計算する方法

借地権は相続財産として相続税の課税対象になるため、基礎控除額を超えるかなどの判定や相続税を計算するためには、その法的な評価価値を算出する必要があります。

評価額の計算は、その土地が更地(自用地)だった場合の評価額に、国税局が地域ごとに定めた借地権割合という一定の数値を掛けて算出するのが実務上の基本です。

算出されたこの金額を基に、預貯金など他の相続財産と合算し、法定相続人の数に応じた基礎控除を差し引いて最終的な相続税額が決まります。

相続税の計算に必要な借地権評価額の算出式

借地権の相続税評価額は、一般的に以下の計算式を用いて算出されます。

借地権評価額=自用地評価額×借地権割合

自用地評価額とは、他人の権利が設定されていない、その土地が完全に更地だった場合における国税上の評価額を指します。

一般的には、国税庁が毎年公表する路線価(路線価方式)を基に計算を行います。

借地権割合は、その土地全体の利用権のうち借地権が占める価値の割合を示す指標であり、これも国税庁の路線価図で確認できます。

これら二つの数値を調べて乗算することで、課税対象となる借地権の概算評価額が明らかになります。

計算に使う自用地評価額(路線価)の調べ方

自用地評価額を算出するために用いる路線価は、国税庁の公式ウェブサイトで公開されている財産評価基準書路線価図・評価倍率表にアクセスして確認できます。

路線価とは、主要な市街地の道路に面した標準的な宅地の1平方メートルあたりの評価額を、千円単位で示したものです。

対象となる借地が面している道路の路線価を調べ、その価格に登記簿や実測に基づく土地の面積(地積)を掛けることで、基準となる自用地評価額を計算します。

例えば、路線価図上の該当道路に200Dと表示されていれば、千円単位の表記であるため、1平方メートルあたりの基準価格は20万円となります。

国税庁のホームページで借地権割合を確認する方法

借地権割合は、前述の路線価と同様に、国税庁ウェブサイトの路線価図上で確認できます。

路線価図に表示されている200Dのような記号のうち、数値の末尾に付されたアルファベットがその地域の借地権割合を示しています。

この借地権割合を示すアルファベットはAからGまで分類されており、それぞれAが90%、Bが80%、Cが70%というように、10%刻みで割合が定められています。

例えば、末尾の記号がDであれば借地権割合は60%、Bであれば借地権割合は80%として計算します。

この借地権割合は、都心の商業地など土地の利用価値が高く地主の権利制限が強いエリアほど、相対的に高い割合に設定される傾向があります。

【具体例】シミュレーションで相続税評価額を計算してみよう

先ほどの計算式を用いて、実際の相続税評価額をシミュレーション計算してみましょう。

前提条件として、土地の面積が150平方メートル、路線価が300C(1平方メートルあたり30万円、借地権割合70%)とします。

  1. 自用地評価額の計算:30万円(1平方メートル単価)× 150平方メートル = 4,500万円
  2. 借地権の相続税評価額の計算:4,500万円(自用地評価額)× 70%(借地権割合) = 3,150万円

このシミュレーションの場合、借地権の相続税評価額は3,150万円となり、最終的にこの金額を基に相続税の総額が計算される仕組みです。

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貸主とのトラブルを回避!借地権相続時の4つの注意点

借地権の相続手続き自体において法的に貸主の承諾は不要ですが、今後も継続して土地を借り続ける以上、地主(貸主)との良好な信頼関係の構築は不可欠です。

将来発生し得る借地契約の更新料の協議や、建物の建て替え・第三者への売却時には原則として貸主の承諾が必要となるため、日頃から円満な関係を築いておくことが、訴訟などのトラブルを回避する最大の対策といえます。

