サマリー
任意整理が住宅ローンに与える影響や関係性は、現在住宅ローンを返済中の方か、あるいは将来新たに住宅ローンを組みたい(審査に通りたい)方かによって、実務上の注意点が大きく異なります。
現在ローンを返済中の方であれば、任意整理の対象から住宅ローンを外して(除外して)手続きを行うことにより、マイホームを手放さずにその他の借金(消費者金融やカードローンなど)だけを整理することが実務上可能です。
一方、過去に債務整理(任意整理)をした経験がある方でも、信用情報機関から事故情報(いわゆるブラックリスト)が抹消される一定期間が経過し、信用情報が回復すれば、将来的に新たに住宅ローンを組める(審査に通る)可能性は十分にあります。
この記事では、それぞれのシチュエーションにおける具体的な影響をはじめ、大切な家を守るための判断基準や、将来のローン審査を見据えた注意点・対策について専門的な視点から分かりやすく解説します。
任意整理をしても住宅ローン返済中の家を守ることは原則可能
適切な手続きを行えば、任意整理をしても住宅ローン返済中のマイホームを守ることは原則として可能です。
これは、任意整理が裁判所を介さず整理する対象の借金を自由に選択できる(債権者平等の原則が適用されない)という法的特性を持っているためです。
そのため、高金利な消費者金融やカードローンの返済だけを任意整理の対象にして減額交渉を行い、住宅ローンは対象から外してこれまで通り返済を継続する、という柔軟な選択が可能です。
この仕組みを活用することで、大切な家を手放すリスクを回避しながら、住宅ローン以外の借金総額や月々の返済負担を効果的に軽減させ、生活を再建する道が開けます。
現在、住宅ローンを返済中の方が任意整理をする場合の影響
すでに住宅ローンを返済中の方が、カードローンやキャッシング、クレジットカードのキャッシング枠など他の借金について任意整理を行う場合、実際の生活にはどのような影響や変化が生じるのでしょうか。
任意整理は、裁判所を介さずに弁護士などの専門家が債権者と個別に直接交渉し、将来利息のカットや分割回数の見直し(和解)を取り付ける手続きです。
この対象を選べるという私的整理の特性を活かすことで、住宅ローンへの悪影響を実務上回避しながら、多重債務問題を根本的に解決することが期待できます。
任意整理で家を残せる理由|対象とする借金を自由に選べるため
任意整理を行ってもマイホームを残せる最大の理由は、手続きの対象とする債務(借金)を債務者の意思で自由に選択できる点にあります。
自己破産や個人再生といった裁判所を介する法的整理手続きでは、すべての債権者を平等に扱わなければならない債権者平等の原則があるため、特定の借金だけを特別扱いして除外することはできません(※個人再生には住宅ローン特則という例外があります)。
しかし、任意整理はあくまで個別の債権者との合意を目指す私的整理であるため、住宅ローン以外の借金だけを対象として減額交渉を進めることが実務上可能です。
これにより、現在の住宅ローン契約に悪影響を及ぼすことなく、家を手元に残したまま堅実に生活の再建を図ることができます。
住宅ローンを任意整理の対象から外すメリット
住宅ローンをあえて任意整理の対象から除外することには、以下のような大きなメリットがあります。
最大のメリットは、住み慣れたマイホームでの生活環境をそのまま維持できる点です。
住宅ローンは契約通りに返済を継続するため、融資元の金融機関から一括返済を求められたり(期限の利益の喪失)、抵当権を実行されて家を差し押さえられたり、競売にかけられたりするリスクを回避できます。
また、任意整理によって消費者金融やカードローンなどの将来利息のカットや分割払いの再交渉が成立すれば、それらの返済総額と毎月の支払額が減少します。
他社の返済負担が軽くなった分、家計に余裕が生まれるため、結果として住宅ローンの返済も滞りなく継続しやすくなるという大きな副次的効果(好循環)が期待できます。
注意!任意整理をしてもマイホームを手放すリスクがある3つの例外ケース
