更新日:2025年2月28日 (金)
公開日:2022年4月26日 (火)
自己破産の手続きの流れとは?条件や期間・必要書類を弁護士が解説
サマリー
借金の返済が困難になり、自己破産を検討しているものの、申立て後の流れや生活への影響が分からず不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
自己破産は裁判所を通じて債務の返済義務の免除を求める法的手続きですが、進め方や期間は事案の種類によって異なります。
この記事では、自己破産が認められる条件をはじめ、手続きの具体的な流れや必要書類、手続き中の注意点についてわかりやすく解説します。
自己破産が認められる条件とは

自己破産を行い、裁判所から借金の返済義務を免除(免責)してもらうためには、法律で定められた一定の要件を満たす必要があります。
具体的には、申立人が「支払不能」の状態に陥っていること、そして原則として「免責不許可事由」に該当しないことが主な判断基準となります。
支払不能の状態にあること
支払不能とは、債務者が支払能力を欠くために、弁済期にある債務について一般的かつ継続的に返済することができない状態を指します(破産法第2条第11項)。
単に本人が「返済が苦しい」と感じる主観的な判断ではなく、収入や資産、債務総額などを総合的に考慮した客観的な状態によって判断されます。
ここでいう「一般的」とは、すべての債権者に対して平等に返済できる状態を指します。
特定の債権者にだけ返済を続け、他の返済を放置しているような状態は一般的な弁済とはみなされません。
また「継続的に弁済することができない」とは、一時的な資金不足ではなく、将来にわたっても返済を続ける見込みが立たない状態を意味します。
客観的に見て資産や継続的な収入からすべての債務を完済することが困難であると認められることが、自己破産の手続きを進めるための前提条件です。
免責不許可事由と裁量免責の仕組み
破産手続の開始決定が下りても、破産法で定められた「免責不許可事由」に該当する事情がある場合は、原則として債務の免除が認められません(破産法第252条第1項)。
免責不許可事由には、債権者全体の利益を不当に害する行為や、破産手続きの公正さを損なう行為などが該当します。
- 財産の隠匿や名義変更、不当に安価での売却などの処分行為
- 特定の借入先にだけ優先して返済を行う行為(偏頗弁済)
- 浪費やギャンブル、投機的な取引による著しい財産の減少や過大な債務負担
- 裁判所や破産管財人に対する虚偽の説明や財産目録の偽造
- 過去一定期間内(原則7年以内)に免責許可などを受けた履歴があること
ただし、免責不許可事由に形式的に該当する場合であっても、直ちに免責が不許可になるとは限りません。
破産法には「裁量免責」の制度があり、債務者の反省の度合いや生活再建への意欲、免責不許可事由に至った経緯などを裁判所が総合的に評価したうえで、裁量によって免責を許可する運用がなされています。
不許可事由に該当する行為があっても裁量免責の余地はありますが、虚偽の申告や財産隠しなどの悪質な行為があると判断された場合は免責が認められないおそれがあります。
自己破産手続きの3つの種類と具体的な流れ
自己破産の手続きは、保有している財産の状況や免責不許可事由の有無などに応じて「同時廃止」「少額管財」「通常管財」の3つに分類されます。
どの手続きが選択されるかによって、破産管財人の選任の有無や進行手順、裁判所に出頭する回数などが異なります。
同時廃止手続きの流れ
同時廃止とは、配当に充てるべき目立った財産がなく、免責不許可事由の調査も特段必要とされない場合に選択される手続きです。
破産手続きの開始と同時に手続きが終了(廃止)するため、管財事件と比べて簡易かつ迅速に進みます。
- 管轄の地方裁判所へ破産手続開始および免責許可の申立てを行う
- 債務者審尋(裁判官による事情聴取)または書面審査が行われる
- 破産手続開始決定と同時に同時廃止決定が下される
- 免責審尋期日で生活状況や反省の態度などが確認される(省略される場合もある)
- 裁判所から免責許可決定が下され、官報公告を経て概ね1か月後に確定する
免責許可決定が確定すると、税金や養育費などの非免責債権を除き、対象となるすべての借金の支払義務が免除されます。
少額管財手続きの流れ
少額管財は、一定以上の財産がある場合や免責不許可事由の有無について調査が必要な場合に適用される運用です。
裁判所に納める予納金の負担を抑えつつ、破産管財人が選任されて財産の換価や調査が行われます。
- 申立代理人(弁護士)を通じて地方裁判所に申立てを行う
- 裁判所の指定により管財人候補者と面談し、財産関係を引き継ぐ
- 裁判所が破産手続開始決定を行い、破産管財人を正式に選任する(引継予納金を納付)
- 破産管財人による財産の管理・換価や免責に関する調査が行われる
