更新日:2022年10月12日 (水)

公開日:2020年4月20日 (月)

特殊詐欺で捕まると実刑?詐欺罪の刑罰や判例・問題点を解説

特殊詐欺で捕まると実刑?詐欺罪の刑罰や判例・問題点を解説 特殊詐欺で捕まると実刑?詐欺罪の刑罰や判例・問題点を解説

サマリー

特殊詐欺は社会的な被害の大きさから厳罰化が進んでおり、受け子や出し子といった末端の役割であっても実刑判決が下されるケースが少なくありません。自身やご家族が特殊詐欺に関わってしまい、逮捕後の身柄拘束や今後の裁判でどのような処分を受けるのか強い不安を感じている方もいるでしょう。この記事では、特殊詐欺や詐欺罪の基本的な成立要件をはじめ、最高裁の判例動向、役割別の実刑割合や逮捕後の刑事手続きの流れについて詳しく解説します。

特殊詐欺の概要と詐欺罪の基本的な成立要件

特殊詐欺の概要と詐欺罪の基本的な成立要件

特殊詐欺は多様な手口で金銭等をだまし取る犯罪であり、刑法上の詐欺罪や窃盗罪など様々な構成要件が関係します。まずは特殊詐欺の概念や法律上の成立要件、具体的な手口の分類について確認します。

特殊詐欺の定義と社会的な背景

特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ、封書などを用いて親族や公共機関の職員などを名乗り、被害者を信用させて現金やキャッシュカードをだまし取る犯罪の総称です。医療費の還付金などを名目にATMを操作させて送金させる手口のほか、現金を脅し取る恐喝や、隙を見てカードをすり替える窃盗行為なども含まれます。

平成15年夏頃からいわゆるオレオレ詐欺として社会問題化し始め、現在に至るまで認知件数や被害額が高水準で推移しています。被害者の多くが高齢者であり、社会情勢の変化に合わせて手口も巧妙化・多様化を続けています。

刑法第246条における詐欺罪の7つの構成要件

特殊詐欺事件の中心となる詐欺罪は、刑法第246条第1項において「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と規定されています。

詐欺罪が法的に成立するためには、単に嘘をついただけでは足りず、以下の7つの要件がすべて満たされる必要があります。

  • 人を欺く行為(欺罔行為)があること
  • 相手方がその欺罔行為によって錯誤に陥ること
  • 相手方が錯誤に基づいて財物を処分すること(処分行為)
  • 被害者から犯人側へ財物が移転すること
  • 上記の一連の過程に因果関係が認められること
  • 犯人にだまし取る意図(故意)があること
  • 犯人に不法領得の意思が認められること

相手方を欺いて錯誤に陥らせ、その錯誤に基づいて財物を交付させる一連の流れと故意が証明されて初めて詐欺罪が成立します。

特殊詐欺における主な手口の類型(10種類)

警察庁や警視庁では、手口の形態に応じて特殊詐欺を主に以下の10種類に分類しています。

手口の類型 主な犯行態様と手口の特徴
オレオレ詐欺 親族等を装い「鞄を置き忘れた」「トラブル解決にお金が必要」などと嘘をついて現金をだまし取る手口
預貯金詐欺 警察官や銀行員を装い「口座が犯罪に利用されているためカードの交換が必要」などと偽り暗証番号やカードを詐取する手口
架空料金請求詐欺 未払いの利用料金やサイト料金があるとし「支払わなければ裁判になる」などと不安を煽って金銭を請求する手口
還付金詐欺 役所職員等を名乗り「医療費や保険料の過払い金がある」と偽ってATMへ誘導し、犯人口座へ送金させる手口
融資保証金詐欺 実際には融資を行わないにもかかわらず「融資の保証金が必要」などと偽って金銭を振り込ませる手口
金融商品詐欺 価値のない未公開株や物品について「必ず儲かる」等の嘘の情報を伝え、購入代金名目で金銭をだまし取る手口
ギャンブル詐欺 パチンコ打ち子やロト当選情報などを持ちかけ、情報料や登録料名目で金銭をだまし取る手口
交際あっせん詐欺 異性の紹介を名目にメール等で勧誘し、会員登録料や保証金名目で金銭を詐取する手口
キャッシュカード詐欺盗 警察官等を装って被害者宅を訪れ、隙を見て本物のカードと偽の封筒等をすり替えて盗み取る手口(窃盗罪)
その他の特殊詐欺 上記の手口類型に該当しない形態で行われる特殊詐欺の手口

