更新日:2026年8月14日 (金)
公開日:2026年8月7日 (金)
再婚相手の連れ子の相続|遺産を渡す・渡さない方法を解説
サマリー
再婚という選択が一般的になる中で、再婚相手の連れ子との遺産相続は多くの家庭にとって身近な問題となっています。
例えば、「夫が死亡した際、その連れ子に遺産を渡すべきか」「遺産を渡さないためにはどうすればよいか」「親族間での相続トラブルを防ぐにはどうすべきか」といった不安や悩みは、実務上少なくありません。
遺産相続において連れ子は法律上どのような立場にあるのか、そして自身の希望通りに財産を分配するための具体的な方法や、親族間でのトラブルを未然に防ぐための注意点について解説します。
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再婚相手の連れ子に相続権はある?鍵は「養子縁組」の有無
再婚相手の連れ子に相続権があるかどうかは、法的な親子関係、つまり養子縁組をしているかどうかが全てを決定します。
単に長年同居し、家族として生活を共にしているという事実だけでは、法律上の相続権は発生しません。
相手の連れ子に財産を相続させるためには、この養子縁組が最も重要な手続きとなり、相続における権利の有無を左右する鍵となります。
養子縁組をしていない場合、連れ子に相続権はない
法律上、相続権は血縁関係のある親族、または配偶者に認められるものです。
再婚相手の連れ子と自身の間に血縁関係はないため、養子縁組をしていなければ法律上の親子とは認められません。
たとえ長年一緒に暮らし、実の親子同然の関係を築いていたとしても、戸籍上の親子関係がなければ法定相続人にはなれないのが原則です。
したがって、特別な手続きを何もしていなければ、連れ子が遺産を相続することはできず、遺産分割協議に参加する権利もありません。
養子縁組をすれば、実子と同じ立場の法定相続人になる
再婚相手との連れ子と養子縁組の手続きを行うと、法律上の親子関係が成立します。
これにより、連れ子は実子と全く同じ立場の法定相続人になることができます。
養子縁組をした連れ子は、相続の順位や割合において実子と同等の権利を持ちます。この手続きによって、連れ子は法的に保護された相続人としての地位を確立できます。
連れ子に財産を確実に遺すための4つの方法
父として、あるいは母として、愛情を注いできた再婚相手の連れ子に財産を確実に遺したいと考えるのは自然なことです。
養子への相続を実現するためには、いくつかの方法があります。法的に相続権を持たせる養子縁組が基本的な手段ですが、それ以外にも遺言や生前贈与、生命保険といった方法を状況に応じて組み合わせることで、より確実に自身の想いを形にすることが可能です。

方法1:養子縁組を行う
連れ子に財産を相続させる最も確実で基本的な方法は、養子縁組をすることです。
市区町村の役所に養子縁組届を提出し、受理されることで法律上の親子関係が成立します。
これにより、連れ子は第一順位の法定相続人である「子」となり、他に実子がいる場合でもその実子と同じ立場で相続権を得ます。
この手続きを踏めば、遺言書などがなくても法律に基づいて遺産を受け取ることができ、遺産分割協議に参加する権利も保障されます。将来的なトラブルを避け、安定した形で財産を遺すための最も有効な手段といえます。
方法2:遺言書を作成する
様々な事情で養子縁組を選択しない場合でも、遺言書を作成することで連れ子に財産を遺すことが可能です。
これを遺贈と呼びます。
法定相続人ではない人へ死後に財産を渡す代表的な方法の一つであり、遺言書に「特定の不動産を連れ子〇〇に遺贈する」といった形で明確に記載すれば、その意思表示が法的に有効となる傾向があります。
ただし、配偶者や実子など他の法定相続人には遺留分という最低限保障された遺産の取り分があります。
遺贈する財産の額がこの遺留分を侵害すると、後にトラブルの原因となる可能性があるため、専門家と相談しながら作成することが望ましいです。
方法3:生前贈与を活用する
自分が生きている間に財産を渡しておく生前贈与も、連れ子に財産を渡すための有効な手段です。
贈与税には年間110万円の基礎控除があり、この範囲内であれば非課税で毎年少しずつ財産を移転できます。
また、まとまった資金を一度に渡したい場合には、相続時精算課税制度の利用も検討できます。
