更新日:2022年8月25日 (木)

公開日:2022年6月20日 (月)

窃盗事件の示談を成立させるポイントと示談金相場を解説

窃盗事件の示談を成立させるポイントと示談金相場を解説 窃盗事件の示談を成立させるポイントと示談金相場を解説

サマリー

窃盗事件を起こしてしまい、被害者への謝罪や被害弁償、今後の刑事処分について不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

窃盗罪では、被害者との間で示談を成立させることが不起訴処分や処分の軽減に向けた重要な考慮要素となります。

しかし、示談金の相場や交渉の進め方が分からず、対応に迷うケースも少なくありません。

この記事では、窃盗事件における示談金相場の目安や示談を成立させるためのポイント、示談書に記載すべき事項などを分かりやすく解説します。

窃盗事件における示談の重要性と示談金相場の目安

窃盗事件における示談の重要性と示談金相場の目安

窃盗罪は他人の財物を窃取した場合に成立する犯罪であり、刑法第235条において「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定されています。

刑事事件として捜査が進み有罪判決が確定すると前述の刑が科される可能性がありますが、被害者との間で示談が成立している場合は刑事処罰の必要性が高くないと考慮される傾向があります。

事件化前の段階で示談がまとまれば逮捕を回避できる可能性があり、逮捕後であっても起訴前に示談が成立すれば不起訴処分や処分の軽減につながる可能性があります。

窃盗事件における示談金相場の目安

窃盗事件の示談金は、原則として盗まれた金品などの「実被害額」が基準となります。

ただし、実被害額の弁償だけで示談がまとまるケースばかりではなく、被害者の受けた精神的苦痛に対する慰謝料などが付加されることも少なくありません。

示談金の具体的な金額は被害者側の要求のみで決まるわけではなく、以下のような事情を考慮しながら双方の合意によって決定されます。

  • 実被害額および盗品の返還状況
  • 被害者の処罰感情の強さ
  • 加害者の経済状況・支払い能力
  • 加害者の処分の見通し

示談金が高額化しやすいケース

窃盗事件の内容によっては、実被害額を上回る損害賠償や慰謝料が加算され、示談金が高額化するケースがあります。

たとえば、被害者が業務で使用する機器や道具を盗んだことで営業がストップまたは遅延した場合は、本来得られるはずだった利益分の損害(営業損害)が請求される可能性があります。

また、被害者にとって金銭に代えがたい思い入れのある品物であった場合や、希少価値が高く同等品が手に入らない品物を処分してしまって返還できない場合などは、被害者の精神的苦痛が大きく評価され、慰謝料額が引き上げられる要因となります。