代替わりとなる相続をきっかけに関係が悪化し、契約解除などを主張されないよう、実務上のいくつかの注意点を押さえておきましょう。

貸主への挨拶は早めに済ませて良好な関係を築く

相続が発生して自分が新たな借地権者になった場合、できるだけ早い段階で地主(貸主)へ挨拶に伺うことが実務上重要となります。

法的な通知義務を直ちに負うわけではなくとも、今後の地代の支払いや契約更新などを円滑に進めるための不可欠な対応といえます。

誰が借地権を相続したのかを明確に伝え、今後の継続的な付き合いをお願いする姿勢を見せることで、貸主の不安を払拭し、将来的な遺産分割や契約トラブルを防ぐための信頼関係の構築につながります。

兄弟など複数人での共有名義による借地権の相続は将来の揉め事につながりやすい

借地権を兄弟など複数の相続人で共有名義(準共有)にすることは、権利関係が複雑化し将来的な遺産分割トラブルなどの原因となりやすいため、実務上は極力避けるのが賢明とされています。

例えば、毎月の地代の支払いを誰が負担するのか、将来建物を建て替える際の意見が一致しない、借地権を売却したくても共有者の一人が反対するなど、管理や処分の意思決定のたびに共有者全員の同意が必要となり、話がまとまらなくなる法的リスクが高まります。

そのため可能な限り、遺産分割協議において相続人のうちの一人が単独で借地権を相続する形にまとめることが実務上望ましいといえます。

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相続後に建物を建て替える場合は貸主からの承諾が原則必須

相続した借地の上にある建物を建て替えたり大規模な修繕を行ったりする際には、借地契約の条項に基づき、原則として貸主の承諾(増改築の承諾)を得る必要があります。

無断で増改築や建て替えを行うと、重大な契約違反と見なされ、貸主から借地契約を解除される法的なリスクが生じるおそれがあります。

承諾を得る際には、建て替え承諾料(増改築承諾料)として、一般的にその土地の更地価格の数%程度(概ね3%から5%程度)を支払うのが実務上の慣例となっています。

貸主の事前の許可なく建て替え工事などを進めることは、裁判等の深刻なトラブルに発展する可能性が高いため極力避けるべきです。

借地権を第三者へ売却する際も貸主の許可と承諾料が原則必要

相続した借地権を自ら利用する予定がなく、第三者に売却(譲渡)したいと考える場合にも、民法の規定により原則として貸主の許可(承諾)が必須となります。

貸主にとっては土地を貸す相手が変わる事態となるため、地代の支払い能力など、新たな借地権者となる人物が信頼できるかなどを判断する正当な権利があるためです。

売却にあたり貸主の承諾を得る際には、名義書換料(譲渡承諾料)として、借地権価格の10%程度を支払うのが実務上の一般的な慣例となっています。

承諾を得ない無断での借地権譲渡は、貸主との信頼関係を破壊する行為として契約解除の正当な理由になり得ます。

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相続した借地権が不要な場合の3つの法的な対処法

借地権を相続したものの、その土地上の建物に住む予定がない、地代の支払いや建物の維持管理が負担になるなどの理由で手放したいと考えるケースも少なくありません。

借地権が不要である場合、貸主の合意なく一方的かつ単純に権利のみを放棄することは実務上困難であるため、法的に適切な方法で処分を検討する必要があります。

実務上の主な対処法としては、家庭裁判所での相続放棄、貸主(地主)への買い取り交渉、および貸主の承諾を前提とした第三者への売却の3つが挙げられます。

それぞれの対処方法には法的なメリットとデメリットがあるため、自身の経済状況や貸主との関係性に応じて最適な選択を慎重に検討することが重要です。

他の財産もすべて引き継がない相続放棄を選択する

不要な借地権だけでなく、預貯金や他の所有不動産など、被相続人の権利義務を一切相続したくない場合は、相続放棄という法的な選択肢があります。

相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、管轄の家庭裁判所に申述手続きを行う必要があります。

ただし、この相続放棄を選択すると、不要な借地権や未払いの地代といったマイナスの財産だけでなく、預貯金などのプラスの財産もすべて法的に手放すことになります。

また、被相続人に他に多額の借金がある場合などを除き、単に借地権が不要という理由だけで相続放棄を選択すべきかについては、事前に弁護士などの専門家に相談のうえ慎重に判断することが推奨されます。

