サマリー
交通事故によるむちうちの慰謝料相場は、通院期間や用いる計算基準に加え、後遺障害の有無や治療状況などによっても大きく変動します。
保険会社から提示された金額は、自賠責基準や任意保険基準で算定されていることも多く、必ずしも適正な慰謝料額とは限りません。
この記事では、通院期間に応じた慰謝料の相場早見表や慰謝料の計算方法、保険会社との示談交渉で損をしないための重要なポイントについて解説します。
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【通院期間別】むちうちの入通院慰謝料の相場早見表
交通事故のむちうちで請求できる入通院慰謝料(傷害慰謝料)の相場を、通院期間別に表にまとめました。

ここでは、被害者にとって一般的に適正な基準とされる弁護士基準を基に、骨折などを伴わない比較的軽傷なケースの金額を掲載しています。
例えば、通院2か月では36万円、3か月では53万円が目安です。
通院が長引くほど慰謝料額は増額する傾向にあり、5か月で79万円、6か月では89万円程度が相場となります。
ただし、実際の金額は実通院日数や治療状況などによって変動する場合があります。
慰謝料が最も高額になりやすい弁護士基準で解説
上記の早見表は、過去の裁判例や民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(いわゆる赤い本)を基にした弁護士基準(裁判基準)で作成しています。
これは、弁護士が示談交渉や裁判対応を行う際に実務上広く用いられている基準であり、裁判実務に近い水準の慰謝料算定基準とされています。
保険会社が提示する金額は、弁護士基準より低い水準で算定されているケースが多く、事案によっては大きな差が生じることもあります。
そのため、ご自身のケースにおける適正な慰謝料額を把握するには、弁護士基準での試算が重要になります。
慰謝料の計算基準は3種類!ケースによっては弁護士基準で2倍以上になることも
交通事故の慰謝料を計算する際には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)という3つの異なる基準が存在します。

どの基準を用いるかによって、受け取れる金額が2倍以上変わることも少なくありません。
加害者側の保険会社は、自賠責基準や独自の任意保険基準を基に、弁護士基準と比較して低い水準の金額を提示してくることがあるため、注意が必要です。
自賠責基準|国が定める最低限の対人補償
自賠責基準は、自動車やバイクの所有者等に加入が義務付けられている自賠責保険で用いられる計算基準です。
これは、交通事故被害者に対して最低限の損害補償を確保することを目的として、国が定めている基準です。
自賠責基準の入通院慰謝料は、2020年4月1日以降に発生した事故の場合、原則として「対象日数(対象期間または実通院日数×2のいずれか少ない方)×日額4,300円」で計算され、傷害分の賠償支払限度額は治療費・休業損害・交通費等を含めて総額120万円までと規定されています。
任意保険基準|保険会社ごとの非公開基準
任意保険基準とは、加害者側の任意保険会社が、示談交渉の際に用いる独自の損害賠償算定基準です。
この基準は一般に公開されておらず、各保険会社が内部的に定めています。
金額水準としては、自賠責基準より高くなる傾向がありますが、後述する弁護士基準と比較すると低い水準となるケースが多く見られます。
保険会社からの初回提示額は、この任意保険基準を基に計算されていることが多いです。
弁護士基準(裁判基準)|判例実務に基づく最も高水準の基準
弁護士基準(裁判基準)は、これまでの交通事故訴訟における裁判例や実務運用を基に形成された損害賠償基準です。
3つの基準の中で最も高額になる傾向があり、裁判実務上も適正な賠償水準として扱われています。
保険会社との交渉で弁護士基準に近い水準での解決を目指す場合には、弁護士へ交渉を依頼することで増額交渉を進めやすくなる傾向があります。
専門家が介入することで、裁判実務に基づいた基準で慰謝料を算定し、示談交渉を進めやすくなります。