- 債権者集会および免責審尋期日に出席し、管財人から状況や意見が報告される
- 裁判所から免責許可決定が下され、確定する
- 配当が実施された場合は任務終了報告集会を経て手続きが終了する
少額管財では、開始決定から概ね2〜3か月後に第1回債権者集会が開かれます。
破産者本人の出席が求められ、財産の処分や換価が完了していれば1回で集会が終了することもあります。
通常管財手続きの流れ
通常管財は、個人事業主で負債や財産関係が複雑な場合や、少額管財の要件を満たさない場合に適用される従来型の手続きです。
破産管財人による調査業務が広範囲にわたり、手続きもより慎重に進められます。
- 管轄の地方裁判所へ申立てを行う
- 債務者審尋や管財人候補者との面談を実施する
- 破産手続開始決定および破産管財人の選任がなされる
- 破産管財人が詳細な財産調査や債権調査、資産の換価業務を行う
- 財産状況報告集会(債権者集会)が開かれ、財団の現状や配当見込みが報告される
- 債権が確定し、換価した原資をもとに債権者への配当が実施される
- 任務終了の計算報告を経て破産手続終結決定(配当原資がない場合は異時廃止決定)が下される
- 免責審尋を経て免責許可決定が下され、確定する
通常管財では、債権者集会において管財人から配当率や配当時期の見込みなどが報告されます。
配当可能な財産が形成されなかった場合は、手続きを途中で終了させる異時廃止決定がなされます。
自己破産の手続きにかかる期間と必要書類
自己破産の手続きを検討する際、完了までにどのくらいの期間を要するのか、どのような書類を用意する必要があるのかを把握しておくことは重要です。
手続きにかかる期間や準備すべき書類は、事案の内容や選択される手続きの種類によって異なります。
手続きの種類別にみる目安期間
自己破産の申立てから免責許可決定が確定するまでの期間は、管財事件か同時廃止かによって大きく変動します。
管財人が選任されない同時廃止は比較的短期間で終了しますが、管財事件では財産の調査や換価作業が入るため、相応の期間が必要となります。
| 手続きの種類 | 申立てから確定までの目安期間 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 同時廃止 | 約3〜4か月 | 管財人が選任されず、調査や換価手続きが省略されるため比較的早い |
| 少額管財 | 約4〜6か月程度 | 手続きが簡素化されているが、財産換価に時間を要する場合は半年以上かかることもある |
| 通常管財 | 約6か月〜1年以上 | 詳細な調査や換価配当が行われ、債権者数が多い大規模事案では2〜3年以上かかる場合もある |
管財事件において財産の換価処分が長引く場合や、債権者集会が複数回開催される場合は、一般的な目安よりも手続き期間が延びることがあります。
自己破産の申立てに必要な主な書類一覧
裁判所に自己破産を申し立てる際は、申立人の生活状況や財産、債務の全体像を客観的に証明するため、多岐にわたる書類を準備する必要があります。
裁判所に提出する書式に加え、公的機関や勤務先、金融機関などから取り寄せる書類が多数含まれます。
| 書類名 | 主な取得先・作成元 | 書類の概要・用途 |
|---|---|---|
| 自己破産申立書 | 管轄の地方裁判所 | 破産手続開始および免責許可を申し立てる基本書式 |
| 陳述書 | 管轄の地方裁判所 | 借入の経緯や返済不能に至った生活状況を記載する書類 |
| 資産目録 | 管轄の地方裁判所 | 所有する不動産、車、預貯金などの財産を記載する書類 |
| 債権者一覧表 | 申立人または代理人 | すべての借入先、残高、借入時期などを一覧化した書類 |
| 住民票・戸籍謄本 | 市区町村役場 | 申立人や世帯構成員の身分関係を証明する書類 |
| 課税(非課税)証明書 | 市区町村役場 | 所得状況や課税額を客観的に証明する公的証明書 |
| 給与明細書・源泉徴収票 | 勤務先 | 直近の収入実態を確認するための書類 |
| 預貯金通帳のコピー | 金融機関 | 口座の入出金履歴や現在の残高を確認するための資料 |
| 居住地証明書類 | 公共料金領収書等 | 現在の居住実態を確認するための資料 |
申立人の個別の状況によっては、失業中であることを示す失業証明書や、生活保護受給証明書などの追加提出が求められることがあります。
書類に不備や記載漏れがあると裁判所の審査に時間を要し、手続き全体の遅延につながるため、正確な資料を揃えて申立てを行うことが大切です。
自己破産手続き中の生活への影響と注意点

自己破産の手続きを開始すると、これまでの生活環境や借金の督促状況に変化が生じます。
弁護士に手続きを依頼した場合は、各債権者へ受任通知が送付され、貸金業者等からの直接の督促や取り立てが停止します。
また、手続き期間中は債権者への借金返済を一時的に停止することになりますが、家賃や公共料金などの日常生活に必要な支出は継続して支払いを行う必要があります。