このように、特殊詐欺の中には厳密な意味での詐欺罪にとどまらず、キャッシュカード詐欺盗のように窃盗罪に分類される手口も含まれています。

特殊詐欺をめぐる役割分担と法的問題点

特殊詐欺は単独で行われることは極めて稀であり、周到な計画のもとで複数の人物が役割を分担して組織的に実行される特徴があります。摘発を免れるために分業化が進んでおり、各関与者の関わり方によって法的な責任の範囲が問題となります。

特殊詐欺グループの主な役割分担と構成比

特殊詐欺グループは、主に「指示役」「かけ子」「犯行準備役」「受け子・出し子」といった役割に分かれて犯行に及びます。

役割 構成比の目安 主な役割内容
主犯・指示役 9.7% 犯行全体の計画立案や各役割への具体的な指示を行う。
かけ子 28.1% 被害者に電話をかけ、嘘の情報を伝えてだます行為を担当する。
犯行準備役 15.8% 犯行拠点の確保や名義偽装された携帯電話・口座の調達などを行う。
受け子・出し子 46.4% 被害者宅に現金等を受け取りに行く、またはATM等から現金を引き出す。

令和3年版犯罪白書などの統計によると、摘発される人員の半数近くを受け子や出し子といった末端の役割が占めています。

詐欺罪の実行の着手時期と受け子の故意・共謀

詐欺罪における「実行の着手」は、財物を詐取する意図のもとで被害者を欺く行為を開始した時点で認められます。特殊詐欺においては、一般的にかけ子が被害者に電話をかけ、嘘の言辞を述べた段階で着手が肯定されます。

一方で、受け子は被害者宅等へ現金やカードを受け取りに行くだけの立場であることが多く、どの時点で詐欺の故意や他の共犯者との共謀が成立するかが実務上重要な論点となります。

「荷物を受け取るだけのアルバイトだと思っていた」と主張する場合であっても、不審な指示内容や報酬の態様などから、違法な詐欺への加担を認識していたと判断される傾向にあります。

詐欺罪と窃盗罪の区別(すり替え型や出し子)

特殊詐欺の手口には、詐欺罪だけでなく窃盗罪(刑法第235条)が成立する犯行形態も存在します。

例えば、警察官や銀行員などを装って被害者宅を訪れ、隙を見てキャッシュカードを別のカードや偽の封筒とすり替えて持ち去る手口は、人をだまして自発的に処分させたわけではないため「窃盗罪(いわゆる詐欺盗)」に該当します。

また、不正に入手されたキャッシュカードを用いて出し子がATMから現金を引き出す行為についても、機械を操作して現金を取得するものであり人を欺く行為を直接伴わないことから、窃盗罪として処罰の対象となります。

特殊詐欺グループに対する最高裁判所の主な判例動向

特殊詐欺では、犯行が組織的・分業的に行われるため、末端の関与者にどこまで刑事責任を問えるかが裁判で争われてきました。最高裁判所では、実行の着手時期や共謀の成否、受け子の故意などをめぐり重要な判断が示されています。

だまされたふり作戦開始後の関与と詐欺未遂罪の共同正犯(平成29年判決)

警察の捜査協力により被害者が「だまされたふり」をしている状態になった後、その事情を知らずに荷物の受け取り役として加担した者の責任が争われた事案があります。

平成29年12月11日の最高裁判決では、共犯者による欺罔行為が行われた後に作戦の開始を認識せず関与した場合であっても、欺罔行為と一体の受領行為に関与した以上、加功前の行為も含めて詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと判断されました。

受け子の詐欺の故意および共謀の認定(平成30年12月判決)

