国選弁護人制度とは?制度の概要やよくある質問を簡単に解説

この記事では、国選弁護人制度とはどのようなものなのかについて、国選弁護人制度の概要、国選弁護人・私選弁護人それぞれのメリット・デメリットを挙げながら解説します。

 

国選弁護人とは?概要とよくある疑問を解説

国選弁護人制度は、憲法上認められた制度です。

被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する

引用元:日本国憲法第37条第3項

 

ここでは、以下について解説します。

 

  1. 国選弁護人制度とは?
  2. どんなときに利用できるのか?
  3. 国選弁護人の依頼方法は?
  4. 国選弁護人は変更・解任できるのか?

 

国選弁護人制度とは?

国選弁護人制度とは、刑事事件の被疑者・被告人が経済的な理由で弁護人を選任できない場合に、国が弁護人を選任し、費用を負担する制度です。

 

以下の5つの要件に基づき利用できます。

 

  • 刑事事件であること
  • 勾留されていること
  • 資力が乏しく、私選弁護人を選任出来ない被疑者・被告人であること
  • 国が資格を有する弁護士を選任する
  • その費用も国が負担する

 

どんなときに利用できるのか?

国選弁護人を利用できるのは、以下のすべてに該当するケースです(刑事訴訟法37条の2参照)。

 

刑事事件である

民事事件では国選弁護制度を使えません。国選弁護制度は刑事事件の被疑者や被告人の人権を保護するための制度です。

 

勾留されている

勾留前の逮捕期間中は使えません。逮捕後、警察による取調べが行なわれ、検察に送致、検察が勾留請求をして裁判官による勾留請求が認められるまでの、一番大切ともいえる時期にはつけてもらえません。

 

逮捕後勾留されるまでの、取調べに対するアドバイスや今後の流れなどを相談するための制度として、1回だけ無料で弁護士に相談できる当番弁護士という制度があります。

 

資力が乏しく、私選弁護人を選任できない被疑者・被告人である

依頼するための資力要件が定められています。被疑者あるいは被告人本人の、預貯金等の資産が50万円以下であることが必要です。

 

なお、憲法には「被告人」とありますが、現在は、勾留されている被疑者も国選弁護人を利用できます。

 

国選弁護人の依頼方法は?

国選弁護人の依頼方法を簡単に説明します。

まず、現金や預金を合わせて50万円未満であることを証明する「資力申告書」を提出し、国選弁護人の選任を請求します。

 

その後、国選弁護人請求の要件を備えているか審査し、必要な要件があると認められれば、弁護人を付す旨の決定がなされます。

 

裁判所が日本司法支援センター(法テラス)へ国選弁護人の人選を求め、法テラスがその日の名簿に載っている弁護士の中からランダムに1名をピックアップし、裁判所がそれに基づき国選弁護人を決定、選任されます。

国選弁護人は変更・解任できるのか?

国選弁護人は国と弁護士との間で合意して、国が選任する弁護人です。国選弁護人を解任できるのは基本的に国だけです。

 

解任事由は刑事訴訟法第38条の3第1項で定められていますが、認められている解任事由に該当しない場合には解任請求は認めてもらえません(限定列挙)。

 

法律で認められている国選弁護人の解任事由は5つです。

 

  1. 私選弁護人が選任され国選弁護人が不要になったこと
  2. 被告人と弁護人が利益相反関係にあること
  3. 弁護人が心身の故障などで弁護活動ができないこと
  4. 弁護人が職務に著しく違反したこと
  5. 被告人が弁護人を暴行・脅迫して弁護活動ができないこと

 

被告人・被疑者の意思で国選弁護人を解任するには、1の手段(私選弁護人の選任)を選ぶしかありません

 

日本では、刑事裁判で弁護人を付ける権利が憲法で保障されているため、国選弁護人が弁護活動に必要な最低限度のことをしていれば、解任が認められることはほぼありません。弁護人自身も、自分の意思だけで辞任はできません。

 

被疑者や被告人はいつでも私選弁護人を選任できます。私選弁護人の選任は、国選弁護人の解任事由に該当し、国選弁護人は解任されます(刑事訴訟法38条の3第1項1号)

 

私選弁護人を選任して国選弁護人が解任されると、国選弁護人制度の再度利用はできません。私選弁護人であれば、何回でも解任・選任できますが、裁判のための準備が大変になるというリスクがあります。

 

国選弁護人を付けた際の費用は?

