更新日:2023年11月30日 (木)

公開日:2023年11月30日 (木)

内縁の配偶者に配偶者居住権は認められない?居住権を守る方法は?

内縁の配偶者に配偶者居住権は認められない?居住権を守る方法は? 内縁の配偶者に配偶者居住権は認められない?居住権を守る方法は?

サマリー

2020年4月1日にスタートした配偶者居住権は、亡くなった人が所有していた建物に残された配偶者が決められた期間(原則終身)無償で居住できる権利です。

この制度は、内縁関係(事実婚)にあった配偶者に適用されるのでしょうか?

内縁(事実婚)の配偶者にも配偶者居住権は認められる?

内縁(事実婚)の配偶者には配偶者居住権は認められません。
ただし、従来の判例には内縁の配偶者に配偶者短期居住権と同様の保護を認めているものもあります。

配偶者居住権は内縁(事実婚)の配偶者には認められない

配偶者居住権は、法律上(婚姻届を提出している)の配偶者のみに認められる権利なので、内縁(事実婚)の配偶者には認められません。

残された配偶者が一定期間無償で居住できる配偶者短期居住権も、同様に法律上の配偶者のみに認められます。

内縁の配偶者に配偶者短期居住権と同様の保護を認める判例はある

昨今は法律婚にこだわらずにあえて事実婚を選択するカップルが増えています。内縁の配偶者に配偶者短期居住権と同様の保護を認める判例もあるので紹介しましょう。

古い判例には、以下のとおり内縁の夫死亡後に、その所有家屋に居住する内縁の妻に対する、亡夫の相続人のした家屋明渡請求は権利の濫用にあたるとして、内縁の配偶者を保護した最高裁判例があります。

最高裁判所昭和39年10月13日判決

「内縁の夫死亡後その所有家屋に居住する寡婦に対して亡夫の相続人が家屋明渡請求をした場合において、右相続人が亡夫の養子であり、家庭内の不和のため離縁することに決定していたが戸籍上の手続をしないうちに亡夫が死亡したものであり、また、右相続人が当該家屋を使用しなければならない差し迫つた必要が存しないのに、寡婦の側では、子女がまだ、独立して生計を営むにいたらず、右家屋を明け渡すときは家計上相当重大な打撃を受けるおそれがある等原判決認定の事情(原判決理由参照)があるときは、右請求は、権利の濫用にあたり許されないものと解すべきである。」

配偶者短期居住権は、相続開始前から被相続人の許諾を得て建物に同居していた相続人に、遺産分割終了時までの使用貸借契約の存在を推認した最高裁判決(最高裁判所平成8年12月17日判決)を参考に創出された制度ですが、同様の手法を用いて、以下のとおり、内縁の配偶者を保護した判例もあります。

最高裁平成10年2月26日判決

「内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するのが相当」であるとし、共有者間の「合意が変更され、又は共有関係が解消されるまでの間」は、「従前と同一の目的、態様の不動産の無償使用を継続」することを認めています。

大阪高等裁判所平成22年10月21日判決

内縁の夫と内縁の妻との間で、両名が同居していた内縁の夫所有の建物について、内縁の妻が死亡するまで同人に「本件建物を無償で使用させる旨の本件使用貸借契約が成立していたものと認めるのが相当である。」として、内縁の夫を相続した子から内縁の妻に対する建物の明渡請求が棄却されました。

これらの判例に鑑みれば、内縁の配偶者も一定程度は保護されると考えてよいかもしれません。

近い将来、配偶者短期居住権の規定の内縁配偶者への類推適用が認められるかもしれないという期待論はありますが、現在のところ具体的な動きはありません。

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内縁の配偶者に住居を残す方法

内縁の配偶者には、遺族年金、労働災害の遺族補償が受けられる権利がある一方で、相続権は認められていません。残された配偶者に住居を確実に渡すには、遺言書の作成生前贈与を検討しましょう。

生前の対策を取らなかった場合でも、亡くなった方に法定相続人が1人もいなければ特別縁故者として遺産を取得できる場合もあります。

遺言書を作成する

遺言書を作成して、内縁の配偶者に住居を遺贈する旨を記載します。遺言書で財産の全部または一部、もしくは特定の財産のみを指定して遺贈するのも可能です。

ただし、遺言書作成にあたって注意したいのは、法定相続人の遺留分を侵害していないかどうかという点です。

ここで一つ例をあげましょう。

Aさんは内縁の妻Bさんに対してすべての財産を遺贈すると遺言書に記載しました。しかし、Aさんには離婚した元妻との間に子どもCさんがいます。
Cさんには遺留分(遺言によっても奪うことができない遺産の一定割合の留保分)があるので、それを侵害すれば、Bさんから遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

