更新日:2026年9月13日 (日)
公開日:2025年1月28日 (火)
性加害とは|意味や法律の定義は?加害者と被害者の対応を解説
サマリー
ニュースや報道で「性加害」という言葉を見聞きする機会が増えましたが、具体的にどのような行為を指し、法律上どう扱われるのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。2023年の刑法改正により、不同意性交等罪の新設など性犯罪に関する法制度は大きく見直されました。この記事では、性加害の意味や該当し得る犯罪、問われる法的責任をはじめ、トラブルが生じた際に加害者側・被害者側それぞれが知っておくべき対応の流れについて分かりやすく解説します。
性加害とは|意味や法的な位置づけ
性加害の意味と法律上の位置づけ
性加害(せいかがい)とは、相手の同意のない性的な行為や言動など、性的な加害行為全般を広く指す一般的な表現です。報道や社会的な議論の中で頻繁に用いられますが、刑法などの条文に直接規定されている法律用語ではありません。
類似する言葉として「性暴力」があります。性暴力は従来、暴行や脅迫を伴う性的な行為を指す傾向がありましたが、近年では相手の意に反する性的な加害行為全般を包括する概念として用いられるケースが増加しています。
「性加害」は法律用語ではないものの、同意のない性的な行為は刑法上の性犯罪に該当し、民事上も不法行為として損害賠償責任を負う可能性があります。
なお、性加害や性被害は特定の性別に限定されるものではありません。女性だけでなく男性が被害を受けるケースもあり、性別や年齢を問わず誰にでも起こり得る問題として認識されています。
性加害・性暴力にあたる具体的な行為の例
性加害とされる行為には、物理的な身体接触から言葉によるもの、映像の撮影まで多岐にわたる形態が存在します。相手の真摯な同意を得ていない性的な働きかけは、幅広く加害行為と捉えられます。
- 相手の同意を得ずに行う性交やわいせつな行為
- 明確な拒絶がないことをもって同意があったと一方的に思い込んで行う性交
- 泥酔や睡眠など、相手が拒否できない状態に乗じて行う性的な行為
- 同意なく胸や臀部、性器などのプライベートゾーンに触れる行為
- 相手が望まない卑わいな言動や、性的な話題についての執拗な質問・強要
- 衣服で覆われている身体部位の覗き見や盗撮、性的な画像の無断送信
加害行為に至る心理的背景と「認知の歪み」
性加害を行う人の心理的背景には、自身の行為を正当化したり、被害の重大性を過小評価したりする「認知の歪み」が存在することが研究機関などから指摘されています。
| 分類 | 主な考え方の傾向・具体例 |
|---|---|
| 自己の行為の正当化 | 「相手が誘ってきた」「嫌ならはっきり断るはずだ」「好意があるから問題ない」など、相手に責任を転嫁する思考 |
| 行為の矮小化 | 「少し触っただけだから大したことではない」「大げさに騒いでいるだけだ」など、被害の影響を過小に捉える思考 |
このほかにも、相手の感情や意図を正確に読み取ることが苦手な傾向や、過度な劣等感、ストレス発散手段としての性的な依存傾向など、複合的な要因が背景に関与している場合があると考えられています。
性加害が刑事事件に該当する主な犯罪と法改正の概要
2023年7月に施行された改正刑法では、性犯罪に関する規定が大幅に見直されました。従来の「暴行・脅迫」を要件とする構成から、相手の「同意がない状態」を重視する枠組みへと変更され、処罰要件の明確化や厳格化が図られています。
不同意わいせつ罪(刑法第176条)
不同意わいせつ罪は、従来の強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪を統合して新設された犯罪です。相手が「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」にさせ、またはその状態に乗じてわいせつな行為をした場合に成立します。
法律では、処罰の対象となる原因や状況として以下の8つの事由などが具体的に明記されています。