指示を受けてマンションの空室等で荷物を受け取る「受け子」について、詐欺の故意や共謀が成立するかどうかが争点となった事件もあります。

平成30年12月11日の最高裁判決では、名宛人になりすまして荷物を受け取り報酬を得る行為を繰り返していたことや、犯罪加担の認識があり詐欺の可能性を排除する事情がないこと等から、詐欺の故意および共謀の成立が認められました。

詐欺罪・窃盗罪における実行の着手時期の判断(平成30年3月・令和4年判決)

平成30年3月22日の最高裁判決では、被害者に直接現金の交付を求める文言を述べる前であっても、現金の交付判断に直結する重要な嘘を伝えた段階で、詐欺罪の実行の着手があったと認定されました。

また、キャッシュカードすり替え型の手口に関する令和4年2月14日の最高裁判決では、すり替えの隙を生じさせる嘘を述べた上で被害者宅付近に赴いた段階で、まだ注意をそらす行為を行っていなくても窃盗罪の実行の着手が認められています。

一連の判例動向から、特殊詐欺においては末端の受け子であっても、故意や共謀、実行の着手が広く認められる傾向にあります。

特殊詐欺で捕まると実刑になる?量刑の傾向と統計

特殊詐欺事件で起訴されて有罪判決を受ける場合、初犯であっても執行猶予が付かず、実刑判決が言い渡される割合が高い傾向にあります。

統計上、特殊詐欺事件全体において有罪判決を受けた被告人のうち、約67%に対して実刑判決が下されており、執行猶予が付いた割合は約33.2%にとどまっています。

特殊詐欺事件全体において約67%が実刑判決となっており、執行猶予の獲得は容易ではありません。

組織内の役割別にみる実刑判決の割合

特殊詐欺グループにおける量刑の傾向は、犯行組織内で担っていた役割によっても異なりますが、いずれの立場であっても過半数に実刑が言い渡されています。

組織内の役割 実刑判決の割合
主犯・指示役 84.2%
かけ子 83.6%
犯行準備役 64.5%
受け子・出し子 54.9%

主犯や指示役、直接被害者を騙すかけ子については、8割を超える極めて高い割合で実刑判決が選択されています。

また、拠点の確保や道具の調達を行う犯行準備役でも約64.5%、末端とされる受け子や出し子であっても約54.9%と、半数以上が刑務所への服役を伴う実刑となっています。

末端の関与であっても実刑判決が下される背景

受け子や出し子は犯行組織の全容を知らされていないケースが多いものの、裁判では厳しい処罰が下される傾向が続いています。

特殊詐欺は高齢者を標的とすることが多く被害額が高額になりやすい点や、組織的な分業によって被害回復が困難である点が量刑に影響しています。

さらに、犯行グループの背景に暴力団等の犯罪組織が存在することも少なくありません。組織維持に不可欠な役割を果たしたと評価された場合、受け子や出し子であっても懲役2〜5年程度の実刑判決が言い渡される可能性があります。

特殊詐欺で逮捕された場合の手続きの流れ

特殊詐欺事件では、被害者と直接接触する受け子やATMで現金を引き出す出し子が現場で現行犯逮捕されるケースのほか、防犯カメラ映像や共犯者の供述などの証拠に基づいて後日逮捕されるケースが一般的です。

組織的犯罪である特殊詐欺は、共犯者による罪証隠滅や逃亡のおそれが高いと判断されやすく、身柄拘束を受ける割合が高い傾向にあります。犯罪白書によると、令和2年における詐欺容疑の身柄率は54.9%であり、刑法犯全体の34.8%と比較しても高い水準となっています。

逮捕から送致・勾留・接見禁止までの流れ

警察に逮捕されると、警察段階での取り調べを経て48時間以内に事件が検察官へ送致されます。送致を受けた検察官は、24時間以内に引き続き身柄を拘束する必要があるかを判断し、裁判官へ勾留請求を行います。