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地主(貸主)に借地権を買い取ってもらえないか交渉する

借地権を手放す一つの方法として、貸主に対して借地権(および借地上の建物)の買い取りを直接交渉することが考えられます。

法律上、貸主には借地権を買い取る義務はないためあくまで当事者間の交渉次第となりますが、完全な所有権(底地と借地権の統合)を回復させたいと考えている貸主であれば、応じてくれる可能性があります。

合意解除などにより交渉が成立した場合、原則として借地人は建物を解体して更地にしたうえで土地を返還するのが実務上の基本ですが、状況によっては貸主に建物をそのまま買い取ってもらえる(建物買取請求権の行使等に準じた合意)ケースもあります。

ただし、土地の立地や需要、交渉の結果によっては、借地権の買い取り代金が発生せず、建物の解体費用を負担したうえでの無償返還となるケースも少なくありません。

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貸主の承諾を得て第三者に借地権付き建物として売却する

貸主への買い取り交渉がまとまらない場合や、より良い条件で手放したい場合には、貸主からの譲渡承諾を得たうえで、第三者に対して借地権を建物と共に売却する方法があります。

一般的には、借地権の取り扱いに長けた専門の不動産会社に仲介を依頼し、広く買主を探すことになります。

売却が成立する際には、前述の通り貸主に対して名義書換料(譲渡承諾料)を支払う必要がありますが、それを差し引いてもまとまった現金を遺産として得られる可能性があります。

都市部や駅近など立地が良く、不動産市場において十分な需要が見込める場合に特に有効な選択肢となります。

【種類別】借地権の相続における法的なポイントの違い

借地権は、契約が設定された時期や個別の契約内容によって、旧法借地権、普通借地権、定期借地権などの種類に法的に分類されます。

どの種類の借地権を相続したかによって、存続期間や契約更新の可否、建物の建て替え時の条件などが異なり、相続後の権利関係や地主との交渉に大きな影響を与えます。

そのため、親などの被相続人から引き継いだ土地賃貸借契約書をしっかりと確認し、どの種類の借地権に該当するのかを正確に把握しておくことが実務上非常に大切です。

旧法借地権:借地人に極めて有利で強い権利が認められている

1992年(平成4年)8月1日に新法である現行の借地借家法が施行されるより前の期間に設定され、その後更新されている借地権は、一般的に旧法借地権と呼ばれます。

この旧法に基づく権利は借地人にとって非常に有利な内容となっており、期間満了時に貸主が契約の更新を拒絶するためには、極めて要件が厳しい正当事由が求められます。

そのため、借地上の建物が存在して利用を継続する限り、半永久的に契約が更新される傾向が強く、相続する側にとっては資産として安定した権利を保全できるというメリットがあります。

普通借地権:正当事由がなければ借地人からの契約更新が認められる

1992年8月1日以降に、現行の借地借家法に基づいて設定された一般的な借地権が普通借地権です。

旧法借地権と同様の仕組みとして、契約期間が満了しても貸主側に立ち退きを求めるための法的な正当事由(自己使用の必要性や立退料の提供など)がない限り、借地人からの申し出や継続使用によって契約は法定更新されます。

旧法時代に比べると正当事由の判断基準が明確化され貸主側の権利にも一定の配慮がなされていますが、依然として借地人の居住権などの権利は借地借家法により強く保護されています。

定期借地権:契約の更新がなく存続期間満了時に土地を返還する

借地借家法で新たに設けられた定期借地権は、一般の借地権とは異なり、契約の更新が一切ないことが最大の特徴です。

契約時に書面等で定めた50年以上の存続期間(一般定期借地権の場合)が満了すると借地関係は確定的に終了し、原則として借地人は建物を解体して更地の状態で土地を貸主に返還しなければなりません。

