更新日:2023年4月4日 (火)
公開日:2023年4月4日 (火)
交通事故における症状固定で弁護士に相談するメリットとは
サマリー
交通事故の治療を続けているなかで、相手方の保険会社から「そろそろ症状固定にしませんか」と打診され、どう対応すべきか迷っている方もいるのではないでしょうか。症状固定は治療の一区切りとなるだけでなく、入通院慰謝料の算定や後遺障害等級認定の手続きにも関わる重要な局面です。この記事では、症状固定の基本的な定義や医師による判断の重要性、手続きの流れとともに、早い段階で弁護士に相談するメリットについて分かりやすく解説します。
症状固定とは?知っておきたい基礎知識と判断基準
症状固定の定義と「治癒」との違い
症状固定とは、交通事故による怪我に対して適切な治療を継続したものの、これ以上の医学的な改善が見込めなくなった状態を指します。
怪我や痛みが完全に回復した「治癒」とは異なり、身体に何らかの症状や障害が残っている段階で治療の一区切りを迎える状態です。
交通事故の損害賠償実務において、相手方の保険会社から支払われる治療関係費は、原則としてこの症状固定の時点までとされています。症状固定以降にかかる治療費は自己負担となるのが一般的であるため、どの時点で症状固定とするかは非常に重要な意味を持ちます。
症状固定を判断できるのは医師のみ
症状固定の判断は医学的な観点から行われるため、法的にその判断権限を持つのは医師に限られます。加害者側の保険会社や被害者本人が一方的に決定できるものではありません。
通院先として整形外科などの病院だけでなく、整骨院や接骨院を利用している場合には判断に注意が必要です。柔道整復師による施術と医師による診療では対応できる範囲が異なります。
| 施設種別 | 担当者 | 主な対応内容 |
|---|---|---|
| 病院(整形外科など) | 医師 | 診察、各種検査(レントゲン・MRI等)、投薬・手術等の治療、診断書の作成 |
| 整骨院・接骨院 | 柔道整復師 | 手技療法、物理療法、運動療法等による施術(整復・固定・後療法) |
医師が医学的に症状固定と判断しても、整骨院側では施術の継続によって改善が見込めると考えるケースなど、見解が分かれることもあります。症状固定の時期を巡るトラブルを防ぐためにも、整骨院に通う際は医師の同意を得たうえで、定期的に病院で診察を受けることが重要です。
症状固定のタイミングが慰謝料や損害賠償に与える影響
交通事故における症状固定の時期は、受け取れる損害賠償額の総額に直結する重要な要素です。損害賠償のうち、怪我の治療に伴う入通院慰謝料や休業損害、治療費などは、原則として事故発生日から症状固定日までの治療期間を基準に算出されます。
症状固定とされると、その時点で治療関係の損害賠償の対象期間は終了し、以降の治療費は原則として自己負担となります。そのため、適切な時期より早く症状固定としてしまうと、本来請求できるはずの入通院慰謝料などの算定期間が短くなる可能性があります。
治療期間の長さと損害賠償算定への影響
入通院慰謝料は、実際に入院や通院を行った期間や日数をベースに算定されます。治療を継続すべき状態であるにもかかわらず通院を途中でやめてしまうと、慰謝料額の算定において不利に働くことが考えられます。
また、通院期間や通院頻度が極端に少ない場合、治療の必要性や怪我の重大性が疑われ、その後の後遺障害等級認定において後遺症の存在が認められにくくなるケースもあります。
適切な損害賠償請求や後遺障害等級認定を行うためには、医師の指示に従い、必要な通院実績を積み重ねていくことが大切です。
保険会社からの治療費打ち切り打診と医師の判断
通院が数か月ほど続くと、相手方の任意保険会社から「そろそろ症状固定の時期ですので治療費の支払いを終了します」と打診されることがあります。しかし、保険会社には症状固定を決定する法的な権限はありません。
症状固定は医学的な観点から判断されるべき事項であるため、保険会社から連絡があった場合でもその場で即答せず、まずは主治医に治療継続の必要性があるか相談することが重要です。
医師が「まだ治療を続けることで改善が見込める」と判断した場合は、その医学的意見を踏まえて保険会社への対応を検討する必要があります。
症状固定後の手続きと後遺障害等級認定の流れ
治療を継続してもこれ以上の改善が見込めないと判断され症状固定を迎えた際、身体に後遺症が残っている場合には、後遺障害等級認定の申請手続きを進めることになります。
症状固定後の手続きは、適切な損害賠償請求を行うための重要なステップとなります。
後遺障害診断書の作成と自覚症状の伝達
後遺障害等級認定の申請には、主治医が作成した「後遺障害診断書」が必要です。なお、歯の治療を行った場合は歯科専用の診断書を用意するなど、負傷部位に応じた書式を用います。
診断書には、医学的な検査結果だけでなく被害者自身の自覚症状も反映されます。そのため、どのような痛みがどの部位にあり、どの程度の頻度で日常生活や仕事に影響しているかを、医師へ具体的に伝えることが重要です。
後遺障害等級認定の2つの申請方法
