更新日:2026年10月7日 (水)

公開日:2023年8月2日 (水)

撮影罪とは?条文・構成要件や時効・罰則をわかりやすく解説

撮影罪とは?条文・構成要件や時効・罰則をわかりやすく解説 撮影罪とは?条文・構成要件や時効・罰則をわかりやすく解説

サマリー

2023年7月に性的姿態撮影等処罰法が施行されたことで、いわゆる「撮影罪」が新設され、盗撮行為やその関連行為に対する取り締まりが全国一律で行われるようになりました。

従来の迷惑防止条例等と比べて何が変わり、どのような行為が処罰対象となるのか、法律上の位置づけや手続きについて正確に把握したい方も多いのではないでしょうか。

この記事では、撮影罪の概要や条文上の構成要件、罰則・公訴時効のほか、具体的な該当ケースや逮捕後の刑事手続きの流れについて分かりやすく解説します。

撮影罪(性的姿態等撮影罪)の概要と新設の背景・構成要件

撮影罪(性的姿態等撮影罪)の概要と新設の背景・構成要件

2023年7月13日に「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)」が施行され、いわゆる撮影罪が新設されました。

これまで盗撮行為は主に各都道府県の迷惑防止条例や児童ポルノ禁止法によって取り締まられてきました。しかし、迷惑防止条例は自治体ごとに罰則や要件に差異があり、航空機内のように上空を通過する場所では管轄の特定が難しいという問題が生じていました。

また、児童ポルノ禁止法は18歳未満のみを保護対象としているため、成人の被害に対する処罰規定の隙間を埋め、全国一律の基準で対処できるようにすることが法制定の背景にあります。

条文における4つの行為類型

性的姿態撮影等処罰法第2条では、処罰の対象となる撮影行為として主に4つの類型が定められています。これらの行為は、撮影が完了しなかった未遂の段階であっても処罰の対象に含まれます。

行為類型 主な内容
ひそかな撮影 正当な理由がないのに、相手に気付かれないようひそかに撮影する行為
同意困難な状態に乗じた撮影 暴行・脅迫、薬物やアルコールの影響、睡眠などで同意の形成・表明が困難な状態にさせて、又はその状態に乗じて撮影する行為
誤信による撮影 性的な行為ではないと誤信させたり、特定の者以外には閲覧させないと誤信させたりして撮影する行為
16歳未満を対象とする撮影 正当な理由がないのに、16歳未満の者を対象として撮影する行為(13歳以上16歳未満は行為者が5歳以上年長の場合)

これらの行為類型に該当する場合、正当な理由がない限り処罰の対象となり得ます。

「性的姿態等」の定義と「正当な理由」の具体例

本罪で対象となる「性的姿態等」とは、性器や肛門、その周辺部、臀部、胸部といった性的な部位、または人が通常衣服で覆っている下着のうち性的な部位を覆っている部分を指します。

加えて、性交等やわいせつな行為が行われている間の姿態も含まれます。

駅のエスカレーターや電車内でのスカート内盗撮、商業施設内の更衣室やトイレへの小型カメラ設置、泥酔した相手の下着姿を無断で撮影する行為などが典型的な例として挙げられます。

一方で、ひそかな撮影や16歳未満を対象とする撮影であっても、社会通念に照らして正当な業務や目的によるものであれば「正当な理由」があると認められ、犯罪は成立しません。

法務省の資料等では、医師が救急搬送された意識不明の患者を治療目的で撮影する場合や、保護者が自宅の庭で水遊びをする子どもの姿を成長記録として撮影する場合、地域行事である子ども相撲の取組を撮影する場合などが正当な理由の例として示されています。

撮影罪の罰則・公訴時効と撮影以外の処罰対象行為

撮影罪の法定刑と公訴時効

性的姿態撮影等処罰法における撮影罪(性的姿態等撮影罪)の法定刑は、「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」と定められています。

実際に撮影を完了した場合だけでなく、実行に着手したものの途中で発覚した場合などの未遂行為についても処罰の対象です。

刑事訴訟法に基づく公訴時効については、犯罪行為が終わった時から進行し、期間は3年と定められています。行為終了時から3年が経過した場合には、検察官による起訴が行われないことになります。

撮影罪の公訴時効は行為終了時から進行し、その期間は3年と規定されています。

撮影行為以外で処罰対象となる関連行為と罰則

本法では、盗撮行為そのものだけでなく、撮影された性的姿態等の影像が流通・拡散することを防ぐ目的から、提供や保管などの関連行為に対しても個別の罪名と罰則が設けられています。

罪名 対象行為の概要 法定刑
提供罪

(特定・少数)

