逮捕歴を削除したい|削除の方法やポイントについて解説
何らかの事件で逮捕された場合、実名等がニュースで報道されることがあります。ニュースで報道されると、事件によってはネットで拡散されます。自分の名前を検索しただけで逮捕されたことや事件の詳細、世間を騒がせた事件等では生い立ちまでも掲載され、削除されることなく残っていることがあります。
この記事では、逮捕歴の削除の方法やポイント、弁護士への依頼について解説します。
逮捕歴そのものについては以下の記事をご参照ください。
逮捕歴の削除はできるか?
逮捕歴が削除されずにネット上に残り続けると以下のような実害がでてきます。
- 偶然知り合いに見られて逮捕歴がバレてしまった
- 就職や転職時に採用担当者がネット上で逮捕歴を確認し就職できなかった
- 家を借りようと思ったが逮捕歴により契約してもらえなかった など
逮捕歴の削除はできるのでしょうか?
逮捕歴の削除が可能かの判断基準
ネットの記事の削除が可能かどうかの判断基準について解説します。
最高裁判所の判断
投稿記事削除仮処分決定認可決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件(平成29年1月31日決定 民集 第71巻1号63頁)
検索事業者に対し、自己のプライバシーに属する事実を含む記事などが掲載されたウェブサイトのURL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋を検索結果から削除することを求めることができるかについては、以下の事項を考慮して判断する。
- 検索結果に表示されるプライバシーの性質及び内容
- 検索結果に表示されることで、その者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度
- その者の社会的地位や影響力
- 検索結果に表示された記事等の目的や意義
- 上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化
- 上記記事等にプライバシーに属する事実を記載する必要性 など
引用:最高裁判所判例
投稿記事削除請求事件(令和4年6月24日判決)
投稿記事削除請求事件において、インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいてある者のプライバシーに属する事実を適示するメッセージが投稿された場合にその者が上記情報ネットワークの運営者に対して上記メッセージの削除を求めることができるとされた事例
引用:最高裁判所判例
逮捕歴削除にあたって考慮されるポイント
判例から、削除にあたって考慮されるポイントは主に以下とされています。
- 事件から何年経過しているか
- 事件の内容、態様、性質
- 裁判の結果、刑事処分の内容
- 当該個人が公的立場にあるか否か
- 公表された当時の目的 など
事件を一般に閲覧可能にする公的な利益と当該事実を公表されない法的利益とを比較衡量し、後者の優越が認められる場合には逮捕歴の削除を求められるとされます。
逮捕歴は自分で削除できるか?
逮捕歴は自分で削除可能な場合があります。
投稿されているサイトへ削除請求する方法
投稿されているサイトへ直接削除請求するには、サイトの管理者へ削除請求をします。請求方法はサイトによって異なりますが、以下の方法が多いです。
- お問い合わせフォームを利用する
- お問い合わせフォームが無い場合|メール
サイトに設置されているお問い合わせフォームや削除依頼フォームから、削除対象のURLや削除請求の理由を記入し削除請求をします。
お問い合わせフォームが無いサイトもあります。その場合にはメールで削除請求をします。サイトには問い合わせ先としてメールアドレスが掲載されていることがあるので、そちらに削除請求メールを送ってみます。
補足「忘れられる権利」について
憲法制定時にはインターネットが普及していなかったため人権として明記されていない新しい人権、忘れられる権利について解説します。
自身や親族等の犯罪に関する報道がインターネットで拡散されると永遠に残り続けるため、例えば就職や結婚等の時に不利益を受ける可能性があります。
犯行後一定の年月が経過した場合には検索エンジンでの検索結果に報道等が表示されないようにしてもらう権利、「忘れられる権利」を認めるべきではないか?という議論があります。
