更新日:2026年10月21日 (水)

公開日:2026年10月21日 (水)

NISA・iDeCoは財産分与の対象になる?離婚時の金融資産の扱いを弁護士が解説

NISA・iDeCoは財産分与の対象になる?離婚時の金融資産の扱いを弁護士が解説 NISA・iDeCoは財産分与の対象になる?離婚時の金融資産の扱いを弁護士が解説

サマリー

NISAやiDeCoは離婚時の財産分与の対象になるのか、弁護士が民法の規定や評価方法、注意点を具体的に解説します。

近年、資産形成の手段としてNISAやiDeCoを利用する方が急増しています。こうした非課税投資制度は離婚時にどう扱われるのか、疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。2026年10月18日に配信されたYahoo!ニュースの記事では、この点について次のように取り上げられています。

NISA・iDeCoは離婚時の財産分与の対象になる?【離婚お悩み相談室】
出典:Yahoo!ニュース

NISA口座内の投資信託や株式、iDeCoの積立資産は、預貯金とは性質が異なるため「本当に分与の対象になるのか」「どのように評価すればよいのか」で悩む方が少なくありません。本コラムでは、財産分与の基本的な考え方に立ち返りながら、NISA・iDeCoを含む金融資産の分け方や注意点を弁護士の視点で解説します。

財産分与の対象となる財産の範囲(民法768条)

離婚時の財産分与は民法768条に基づき、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を清算する制度です。対象となるのは、名義にかかわらず「婚姻期間中に夫婦の協力によって形成された財産」であり、これを実務上「共有財産」と呼びます。預貯金、不動産、生命保険の解約返戻金、退職金見込額などと並んで、株式・投資信託・NISA口座内の資産・iDeCoの積立金も原則として共有財産に含まれます。

一方で、婚姻前から保有していた資産や、親からの相続・贈与によって得た財産は「特有財産」として分与対象から除外されます(民法762条1項)。したがって、NISA口座を結婚前から運用していた場合には、婚姻後に追加で積み立てた部分とそれ以前の部分を区別して評価する必要があります。NISA・iDeCoも名義人の固有財産ではなく、婚姻期間中の拠出分は原則として財産分与の対象になる点をまず押さえておく必要があります。

NISA資産の評価方法と分与の実務

NISA口座内の株式・投資信託は、預貯金と異なり時価が日々変動します。そのため、財産分与における評価基準時が重要になります。実務上は、別居時を基準時とする運用が一般的です(共有財産の形成は夫婦の協力関係が続く別居までとされるため)。別居時点の評価額を基準に、その後の離婚成立までの値動きは原則として考慮しません。

分与の方法としては、①現物のまま証券口座を分割する、②売却して現金化した上で分配する、③評価額に相当する代償金を他の財産で調整する、という3通りが考えられます。NISA口座自体は個人単位でしか保有できない制度であるため、口座そのものを分割することはできず、実務上は時価評価額の2分の1を代償金として支払う方法が選ばれるケースが多いです。なお、売却すると非課税枠を失うことになるため、税制上のメリットも踏まえて分与方法を話し合うことが望ましいでしょう。

iDeCoの財産分与における特殊性

iDeCo(個人型確定拠出年金)は60歳まで原則として引き出せないという制度上の制約があり、この点が財産分与における最大の難点です。NISAのようにすぐに換価できないため、離婚時点での積立残高(評価額)を算定し、他の財産との間で調整する「代償分割」が現実的な処理方法となります。

評価方法としては、離婚時点(または別居時点)のiDeCo口座の時価評価額をそのまま分与対象額とする考え方が一般的ですが、将来の受給時には運用益や税制上の控除(退職所得控除等)が絡むため、単純な時価評価だけでは公平性に疑問が残るとの指摘もあります。会社員の厚生年金分割(年金分割制度、厚生年金保険法78条の2以下)とは異なり、iDeCoには専用の分割制度が存在しないため、iDeCoの分与は当事者間の協議または調停・裁判での個別判断に委ねられており、評価額の算定根拠を明確にしておくことがトラブル防止の鍵になります。

財産分与の請求期限と手続きの流れ

財産分与を請求できる期間には制限があります。民法768条2項ただし書により、離婚成立から2年以内に請求しなければ家庭裁判所に申立てができなくなります。NISAやiDeCoのように時価評価が絡む財産は、分与協議がまとまらないまま期限が迫ってしまうケースもあるため、離婚協議の段階から金融資産の一覧化と評価額の確認を早めに進めることが重要です。

手続きの流れとしては、まず夫婦間の協議で財産分与の内容を取り決め、合意に至らない場合は家庭裁判所の調停・審判を利用します。NISA・iDeCoの残高証明書や取引報告書など、客観的な資料を早期に取得・保全しておくことで、評価額をめぐる争いを防ぎやすくなります。

まとめ

NISAやiDeCoは預貯金と違って時価の変動や換価の制約があるため、財産分与の場面では評価方法や分与方法について専門的な検討が欠かせません。婚姻期間中に形成された部分は原則として共有財産として扱われ、別居時点を基準に評価した上で、現物分割・代償金による調整などの方法が用いられます。iDeCoについては専用の分割制度がないため、特に丁寧な協議が必要です。

金融資産を含む財産分与でお困りの場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所までご相談ください。

コラム監修者

RUI SATO

RUI SATO

所属:代表(東京オフィス)

東京都杉並区出身。明治大学付属中野高校、明治大学法学部を経て、明治大学法科大学院を修了。2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2012年12月に弁護士登録(東京弁護士会)し、都内の法律事務所での勤務を経て、2016年1月に寺垣俊介とともにネクスパート法律事務所を創業。代表弁護士として一般民事から企業法務まで幅広い分野を手がけるとともに、全国に拠点を持つ事務所の経営にあたる。

早くからテクノロジーと法務の融合に取り組み、2021年にはAIを利用した法律文書作成サービスを開発するLegal AI株式会社の代表取締役に就任(現在は退任)。当時はAI技術が発展途上で技術的な壁に直面したが、この挑戦を通じて「法務業務こそAIの力を借りれば飛躍的に変わる」という確信を得る。以来そのビジョンを持ち続け、生成AIが広く普及した現在は事務所の業務全体でAIの活用を進めている。2026年には日本弁護士連合会「弁護士業務改革シンポジウム」にパネリストとして登壇した。ブロックチェーン・Web3分野の法務や海外法人の設立支援にも取り組み、公益法人主催のセミナー等で講師を務める。

公正取引委員会・中小企業庁「適正取引推進講習会」講師、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員を歴任。弁護士業務のかたわら、2014年に東京青年会議所に入会して以来、10年以上にわたりボランティア活動に取り組む。2017年からは国際的な社会奉仕団体であるライオンズクラブに所属し、2022年には東京数寄屋橋ライオンズクラブ第57代会長を務めた。献血の呼びかけ、障がい者スポーツ大会の支援、保護犬活動のほか、弁護士として小中学生への法教育や薬物乱用防止教育にも携わっている。

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