この定期借地権自体を財産として相続することは可能ですが、相続人が土地を利用できるのは当初の契約の残存期間に限られます。

そのため、相続が発生した時点での残存期間がどのくらいあるか、更地返還の時期がいつ到来するかを契約書等で確認しておくことが実務上極めて重要です。

借地権の相続に関するよくある質問

借地権の相続に関する法的手続きは、所有権の相続に比べて権利関係が複雑で分かりにくい点も多いため、相続人から多くの疑問や不安の声が寄せられます。

ここでは、相続実務において特に多くの方が抱く代表的な質問とその回答について解説します。

弁護士等の専門家への相談の必要性や、滞納地代など予期せぬ債務の相続リスクなど、具体的なケースを想定して事前対策を確認しておきましょう。

Q.借地権の相続に伴う名義変更などの手続きは自分でできますか?専門家に依頼すべきですか?

A. 相続登記や貸主への通知といった手続き自体はご自身で行うことも法律上可能ですが、法的なトラブル防止の観点から専門家への相談や依頼を推奨します。

特に、法務局で行う借地上の建物の相続登記手続きは、戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成など必要書類が多く複雑なため、登記の専門家である司法書士へ依頼するのが一般的です。

また、相続税評価額の算出と申告は税理士に、地主(貸主)との承諾料を巡る交渉や将来の契約更新に向けた調整などは弁護士に相談することで、借地借家法や税法に基づいたスムーズかつ適切な対応が可能となります。

Q.被相続人(親)が生前に地代を滞納していました。この未払い地代の支払い義務も相続しますか?

A. はい、未払いの地代に関する支払い義務(債務)も原則として相続人が引き継ぐことになります。

民法の規定により、包括承継である相続は、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産もすべて引き継ぐのが原則とされているためです。

したがって、親が滞納していた借地の地代も債務として相続の対象となり、法定相続分などに応じて各相続人が支払い義務を負うのが一般的です。

地代の滞納をそのまま放置すると、貸主との信頼関係が破壊されたとして借地契約を解除される法的な正当な原因にもなり得るため、滞納事実や相続が判明したら速やかに貸主へ連絡し、清算方法について真摯に相談する必要があります。

Q.借地上の建物が未登記(登記されていない)状態ですが、借地権を相続することはできますか?

A. 未登記であっても相続手続きを進めること自体は可能ですが、実務上は速やかに建物の登記手続きを行うべきとされています。

法務局に登記されていない未登記の建物も被相続人の財産として相続財産(遺産)に含まれますが、借地借家法の規定上、建物に所有権登記がなければ土地の新たな取得者などの第三者に対して自己の借地権を法的に対抗(主張)できないという大きなリスクがあります。

そのため相続の発生後、土地家屋調査士に依頼して建物の表題登記を行い、続いて司法書士を通じて相続人名義での所有権保存登記を行うことで、初めて第三者に対して借地権という重要な権利を正式に保全できるようになります。

まとめ

借地権の相続においては、包括承継となるため貸主の許可や名義書換承諾料が原則不要であり、一般的な預貯金などと同様に財産として無償で引き継ぐことが可能です。

しかし、遺産分割協議を通じた最終的な相続人の確定、地主(貸主)への丁寧な名義変更の通知、アンド借地権の対抗要件を備えるための建物の相続登記といった重要な法的手続きを、滞りなく順に進める必要があります。

また、借地権は資産価値があり相続税の課税対象となるため、国税庁の路線価や借地権割合を正しく調べて相続税評価額を適切に算出することも求められます。

将来の契約更新や、建物の建て替え、売却時の譲渡承諾における深刻なトラブルを避けるためには、日頃から地主(貸主)との間で良好な信頼関係を維持し続けることが実務上何よりも重要となります。

相続に関する法的手続きに少しでも不安がある場合や、地代の滞納、不要な借地権の処分方法(買い取り交渉や相続放棄など)について悩む場合は、早期に弁護士、司法書士、税理士といった各分野の専門家に相談し、安全かつ確実な対策を講じることを検討しましょう。

ネクスパート法律事務所には、相続全般を手掛ける弁護士が在籍しています。ぜひ一度お問い合わせください。

コラム監修者

RUI SATO

RUI SATO

所属:代表(東京オフィス)

明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。

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