後遺障害診断書を取得した後は、損害保険料率算出機構へ等級認定の申請を行います。申請方法には「事前認定」と「被害者請求」の2種類があり、それぞれ手続きの進め方が異なります。
- 事前認定:相手方の任意保険会社に後遺障害診断書を提出し、保険会社経由で申請手続きを一任する方法です。被害者側の書類集めの手間が少ない特徴があります。
- 被害者請求:被害者自身が診断書や診療報酬明細書などの必要書類を収集し、相手方の自賠責保険へ直接申請する方法です。提出書類の内容を把握・管理しやすい特徴があります。
等級認定結果の受領と示談交渉の開始
申請から一定の審査期間を経て、後遺障害等級(1級〜14級、または非該当)の認定結果が通知されます。等級が認定されると、その等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益の計算が可能となり、本格的な示談交渉へと進みます。
もし想定していた等級と異なる場合や非該当の結果に納得がいかない場合には、追加の医証を添えて異議申立てを行うことも選択肢となります。
症状固定に関して弁護士に相談する主なメリット
交通事故の治療を続けている中で症状固定の時期を迎えるにあたり、弁護士へ相談することで法的な見地や手続き面において様々なサポートを受けられる可能性があります。
適切な症状固定の時期を検討できる
症状固定は医師が医学的観点から判断するものですが、相手方の保険会社から早期に治療費の終了や症状固定を促されるケースもあります。
弁護士に相談することで、怪我の状況や通院頻度、これまでの治療経過などを踏まえ、法的な観点からも適切なタイミングであるかを整理することが可能です。
医師の医学的な判断を確認しつつ、不当に早い段階で症状固定とみなされる事態を防ぐための助言を受けられます。
保険会社との窓口対応を委ねて負担を軽減できる
治療を続けながら保険会社の担当者と頻繁に連絡を取り合い、症状固定の時期や治療費の対応について交渉することは精神的・時間的に大きな負担となりがちです。
弁護士に依頼した場合は、保険会社とのやり取りを一任できるため、被害者自身が直接相手方と連絡を取る必要がなくなります。
医師への確認を待ってもらうよう保険会社へ申し入れたり、自費で負担した費用の精算を求めたりといった対応を任せることで、治療や日常生活の回復に専念しやすくなります。
後遺障害診断書の確認や認定手続きのサポートを受けられる
症状固定後に後遺症が残った場合、後遺障害等級認定の手続きを進めることになりますが、その結果を左右する重要な要素が医師の作成する後遺障害診断書です。
弁護士に相談すれば、自覚症状や検査結果が診断書に適切に反映されているかを確認し、認定に向けた必要書類の準備や手続きの進行について支援を受けることができます。
もし希望する等級が得られなかった場合でも、診断書の内容や医学的資料を再検証したうえで異議申立てを検討できる点もメリットの一つです。
症状固定の判断に迷ったときの弁護士への相談
示談交渉が本格化する前からの相談が重要な理由
症状固定の時期は、その後の損害賠償請求や後遺障害等級認定の手続きにおいて基礎となる重要な分岐点です。示談交渉が本格的に始まってから対応を検討するのではなく、症状固定を視野に入れ始めた段階から弁護士に相談することで、今後の全体的な進め方や法的な見通しをあらかじめ整理しやすくなります。
相手方の保険会社から症状固定を促された場合でも、その判断が妥当であるかどうかを慎重に見極める必要があります。医師の医学的見解を踏まえつつ、法的な観点からも状況を確認しておくことで、納得のいかないまま手続きが進んでしまう事態を防ぎやすくなります。
症状固定の時期に関する疑問や不安がある場合は、示談交渉が本格化する前の段階から方針を明確にしておくことが大切です。
早期に法律相談を利用するメリットと確認事項
交通事故の怪我の治療を継続しながら、相手方保険会社との連絡や書類のやり取りをご自身で進めることは、心身ともに大きな負担となりがちです。早い段階で弁護士に相談することにより、現在の手続きの妥当性や今後の損害賠償請求に向けた準備について助言を受けることができます。
法律相談を利用する際には、通院の経過や残っている自覚症状、相手方保険会社とのやり取りなどの経緯を整理して伝えると、より具体的な助言を受けやすくなります。また、ご自身やご家族の保険に弁護士費用特約が付帯されているかどうかも事前に確認しておくと安心です。
症状固定の判断やその後の手続きについて疑問や不安を抱えている場合は、ひとりで抱え込まず、早めに弁護士への法律相談を検討してみてはいかがでしょうか。
コラム監修者
JUNICHI TASHIRO
所属:福岡オフィス 支店長
福岡県北九州市出身。小倉高校、岡山大学法学部、神戸大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所福岡オフィス所長として、依頼者にとって何が大事かを第一に考え、スピード感をもって解決することを信条とし、どこの事務所よりもネクスパート法律事務所に依頼したいと思ってもらえるよう日夜奮闘中。