原則として任意整理の手続きによって家を守ることは可能ですが、個別の事情や特定の状況下においては、結果的にマイホームを手放さざるを得なくなる例外的なケースも存在します。

ご自身の債権状況が上記のケースに該当しないか、手続き前に正確に把握しておくことが非常に重要です。もし該当する懸念がある場合は、自己判断で任意整理を進めず、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、リスクを慎重にシミュレーションする必要があります。
以下で、3つの具体的なケースについて、詳しく解説します。
ケース1|すでに住宅ローン自体の返済を滞納している(または滞納寸前である)
他の借金(カードローンなど)を任意整理して負担を減らしたとしても、肝心の住宅ローン自体の返済をすでに数ヶ月滞納している(あるいは今後滞納してしまう)場合は、家を失う重大なリスクが生じます。
任意整理は、あくまで整理対象として選んだ債権者との間でのみ効力を持つ手続きです。住宅ローンを契約している金融機関との関係は従来のまま維持されるため、滞納状態が解消(解消のための和解など)されなければ、金融機関は通常3〜6か月程度の滞納で期限の利益を喪失させ、保証会社へ代位弁済を請求します。その後、保証会社または金融機関が抵当権(担保権)を行使し、最終的に家は裁判所を通じて競売にかけられてしまいます。
そのため、任意整理とは別に、住宅ローンの滞納問題を早期に根本解決しなければマイホームの維持は困難となります。
ケース2|任意整理したい借金の保証会社(またはグループ会社)が住宅ローンの融資元と同じ
任意整理の対象にしたいカードローンやクレジットカードの保証会社が、住宅ローンを借りている金融機関の指定する保証会社(または同一の金融グループ)と同じである場合、家を失う(あるいは一括返済を求められる)危険性が生じます。
例えば、銀行のカードローンを任意整理すると、その銀行口座が凍結されて預金が相殺されるだけでなく、保証会社が銀行へ代位弁済を行います。もしその保証会社が、あなたの住宅ローンの保証も同時に引き受けている場合、保証会社側で信用上の重大な危機(期限の利益の喪失事由)とみなされ、住宅ローンについても一括返済を求められたり、住宅ローン口座からの相殺が行われたりするリスクが実務上否定できません。結果として資金繰りが行き詰まり、マイホームを手放さざるを得ない事態に直面することがあるため、債権者の相関関係を事前に弁護士等へ確認してもらうことが不可欠です。
ケース3|所有する家や土地が他の借金の共同担保や不動産担保になっている
マイホーム(建物・土地)を、住宅ローン以外の借金(例:ノンバンクの不動産担保ローンや、自営業の事業資金調達のための根抵当権設定など)の担保に差し入れている場合、その借金を任意整理の対象にすると家を失う可能性が極めて高くなります。
担保権者(債権者)は、返済が滞ったり任意整理(期限の利益の喪失)が申し立てられたりした際、担保不動産を処分して優先的に債権を回収する法的権利(抵当権等)を有しています。そのため、該当する借金を任意整理の対象に選んでしまうと、債権者は即座に担保権を実行し、家や土地の差し押さえおよび競売手続きへ移行する傾向があります。
このような不動産担保付きの債務がある場合は、任意整理の対象から除外するか、あるいは任意整理以外の債務整理手続き(個人再生など)を視野に入れる必要があります。
住宅ローン自体の返済も苦しい(払えない)場合の適切な対処法
他社のカードローンだけでなく、住宅ローン自体の月々の返済そのものが家計を圧迫して苦しくなっている場合、他の借金を任意整理するだけでは根本的な解決に至らないケースがあります。
このような深刻な状況下では、家を合法的に守りながら、債務全体の負担を大きく軽減できる別の債務整理手続きや直接交渉を検討すべきです。

一人で悩みを抱え込まず、早い段階で法律の専門家(弁護士・司法書士)や、借入先の金融機関へ相談することが解決への鍵となります。ご自身の収入や資産状況に応じた適切なアプローチを選択することで、家計の健全化とマイホームの維持を高い確率で両立させることが可能です。