交通事故慰謝料の計算方法については、「交通事故慰謝料の計算方法を詳しく解説【入通院・障害・死亡別】」で詳しく解説しています。
むちうちで後遺症が残った場合に請求できる後遺障害慰謝料
交通事故によるむちうちの症状が、治療を続けても改善しきらず、症状固定後も将来にわたって残り続ける場合があります。
このような後遺症が後遺障害として等級認定されると、これまで説明してきた入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料を請求できます。
後遺障害慰謝料は、後遺障害によって将来にわたり生じる精神的苦痛に対する補償です。
後遺障害等級14級と12級の慰謝料相場
むちうちで後遺障害認定を受ける場合、対象となる等級は主に「14級9号(局部に神経症状を残すもの)」または「12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)」です。14級9号は治療経過や自覚症状の一貫性が重視されるのに対し、12級13号の認定にはレントゲンやMRI画像所見、神経学的検査等の客観的な医学的証明(他角所見)が必須となる傾向があります。
弁護士基準で計算した場合の後遺障害慰謝料の相場は、14級9号で110万円、より重い症状である12級13号では290万円程度とされています。
これは、保険会社側が基礎とすることの多い自賠責基準の金額(14級で32万円、12級で94万円)より高い水準となるケースが一般的です。
後遺障害等級の認定を受けるための3つのポイント
むちうちで後遺障害等級の認定を受けるには、継続的な通院や医学的資料の整備など、いくつかの重要なポイントがあります。
第一に、事故直後から症状が一貫して継続していることを、カルテや診療録などの医療記録によって示すことが重要です。
第二に、MRIなどの画像検査や神経学的検査を受け、症状の存在や事故との関連性を医学的に裏付ける客観的所見を得ることです。
第三に、医師へ自覚症状を継続的かつ正確に伝え、後遺障害診断書に具体的な症状や検査結果を適切に記載してもらうことが重要です。
慰謝料だけじゃない!むちうちで請求できる示談金・損害賠償の全内訳
交通事故の被害者が加害者側に請求できるのは、慰謝料だけではありません。
最終的に受け取る示談金は、慰謝料を含む様々な損害賠償金の合計額です。
治療費や交通費、仕事を休んだ分の補償なども含まれます。
物損に関する修理費などは人身部分とは別に計算されますが、示談交渉では人身損害の項目を漏れなく請求することが重要です。
治療関係費(診察料・薬代・入院費など)
交通事故による怪我の治療に必要かつ相当と認められる費用については、原則として実費を請求できます。
具体的には、病院での診察料、手術費、入院費、投薬料、検査費用などが含まれます。
また、医師が必要性を認めた場合には、リハビリテーション費用のほか、整骨院への通院費、マッサージ、鍼灸などの施術費用が認められる場合もあります。
ただし、請求できるのは、事故との相当因果関係が認められる範囲の治療費に限られます。
通院交通費(ガソリン代・公共交通機関の運賃など)
病院や整骨院への通院に要した交通費も、損害として請求できる場合があります。
電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合には、その運賃の実費相当額が認められるのが一般的です。
自家用車で通院した場合は、ガソリン代として1kmあたり15円程度を目安に計算されることが一般的です。
タクシー代については、怪我の程度や公共交通機関の利用困難性など、やむを得ない事情がある場合に認められる傾向があります。
休業損害(仕事を休んだことによる収入補償)
休業損害とは、交通事故による怪我の影響で仕事を休まざるを得なくなり、収入が減少した場合に認められる補償です。
会社員だけでなく、自営業者、パート、アルバイトなども休業損害を請求できる場合があります。
また、具体的な給与収入のない専業主婦(主夫)であっても、家事労働への支障が認められる場合には、休業損害を請求できる可能性があります。
休業損害は、原則として事故前の収入を基礎収入として計算されます。