- 暴行や脅迫を用いること、または受けていること
- 心身の障害を生じさせること、またはそれがあること
- アルコールや薬物を摂取させること、またはその状態にあること
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること、またはその状態にあること
- 同意しない意思を形成・表明・全うするいとま(時間)を与えないこと
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖・驚愕させ、抵抗できない状態を利用すること
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせること、またはそれがあること
- 経済的・社会的地位に基づく影響力による不利益を憂慮させること、またはそれを憂慮していること
法定刑は「6月以上10年以下の拘禁刑」と定められており、公訴時効は法改正により12年へと延長されました。なお、被害者が事件当時に未成年であった場合は、18歳(成人)に達した時点から時効期間が進行します。
不同意性交等罪(刑法第177条)
不同意性交等罪は、旧強制性交等罪および旧準強制性交等罪を統合して新設された類型です。不同意わいせつ罪と同様の8つの事由などによって同意が困難な状態にある相手に対し、性交、肛門性交、口腔性交、または膣や肛門に身体の一部や物を挿入する行為を行った場合に成立します。
法定刑は「5年以上の有期拘禁刑(上限20年)」と非常に重く設定されており、法律上の減軽事由がない限り原則として執行猶予はつきません。
法改正前は強制わいせつ罪に留まっていた一部の侵入行為も不同意性交等罪の対象に含まれるようになり、処罰範囲が明確化されました。公訴時効は15年(被害者が未成年の場合は18歳到達時から起算)と規定されています。
性的姿態等撮影罪(撮影罪)の新設
従来は主に各都道府県の迷惑防止条例等で取り締まられていた盗撮行為について、全国一律で処罰するための「性的姿態撮影等処罰法」が2023年7月に施行されました。これにより、正当な理由なく人の性的姿態をひそかに撮影する行為や、拒否できない状態を利用して撮影する行為が刑罰の対象となっています。
処罰される行為は撮影そのものにとどまらず、盗撮された影像の提供、提供や公表目的での保管、不特定多数への送信・配信、所持(記録の保存)なども含まれます。撮影行為に対する法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」であり、公訴時効は3年です。
| 罪名 | 主な要件・行為 | 法定刑 | 公訴時効 |
|---|---|---|---|
| 不同意わいせつ罪 | 同意が困難な状態にさせ、またはその状態に乗じて行うわいせつ行為 | 6月以上10年以下の拘禁刑 | 12年(※) |
| 不同意性交等罪 | 同意が困難な状態にさせ、またはその状態に乗じて行う性交・挿入等 | 5年以上の有期拘禁刑 | 15年(※) |
| 性的姿態等撮影罪 | 正当な理由のない性的部位や下着等の盗撮、画像の提供・保管等 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(撮影行為) | 3年 |
※被害者が未成年の場合は18歳に達した時点から時効が起算されます。
性加害に伴う法的・社会的なリスク
性加害に該当する行為を行った場合、刑事上の処罰を受けるだけでなく、民事上の賠償責任や社会生活における重大な不利益など、多方面で深刻なリスクを負うことになります。
逮捕・勾留による長期の身柄拘束
被害者や関係者による警察への通報・相談を契機として捜査が開始された場合、被疑者として逮捕される可能性があります。性犯罪は2017年の法改正により非親告罪化されたため、被害者からの正式な刑事告訴がなくても、捜査機関の判断によって捜査が進められ、起訴される場合があります。
逮捕後に裁判官が勾留を決定すると、10日〜20日間にわたり警察署の留置場などに身柄を拘束されます。さらに起訴された場合は、起訴後勾留として身柄拘束が長期化する可能性もあります。