裁判官が勾留を認めると原則10日間、延長が認められた場合は通算で最大20日間の身柄拘束が続きます。特殊詐欺事件では共犯者との口裏合わせを防ぐため、弁護人以外の面会を制限する接見禁止処分が下される可能性が高くなります。

手続き段階 制限時間・拘束期間 主な手続き内容
逮捕から送致 48時間以内 警察による取り調べおよび検察官への送致判断
送致から勾留請求 24時間以内 検察官による身柄拘束継続の要否判断と勾留請求
勾留期間 原則10日(最大20日) 捜査機関による本格的な取り調べと証拠収集
起訴・不起訴の判断 勾留満期まで 公判請求・略式命令請求または不起訴処分の決定

起訴・不起訴の決定と刑事裁判の進行

検察官は勾留満期までに、被疑者を裁判にかける「起訴」か、裁判を行わない「不起訴」かを決定します。特殊詐欺事件では被害額や社会的影響の大きさから起訴されるケースが多く、略式手続きではなく公判請求が行われることが一般的です。

起訴後は被告人として身柄拘束が継続し、公開の法廷で審理が行われます。審理を経て有罪判決が言い渡され、執行猶予が付かなかった場合は、そのまま刑務所へ服役する流れとなります。

特殊詐欺事件における弁護活動と弁護士への相談

特殊詐欺事件で逮捕された場合、組織的な犯行という性質上、捜査機関による取り調べは厳しくなる傾向があります。取調官は指示役や他の共犯者を特定するため、末端の関与者に対しても詳細な情報の供述を求めることが一般的です。

被疑者が取り調べのプレッシャーから事実と異なる供述調書に署名してしまうと、後の刑事手続きで不利に働くおそれがあります。弁護士は逮捕直後から接見を行い、黙秘権の扱い方や供述調書の作成に対する注意点など、適切な対応方法を助言します。

被害弁償と示談交渉の試み

特殊詐欺は直接的な被害者が存在する財産犯罪であるため、被害者への真摯な謝罪と被害弁償の有無が処分や量刑を左右する重要な要素となります。

しかし、被害者の処罰感情が強い場合や連絡先の開示が制限されることも多く、本人や家族が直接示談を行うことは容易ではありません。弁護士が間に入ることで、被害者の心情に配慮しながら謝罪の意思を伝え、示談交渉を進めることが可能になります。

被害者との示談締結や被害弁償の実施は、検察官による終局処分の判断や、裁判における執行猶予の獲得に向けた重要な情状として考慮されます。

情状立証と早期相談の意義

公判請求された場合には、犯行グループから抜け出そうとしたものの脅迫を受けていた事情や、受け取った報酬の有無など、関与の従属性を客観的な証拠や被告人質問を通じて法廷で立証していく活動が行われます。

特殊詐欺事件は厳罰化の傾向が強く、身柄拘束も長期化しやすいため、迅速な弁護活動の着手が求められます。自身や家族が事件に関与してしまった可能性がある場合は、早めに弁護士に相談し、今後の手続きの流れや対応方針について助言を受けることが大切です。

まとめ

特殊詐欺は組織的な背景や被害の大きさから厳罰化が進んでおり、受け子や出し子といった末端の役割であっても、故意や共謀が認められて実刑判決となる可能性が高い犯罪です。

逮捕された場合は勾留や接見禁止により長期の身柄拘束を受けるリスクが高く、取り調べへの対応や被害弁償、示談交渉などにおいて法的なサポートが重要となります。

ご自身やご家族が特殊詐欺事件に関わってしまった場合は、早期に弁護士へ相談し、今後の刑事手続きを見据えた適切な助言を受けることをおすすめします。

コラム監修者

KACHI SHOGO

KACHI SHOGO

所属:北九州オフィス

徳島県徳島市出身。東北大学法学部を卒業後、社会人を経て、早稲田大学大学院法務研究科に入学。 司法試験合格後、日本司法支援センター(法テラス)の常勤弁護士として、北海道から九州まで全国を飛び回る。 父親になったこと等を契機に法テラスを退職。 その後、縁があってネクスパート法律事務所北九州オフィスで勤務することになる。

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