逸失利益(後遺障害がなければ得られたはずの将来の収入)
逸失利益とは、後遺障害が残ったために労働能力が低下し、将来得られるはずだった収入が減少したことに対する補償です。
逸失利益は、原則として後遺障害等級が認定された場合に請求できます。
逸失利益の基本計算式は「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数」です。ライプニッツ係数とは、将来発生する収入を前払い受領する際に発生する中間利息(民法上の法定利率)を控除するために用いられる数値です。なお、むちうち事例では労働能力喪失期間が14級で5年以内、12級で10年程度に制限評価される実務上の傾向があります。
逸失利益については、「逸失利益とは?計算方法・後遺障害等級・保険会社が否定するケース」で詳しく解説しています。
知らないと損!むちうち慰謝料の減額リスクを避けるための重要ポイント
交通事故によるむちうちの慰謝料は、事故後の通院状況や保険会社への対応によって、減額される可能性があります。
適正な慰謝料や損害賠償額を受け取るためには、通院方法や保険会社とのやり取りにおいて注意すべき点があります。
以下のポイントを把握していないと、適正な慰謝料額が認められにくくなる可能性もあるため、事前によく確認しておきましょう。

整形外科へ継続的に通院する(医師の指示に従った通院が重要)
慰謝料や後遺障害認定の判断において、通院の継続性は治療の必要性や症状の一貫性を示す重要な要素です。
仕事の都合などで通院頻度が極端に低い場合、保険会社から「症状が軽快しているのではないか」と判断され、慰謝料額が低く算定されたり、治療費対応の終了を打診されたりする可能性があります。
症状が続いている間は、医師の指示に従い、整形外科へ継続的に通院することが重要です。特に長期間まったく受診しない状態は避けた方がよいでしょう。
医師の指示なく整骨院・接骨院のみへ通院しない
むちうち治療の一環として整骨院や接骨院へ通う方もいますが、通院方法には注意が必要です。
交通事故の損害賠償実務においては、診断権限を持つ整形外科医による医学的診断や治療処置が法的に絶対視され、医師の介在しない施術は厳しく査定される傾向にあります。 整形外科医の明確な指示や同意(承諾)を得ないまま自己判断で整骨院へ通院し続けた場合、加害者側保険会社から「施術の必要性・相当性がない」として整骨院の施術費支払いを拒否されたり、通院慰謝料の対象期間から除外されたりするリスクが高まります。
整骨院を利用する場合は、事前に整形外科の医師へ相談し、通院についての指示や了承を得ておくことが望ましいでしょう。
保険会社から治療費打ち切りを打診されても安易に同意しない
治療が一定期間続くと、加害者側の保険会社から「症状固定ではないか」などとして、治療費対応の終了を打診されることがあります。
しかしながら、法律・医学上の観点から「治療継続の必要性があるか」「症状固定に達したか」を判断できるのは、保険会社の担当者ではなく、患者を実際に診察している主治医のみです。
医師がなお治療継続の必要性を認めているにもかかわらず、保険会社の打診に安易に同意してしまうと、その後の治療費が自己負担となったり、慰謝料算定上不利に扱われたりする可能性があります。
過失割合に納得できない場合は安易に示談しない
過失割合とは、交通事故の発生に対する当事者双方の責任の度合いを示すものです。
被害者側にも一定の過失が認められた場合、民法上の過失相殺の規定に基づき、決定した過失割合の分だけ獲得できる慰謝料・治療費・休業損害・後遺障害賠償金などの全損害額から差し引かれます(過失相殺減額)。
提示された過失割合に納得がいかない場合は、安易に示談書へ同意せず、ドライブレコーダーの映像データや警察が作成した刑事記録(実況見分調書)、事故現場の防犯カメラ映像等の客観的証拠を収集・精査した上で、慎重に交渉を継続することが不可欠です。
過失割合については、「交通事故の過失割合とは|決め方・納得できない場合の反論方法を紹介」で詳しく解説しています。
提示された慰謝料が低い?弁護士に相談して増額を目指す方法