一方で、信用情報機関に事故情報が登録されるため、一定期間(概ね5〜10年程度)は新たなローンの借り入れやクレジットカードの発行・利用が制限されます。
手続き期間中に受ける一定の制限
破産手続き中は、法令に基づき一部の資格や職業において一時的な就業制限が課されます。
弁護士や税理士などの士業、警備員、宅地建物取引士などが該当し、免責許可が確定して復権するまでの間は業務に従事できません。
管財事件として進められる場合、破産者の所在を明確にするため、転居や長期の旅行には裁判所の許可が必要となります。
無断での転居は手続きの遅延につながるため事前の申立てが必要です。
さらに、管財事件では財産状況の調査や不正なやり取りの防止を目的として、破産者宛ての郵便物が破産管財人に転送され、内容が確認される運用が取られます。
手続き中に行ってはならない禁止事項
自己破産手続きの申立前後において、財産を隠蔽したり第三者へ無償譲渡したりする行為は厳しく禁じられています。
処分を免れる目的で名義を変更する行為は免責不許可事由に該当します。
親族や知人など特定の借入先だけに優先して返済を行う「偏頗弁済(へんぱべんさい)」も債権者平等の原則に反するため禁止されており、管財人から受領者へ返還請求がなされる場合があります。
また、手続き中の浪費やギャンブル、裁判所や破産管財人に対する虚偽の説明、調査業務の妨害なども免責判断に重大な支障をきたします。
自己破産手続きに関するよくある質問
Q. 自己破産の手続き中も仕事は続けられますか?
一般的な会社員であれば、自己破産の手続き中であっても原則としてそのまま仕事を継続することが可能です。
破産手続きを行ったこと自体を理由として勤務先から解雇されることは、法律上認められていません。
ただし、士業や警備員など法律上の資格制限を受ける職種に従事している場合は、手続き開始から免責許可決定が確定して復権を得るまでの間、その業務を行うことができなくなります。
Q. 手続き中に裁判所から支払督促や訴状が届いた場合はどう対応すべきですか?
支払督促が届いた場合は受領日から2週間以内に異議申立書を、訴状が届いた場合は指定された期日までに答弁書を裁判所へ提出する必要があります。
書類を放置すると債権者の主張どおりの判決等が確定し、給与や財産が差し押さえられるおそれがあります。
債権者から訴訟等の法的措置が取られた際は、速やかに申立代理人である弁護士に書類を共有し、適切な対応を依頼することが重要です。
Q. 手続き中にネットショッピングや不用品の売却を行っても問題ありませんか?
代金引換や先払いを利用した日常生活に必要な範囲の買い物であれば、手続き中であっても問題ありません。
ただし、収入に見合わない高額な買い物を行うと、裁判所から浪費と判断され免責に影響するおそれがあります。
また、フリマアプリなどで私物を自己判断で売却する行為は、破産財団に属する財産の不当な処分と疑われるリスクがあるため控え、換価可能な資産がある場合は事前に弁護士等へ相談することが望まれます。
自己破産の手続きを進める際の弁護士への相談
自己破産の手続きは法律上、申立人本人が行うことも可能とされています。
しかし、裁判所に提出する申立書や陳述書、資産目録などの作成には一定の法律知識が求められ、収集すべき書類も多岐にわたります。
複雑な書類準備と裁判所対応の負担軽減
弁護士が申立代理人として関与する場合、申立てに必要な書類の準備や作成に関するサポートを受けられるため、手続きにかかる労力や心理的負担を軽減できます。
また、申立て後の裁判所からの補正要請への対応や各種連絡についても、代理人である弁護士が窓口となって進めることが一般的です。
東京地方裁判所における即日面接制度のように、弁護士が代理人に就いている場合に限って利用できる運用もあります。
適切な手続きの選択と免責判断に向けた助言
自己破産には同時廃止、少額管財、通常管財といった手続きの区分があり、保有している資産の有無や負債額、借入れの理由などによってどの手続きが適切かが判断されます。
事前に財産や負債の状況を詳細に確認しておくことで、少額管財などの迅速な手続きを選択できる可能性が高まり、予納金などの費用負担を抑えることにもつながります。
浪費やギャンブルなどの免責不許可事由が懸念される事案であっても、経緯を正確に説明し、反省の状況を裁判所や破産管財人に伝えることで裁量免責が認められるケースがあります。
自身の負債状況や生活環境に適した方法で円滑な再出発を図るためにも、早い段階で弁護士へ相談し助言を受けることが有用です。
返済の目途が立たず生活への影響に不安を感じている場合は、手続きの選択肢や生活上の注意点を把握するためにも、まずは弁護士への相談を検討してみるとよいでしょう。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。