サマリー
2025年の自己破産件数は全国8万3,100件。都道府県別データをもとに、自己破産の実態と申立ての流れ、要件・注意点を弁護士が解説します。
借金の返済に行き詰まったとき、最終的な解決手段として検討されるのが自己破産です。このたび、2025年の個人の自己破産件数に関する都道府県別データが公表されました。
個人の自己破産、2025年は8万3,100件——人口比で最も多いのは宮崎県、最も少ないのは富山県。47都道府県の最新データを公表
出典:アットプレス
アットプレスの報道によれば、2025年の個人の自己破産申立件数は全国で8万3,100件にのぼり、人口比で見ると宮崎県が最も多く、富山県が最も少なかったと報じられています。こうした地域差の背景には、所得水準や産業構造、相談窓口へのアクセスのしやすさなど複数の要因が関係していると考えられますが、本コラムでは件数の多寡そのものよりも、自己破産という手続きが実際にはどのような制度で、どのような要件・流れで進むのかを正確に理解することを目的に解説します。
自己破産の件数が示す実態
自己破産は、裁判所に申立てを行い、支払不能状態にあると認められた場合に、原則として債務の支払義務を免除してもらう手続きです。全国で年間8万件を超える申立てがあるという事実は、借金問題が特別な人だけの問題ではなく、誰にでも起こり得る生活上のリスクであることを示しています。収入減少、病気・怪我による就労不能、連帯保証、事業の失敗など、自己破産に至る経緯は人によってさまざまです。都道府県による件数の差は、地域の経済状況や金融機関・貸金業者の利用状況の違いを反映しているとみられますが、どの地域に住んでいても、支払不能に陥れば法律上は同じ手続きを利用できる点は変わりません。
自己破産の法的要件——「支払不能」とは何か
自己破産の根拠法は破産法です。破産手続開始の要件は、破産法15条1項において「債務者が支払不能にあるとき」と定められています。「支払不能」とは、単に借金が多いという状態ではなく、債務者が、支払能力を欠くために、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態をいうと解されています(破産法2条11項)。収入や資産の状況、負債の総額、返済条件などを総合的に考慮して、裁判所が個別に判断します。
また、株式会社など法人だけでなく、個人も「債務者」として破産手続開始の申立てをすることができます(破産法18条1項)。申立ては債務者自身が行う場合(自己破産)のほか、債権者が申し立てる場合もあります。
免責不許可事由と「免責」の意味
破産手続開始決定が出ても、それだけで借金が消えるわけではありません。債務の支払義務を免除してもらうには、別途「免責許可」を得る必要があります(破産法248条以下)。免責許可の申立ては、通常、破産手続開始の申立てと同時に行われます。
注意すべきは、免責不許可事由が破産法252条1項に列挙されている点です。たとえば、浪費や賭博による著しい財産の減少(同項4号)、債権者を害する目的での財産の隠匿・損壊(同項1号)、虚偽の債権者名簿の提出(同項6号)などがこれに該当すると、免責が許可されない可能性があります。もっとも、同条2項では、裁判所が諸事情を考慮して「裁量免責」を認めることができるとされており、実務上は免責不許可事由があっても反省の態度や生活再建の見込みなどを踏まえて免責が認められるケースも少なくありません。免責不許可事由に該当する行為がある場合でも、弁護士に相談のうえ適切に対応することで、裁量免責が認められる可能性があるため、諦めずに専門家へ相談することが重要です。
自己破産の手続きの流れ
一般的な自己破産手続きは、おおむね以下の流れで進みます。
①弁護士への相談・受任通知の送付(受任通知により債権者からの取立てが原則停止します)
②必要書類の収集・申立書の作成
③地方裁判所への破産手続開始・免責許可の申立て
④裁判所による審尋(必要な場合)
⑤破産手続開始決定(同時廃止または管財事件への振り分け)
⑥免責審尋・免責許可決定
⑦決定の確定による債務の免除
資産がほとんどなく、免責不許可事由の疑いも薄い場合は、破産管財人が選任されない「同時廃止」事件として比較的短期間(申立てからおおむね3〜6か月程度)で終結することが多い一方、一定以上の資産がある場合や免責調査が必要な場合は「管財事件」として予納金(通常20万円程度〜)の納付と破産管財人による調査が必要になり、手続きが長期化する傾向があります。同時廃止か管財事件かによって期間・費用が大きく異なるため、申立て前に見込みを把握しておくことが重要です。
自己破産のデメリットと生活への影響
自己破産には、信用情報機関への登録(いわゆるブラックリスト登録、おおむね5〜10年程度)、一定の職業(弁護士、警備員、生命保険募集人など)への就業制限、官報への掲載、99万円を超える現金や一定の財産の処分といったデメリットがあります。もっとも、戸籍や住民票に記載されることはなく、選挙権・被選挙権が制限されることもありません。生活への影響を正しく理解したうえで、他の債務整理手続き(任意整理・個人再生)との比較検討を行うことが望ましいといえます。
まとめ
2025年の自己破産件数が全国で8万3,100件にのぼったという今回の報道は、借金問題が全国どの地域でも起こり得る身近な問題であることを改めて示しています。自己破産は破産法に基づく正式な法的手続きであり、支払不能という要件や免責不許可事由など、専門的な判断が必要となる場面が少なくありません。
借金の返済にお困りで、自己破産を含む債務整理の手続きをご検討の方は、弁護士法人ネクスパート法律事務所までご相談ください。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。