加害者側の保険会社から提示された慰謝料の金額を見て、「思ったより低い」と感じる方は少なくありません。
保険会社の提示額は、裁判実務を基準とする弁護士基準と比較すると、低い水準にとどまるケースが多いのが実情です。
提示額に疑問や不満がある場合には、交通事故案件に詳しい弁護士へ相談し、慰謝料増額の可能性について確認してみるとよいでしょう。
弁護士へ示談交渉を依頼する主なメリット
弁護士に示談交渉を依頼する大きなメリットは、慰謝料について弁護士基準を前提とした交渉を進めやすくなる点にあります。
これにより、事案によっては慰謝料が当初提示額の2倍以上に増額されるケースもあります。
また、弁護士が代理人として対応することで、保険会社との煩雑な交渉や手続きの負担を軽減し、被害者が治療や生活再建に専念しやすくなる点も大きなメリットです。
弁護士費用特約が利用できないか保険契約を確認しよう
弁護士への依頼をためらう理由として費用面の不安がありますが、まずはご自身や同居家族が加入している自動車保険などに弁護士費用特約が付帯していないか確認しましょう。
この特約を利用できれば、一般的には上限300万円程度までの弁護士費用を保険会社が負担するため、多くのケースで自己負担を抑えて弁護士へ依頼できます。
弁護士費用特約は、自動車保険だけでなく、火災保険や傷害保険などに付帯している場合もあります。
弁護士費用特約については、「交通事故における弁護士費用特約について詳しく解説」で詳しく解説しています。
交通事故によるむちうちの慰謝料や相場に関するよくある質問
ここでは、交通事故によるむちうちの慰謝料相場や示談金、通院頻度などについて、被害者の方からよく寄せられる質問と回答をまとめました。
ご自身の状況と照らし合わせながら、慰謝料請求や示談交渉の参考としてお役立てください。
通院6か月の場合、むち打ちの慰謝料はいくらになりますか?
弁護士基準で計算した場合、骨折などを伴わない軽傷事案では、通院6か月の慰謝料相場は約89万円程度とされています。
ただし、この金額は継続的かつ適切な頻度で通院している場合を前提としています。
実際の通院日数が少ない場合には、通院期間6か月・実通院日数30日などのケースで、症状が比較的軽症であったと評価され、相場より低い慰謝料額となる可能性があります。
通院頻度が少ないと慰謝料は減額されますか?
はい、通院状況によっては慰謝料が低く算定される可能性があります。
通院頻度が極端に少ない場合、治療の必要性や症状の継続性が低いと判断され、慰謝料算定上の通院期間が短く評価されることがあります。
特に弁護士基準では、通院期間だけでなく実通院日数も考慮されるため、医師の指示に従った定期的な通院が重要になります。
整形外科ではなく整骨院への通院でも慰謝料請求はできますか?
医師の指示や了承を得た上で整骨院へ通院している場合には、施術の必要性や相当性が認められ、慰謝料請求の対象となる可能性があります。
一方で、自己判断で整骨院のみに通院した場合には、施術の必要性が認められず、施術費や一部慰謝料が認定されにくくなるリスクがあります。
まずは整形外科を受診し、医師の診断や治療方針について相談することが重要です。
まとめ
交通事故によるむちうちの慰謝料は、弁護士基準を前提に交渉することで、保険会社の提示額より増額される可能性があります。
適正な慰謝料や損害賠償を受け取るためには、医師の指示に従って継続的に通院し、後遺障害が疑われる場合には適切な等級認定を目指すことが重要です。
保険会社との示談交渉に不安がある場合や、提示された慰謝料額に疑問がある場合には、交通事故問題に詳しい弁護士への相談を検討してみるとよいでしょう。
交通事故の慰謝料請求や示談交渉、後遺障害認定などでお悩みの方は、ぜひネクスパート法律事務所へご相談ください。交通事故案件に注力する弁護士が、事故状況や保険会社との交渉状況を丁寧にヒアリングした上で、今後の見通しや対処法についてアドバイスいたします。
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コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。