窃盗事件で示談を成立させるための重要なポイント

窃盗事件において被害者との間で示談を成立させるには、単に金銭を支払うだけでなく、真摯な態度で対応し適切な手順を踏むことが欠かせません。

真摯な反省を示す手書きの謝罪文の作成

被害者に対して反省の意を伝えるためには、謝罪文を作成して誠意を示すことが有効な手段の一つです。

口頭のみの謝罪や簡単なメモ程度では、誠意が伝わらず示談交渉が難航してしまう要因にもなり得ます。

謝罪文を作成する際は、被害者の受けた精神的苦痛や迷惑に配慮しながら、自身の行為を率直に認め、二度と罪を犯さないという具体的な決意を記載します。

文章はパソコン等ではなく手書きで丁寧に記載し、署名と押印を行うことで、より真摯な反省の姿勢を伝えやすくなります。

刑事手続きの進行を踏まえた早期の示談申し入れ

刑事事件の手続きは逮捕や送致など一定のスケジュールに沿って迅速に進むため、示談の申し入れはできる限り早い段階で行うことが大切です。

手続きが進む前に被害弁償の意思を示すことが求められます。

窃盗事件は被害品や盗まれた金額が特定されているケースが多く、示談金の算定に関する争点が比較的生じにくい傾向にあります。

被害者にとっても民事訴訟などの負担を負わずに被害回復を受けられる側面があるため、早期に誠意ある働きかけを行うことが話し合いを進める鍵となります。

宥恕が難しい場合の受領同意書の活用

被害者の処罰感情が強い場合、加害者を許す旨の条項(宥恕文言)を含めた示談書の締結を拒絶されるケースも少なくありません。

「金銭は受け取るが許すことはできない」と言われる場面もあります。

このような状況では、無理に示談書という形式にこだわらず、弁償金を受け取った事実のみを記載した「受領同意書」や領収書を取り交わす対応が考えられます。

被害弁償が実際に行われた事実を書面で残しておくことは、その後の刑事手続きにおいて被害回復の証拠として考慮される重要な要素となります。

示談交渉が難航しやすい主なケース

窃盗事件の示談交渉は、被害弁償の提案を行えば必ず成立するとは限らず、事件の態様や当事者の状況によって難航するケースがあります。

示談が難しくなる主な要因をあらかじめ把握しておくことが大切です。

被害額が高額で加害者に弁償資力がない場合

被害額が高額である場合、盗んだ金品が手元に残っていれば返還できますが、すでに売却や費消をしてしまっていると速やかな弁償が困難になります。

加害者側に十分な資産がなく、被害者が分割払いに同意しない場合には、示談交渉がまとまらない可能性が高まります。

なお、警察が盗品を押収し被害者が明確なときは、刑事手続きによる還付が行われることがあります。

組織的犯行や侵入窃盗など手口が悪質な場合

事前に下見を行い留守を狙って窓ガラスを割る空き巣や、複数人によるグループでの計画的犯行など、手口が悪質な場合は被害者や地域に与える精神的苦痛が大きく、示談を拒絶されやすくなります。

被害者が複数存在する事件では、一部の被害者と示談が成立しても、犯行態様の悪質性から起訴されて刑事裁判に発展する可能性があります。

被害者の連絡先が不明・開示が拒否された場合

置引やスリ、ひったくりなどで被害届が提出されていない場合、捜査機関であっても被害者を特定できず、示談の申し入れを行うこと自体ができません。

また、被害者が特定されている場合でも、捜査機関が加害者本人に直接連絡先を教えることはありません。

弁護士に対しても被害者が連絡先の開示を拒んだ場合は示談交渉が進められず、贖罪寄付などの方法を検討することになります。

被害者や店舗の処罰感情が強く示談を拒否している場合

示談はあくまで当事者双方の合意により成立するものであるため、被害者の処罰感情が強く示談を拒絶している場合には、交渉を強制することはできません。

特に万引き事件などでは、被害店舗や運営会社の方針として示談に一切応じないルールを設けているケースもあり、柔軟な対応が難しい傾向にあります。

窃盗事件の示談書に記載すべき主な条項

窃盗事件で示談を行う際は、口頭の合意にとどめず、合意内容を明確にした示談書を作成することが欠かせません。

書面を作成しておくことで、後日のトラブル防止につながるだけでなく、刑事手続きにおいて被害弁償や被害者の意向を客観的に示す資料となります。

謝罪条項と示談金の支払いに関する条項

示談書の冒頭には、加害者が行った犯行事実を認め、被害者に対して真摯に謝罪する旨を定める「謝罪条項」を置くのが一般的です。

反省の態度を明確に示すことは、示談書全体の前提として重要視されます。

「示談金の支払いに関する条項」では、合意した示談金の金額、支払期日、振込先などの支払方法を具体的に記載します。

すでに示談金を手渡しや振込で支払っている場合は、被害者がその金額を確かに受領した旨の文言を盛り込みます。

宥恕条項(被害者の許しに関する条項)