実名報道や勤務先・学校への影響
性犯罪の被疑者として逮捕された場合、事件の重大性や社会的立場などによっては、テレビや新聞、インターネットニュースなどで実名報道されることがあります。
実名報道がなされたり長期の身柄拘束が続いたりすると、勤務先や学校に事件を知られる可能性が高くなります。その結果、懲戒解雇や退学処分といった処分を受けるおそれがあるほか、インターネット上に逮捕情報が残り続けることで、将来の再就職や生活全般に重大な影響を及ぼすリスクが生じます。
刑事裁判による有罪判決・前科と実刑のリスク
検察官により起訴されると公開の法廷で刑事裁判が行われます。裁判で有罪判決が確定すれば前科がつきます。
特に法定刑の下限が引き上げられた不同意性交等罪などは、減軽事由が認められない限り執行猶予がつかず、実刑判決となって直ちに刑務所へ収容される可能性があります。
民事上の損害賠償請求(慰謝料請求)
性加害行為は刑事罰の対象となるだけでなく、民法上の不法行為にも該当します。そのため、被害者から精神的苦痛に対する慰謝料や、通院治療費などの損害賠償を民事裁判等で請求されるリスクがあります。
判決や和解によって確定した損害賠償金の支払いに応じない場合、預貯金や給与などの財産が差し押さえられる強制執行の手続きが取られる可能性もあります。
【加害者側】性加害を疑われた場合の一般的な対処法
性加害の疑いをかけられた場合、行為の事実を認めるか、それとも事実無根として争うかによって適切な対応が大きく異なります。いずれの場合であっても、捜査段階から慎重な対応が求められます。
行為の事実を認める場合の対応
性加害を行ってしまった事実がある場合、弁護士を通じて被害者へ真摯に謝罪し、示談交渉を進めることが一般的な初動となります。
加害者本人が直接被害者へ接触を図ると、被害者に過度な精神的負担を与えたり、証拠隠滅や脅迫と受け取られたりするおそれがあるため避ける必要があります。
弁護士を介して被害弁償や示談が成立した場合は、検察官による起訴・不起訴の判断や、裁判における量刑判断において有利な事情として考慮されることがあります。
示談交渉と並行して、再犯を防ぐための取り組みを行うことも重要です。性依存に関する治療を行うクリニックへの通院や、更生プログラムへの参加などを通じて根本的な原因に対処することが検討されます。
単に反省の言葉を述べるだけでなく、再発防止に向けた具体的な行動や環境の改善を示すことは、刑事手続きにおける更生の可能性を示す材料となり得ます。
事実無根・冤罪を主張する場合の対応
痴漢の誤認や、双方の同意があった行為について後から被害を主張された場合など、身に覚えのない疑いをかけられた際は一貫した対応が必要です。
捜査機関による取調べの際、自身の記憶や事実と異なる供述調書が作成された場合は、安易に署名や押印をしてはいけません。一度署名した調書は後の裁判で重要な証拠として扱われるためです。
取調べでの発言内容や黙秘権の行使については、自己判断せず早期に弁護士へ相談し、防御の方針を立てることが望まれます。
もし逮捕されて身柄が拘束された場合でも、警察署に当番弁護士の派遣を依頼することで、速やかに法的アドバイスを受けることが可能です。
【被害者側】性加害の被害を受けた場合の対応と相談窓口
性加害の被害に遭った場合、何よりもまずご自身の安全を確保することが最優先となります。危険を感じる場所から速やかに離れ、信頼できる場所や人に助けを求めることが大切です。
被害直後は精神的なショックが大きい状態ですが、その後の捜査や法的手続きを適切に進めるためには、できる限りの証拠保全を行うことが推奨されます。
初動における証拠保全と身体のケア
被害の事実を立証するための客観的な証拠は、時間の経過や洗浄によって失われてしまうことがあります。そのため、警察への届出や病院の受診を検討している場合は、次のような初動対応が重要とされています。
- 被害時に着用していた衣服や下着を洗わずに保管・持参する
- DNA等の微物を残すため、可能な限り体を洗わずに受診や相談を行う
