更新日:2026年10月7日 (水)
公開日:2024年10月7日 (月)
自己破産の費用は分割払いできる?内訳や支払えない場合の対処法
サマリー
借金の返済が困難になり自己破産を考えているものの、手元にまとまった資金がなく手続き費用の工面に不安を抱える方は少なくありません。
自己破産の手続きには弁護士費用と裁判所費用がかかりますが、弁護士費用については分割払いや事前の積立に対応している事務所も多く見られます。
この記事では、自己破産にかかる費用の目安や内訳、弁護士費用を分割で支払う仕組みに加え、裁判所費用が支払えない場合の対処法や直前借入れのリスクについて解説します。
自己破産にかかる費用の相場と内訳

自己破産の手続きを進める際にかかる費用は、大きく分けると「弁護士費用」と「裁判所費用」の2種類で構成されています。
手続き全体では数十万円程度の費用を要するケースが一般的ですが、具体的な金額は依頼する法律事務所の報酬基準や、裁判所で扱われる破産手続きの種類によって異なります。
弁護士費用の相場と内訳
自己破産手続きの対応を弁護士に依頼する場合、弁護士費用の総額相場としては30万円から50万円程度が一つの目安とされています。
弁護士費用の内訳には、法律相談を行う際に発生する相談料、委任契約を結んだ段階で支払う着手金、手続きが終了した際に生じる報酬金、通信費や交通費に充てられる実費などがあります。
| 内訳 | 内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 相談料 | 弁護士に法律相談を行う際にかかる費用 | 30分あたり5,000円〜1万円程度(初回無料の事務所もあり) |
| 着手金 | 弁護士へ正式に依頼した際に発生する費用 | 30万〜60万円程度 |
| 報酬金 | 免責許可などの結果に応じて発生する費用 | 0〜30万円程度 |
| 実費 | 郵便切手代や交通費など、手続きに伴う実費 | 事案により異なる |
法律事務所によっては着手金と報酬金の割合が異なっていたり、相談料を無料に設定していたりすることもあります。
費用の体系や具体的な項目については、依頼前に各事務所へ確認しておくことが大切です。
裁判所費用の内訳と手続きの種類による違い
自己破産の申立てを行う際には、裁判所に対しても所定の費用を納める必要があります。裁判所費用は、申立手数料や官報公告費、予納郵券のほか、管財人が選任された場合の引継予納金などで構成されます。
個人の自己破産手続きには主に「同時廃止」「少額管財」「通常管財」の3つの類型があり、裁判所がどの手続きを適用するかによって納付金額に大きな差が生じます。
| 手続きの種類 | 申立手数料 | 予納郵券 | 官報公告費 | 引継予納金 | 合計の目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 同時廃止 | 1,500円 | 数千円程度 | 1万円程度 | 0円 | 1.5万〜3万円程度 |
| 少額管財 | 1,500円 | 数千円程度 | 2万円程度 | 20万円〜 | 20万円以上 |
| 通常管財 | 1,500円 | 数千円程度 | 2万円程度 | 50万円〜 | 50万円以上 |
換価処分すべき一定の財産がない場合などは同時廃止となり、裁判所費用を数万円程度に抑えやすくなります。
一方で、不動産や自動車などの高額な財産を所有している場合や、免責不許可事由の有無に関する調査が必要な場合、法人の破産手続きなどでは管財事件として扱われます。
管財事件では破産管財人が財産調査や配当等を行うため、高額な引継予納金が必要となります。
自己破産の費用は分割払いできるのか?費用の種類ごとの対応
自己破産の手続きを進めるにあたり、まとまった金銭を一括で納める必要があるのか、それとも分割払いが認められるのかは状況によって異なります。
結論として、費用の支払い方法は「弁護士費用」と「裁判所費用」のどちらであるかによって対応が大きく分かれます。
弁護士費用は分割払いや積立に対応している事務所が多い一方で、裁判所費用は原則として一括納付が求められます。
弁護士費用は分割払いや事前の積立に対応する事務所が多い
自己破産の申立てを弁護士に依頼する際にかかる費用については、多くの法律事務所で分割払いや事前の積立に応じる体制が整えられています。
自己破産を検討する方の多くはすでに借金の返済で家計が圧迫されており、着手金などを一括で用意することが困難な実情にあるためです。