自分亡きあとに内縁の妻が安心して暮らせるように作成した遺言書が、トラブルの火種になってしまう可能性があります。そうしたことを念頭において遺言書の作成をしなければいけません。

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生前贈与をする

内縁の配偶者に対して、居宅を生前贈与すれば住居を確保できます。

贈与税が課されること、そして遺言書同様に法定相続人の遺留分を侵害すれば、残された内縁の配偶者が遺留分侵害額請求を受ける可能性がある点に注意をしましょう。

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法定相続人が1人もいなければ特別縁故者として遺産を取得する

亡くなった内縁の配偶者に法定相続人が誰もいない場合、特別縁故者として遺産を取得できる可能性があります。特別縁故者とは、亡くなった人に法定相続人がいないとき、特別親しい関係にあったことを理由に遺産を取得できる人のことです。

具体的には、以下のような人です。

  • 亡くなった人と生計を同じくしていた人
  • 亡くなった人の療養看護に努めた人
  • その他亡くなった人と特別な縁故にあった人

相続人の存否が不明で家庭裁判所により相続財産清算人が選任された場合において、家庭裁判所の相続人を捜索するための公告で定められた期間内に相続人である権利を主張する者がいなかった場合、相続財産清算人が被相続人の債務を支払うなどして清算を行った後、家庭裁判所は、相当と認めるときは、被相続人と特別の縁故のあった人の請求によって、その人に、清算後残った相続財産の全部または一部を与えられます。

ただし、最終的には家庭裁判所が特別縁故者として財産を取得できるかどうかを判断するため、内縁関係にあったからといって、必ず認められるものではないので注意しましょう。

内縁の配偶者の居住権を保護する方法

建物の所有者が、生前に何らの対策も取らずに死亡した場合、残された内縁の配偶者が居住を継続するためには、その建物の所有権を引き継いだ相続人に対し、次のように主張することを検討できます。

相続人から明渡しを請求されたら権利濫用と主張する

相続人に、内縁の配偶者が居住する建物を使用しなければならない差し迫った必要がなく、内縁の配偶者側にその建物を明け渡すと家計上相当な打撃を受けるおそれがある等の事情下においては、相続人からの明渡請求について、権利の濫用と主張することが考えられます。

前記最高裁判例では、内縁の夫の死後、その所有家屋に居住する内縁の配偶者に対して、亡き夫の相続人が住居の明渡しを請求したことについて、相続人側の明け渡しを求める必要性や、4人の未成熟子を抱える内縁の妻が家を追い出されることで被る家計上の打撃などを考慮して、相続人からの明渡請求は権利濫用であり、認められないと判断しています。

使用貸借契約が黙示的に成立していることを主張する

内縁関係にあった建物の所有者とのその内縁の配偶者との間で、内縁の配偶者が亡くなるまで無償で自宅を使用させるという合意があったと考えられる場合は、使用賃貸契約が黙示的に成立していることを主張することで、自宅を明け渡さなくても良い場合があります。前記大阪高裁判例では、内縁の妻が、建物の所有者である被相続人に40年もの長きにわたり尽くし、被相続人自身も、唯一の相続人(被相続人の長女)に対し、「自分にもしものことがあったら、内縁の妻に本件建物をやり、そこに死ぬまでそのまま住まわせて、1500万円を渡してほしい」と述べていたことなどの事情から、残された内縁の配偶者が建物を無償で使用できる旨の使用貸借契約が黙示的に成立していると認めています

内縁の配偶者の居住権の保護について、弁護士に相談すべき理由は?

ここでは、内縁の配偶者の居住権の保護について弁護士に相談すべき理由について解説します。

内縁の夫・妻が自分亡きあとに困らないように、アドバイスが得られる

現在の法律では、内縁の夫・妻の地位がしっかり守られているとは言い難いです。

弁護士であれば、自分亡きあとに内縁の配偶者が住む場所に困らないように、どのような方法をとればいいのか、的確なアドバイスができます。

遺言書の作成など、手続きを任せられる

内縁の配偶者を守るには、遺言書の作成が有効です。しかし、法定相続人の遺留分を考えた遺言の作成をするには、慎重に進めなければいけません。

弁護士であれば、こうした手続きを間違いなく進められ、相続開始後のトラブルを避けられます。

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まとめ

婚姻に対する考え方が多様化してきたことにより、あえて入籍をしない事実婚を選ぶカップルが増えています。昔に比べると内縁の配偶者に保証される権利は増えていますが、残念なことに相続権はありません。

自分が亡くなった後、内縁の配偶者には何も心配することなく過ごしてほしいと願うのであれば、遺言書の作成を検討するなど内縁の配偶者を守る方法を考えましょう。

ネクスパート法律事務所には、相続案件を多数手がけた経験のある弁護士が在籍しています。最適な方法をアドバイスができますので、お気軽にご相談ください。

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コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:東京本店

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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