- 被害直前に口にした飲食物の残渣があれば保管する(薬物等の混入確認のため)
- 怪我や身体のあざがある場合は、医師による診察を受け診断書を作成してもらう
また、性交等を伴う被害の場合、望まない妊娠を防ぐための緊急避妊薬の服用など、72時間以内の医療的処置が重要となるケースもあります。速やかに医療機関を受診することが望まれます。
性被害に関する主な相談窓口
どこへ相談すべきか迷った場合や一人で抱えきれない場合は、性犯罪・性暴力に関する専用の相談窓口を活用することができます。これらの窓口は性別を問わず利用が可能です。
| 相談窓口名 | 連絡先・概要 |
|---|---|
| 警察の性犯罪被害相談電話 | 全国共通ダイヤル「#8103」(ハートさん) |
| ワンストップ支援センター | 全国共通ダイヤル「#8891」(はやくワンストップ) |
ワンストップ支援センターでは、産婦人科医療へのアクセス支援や心理的なカウンセリング、捜査・法的手続きに関する情報提供など、被害者の状況に応じた総合的な支援が行われています。
法的措置の選択肢(刑事告訴・示談・民事賠償)
被害を受けた後の法的対応としては、加害者の刑事責任を追及する手続きと、民事上の損害賠償を請求する手続きがあります。
刑事責任を問う場合は、警察に被害届を提出したり、刑事告訴を行ったりして捜査を求める流れが一般的です。捜査機関の判断により事件が立件されれば、加害者に対する刑事処分が検討されます。
事件の過程において、加害者側の弁護士から示談の申し入れがなされることがあります。示談に応じるかどうかは被害者自身の自由であり、強制されるものではありません。
示談を選択した場合、裁判を経ずに示談金(慰謝料等)を受け取れることや、今後の接触禁止・接近禁止条項を合意書面に盛り込める利点があります。一方で、加害者の刑事処分が軽減される可能性がある点には留意が必要です。
示談が成立しない場合や示談を望まない場合は、民事訴訟を提起して不法行為に基づく損害賠償を請求する選択肢もあります。裁判で判決が確定すれば、相手方の財産に対する強制執行(差し押さえ等)を申し立てることも可能になります。
性犯罪・性加害に関するトラブルは弁護士への相談を検討
2023年の刑法改正などを背景に、性犯罪に関する法制度や処罰規定は見直され、性的同意に関する社会的な捉え方も大きく変化しています。以前であれば犯罪としての立件が難しかった事例であっても、構成要件の見直しなどによって刑事事件として取り扱われる可能性が広がっています。
このような厳格化の流れのなかで、どのような行為が法律上の罪に該当し得るのかを正しく理解し、互いの意思を尊重したコミュニケーションをとることがこれまで以上に重要となっています。
個別の事情に応じた適切な法的手続きと権利の保護
性加害や性犯罪をめぐるトラブルは、当事者間の認識の食い違いや感情的な対立が生じやすく、当事者同士だけで直接話し合って冷静に解決へ導くことは容易ではありません。
被害者側においては、二次被害を防ぎ精神的な負担を和らげながら、刑事告訴や示談交渉、損害賠償請求といった法的手続きを進めるための体制を整えることが重要です。公的な相談窓口の利用とともに、法的な選択肢を整理することが役立ちます。
一方で、加害者側として疑いを持たれた場合や事実関係に争いがある場合にも、捜査機関への取調べ対応や被害者への真摯な謝罪・示談に向けた対応など、法的手順を踏んだ冷静な初動が求められます。
性犯罪・性加害に関するトラブルが発生した際は、個々の状況に応じた適切な対処を行い権利を守るためにも、弁護士をはじめとする専門機関への相談を検討することが重要です。
コラム監修者
KACHI SHOGO
所属:北九州オフィス
徳島県徳島市出身。東北大学法学部を卒業後、社会人を経て、早稲田大学大学院法務研究科に入学。 司法試験合格後、日本司法支援センター(法テラス)の常勤弁護士として、北海道から九州まで全国を飛び回る。 父親になったこと等を契機に法テラスを退職。 その後、縁があってネクスパート法律事務所北九州オフィスで勤務することになる。