「宥恕(ゆうじょ)条項」とは、被害者が加害者の行為を許し、刑事処罰を望まない意思を表明する条項です。

具体的には「本件について宥恕する」「加害者の刑事処罰を求めない」といった文言が記載されます。

宥恕条項が含まれている示談書は、検察官や裁判官が終局処分や量刑を判断する際、不起訴処分や刑の減軽を検討するための重要な考慮要素となります。

誓約条項・清算条項・秘密保持条項

「誓約条項」では、加害者が二度と同様の過ちを犯さないことや、被害者の店舗や自宅に近づかないことなどを定めます。

被害者側からは「被害届を提出しない」あるいは「提出済みの被害届を取り下げる」旨の約束が盛り込まれる場合もあります。

「清算条項」は、示談書に定めた内容以外に、当事者間に何らの債権債務が存在しないことを相互に確認するものです。

これにより、後から追加で金銭を請求されたり、損害賠償を蒸し返されたりするリスクを防ぎます。

「秘密保持条項」は、事件の事実関係や示談の内容について、正当な理由なく第三者に口外しないことを双方で確認する条項です。

当事者のプライバシーを保護し、無用な情報拡散を防ぐ役割を果たします。

窃盗事件の示談手続きの流れと弁護士への相談

窃盗事件の示談手続きの流れと弁護士への相談

窃盗事件において示談を進める際は、適切な手順を踏んで被害者と冷静に合意を形成することが重要です。

一般的には、被害者の意思確認から始まり、条件の交渉、示談書の取り交わしという段階を経て手続きが進められます。

窃盗事件における示談手続きの全体的な流れ

示談を進める上での大まかな手順は以下のとおりです。

  1. 被害者への示談の意思確認:まずは被害者が示談交渉に応じる意向があるかを確認します。
  2. 示談内容の交渉:被害弁償の金額や支払い方法、宥恕の有無などの条件について話し合います。
  3. 示談書の作成と取り交わし:双方が合意した内容を書面にまとめ、署名押印を行います。
  4. 示談金の支払いと成立:示談金の支払い(振込等)を完了させ、領収書や受領書を保管します。

身柄が拘束されている事件では、示談が成立した旨を捜査機関へ報告することで、身柄解放に向けた考慮要素となる場合があります。

弁護士を通じた示談交渉と捜査機関への働きかけ

窃盗事件の被害者の多くは加害者本人との直接の接触を避けたがる傾向にあります。

捜査機関も加害者本人には被害者の連絡先を開示しないことが通常です。

弁護士が代理人となることで、被害者の承諾を得た上で連絡先を確認し、冷静に交渉を進められる可能性が高まります。

また、当事者同士では感情的になりやすい示談金の金額や条件について、妥当な落としどころを見極めながら交渉を進められる点も特徴です。

示談がまとまった後は、法的に不備のない示談書を作成するとともに、示談成立の事実や本人の反省状況を意見書・報告書として検察や警察に提出し、寛大な処分を求める活動を行います。

再犯防止に向けた環境整備と法律相談の意義

万引きなどを繰り返してしまう背景には、クレプトマニア(窃盗症)と呼ばれる精神的な疾患が関係しているケースもあります。

単に示談金を支払って解決を図るだけでなく、注力分野とする医療機関への通院や家族による監督体制の構築など、再犯を防ぐための環境を整えることが、刑事処分における情状酌量や本人の更生にとって重要となります。

窃盗事件の示談や今後の手続きについて不安がある場合は、早い段階で弁護士に相談し、適切な対応方針を検討することが有益です。

コラム監修者

RUI SATO

RUI SATO

所属:代表(東京オフィス)

明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。

弁護士詳細を見る

関連記事を見る

撮影罪とは?条文・構成要件や時効・罰則をわかりやすく解説

2023.08.02

刑事事件の基礎知識

盗撮事件

撮影罪とは?条文・構成要件や時効・罰則をわかりやすく解説

「ヴァンビ」白井容疑者が逮捕された事件から学ぶ、強制わいせつ容疑での逮捕後の刑事手続きの流れ

2026.10.01

刑事事件

強制わいせつ

「ヴァンビ」白井容疑者が逮捕された事件から学ぶ、強制わいせつ容疑での逮捕後の刑事手続きの流れ

芸能人の逮捕報道から学ぶ刑事手続の流れ―示談・不起訴の可能性はあるのか

2026.09.25

刑事事件

逮捕・拘留

芸能人の逮捕報道から学ぶ刑事手続の流れ―示談・不起訴の可能性はあるのか

コカイン共同所持疑いで交際相手同時逮捕―「共犯」の刑事責任はどう判断されるのか

2026.09.16

薬物事件

コカイン共同所持疑いで交際相手同時逮捕―「共犯」の刑事責任はどう判断されるのか

教師が生徒と空き巣か 共犯関係の成立と「立場」が問われる刑事責任とは

2026.09.16

財産事件

少年事件

教師が生徒と空き巣か 共犯関係の成立と「立場」が問われる刑事責任とは

PREV
NEXT