実務上は、委任契約を結んだあとに毎月の家計から無理のない範囲で一定額を事務所へ積み立てていき、費用の準備が整った段階で裁判所への申立てを行う運用が一般的です。
ただし、対応方針は法律事務所ごとに異なるため、相談時に分割払いの可否や月々の積立額について事前に確認しておく必要があります。
裁判所費用は原則として一括納付が求められる
弁護士費用とは対照的に、裁判所へ納める申立手数料や予納郵券、官報公告費、管財事件における引継予納金などは、原則として一括で納付しなければなりません。
裁判所の手続きにおいては、法令で定められた費用の予納が完了しない限り審理を開始できない仕組みになっているためです。
納付の時期は、申立書の提出時や裁判所が指定する期日とされています。
特に破産管財人が選任される管財事件(少額管財や通常管財)では引継予納金が高額となるため、申立ての準備期間中にどのように資金を確保するかについて弁護士と十分に協議を重ねておくことが重要です。
費用の種類と支払い方法の比較
| 費用の種類 | 支払い先 | 分割払いの可否 | 納付方法・時期の目安 |
|---|---|---|---|
| 弁護士費用(着手金・報酬金等) | 法律事務所 | 対応している事務所が多い | 申立て準備期間中に毎月一定額を積立・分割払い |
| 裁判所費用(同時廃止) | 管轄裁判所 | 原則不可(一括納付) | 申立て時に収入印紙や予納郵券等を一括提出 |
| 裁判所費用(管財事件の予納金等) | 管轄裁判所 | 原則不可(一括納付) | 申立て時または裁判所が指定する期日までに一括振込 |
自己破産の弁護士費用を分割払い(積立)できる仕組み
手元にまとまった資金がない状態であっても自己破産の弁護士費用を分割で支払える背景には、債務整理の手続きにおいて督促や返済が一時的に止まる仕組みが関係しています。
借金の返済に追われている状態からどのように費用を捻出していくのか、依頼から裁判所への申立てに至るまでの流れとともに整理します。
受任通知の送付による督促と返済の停止
弁護士に自己破産の手続きを依頼して委任契約を締結すると、弁護士から各債権者に対して代理人となった旨を知らせる「受任通知」が発送されます。
貸金業法などの規定により、受任通知を受け取った債権者は債務者本人に対する直接の取り立てや電話、郵便などによる督促を行うことができなくなります。
これにより、債権者への返済も一時的に停止することになり、督促に追われることなく生活再建に向けた準備に専念できるようになります。
返済に充てていた資金を活用した費用の積立
受任通知の送付によって債権者への支払いが止まると、これまで毎月の借金返済に充てていたお金を手元に残せるようになります。
この浮いた資金を活用し、毎月の生活に支障が出ない範囲で一定額を事務所へ積み立てていく方法が広く採られています。
これまでの借金返済分を弁護士費用の積立に振り替える形をとるため、現在まとまった預貯金がない場合でも費用の準備を進められます。
毎月の積立額や期間は、依頼者の収入や生活費の状況、収支のバランスを考慮しながら、無理のない範囲で計画が立てられるのが一般的です。
費用の準備完了と裁判所への申立て手順
弁護士費用の積み立てを行っている期間中には、申立てに必要な公的書類の収集や財産目録の整理、家計収支の記録といった準備も並行して進められます。
費用の積み立てが完了し、申立書や添付資料などの提出準備がすべて整った段階で、弁護士が管轄の地方裁判所へ自己破産の申立書を提出します。
| 手続きの流れ | 主な対応内容 | 資金・費用の動き |
|---|---|---|
| 1. 依頼と受任通知の発送 | 弁護士と委任契約を締結し、債権者へ通知を送付する | 債権者からの督促と毎月の返済が一時的に停止する |
| 2. 費用の積立と書類の準備 | 家計簿の作成や必要書類を集めつつ、毎月一定額を積み立てる | これまで返済に充てていた資金を弁護士費用として積み立てる |
| 3. 裁判所への申立て | 準備が整った段階で弁護士が裁判所へ申立書を提出する | 積立完了後に裁判所費用の納付を行い、審理が開始される |
裁判所費用が支払えない場合の主な対処法と直前借入れのリスク
裁判所費用の準備が難しい場合の主な対処法
資力が乏しく手続き費用の工面が困難な場合には、公的制度の活用や周囲の協力などを検討する方法があります。