対処法1|裁判所に申し立てる個人再生(住宅ローン特則)を検討する
住宅ローン自体の返済も限界を迎えている場合は、裁判所を介する手続きである個人再生の住宅資金特別条項(通称:住宅ローン特則)の活用を強く検討すべきです。
この法的制度を利用すれば、住宅ローン自体は(場合によっては支払期間の延長などのリスケジュールを挟みつつ)これまで通り返済を継続する一方で、それ以外の消費者金融やカードローンなどの借金総額を、裁判所の認可によって元本レベルから大幅に減額(最大で5分の1から10分の1程度まで圧縮)させることが可能です。
これにより、マイホームの所有権を守りながら、毎月の総支払額を劇的に抑えられます。
ただし、利用には一定の法的要件(担保の状況や収入の継続性など)をクリアする必要があり、手続きも極めて複雑なため、実務上は弁護士などの専門家への速やかな相談が不可欠です。
住宅資金特別条項(住宅ローン特則)については、「個人再生なら住宅ローンがある家を守れるというのは本当か?」で詳しく解説しています。
対処法2|借入先の金融機関(銀行)に返済条件の変更(リスケジュール)を直接相談する
弁護士等による法的な債務整理に踏み切る手前の段階であれば、まずは住宅ローンを現在借り入れている銀行等の金融機関の窓口へ直接赴き、相談するのも極めて有効な手段です。
現在の収入減少などの事情を正直に説明し、返済計画の見直し(リスケジュール)を交渉します。実務上、審査が通れば一定期間、元金の返済を据え置いて利息のみの支払いにしてもらう、全体の返済期間を延長して毎月の返済額を抑えるといった措置をとってもらえる傾向があります。これにより、一時的な家計の危機を乗り切れる可能性があります。
ただし、返済期間が延長されれば、最終的に支払う総利息額(総返済額)が増加するというデメリットもあるため、長期的なライフプランに基づいた慎重な判断が求められます。
滞納が発生して事故扱いになる前に、早めに銀行の専用窓口(ローンプラザなど)へ相談することが、マイホームを守るための極めて重要な第一歩となります。
過去に任意整理をした方が新たに住宅ローンを組む場合の影響
過去に弁護士等を通じて任意整理をした経験がある方であっても、しかるべき条件を満たせば、将来的にマイホームの住宅ローンを組める(審査に通る)可能性は実務上十分にあります。
ただし、任意整理をしてすぐに住宅ローンの新規申し込みができるわけではなく、個人信用情報機関に登録された事故情報が抹消されるまでの一定期間を空ける必要があります。いわゆるブラックリスト状態からの信用情報の回復が最大の鍵となり、完済後の生活状況や頭金の準備などが、その後のローン審査に大きく影響します。
ここでは、過去に任意整理を行った方が新規に住宅ローンを申し込むにあたり、事前に知っておくべき期間の目安(年数)や、金融機関の審査通過率(可決率)を最大化するための具体的なポイントをプロの視点から詳しく解説します。
任意整理後に住宅ローンが組めるようになるまでの期間の目安
任意整理の手続きを経て、新たに住宅ローンが組めるようになる(審査対象となる)までの期間は、任意整理の対象とした借金を完済した日から数えて約5年間が実務上の大きな目安となります。
任意整理を行うと、個人信用情報機関に債務整理(または和解・遅延)といった事故情報が登録されますが、この情報が完全に削除(抹消)されるまでに完済から約5年間の期間を要するためです。
この事故情報の登録期間(いわゆるブラックリスト期間)中は、金融機関が住宅ローンの与信審査を行う際に必ず信用情報を照会するため、新規のローン契約を結ぶことは実務上極めて困難となります。
したがって、まずは和解内容に基づいて借金を遅滞なく完済し、その上で信用情報が真っ白に回復するのを待つのが基本的な流れとなります。
ブラックリストについては、「ブラックリストとは?信用情報の重要性を徹底解説」で詳しく解説しています。