この制度は、最大2,500万円までの贈与について特別控除が適用されるものですが、贈与財産は原則として相続時に相続財産に加算して相続税を計算します。
ただし、令和6年以降は年110万円の基礎控除が創設され、枠内の贈与は加算対象外となるなど運用が複雑なため、実務上は税理士等の専門家に相談しながら利用を検討することが重要です。
方法4:生命保険の受取人に連れ子を指定する
自身が契約者および被保険者となる生命保険に加入し、その死亡保険金の受取人に連れ子を指定する方法も考えられます。
生命保険金は、原則として受取人固有の財産とみなされるため、遺産分割協議の対象外となります。
これにより、他の相続人との話し合いを経ることなく、連れ子へ直接まとまった現金を遺すことが可能です。
ただし、法定相続人が保険金を受け取る場合に適用される死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は、法定相続人ではない連れ子が受取人となる場合には適用されない点に注意が必要です。
連れ子に財産を相続させたくない場合の3つの対策
自分の実子にできるだけ多くの財産を遺したい、あるいは再婚相手の連れ子との関係性から相続させたくない、と考える状況も想定されます。
連れ子に財産が渡らないようにするためには、その連れ子と養子縁組をしているかどうかが分かれ目です。
法的な親子関係の有無によって、取るべき対策が異なります。自身の置かれた状況を正確に把握し、適切な手続きや意思表示を行うことが求められます。

養子縁組前なら、何もしない
もし再婚相手の連れ子とまだ養子縁組をしていないのであれば、財産を相続させないための簡単で効果的な方法は、何もしないことです。
前述の通り、養子縁組をしていなければ法律上の親子関係は存在せず、連れ子には最初から相続権が発生しません。
そのため、遺言書で相続させないとわざわざ記載する必要もなく、何もしなければ自動的に相続の対象から外れます。
相続させたくないという意思がある場合は、安易に養子縁組をしないことが何よりも重要な対策となります。
すでに養子縁組をしている場合は、生前離縁や相続廃除を検討する
すでに連れ子と養子縁組をしている場合、その養子は実子と同じ法定相続人となるため、何もしなければ当然に相続権を持ちます。
この相続権をなくすためには、養子との関係を法的に解消する離縁という手続きが必要です。
養親の生前であれば、当事者双方の合意による協議離縁などで法的な養子関係を解消し、連れ子の相続権をなくすことが可能です。
ただし、養親の死亡後に養子関係を終わらせる死後離縁の手続きを行っても、すでに発生した相続権は失われないため、財産を渡さないためには必ず生前に対策を行う必要があります。
どうしても生前の離縁が難しい場合でも、養子から著しい非行や重大な侮辱を受けた事実があれば、家庭裁判所に推定相続人の廃除を請求することで、実務上、相続権を剥奪できる可能性があります。
遺言書で相続させない意思を明確に示す
養子縁組をしている連れ子に財産を渡したくない場合、遺言書でその意思を明確にする方法も考えられます。
例えば「養子〇〇には財産を一切相続させない」と記載したり、他の相続人に全ての財産を相続させる内容にしたりすることで、自身の意思を示すことは可能です。
ただし、養子には最低限の相続分を主張できる遺留分という権利があるため、この方法で完全に相続分をゼロにすることはできません。
なお、相続人本人が自らの意思で権利を放棄する相続放棄を、被相続人が強制することはできません。
連れ子の相続で起こりがちなトラブルと注意点
連れ子がいる家庭での相続は、実子や他の親族との感情的な対立を生みやすいデリケートな問題です。
特に、配偶者の連れ子に財産を遺す場合、他の相続人とのバランスを十分に考慮しないと、深刻なトラブルに発展しかねません。
また、事実婚のように法律上の婚姻関係がないケースでは、そもそも配偶者に相続権がないなど、法的な知識不足が原因で問題が複雑化することもあります。
事前に注意すべき点を把握し、適切な対策を講じることが極めて重要です。
注意点1:実子や他の相続人との間で不公平感が出ないように配慮する
連れ子(養子)に財産を遺す際、実務上最も注意すべきは、実子や他の法定相続人との間で起こる遺産分割協議でのトラブルや関係性の悪化です。
