更新日:2026年10月19日 (月)

公開日:2026年10月19日 (月)

共同親権の導入から半年、何が課題か ― 離婚後の親権行使と弁護士相談のポイント

共同親権の導入から半年、何が課題か ― 離婚後の親権行使と弁護士相談のポイント 共同親権の導入から半年、何が課題か ― 離婚後の親権行使と弁護士相談のポイント

サマリー

離婚後共同親権の導入から半年。制度運用の実情を踏まえ、親権行使の取り決めや子の利益の判断基準、弁護士に相談すべきポイントを解説します。

2026年10月18日、カナロコ(神奈川新聞)は離婚後共同親権制度の導入からおよそ半年が経過した現場の実情を報じました。

離婚後共同親権の導入半年 「子の利益」実現探る 家族はいま 神奈川から
出典:カナロコ

報道では、現場の家庭が「子の利益」をどう実現していくかを模索している様子が伝えられています。制度開始から半年が経過した今、実際に共同親権を選択・検討する夫婦が増える一方、具体的な運用面での戸惑いも各地で生じています。本コラムでは、離婚後共同親権制度の基本的な仕組みと、制度を利用する際に弁護士へ相談すべきポイントを解説します。

離婚後共同親権導入の背景と法的枠組み

改正民法により、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」が選択できるようになりました。従来の民法819条は離婚時に父母の一方を親権者と定める単独親権制を前提としていましたが、改正後は父母の協議(協議が調わない場合は家庭裁判所の審判)により、共同親権か単独親権かを選べる仕組みに変わっています。

共同親権となった場合でも、すべての事項について常に父母双方の合意が必要になるわけではありません。改正法では、監護及び教育に関する日常的な行為や、急迫の事情がある場合の決定は親権者の一方が単独で行えるとされており、進学先の選択や重要な医療行為など子の利益に重大な影響を与える事項については父母双方の合意を要するという整理がされています。「どこまでが単独で決められる範囲か」の線引きが曖昧なまま離婚協議を進めると、後々のトラブルの火種になります。

「子の利益」はどう判断されるのか

共同親権を選択するか単独親権にするかを家庭裁判所が判断する際の基準となるのが「子の利益」です。改正民法では、父母の協議が調わない場合、裁判所は父母の関係性、子に対する虐待やDVのおそれの有無、父母の養育実績や意欲などを考慮して親権のあり方を定めるとされています。特にDVや虐待のリスクがあると認められる場合には、共同親権を命じることができないとする規定が置かれている点は実務上極めて重要です。

報道でも指摘されているとおり、制度が始まって半年の現場では、父母間の協議がうまく進まないケースや、共同親権としたものの実際の意思決定で対立が生じるケースが出てきています。「子の利益」は抽象的な理念にとどまらず、具体的な事情(養育環境、これまでの監護実績、父母間の協力関係)によって個別に判断される点を理解しておく必要があります。

共同親権を選ぶ際に弁護士へ相談すべきポイント

共同親権を検討する際、当事者だけで取り決めを行うと後のトラブルにつながりやすい事項がいくつかあります。弁護士に相談すべき主なポイントは以下のとおりです。

①単独で決定できる事項の範囲の明確化
日常の監護行為(食事、通学の送迎、習い事の選択など)と、進学・転居・重大な医療行為など父母双方の合意が必要な事項との境界を、離婚協議書や公正証書に具体的に落とし込んでおくことが重要です。

②急迫の事情における単独決定の要件
改正民法は、子の生命・身体に関わる緊急時には親権者の一方が単独で判断できる旨を定めていますが、「急迫の事情」の該当性は個別判断となるため、どのような場面を想定するか事前に取り決めておくとトラブルを避けやすくなります。

③DV・虐待のおそれがある場合の対応
父母の一方に暴力や虐待のリスクがある場合、共同親権がふさわしくないと判断される可能性があります。こうした事情がある場合は、家庭裁判所の審判手続において事情を適切に主張立証する必要があり、安全面に不安がある方は早期に弁護士へ相談し、単独親権を求める主張を準備することが望まれます。

④養育費・面会交流との関係整理
共同親権は親権の帰属に関する問題であり、養育費(民法766条等)や面会交流の取り決めとは別個の問題です。共同親権だからといって養育費の分担義務がなくなるわけではなく、両者を混同しないよう整理して協議することが求められます。

まとめ

離婚後共同親権制度は導入から半年が経過し、神奈川をはじめ各地の家庭で「子の利益」をどう実現するかという具体的な課題が浮き彫りになってきています。制度の理念自体は父母双方が子の養育に関与し続けることを目指すものですが、実際の運用では、単独で決定できる事項の線引きや、DV・虐待リスクがある場合の対応など、法的に慎重な検討を要する場面が少なくありません。

共同親権を選択するかどうかの判断や、離婚協議書の内容整理、家庭裁判所での審判対応など、離婚後の親権行使についてお困りの場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所までご相談ください。

コラム監修者

RUI SATO

RUI SATO

所属:代表(東京オフィス)

東京都杉並区出身。明治大学付属中野高校、明治大学法学部を経て、明治大学法科大学院を修了。2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2012年12月に弁護士登録(東京弁護士会)し、都内の法律事務所での勤務を経て、2016年1月に寺垣俊介とともにネクスパート法律事務所を創業。代表弁護士として一般民事から企業法務まで幅広い分野を手がけるとともに、全国に拠点を持つ事務所の経営にあたる。

早くからテクノロジーと法務の融合に取り組み、2021年にはAIを利用した法律文書作成サービスを開発するLegal AI株式会社の代表取締役に就任(現在は退任)。当時はAI技術が発展途上で技術的な壁に直面したが、この挑戦を通じて「法務業務こそAIの力を借りれば飛躍的に変わる」という確信を得る。以来そのビジョンを持ち続け、生成AIが広く普及した現在は事務所の業務全体でAIの活用を進めている。2026年には日本弁護士連合会「弁護士業務改革シンポジウム」にパネリストとして登壇した。ブロックチェーン・Web3分野の法務や海外法人の設立支援にも取り組み、公益法人主催のセミナー等で講師を務める。

公正取引委員会・中小企業庁「適正取引推進講習会」講師、日本弁護士連合会代議員、東京弁護士会常議員を歴任。弁護士業務のかたわら、2014年に東京青年会議所に入会して以来、10年以上にわたりボランティア活動に取り組む。2017年からは国際的な社会奉仕団体であるライオンズクラブに所属し、2022年には東京数寄屋橋ライオンズクラブ第57代会長を務めた。献血の呼びかけ、障がい者スポーツ大会の支援、保護犬活動のほか、弁護士として小中学生への法教育や薬物乱用防止教育にも携わっている。

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