なぜ完済後5年が目安なのか?信用情報(ブラックリスト)の仕組み
任意整理後の住宅ローン審査において完済から5年という期間が基準となる理由は、日本の主要な個人信用情報機関における事故情報の保有期間(登録期間)のルールに由来しています。
弁護士などが介入して任意整理の手続きをとると、その事実や和解に基づく返済状況が、加盟するJICC(日本信用情報機構)やCIC(シー・アイ・シー)といった信用情報機関に異動情報(事故情報)として記録されます。
銀行や信販会社などの金融機関は、住宅ローンの本審査・事前審査の際にこれらの中央機関へ必ず照会をかけるため、画面上に事故情報が表示された段階で「経済的信用や返済能力に重大な懸念あり」とみなされ、自動的に不承認(否決)となるケースがほとんどです。
この異動情報は和解に基づく返済がすべて終了(完済)した日から数えて5年間保持される仕組みであるため、この保有期間が経過して情報がクリーンにならない限り、新規の融資を受けるのは実務上極めて難しいのが実情です。
信用情報機関については、「3つの信用情報機関(CIC・JICC・JBA)の違いとは?」で詳しく解説しています。
任意整理後に住宅ローンの審査通過率(可決率)を上げる5つの対策
注意が必要なのは、過去の任意整理から5年が経過して信用情報が回復したからといって、誰もが自動的かつ確実に住宅ローン審査に通るわけではないという点です。
審査の通過率を少しでも高めるためには、完済後の5年間(または事故情報が消えるまでの期間)を最大限に活用し、金融機関から高く評価されるための属性や返済能力を整えておくことが不可欠です。
融資元の金融機関は、申込者の現在の年収、勤続年数、返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)などを総合的かつ慎重にスコアリングします。

ここでは、審査の土台に乗るために実践すべき5つの具体的なコツを解説します。これらの事前準備を計画的に行うことが、マイホーム購入の夢を現実にするための重要な一歩となります。
コツ1|主要な信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に情報開示請求を行い、事故情報が消えたか事前に確認する
住宅ローンの事前審査に申し込む前に、必ず自身で主要な個人信用情報機関であるCIC、JICC、KSC(全国銀行個人信用情報センター)の3箇所に対して、個人信用情報の開示請求を行いましょう。
開示書面(またはスマホ開示画面)をチェックすることで、過去の任意整理にまつわる異動や遅延の文言が確実に消え、クリーンな状態に戻っているかを自分の目で確認できます。
万が一、手続きのタイムラグなどで事故情報が残ったまま住宅ローンを申し込んでしまうと、高い確率で審査落ち(否決)となります。さらに厄介なことに、金融機関が信用情報を照会したという申込情報(照会履歴)自体も信用情報機関に6か月間記録されるため、短期間に審査落ちを繰り返すと申し込みブラックと呼ばれる状態になり、その後のローン審査で圧倒的に不利に働くリスクがあります。そのため、事前の開示確認は実務上必須のステップです。
コツ2|自己資金(頭金)を十分に用意して、堅実な貯蓄習慣と返済能力をアピールする
住宅ローンの申し込みにおいて、まとまった頭金(自己資金)を確保しておくことは、過去に債務整理歴がある方にとって極めて強力なプラス要素となります。
購入物件の価格に対して頭金の割合(自己資金比率)が高ければ高いほど、実際の借入希望総額を低く抑えることができるため、金融機関側にとっては貸し倒れのリスクが低い案件として好意的に受け止められやすくなります。
実務上、一般的には物件価格の1〜2割以上の頭金を自己資金から充当できると、過去の金銭トラブルを反省し、現在は計画的な貯蓄ができる安定した経済状況と高い計画性を備えている人物だと見なされやすくなります。