性的影像記録を特定の少数の者に提供する行為 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
提供罪

(不特定・多数/公然陳列)

不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列する行為 5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金
保管罪 第三者への提供や公然陳列の目的で性的影像記録を保管する行為 2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金
送信罪 不特定又は多数の者に向けて性的姿態等の影像を送信する行為 5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金
記録罪 送信罪に該当する行為により送信された影像を情を知って記録する行為 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金

送信罪においては、不正に送信された影像であることを知りながら、さらに不特定または多数の者に向けて転送・送信する行為も処罰の対象に含まれます。

自身が直接撮影していない影像であっても、取り扱い次第で罪に問われる可能性があります。

複写物の没収および画像データの消去・廃棄に関する規定

従来の刑法上の没収規定では有体物の原本に限られるなどの制約があり、不起訴となった場合や第三者が所持する複写物への対応が困難なケースがありました。

性的姿態撮影等処罰法では、撮影罪や記録罪によって生じた画像・動画の複写物についても明文で没収が可能であると定められています。

これにより、複製された媒体についても法的な対処が可能となりました。

さらに、押収物に記録された画像データ等について、検察官による消去や廃棄を行う行政措置の規定も整備されており、被害拡大を防止するための枠組みが設けられています。

アスリートや航空機内など具体的なケースにおける該当性

性的姿態撮影等処罰法が施行されたことにより、これまで取り締まりの可否が議論されていた行為や、管轄の問題から対応が難しかった場面についても法的な位置づけが整理されました。

日常や特定の場面において、具体的にどのような行為が処罰の対象となるかを把握しておくことが大切です。

競技中のアスリートを撮影する行為

スポーツ競技中のアスリートを性的な意図で撮影する行為は社会的な問題視が続いていますが、競技中のユニフォーム姿そのものを撮影する行為は、原則として撮影罪の直接の処罰対象からは除外されています。

通常の応援や報道目的の撮影と、性的な意図に基づく撮影との外形的な区別が難しいためです。

ただし、競技会場の更衣室やトイレといった本来衣服を脱ぐ場所での撮影行為や、赤外線カメラなどを用いてユニフォームの下を透過して撮影する行為は処罰の対象となります。

これらは性的姿態等を対象とした違法な撮影とみなされ、撮影罪が成立すると考えられます。

航空機内で客室乗務員を盗撮する行為

従来の法規制では、航空機内での盗撮行為に対して各都道府県の迷惑防止条例が適用されていました。

しかし、飛行中の航空機内では行為が発生した瞬間にどの都道府県の上空を通過していたのかを厳密に特定することが困難であり、管轄の問題から適切な処罰ができない懸念がありました。

性的姿態撮影等処罰法は国全体の法律であるため、飛行上空の自治体を問わず一律に取り締まりが可能です。

機内で客室乗務員の下着や性的な部位などをひそかに撮影した場合には、場所の特定を巡る問題が生じることなく撮影罪が成立することになります。

着衣の全身撮影や執拗な撮影行為における判断基準

街頭や公共の場所で服を着ている人物の全身を無断で撮影した場合、性的な部位や下着そのものを撮影したわけではないため、通常は撮影罪の構成要件には該当しないと解されています。

もっとも、着衣の上からであっても胸部や臀部などの特定部位に執拗にカメラを向けたり、著しく羞恥心を覚えさせるような方法で撮影を行ったりした場合には注意が必要です。このような行為は、各都道府県が定める迷惑防止条例違反(卑猥な言動など)に問われる可能性があります。

撮影の状況・態様 撮影罪の該当性 適用法令や判断のポイント
競技中のアスリート(通常撮影) 原則として非該当 外形的な線引きが難しいため直接の規制対象外
更衣室・トイレや赤外線による透過撮影 該当する 性的姿態等を対象とした違法な撮影として処罰対象
飛行中の航空機内での盗撮 該当する 国法のため上空の通過自治体を問わず一律に適用
着衣の全身撮影(通常) 通常は非該当 性的な部位や下着の撮影ではないため対象外
着衣の特定部位に対する執拗な撮影 撮影罪は非該当の傾向 各自治体の迷惑防止条例違反に問われる可能性あり

撮影罪の疑いで逮捕された場合の刑事手続きの流れ

撮影罪の疑いで逮捕された場合の刑事手続きの流れ

性的姿態撮影等処罰法に違反した疑いで逮捕された場合、刑事訴訟法に定められた時間制限のもとで厳格に手続きが進められます。

捜査機関による身柄拘束や取り調べは、法律上の期限に従って進行します。

逮捕から検察官送致・勾留決定まで(最大72時間)