特に、前妻(夫)との間に実子がいる場合、その実子と連れ子の間で相続分に大きな差が生じると「不公平だ」という感情的な対立が生まれやすくなります。
また、養子が第1順位の法定相続人となることで相続順位が変動し、本来であれば相続人になるはずだった親族(親の兄弟姉妹など)の相続分がなくなるケースなどにおいて、親族間の感情的な対立を招く可能性があります。
なぜ連れ子に財産を遺したいのか、その想いや理由を生前から家族に丁寧に伝え、理解を求めるコミュニケーションがトラブル回避の鍵を握ります。
注意点2:遺言書を作成する際は、養子の遺留分を侵害しない
養子縁組をした連れ子には、実子と全く同じく遺留分を請求する権利が法律で保障されています。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた、最低限の遺産取得分のことです。
例えば「全財産を配偶者に相続させる」という内容の遺言書があったとしても、養子はこの権利に基づき、法律で定められた一定割合の財産を渡すよう請求できます。
養子の権利を無視した遺言内容は、かえって相続争いの火種となりかねません。
遺言書を作成する際には、各相続人の遺留分を侵害しないよう配分を慎重に考慮することが不可欠です。
注意点3:相続税が2割加算されるケースを理解しておく
相続税には、特定の人が財産を相続した場合に税額が2割増しになる「相続税の2割加算」という制度があります。
この制度は、亡くなった方の配偶者と一親等の血族(実子や父母)以外の人が財産を受け取る場合に適用されます。
重要なのは、養子縁組をした連れ子は法律上、一親等の血族とみなされるため、この2割加算の対象にはならない点です。
しかし、遺言によって養子縁組をしていない連れ子に財産を遺贈した場合は、2割加算の対象となりますので注意が必要です。
連れ子の相続に関するよくある質問
連れ子の相続に関しては、それぞれの家庭の事情によって様々な疑問が生じるものです。
ここでは、養子縁組をした連れ子の相続割合や遺言書の有効性、また離婚した元配偶者との間にいる実子の権利など、特によく寄せられる質問とその回答を簡潔にまとめました。
Q.養子縁組をした連れ子の法定相続分は、実子と全く同じですか?
A.はい、全く同じです。
養子縁組をすると、連れ子は法律上、実子と完全に同じ身分になります。
そのため、法定相続人としての順位や権利、アンド遺産の取り分である法定相続分の割合についても、実子との間に一切の差はありません。
Q.遺言書に「連れ子に全財産を譲る」と書けば、その通りになりますか?
A.必ずしもその通りになるとは限りません。
配偶者や実子など、兄弟姉妹以外の法定相続人には、法律で最低限の相続割合を保証する遺留分という権利があります。
遺言の内容がこの遺留分を侵害している場合、他の相続人は不足分を請求できます。
Q.離婚した元配偶者との間にいる実子の相続権はどうなりますか?
A.親が離婚しても、実の親子関係が消滅するわけではありません。
そのため、離婚した元配偶者との間にいる実子にも、常に相続権があります。
あなたが離婚後に再婚し、新しい家庭を築いていたとしても、その実子の相続権や法定相続分に影響はありません。
まとめ
再婚相手の連れ子に関する相続問題は、養子縁組をしているかどうかが基本となります。
財産を遺したい場合は、養子縁組をすることで連れ子は実子と同じ法定相続人となり、遺言や生前贈与、生命保険なども有効な手段です。
逆に財産を遺したくない場合は、養子縁組をしないことが最も確実な対策です。
なお、養子が親より先に死亡した場合、その養子の子(被相続人から見て孫)が代わりに相続する代襲相続が発生するケースがあります。
ただし実務上、養子縁組の前に生まれていた養子の子には代襲相続権が認められないのが原則となるため注意が必要です。
また、婚姻関係にない男女間の子であっても、認知されていれば相続権を持ちます。複雑な家族関係における相続はトラブルになりやすいため、早めに弁護士などの専門家へ相談し、自身の希望を法的に実現するための準備を進めることが重要です。
ネクスパート法律事務所には、相続全般を手掛ける弁護士が在籍しています。
連れ子の相続に関してお悩みの方は、ぜひ一度お問い合わせください。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。