任意整理の返済中、あるいは完済から信用情報が回復するまでの数年間の待機期間をただ待つだけでなく、毎月コツコツと頭金を貯蓄する期間にあてることで、将来の審査通過率を大きく引き上げることが期待できます。
コツ3|同じ勤務先での勤続年数を積み上げ、安定した継続収入を確保する
住宅ローンの与信審査において金融機関が最も重視するのは、完済に至るまで(最長35年間など)長期にわたり、毎月途切れることなく安定して返済を続けられるかという継続性です。
そのため、申込者の雇用形態や年収の安定性、そして勤続年数という属性情報は慎重にチェックされます。
一般的に、同一の勤務先に3年以上継続して勤務している場合、金融機関から今後も安定した収入源が期待できるとポジティブに評価されやすくなります。一方で、キャリアアップではない安易な転職を繰り返した直後のタイミングなどは、収入の継続性に不確定要素が多いと見なされ、審査で不利に働く傾向が実務上見られます。
過去の事故情報が消えるタイミングを見計らい、あらかじめ社会的な信用度の高い職場(正社員や公務員など)で一定の勤続年数を積み重ねておくことが、融資を引き出すための非常に重要なポイントとなります。
コツ4|信用情報がクリーンな配偶者の単独名義で住宅ローンを申し込む
もしご自身の個人信用情報にまだ任意整理の記録が残っている、あるいは過去の社内ブラック等の影響が懸念される場合で、配偶者に安定した収入とクリーンな信用情報があるならば、配偶者の単独名義で住宅ローンを申し込むことも実務上大変有効な選択肢です。
日本の信用情報制度は完全に個人単位で管理されているため、配偶者名義の単独ローンであれば、夫(または妻)が過去に任意整理を行ったという事実が、金融機関の審査に直接的な悪影響を及ぼすことは法律上・実務上原則としてありません。
配偶者自身に十分な勤続年数と安定した年収があれば、配偶者単独の与信で審査を通過できる可能性があります。
ただし注意すべき点として、このスキームを採用する場合、任意整理の経歴を持つ本人(あなた)は収入合算者や連帯保証人、ペアローンの相手方として審査に加わることが実務上できません(加わった時点で本人の信用情報が照会され、審査落ちの原因となるためです)。
したがって、あくまで配偶者一人だけの年収・属性を基準として、その範囲内で無理なく返済できる借入金額に設定する必要があるという制約を理解しておく必要があります。
コツ5|独自の審査基準を持つ金融機関や、国がバックアップするフラット35を選択肢に入れる
住宅ローンの審査基準や承認のハードルは、各金融機関(銀行・ノンバンク等)によって大きく異なります。
一般的に都市銀行(メガバンク)や大手のネット銀行は、機械的なスコアリングによる厳格な信用情報チェックを行う傾向が強いとされています。そのため、地域密着型で個別の事情や日頃の取引実績(給与振込口座への指定など)を総合的に勘案してくれる可能性のある地方銀行や信用金庫、あるいは労働金庫(ろうきん)を選択肢に含めるのも実務上有効な戦略です。
また、独立行政法人住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供している全期間固定金利住宅ローンフラット35は、一般的な銀行の民間ローンとは審査の着眼点が異なります。フラット35の審査では、過去の信用情報の履歴以上に、現在の収入から算出した返済負担率(基準内か否か)や購入対象となる物件の技術的・担保的価値を重視して画一的に審査を行う傾向があります。そのため、過去に任意整理をして現在は信用情報が回復し、安定した収入を得ている方にとっては、大手銀行のローンと比較して非常に有力な受け皿(選択肢)になり得ると実務上広く知られています。
自身の任意整理の経験が配偶者や家族の住宅ローン契約に与える影響
「自分が過去に任意整理をしてしまったせいで、妻(夫)や子供が将来住宅ローンを組みたいと思ったときに、審査で巻き添えを食らって落とされるのではないか」と不安に感じる方は少なくありません。