代表的な制度として挙げられるのが、法テラス(日本司法支援センター)による民事法律扶助制度です。
法テラスでは、収入や保有資産が一定の基準以下である方を対象に、弁護士費用や実費などの立て替えを行っています。
立て替えられた費用は、手続き開始後に無理のない範囲で原則として分割返還していく形となります。
| 債権者数 | 着手金 | 実費 | 合計目安 |
|---|---|---|---|
| 1〜10社 | 132,000円 | 23,000円 | 155,000円 |
| 11〜20社 | 154,000円 | 23,000円 | 177,000円 |
| 21社以上 | 187,000円 | 23,000円 | 210,000円 |
なお、上記の金額はあくまで目安であり、事案の複雑さや法テラスにおける審査の結果によって変動することがあります。
法テラスの利用以外には、親族から費用の援助を受ける手段も考えられます。
親族から金銭的な支援を受ける際は、将来的に返済を要する新たな借入れではなく、生活再建に向けた支援であることを明確にしておく配慮が求められます。
また、一部の地方裁判所では管財事件における引継予納金の分割払いに応じている運用も見られます。
自身が申し立てる管轄裁判所の運用や納付時期について、事前に弁護士と確認しておくと安心です。
費用工面を目的とした直前借入れのリスク
手元に資金がないからといって、手続き費用を捻出するために消費者金融やクレジットカードなどから直前に新規の借入れを行うことは避ける必要があります。
すでに返済不能な状況に陥っているにもかかわらず、自己破産を前提として借入れを行う行為は、詐術を用いた信用取引と判断され、破産法上の免責不許可事由に該当するおそれがあります。
返済の意思や能力がない状態での借入れは、免責が許可されないリスクを抱えるだけでなく、場合によっては詐欺罪などの法的責任を問われる可能性もあります。
費用が用意できない場合であっても安易な新規借入れに頼るのではなく、公的制度の利用や弁護士への相談を通じ、適法な手段による解決を図ることが重要です。
自己破産の費用に関するよくある質問と弁護士への相談

自己破産の費用や手続きの進め方に関しては、ご自身の状況に合わせて様々な疑問が生じることが少なくありません。
ここでは、費用や手続きに関してよく寄せられる質問について解説します。
Q. 弁護士に依頼せず自分で手続きすれば費用は安くなりますか?
弁護士へ依頼せずに債務者本人が裁判所に申し立てを行う場合、弁護士費用が発生しないため、支払う費用の総額を裁判所の実費や予納金のみに抑えること自体は可能です。
ただし、自己破産の申立てには多岐にわたる疎明資料の収集や申立書類の作成が必要となり、不備があると手続きが遅延する可能性があります。
また、受任通知による督促の一時停止といった効果も得られない点に留意が必要です。
Q. 個人再生の場合も費用を分割払いできますか?
個人再生を検討する場合であっても、自己破産と同様に弁護士費用の分割払いや積立に対応している法律事務所が多く見られます。
ただし、個人再生は再生計画案の作成や将来の弁済履行可能性の確認など手続きが複雑になる傾向があります。
そのため、自己破産の手続きと比べて費用体系や設定金額が異なる場合がある点について事前の確認が重要です。
Q. 法人の自己破産にかかる費用は個人と異なりますか?
法人の破産手続きは、個人の自己破産と比べて処理すべき法律関係が複雑になりやすく、原則として管財事件として扱われるため、裁判所に納める予納金や弁護士費用の総額が高額になるのが一般的です。
会社財産の換価や売掛金の回収、従業員への対応など多岐にわたる清算事務が発生するため、個人の手続き以上に計画的な費用の見通しと準備が求められます。
適切な手続きの選択と費用の見通しに関する相談
借金問題の解決手段には自己破産だけでなく、任意整理や個人再生など複数の選択肢があり、債務額や収入、財産の保有状況によって適した手続きは異なります。
手元にまとまった資金がない場合でも、分割払いや法テラスの民事法律扶助制度など、負担を軽減しながら生活再建を図る方法が用意されています。
ご自身の家計状況や債務の全体像に応じた適切な手続きを選択するためにも、費用の支払方法や見通しを含めて弁護士に相談し、今後の進め方を検討することが有用です。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。