薬物事件の種類|取り締まる法律とは
薬物事件は、芸能人の逮捕などにより、一般の方でもニュースなどで目にする機会も多くある事件のひとつです。覚せい剤や大麻、コカインなど、薬物と一言で言ってもいくつかの種類があることはなんとなく知っている方も多くいらっしゃると思います。
この記事では、薬物を取り締まる法律の種類について解説していきます。
覚せい剤取締法
覚せい剤取締法は、覚せい剤及び覚せい剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締りを行うことを目的としており、それぞれ罰則が異なります。
①輸出・輸入・製造
覚せい剤の営利目的でない輸入や輸出・製造をした場合、1年以上の有期懲役になります。
営利目的の場合、無期限または3年以上の懲役、または情状により無期限または3年以上の懲役および1000万円以下の罰金となります。
②所持・譲渡・譲受・使用
覚せい剤を自分で使うために所持していた場合は、10年以下の懲役になります。営利目的でない譲受・譲渡・使用の場合も所持と同様に10年以下の懲役です。営利目的の場合には、1年~20年の有期懲役、または情状により1年~20年の有期懲役および500万円以下の罰金となります。
大麻取締法
大麻取締法は、大麻の所持、譲渡、譲受、栽培、輸出入を禁止し、罰則を定めています。
①輸出・輸入・栽培
大麻の営利目的でない輸出・輸入・栽培をした場合、7年以下の懲役になります。
営利目的の場合、10年以下の懲役、または情状により10年以下の懲役および300万円以下の罰金となります。
②所持・譲渡・譲受
大麻の営利目的でない所持・譲渡・譲受をした場合は、5年以下の懲役になります。
営利目的の場合には、7年以下の懲役、または情状により7年以下の懲役および200万円以下の罰金となります。
覚せい剤と違い、大麻は使用するだけでは処罰されません。それは、古くから日本では大麻草の栽培や利用が行われており、例えば大麻種子が調味料などに使われているためと言われています。
麻薬及び向精神薬取締法
麻薬及び向精神薬取締法は、麻薬及び向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し等について必要な取締りを行うこと等を目的としている法律です。対象となる麻薬は、ヘロイン、コカイン、モルヒネ、MDMAなどです。
①ヘロイン
ヘロインは特に依存性が高く危険な薬物のため、他の麻薬よりも刑が重くなっています。
ヘロインの営利目的でない所持・譲渡・譲受は、10年以下の懲役。
営利目的の場合には1年以上の有期懲役、または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金となります。
②コカイン・モルヒネ・MDMAなど
コカイン・モルヒネ・MDMAなどの営利目的でない所持・譲渡・譲受は、7年以下の懲役。
営利目的の場合には1年以上10年以下の懲役、または情状により1年以上10年以下の懲役および300万円以下の罰金となります。
③向精神薬
向精神薬は、精神科医からの処方などにより使用することなどが一般的で、この場合は処罰の対象にはなりません。譲受も処罰対象とはならず、譲渡や譲渡目的での所持、輸出入や製造について刑罰が定められています。
営利目的でない譲渡・譲渡目的での所持の場合、3年以下の懲役。営利目的の場合は5年以下の懲役、または5年以下の懲役および100万円以下の罰金となります。
輸出入や製造はこれよりも重い刑罰となっています。
あへん法
あへん法は、けしの栽培、あへんやけしがらの譲渡、譲受、所持等について必要な取締を行うことを目的とした法律です。
①けしの栽培
営利目的でない場合、1年以上10年以下の懲役。
営利目的の場合、1年以上の有期懲役、または1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金。
②あへんの輸出入・製造、けしがらの輸出入
営利目的でない場合、1年以上10年以下の懲役。
営利目的の場合、1年以上の有期懲役、または1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金。
③あへんの譲渡・譲受・所持、けしがらの譲渡・譲受・使用・所持
営利目的でない場合、7年以下の懲役。
営利目的の場合、1年以上の10年以下の懲役、または1年以上の10年以下の懲役および300万円以下の罰金。
④あへんの使用
あへんを使用した場合には、7年以下の懲役です。
薬機法
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)では危険ドラッグと呼ばれる薬物について規制をしています。
危険ドラッグの使用・所持・製造・輸入・販売・授与・購入・譲受は禁止されており、営利目的でない場合、3年以下の懲役刑または300万円以下の罰金あるいはその両方。営利目的の場合には5年以下の懲役刑または500万円以下の罰金あるいはその両方となります。
薬物事件で逮捕されてしまったら
薬物事件で逮捕された場合、隠している薬物を捨てたり、売人と連絡を取り口裏合わせをするなど、証拠隠滅のおそれがあるとされ、逮捕後勾留されてしまうことがほとんどです。さらに勾留延長された場合には、起訴されるまで最大で23日間身柄の拘束が続く可能性があります。
薬物の種類や使用した量や依存度などにより、不起訴処分を目指すことが難しい場合もありますが、弁護士に依頼することで、なるべく早く身柄拘束からの解放を目指したり、必要以上に重い刑にならないよう弁護活動をすることが可能です。もし薬物に手を染めてしまったら、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。