警察に逮捕されると、警察署の留置施設などに身柄が置かれ、事件に関する取り調べが行われます。警察は逮捕から48時間以内に、事件の証拠や記録とともに被疑者の身柄を検察官へ送致(送検)しなければなりません。

送致を受けた検察官は、引き続き身柄拘束を継続する必要があるかを検討し、24時間以内に裁判官へ勾留請求を行うか、あるいは釈放するかを決定します。

逮捕から勾留決定までの最長72時間は、原則として家族などの一般面会が認められないケースが多く見られます。

勾留期間(最大20日間)と起訴・不起訴の判断

裁判官が勾留を認めた場合、勾留決定の日から原則として10日間の身柄拘束が続きます。

捜査に時間を要するなどやむを得ない事由があるときは、さらに最長10日間の勾留延長が認められることがあります。

逮捕からの拘束期間を合わせると、起訴前の身柄拘束は最大で合計23日間に及ぶ可能性があります。

一方で、逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断された場合は、身柄拘束を受けずに日常生活を送りながら呼び出しに応じて取り調べを受ける在宅捜査となることもあります。

検察官は、勾留期間が満了するまでに集まった証拠をもとに、事件を裁判にかけるか(起訴)、裁判を行わずに終了させるか(不起訴)を判断します。不起訴処分となった場合はその時点で身柄が解放されて手続きが終了し、前科が付くこともありません。

起訴後の手続き(公判請求と略式手続)

検察官が起訴を選択する場合、公判請求(正式な刑事裁判)を行うか、簡易的な略式手続を選択するかに分かれます。

略式手続は、100万円以下の罰金または科料に相当する事件で、本人が同意した場合に書面審理のみで刑を言い渡す手続きです。

公判請求された場合は、公開の法廷で刑事裁判が開かれ、有罪・無罪や量刑が審理されます。裁判官による判決の言い渡しを経て、控訴や上告がなければ判決が確定します。

手続きの段階 期間・時間制限の目安 主な内容
警察での捜査・送致 逮捕から48時間以内 警察による取り調べ、検察官への送致手続き
検察官による勾留請求 送致から24時間以内 検察官の取り調べ、裁判官への勾留請求または釈放の判断
勾留(身柄拘束) 原則10日間(延長時最大20日間) 留置施設での身柄拘束、実況見分や追加の取り調べ
終局処分の決定 勾留満了まで 検察官による起訴(公判請求・略式命令請求)または不起訴の判断
裁判・判決 起訴から約1か月〜数か月 公判手続きでの審理、判決の言い渡し

撮影罪に関する事件や不安が生じた際の弁護士への相談

性的姿態撮影等処罰法に抵触する疑いを持たれたり、捜査の対象となったりした場合には、刑事手続きの各段階において適切な対応をとることが求められます。

取り調べへの対応や被害者への配慮など、法的な観点からの助言を得ることが重要となります。

取り調べにおける権利保護と供述調書作成への助言

捜査機関による取り調べでは、本人が話した内容が供述調書として記録され、その後の刑事手続きにおいて重要な証拠として扱われます。

事実と異なる記載や意図しない表現が含まれたまま調書が作成されることを防ぐため、内容の確認や署名押印の判断に関する助言を得ることが重要とされています。

また、憲法や刑事訴訟法で保障されている黙秘権をはじめとする権利を適切に行使し、不当な取り調べに対して冷静に対処するためにも、早い段階で法的なサポートを受けることが防御活動につながります。

被害者への配慮を踏まえた示談交渉と身柄解放に向けた活動

盗撮事件などの性犯罪では、被害者のプライバシー保護や心情への配慮から、捜査機関が加害者本人に被害者の連絡先を直接開示することは通常ありません。

そのため、被害者への謝罪や被害弁償の申し入れを行う際には、弁護士を通じて示談交渉を進めるのが一般的です。

逮捕や勾留による身柄拘束が長期化すると、就労や就学といった社会生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを客観的に示し、裁判官に対して意見書を提出するなど、早期の身柄解放を目指した活動を行うことも弁護活動の重要な役割となります。

刑事手続きへの不安や疑問が生じた際の相談の重要性

性的姿態撮影等処罰法に基づく捜査は迅速に進められることが多く、手続き全体の流れや処分の見通しが分からない状態では精神的な負担も大きくなります。

刑事手続きには厳格な時間制限が設けられているため、早い段階で状況に応じた対応策を検討することが大切です。

警察から出頭要請を受けた場合や、家族が身柄拘束を受けた場合など、手続きや今後の生活に疑問や不安が生じた際には、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

コラム監修者

RUI SATO

RUI SATO

所属:代表(東京オフィス)

明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。

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