更新日:2026年7月14日 (火)

公開日:2026年7月14日 (火)

婚約破棄で慰謝料は請求できるのか~成立要件と相場を弁護士が解説~

婚約破棄で慰謝料は請求できるのか~成立要件と相場を弁護士が解説~ 婚約破棄で慰謝料は請求できるのか~成立要件と相場を弁護士が解説~

結婚を約束し、将来を共に歩むはずだった相手から突然別れを告げられた…
これが「婚約破棄」です。

両家への挨拶や挙式準備まで進んでいた場合、その精神的ショックや経済的損失は決して小さくありません。
では、婚約を一方的に解消された場合、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。

本コラムでは、婚約が法的にどのように扱われるのか、慰謝料が認められる要件や相場、請求の際の注意点について、わかりやすく解説します。

婚約は法的に保護される関係である

結婚を約束していたにもかかわらず、突然一方的に関係を解消された場合、その精神的なショックは計り知れません。
両家への挨拶や顔合わせを済ませ、挙式準備を進めていたような場合には、将来設計そのものが崩れてしまうことになります。

では、このような婚約破棄に対して、法的責任を問うことはできるのでしょうか。

まず前提として理解しておきたいのは、婚約は単なる恋愛関係ではなく、法的に保護される関係であるという点です。

裁判例においても、婚約は将来婚姻することを真摯に約束した法律上意味のある関係とされ、契約に類似する法的拘束力を有すると評価されています。
そのため、正当な理由なく一方的に破棄した場合には、民法第709条に基づく不法行為として損害賠償責任が生じる可能性があります。

もっとも、交際しているだけでは婚約が成立したとはいえません。
婚約の有無は、個別事情を総合的に考慮して判断されます。

たとえば、両家への正式な挨拶や結納の有無、婚約指輪の授受、挙式場や新居の契約、入籍予定日の具体的な決定、周囲への結婚予定の公表など、客観的に結婚の合意が明確であったと認められる事情が重要になります。

書面がなくても婚約の成立は認められる可能性がありますが、客観的裏付けが乏しい場合には法的な婚約と評価されないこともあります。

婚約破棄が違法となるかどうか

婚約が成立していたとしても、すべての破棄が違法となるわけではありません。
問題となるのは、破棄に正当な理由があるかどうかです。

たとえば、相手方に重大な不貞行為があった場合や、暴力やモラルハラスメントが存在した場合多額の借金など結婚生活に重大な影響を及ぼす事実を秘匿していた場合などには、婚約破棄に合理性が認められる可能性があります。

婚姻関係であれば離婚原因となり得るような事情がある場合には、婚約段階においても正当理由が肯定されやすい傾向があります。

これに対し、単に気持ちが冷めたという理由や、他に好きな人ができたといった自己都合のみで一方的に破棄した場合には、婚約破棄は違法と評価される可能性が高くなります。

特に、挙式直前であったり、結婚退職をしていたり、新居契約を済ませていた場合には、相手方に与える損害が大きいため、責任が重く判断されることがあります。

慰謝料の相場と増減要素

婚約破棄に関する慰謝料の相場は、おおむね50万円から300万円程度といわれています。

ただし、これはあくまで目安であり、事案の内容によって大きく変動します。
金額を決めるにあたっては、交際期間や婚約期間の長さ、結婚準備の進行状況、破棄理由の悪質性、当事者の年齢、社会的影響の程度などが総合的に考慮されます。

たとえば、結婚を機に退職していた場合や、高年齢で再婚の機会が大きく制限される事情がある場合には、精神的損害が大きいとして増額される可能性があります。
また、慰謝料とは別に、式場キャンセル料や婚約指輪代、新居契約費用など、実際に支出した経済的損害についても請求できる場合があります。

精神的損害と経済的損害は区別して整理することが重要です。

第三者への慰謝料請求の可能性

婚約中に相手が第三者と不貞関係にあった場合、その第三者に対しても慰謝料請求が認められる可能性があります。

ただし、そのためには第三者が婚約の存在を知っていた、あるいは少なくとも知らなかったことに過失があったことを立証する必要があります。

既婚者の不貞の場合と比較すると立証はやや難しくなる傾向がありますが、婚約の事実が周囲に広く公表されていた場合などには、認識していたことが推認される可能性があります。
そのため、第三者に慰謝料を請求する場合には個別事情を精査することが不可欠です。

証拠の重要性

婚約破棄の慰謝料請求において、最も重要になるのは証拠です。

どれほど強い精神的苦痛を受けていたとしても、裁判では感情そのものではなく、「法的に評価できる事実」がどこまで立証できるかが判断の分かれ目になります。

まず立証しなければならないのは、そもそも婚約が成立していたかどうかという点です。

先ほども述べたとおり、婚約は書面がなくても成立し得ますが、その場合には客観的な裏付けが不可欠です。
単に「結婚しようと言われた」という主張だけでは足りず、第三者から見ても将来婚姻することが確実視されていたといえる事情が必要になります。
結婚の具体的な時期についてのやり取りや、結婚式場や新居の契約などを示す資料は、婚約の存在を基礎づける重要な証拠となります。

次に問題となるのは、婚約破棄が「正当な理由のない一方的なもの」であったことの立証です。

相手がどのような経緯で破棄に至ったのか、その理由は何か、突然の解消であったのかなど、具体的な事情を明らかにする必要があります。
たとえば、「他に好きな人ができた」と明確に述べているメッセージや、挙式直前に一方的に連絡を絶った事実を示す資料などは、不当性を基礎づける証拠となります。

さらに、損害の内容と金額についても証拠が求められます。

式場キャンセル料や指輪代、新居契約費用などの経済的損害については、実際の支出額を示す資料が必要です。
領収書や契約書が保存されていなければ、具体的金額の立証が困難になることがあります。

裁判所は、慰謝料やその他の損害賠償について判断するに当たり、客観的な資料を重視します。
そのため、婚約破棄の問題が生じた場合には、やり取りの記録を安易に削除しないこと、関連資料を整理して保管しておくことが重要です。

証拠の有無が、請求の可否だけでなく、慰謝料の金額にも大きく影響することを理解しておく必要があります。

請求の流れと時効

実務上は、まず内容証明郵便などで慰謝料請求の意思を示し、その後示談交渉を行うことが一般的です。
話し合いで解決できない場合には、訴訟を提起することになります。

なお、不法行為に基づく損害賠償請求権は、原則として損害および加害者を知った時から3年で時効にかかります。
時間が経過すると権利行使が困難になるため、早期の対応が重要です。

冷静な法的判断の重要性

婚約破棄は感情的な対立を伴いやすく、当事者にとっては極めて辛い出来事です。
しかし、法的な判断は証拠と客観的事実に基づいて行われ、婚約が成立していたか、破棄に正当理由があるか、損害額はいくらが相当かという点が評価されます。

婚約破棄は単なる恋愛問題ではなく、法的責任が生じ得る問題です。
突然の破断に直面した場合でも、泣き寝入りする必要はありません。他方で、請求の可否や金額は個別事情によって大きく左右されます。

不安や怒りを押さえて法的な視点から状況を整理し、適切な対応を検討することが重要です。

ネクスパート法律事務所は、婚約破棄による慰謝料請求に詳しい弁護士が在籍しております。
婚約破棄でお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

コラム監修者

SHIZU ISHIDA

SHIZU ISHIDA

所属:東京オフィス

広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。

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