結論から申し上げますと、個人信用情報はどこまでも個人単位で個別に管理されているため、原則として家族のローン審査にあなたの過去の経歴が直接的な悪影響を及ぼすことはありませんが、ローンの契約形態によっては例外的に影響が及ぶケースがあるため注意が必要です。
ここでは、任意整理の経験が家族のローン契約に与える影響について、具体的なケースを基に解説します。
ケース1|配偶者や家族が単独名義で住宅ローンを組む場合は一切影響しない
先述の通り、個人信用情報は法律および各信用情報機関の規約に基づき、完全に個人の名義ごとに区分されて管理されています。
金融機関が住宅ローンの審査の際に、申込者の配偶者や家族の信用情報を本人の同意なく無断で照会することは法的に不可能です。したがって、過去に任意整理をした本人ではなく、その配偶者や家族が自分自身の収入とクリーンな信用情報だけを用いて単独名義で住宅ローンを申し込むのであれば、審査に影響が出ることは実務上基本的にあり得ません。
家族(申込者本人)の返済能力や勤続年数などが金融機関の規定を満たしていれば、通常通り何の問題もなく住宅ローン契約を締結することが可能です。
ケース2|任意整理の事故情報が残っている期間中、本人が連帯保証人や連帯債務者になることはできない
配偶者や家族名義で住宅ローンを申し込む際、融資額を引き上げるなどの目的で、過去に任意整理をした本人(あなた)が連帯保証人や連帯債務者(収入合算者)として審査に加わる契約形態をとる場合は、一転して強い影響を及ぼします。
住宅ローンの連帯保証人や連帯債務者になる人物は、主たる債務者(実際にローンを借りる主名義人)と全く同様に、金融機関による厳格な個人信用情報の照会および資力審査が行われます。そのため、あなた自身の信用情報機関に任意整理の事故情報(異動記録)が残っている期間(完済から約5年が経過するまで)は、保証人としての適格性・信用力がないと自動的に判断されるため、その住宅ローン審査全体が否決されてしまいます。
また、仮に5年が経過して信用情報機関のデータが消えた後であっても、過去に任意整理の対象とした金融機関やその系列の保証会社(いわゆる社内ブラックに該当する企業)へ申し込んだ場合、グループ内の独自データベースに過去の事故履歴が半永久的に保管されているため、連帯保証人として拒絶されるリスクが依然として残ります。
家族が住宅ローンを組む際は、こうした「誰を契約に関わらせるか」「どの金融機関を選ぶか」という実務上の影響をあらかじめ正確に把握し、慎重に手続きを設計することが求められます。
不確実な点がある場合は、事前に不動産取引や債務整理に精通した弁護士等の専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。
任意整理と住宅ローンに関するよくある質問(Q&A)
債務整理(任意整理)と住宅ローンの関係性について検討する際には、実務的な影響や手続きの周囲への露見、コスト面など、さまざまな疑問や不安が生じるものです。
例えば、「手続きが勤務先に知られてしまうのではないか」「弁護士費用はどのくらいかかるのか」「夫婦間の特殊なローン契約の場合はどうなるのか」といった実務上の懸念点が挙げられます。 ここでは、そうしたユーザーから寄せられることの多いよくある質問に対して、専門的な視点から簡潔かつ明確に回答していきます。
任意整理をすると勤務先の会社や周囲に知られてしまいますか?
任意整理は裁判所を介さず、弁護士等の専門家が債権者と個別に直接交渉する私的整理の手続きであるため、手続きを行うこと自体が原因で勤務先の会社や周囲に知られることは基本的にありません。
自己破産や個人再生などの法的整理手続きとは異なり、国の機関紙である官報に氏名や住所が掲載されることもないため、家族や職場に秘密で進めやすいのが特徴です。
ただし、例外として勤務先から社内融資(従業員貸付制度)を受けている場合で、その社内債務を任意整理の対象に含めたときは、会社に対して弁護士等から受任通知が送付されるため、確実に知られることになります。
住宅ローンは残したまま、他の借金だけ任意整理する場合の弁護士費用は?