「忘れられる権利」は2016年4月、欧州議会で「一般データ保護規則」が可決され、その17条において明文化されました。
日本の最高裁判所では「忘れられる権利」として明言はしていませんが、平成29年1月31日決定により、検索結果からの削除については一定の場合には認められるとの判断が示されています。
逮捕歴の削除は弁護士にご依頼を
お問い合わせフォーム等から削除請求をしても、サイト側が削除に応じないこともあります。その場合には弁護士に依頼しましょう。
逮捕歴の削除を弁護士に依頼すべき理由
削除請求をするにあたっては、権利侵害があるとサイト側が納得できる理由が必要です。自分で削除請求をしても削除に応じてくれなかった場合には、削除請求の理由が不十分だった可能性があります。その場合には弁護士に依頼しましょう。
削除請求の理由|法的根拠を記載
依頼された弁護士は、削除請求の理由に法的根拠を的確に記載し、任意での削除を求めます。逮捕歴や前科等に係る事実を公表されない法的利益とは、いわゆるプライバシー権に基づく権利です。プライバシー権は憲法で保障されていると考えられています。
プライバシー権侵害にあたる場合であっても、直ちに記事の削除が認められるわけではありません。逮捕に関する報道の公益性およびその記事を一般に閲覧可能な状態にし続ける理由と、逮捕の事実を公表されない法的利益を比較し、後者の利益が優越することが明らかな場合には削除を求められます。弁護士は当該記事におけるプライバシーの保護が公益性に優越することを主張し削除請求します。
裁判所へ削除仮処分命令を申し立てる
任意での削除請求に応じてもらえなかった場合には、裁判所に対し削除仮処分命令を申し立てます。仮処分とは、裁判をする前に裁判所に一定の判断(記事を削除する判断)をしてもらう手続きです。正式な裁判の場合判決が出るまで時間がかかりますが、仮処分が認められれば申し立て後約1か月で仮処分命令がサイト側に届きます。仮処分の申し立てによって迅速に権利が守れます。
多くのケースでは仮処分の命令書が届くと自主的にプライバシー侵害記事等の削除に応じてくれます。
仮処分の申し立ては裁判所に削除を認めてもらえるように必要書類を整えなければならないため、個人での申し立ては困難です。専門的な知識を有する弁護士への依頼をおすすめします。
削除を求めて訴訟を行う
仮処分の申し立てが認められ、仮処分の命令書が裁判所から届いても削除に応じてくれない場合もあります。その場合には訴訟を提起するしか方法はありません。
当該事案のプライバシー侵害と国民の知る権利とを比較した場合にどちらが優越するかを裁判所が判断します。
逮捕歴を削除するための弁護士費用相場
逮捕歴を削除するために弁護士に依頼した場合の費用の相場についてお伝えします。
任意での削除を求める場合
問い合わせフォーム等を利用し、任意での削除を求める場合の弁護士費用の相場は以下の様になります。
- 着手金・・・5~10万円
- 報酬金・・・5~10万円
- その他実費等
仮処分申し立て
問い合わせフォーム等を利用して任意での削除を求めたけれども応じてくれなかった場合には仮処分の申し立てが有効です。
- 着手金・・・20万円
- 報酬金・・・15万円
- その他実費、日当
実費は申し立てに必要な印紙代や郵券代、郵送料等です。
仮処分の申し立てをすると弁護士は審尋のため裁判所に出頭しなければなりません。そのため日当や交通費がかかります。
訴訟を提起した場合
仮処分の決定が届いても削除に応じてくれなかった場合には、訴訟を提起するしかありません。裁判で戦うためには法的な知識が不可欠です。ネット上に残っている情報の削除に関する実績が多数ある弁護士に依頼しましょう。
- 着手金・・・(15~50万円)
- 報酬金・・・(15~50万円)
- その他実費、日当
実費は申し立てに必要な印紙代や郵券代、郵送料等です。
訴訟を提起すると、弁護士は公判期日に裁判所に出頭します。毎回日当や交通費がかかります。
まとめ|逮捕歴の削除はネクスパート法律事務所にお任せください
逮捕歴をそのままにしておくことにメリットは1つもありません。デメリットばかりです。逮捕歴の削除は自分でできる場合もありますが、削除理由には法的根拠を求められることも多いため、専門的な知識が不可欠です。
自分で対応することが難しいと感じた場合には、弁護士への依頼をご検討ください。