更新日:2020年7月6日 (月)

公開日:2020年7月6日 (月)

取締役による仕入品の不正処分について、代表取締役の監視義務違反が認められたケース

取締役による仕入品の不正処分について、代表取締役の監視義務違反が認められたケース 取締役による仕入品の不正処分について、代表取締役の監視義務違反が認められたケース

サマリー

取締役による仕入品の不正処分について、代表取締役の監視義務違反が認められたケースが争われた裁判例を紹介。争点と裁判所の判断を整理し、取締役・代表取締役の監視義務や損害賠償責任を検討する際のポイントを解説します。

事実関係

A社では、Y1が代表取締役、Y2とY3が取締役を務めていました。

A社はX社ほか三社から商品の仕入れを行いましたが、Y2、Y3は共謀してその商品のほとんどを質に入れたり投げ売りするなどして不正に処分しました。

それによって得た金銭の一部はA社に入金されましたが、残りはY2とY3が着服・費消しました。その結果、A社は無資力となり、X社に対する商品代金の支払いができなくなりました。

そこでX社は、Y2、Y3に対する監視義務を怠ったとして、Y1に対し、商法旧266条ノ3に基づく損害賠償を求めました。

判旨

裁判所は、「会社の代表取締役は会社を代表してその業務全般を統轄する権限と職責を有するものであり、善良な管理者の注意をもつて会社財産を保管すべき義務を負うとともに、他の取締役の業務の執行についてもこれを監視し、その過失又は不法行為を未然に防止すべき義務を負うものである。」とした上で、Y1がY2らに対する監視義務を怠ったとして、X社に対する損害賠償責任を認めましたが、7割5分の過失相殺を行いました。

Y1の監視義務違反が肯定されたポイント

本件のA社は使用人も数名しかいない小規模な会社でした。そして、Y2らの不正処分は、会社設立後日をおかず、継続的かつ短期間に大量になされたことから、Y1はY2らの行動を察知することが可能でした。

また、Y1は経理事務を担当しており、営業に関する重要な帳簿の記帳を通じてA社の営業状態をつぶさに知りうる地位にありました。

以上のことから、裁判所は、Y1の監視義務違反を肯定しました。

コメント

本判決は、監視義務は代表取締役としての善管注意義務から生じるとの立場を示した上で、Y1の義務違反を認めたものです。

A社は設立後間もない非常に小規模な会社であり、Y1がY2らの行動に注意していれば、不正な財産処分を食い止めることができたという点が、結論に大きく影響しているのでしょう。

コラム監修者

KOHEI TAKASAWA

KOHEI TAKASAWA

所属:東京オフィス

東京都立大学法科大学院修了後、新司法試験合格。 弁護士登録以前は、上場準備中の企業(現・東証グロース市場上場企業)の管理部門において、IPO準備業務に従事。

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