任意整理に要する費用は、一般的に手続きの対象とする債権者(金融機関)の数(社数)を基準に算出されます。
住宅ローン以外の他社借入(消費者金融やカードローンなど)の数に応じて、依頼する弁護士や司法書士に対して支払う着手金や解決報酬金、減額報酬金(減額できた割合に応じた報酬)が発生するのが実務上の一般的な仕組みです。
専門家費用の一般的な相場としては、債権者1社あたり3〜5万円前後が目安とされていますが、法律事務所によって料金体系や分割払いの可否は異なります。そのため、正式に依頼する前に必ず事前の無料相談などで具体的な見積もりを確認・比較することが重要です。
夫婦でペアローンを組んでいますが、片方の名義人だけ任意整理できますか?
理論上、夫婦の一方だけが自身の他社借入を任意整理することは可能ですが、住宅ローンでペアローン契約(または連帯債務契約)を締結している場合は、極めて高いリーガルリスクが伴うため細心の注意が必要です。
一般的なペアローンでは、夫婦それぞれが主債務者であると同時にお互いの連帯保証人となる契約構造をとっています。そのため、片方が他社借入を任意整理した事実が信用情報機関や保証会社の連動等により融資元銀行に判明した場合、住宅ローン契約上の「期限の利益の喪失事由(信用不安・保証機能の著しい低下)」に該当すると判断されるリスクがあります。
最悪の場合、任意整理を行っていないもう一方の配偶者(連帯保証人)に対して住宅ローン残債の一括返済を請求されるなど、深刻な法的トラブルへ発展しかねません。個別のローン約款によって実務上の扱いが大きく異なるため、自己判断で進めず、必ず事前に対象契約書を持参のうえ弁護士等の専門家へご相談ください。
まとめ|任意整理と住宅ローンの関係
任意整理は、裁判所を介さずに整理対象とする借金を自由に選択できるという大きなメリットを持った債務整理手続きです。そのため、住宅ローンをこれまで通り返済し続ける対象として手続きから除外すれば、住み慣れたマイホームを手放すことなく、消費者金融やカードローンなど他の借金の将来利息をカットし、毎月の返済負担を軽減させることが実務上可能です。
ただし、すでに住宅ローンを数か月滞納している場合や任意整理したい他社借入の保証会社が住宅ローンの融資元・保証会社と同じである場合(社内ブラックや相殺リスク)、さらには不動産が他の借金の担保に入っている場合など、例外的にマイホームを失うリスクが生じるケースも存在するため、事前の正確な状況把握が欠かせません。
また、過去に任意整理をした後に新たに住宅ローンを組みたい場合は、対象債務をすべて完済した日から数えて約5年間が経過し、個人信用情報機関(CIC・JICC・KSC)の事故情報が完全に抹消された後に、十分な自己資金(頭金)の用意や勤続年数の確保といった審査対策を計画的に講じることが重要となります。
住宅ローンが絡む債務整理は、債権者の組み合わせや個人の属性(収入・資産状況)によって最適な解決策(任意整理か、あるいは住宅ローン特則を利用した個人再生かなど)が大きく異なります。まずは一人で抱え込まず、借金問題の解決実績が豊富な弁護士や司法書士などの法律の専門家へ一度相談し、あなたに合った最適なライフプランの再建方法を提案してもらうことが、確実かつ賢明な第一歩となります。
多額の借金返済や多重債務にお悩みで生活の再建をお考えなら、ぜひ債務整理の実績が豊富なネクスパート法律事務所にご相談ください。経験豊富な弁護士が、お客様個人の借入状況や収入・資産の背景を丁寧にヒアリングし、任意整理や個人再生など、状況に応じた最適な借金問題の解決方法を法的な視点から的確にアドバイスいたします。
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コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。