国選弁護人の弁護士費用は無料ですが、裁判所が判決を言い渡すときに、被告人に訴訟費用を負担させることがあります。したがって、国選弁護人を付けた際の費用が完全に無料というわけではありません

 

国選弁護人制度の対象事件

憲法に「被告人」とあるとおり、国選弁護制度は当初、起訴された被告人のみを対象としていました。

 

しかし、国選弁護制度が設立されて以降、被疑者段階からの国選弁護制度の創設が最大の課題とされてきました。

 

現在では、被疑者段階でも国選弁護人制度を利用できるのでしょうか?

ここでは、国選弁護人制度の対象事件について解説します。

 

国選弁護人制度の対象事件の改正について

<被疑者国選弁護制度の変遷>

逮捕・勾留段階で弁護人がなく、たった1人で警察の取調べを受けると、刑事手続きの内容や自分自身の権利を理解できないまま自身に不利な対応をしてしまう可能性があります。

具体的には、不本意な供述調書に署名押印をさせられる、被害者との示談交渉を行えないなど、様々な不利益が生じかねません。

 

そのような不利益をなくすため、被告人だけではなく、被疑者でも利用できる被疑者国選弁護制度が始まります

 

被疑者段階の国選弁護制度は、「被疑者に対して勾留状が発せられている場合」において、2006年、2009年と下記のように段階的に実施されています。

 

第1段階

死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮にあたる事件(2006年10月実施)

※殺人、傷害致死、強姦のような、3人の裁判官で審理することとされている事件や強盗などの重大事件が対象

 

第2段階

死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件(2009年5月実施)

※第1段階の重大事件のほか、窃盗、障害、業務上過失致死、詐欺、恐喝などが対象

 

全種類の犯罪で国選弁護人制度を利用可能に

最終的に2018年に実施された国選弁護人制度以降、身柄が勾留状態にある全ての被疑者=勾留状が発せられている全ての事件が対象になりました。

 

国選弁護人と私選弁護人の比較

ここでは、国選弁護人と私選弁護人の違いについて、説明します。

国選弁護人と私選弁護人との違い

国選弁護人は、被告人からの請求(刑事訴訟法第36条)または法律の規定(刑事訴訟法第37条)に基づいて「国が選任」する弁護人です。

 

これに対して私選弁護人は、被告人や被疑者、あるいはその家族などの関係者が、直接弁護士と契約して選任する弁護人です。

 

つまり、国選弁護人と私選弁護人の大きな違いは、誰が選任した弁護人かという点です。

 

国選弁護人のメリット・デメリット

国選弁護人のメリット

国選弁護人の最大のメリットは、原則として費用がかからないことです。国選弁護人は国と弁護士との間で合意して、国が選任するため、弁護士費用は国が支払います。

 

判決で、被告人が訴訟費用を支払えと命じられたときには、被告人はその費用を負担しなければなりません。ただし、訴訟費用はそれほど高額ではないので(高くても10万円くらい)、負担はそれほど重くありません。

 

自分で弁護士を探す必要が無いことも、大きなメリットです。弁護士を探すためには、弁護士の情報収集からスタートする必要があります。勾留されている被疑者や被告人本人による弁護士情報の収集はかなり難しいと思われます。

 

ご家族やご友人であれば、インターネットで検索できますが、どの弁護士に依頼するか決めるまで、様々な弁護士事務所に足を運び、実際に弁護士と話をしなければなりません。

 

国選弁護人は国が選任してくれるので、法テラスや弁護士会などに連絡して探したり、家族などに依頼したりして探してもらう必要はありません。

 

国選弁護人のデメリット

国選弁護人のデメリットは、勾留状が発布される前の段階では選任されないことです。つまり、逮捕される前の段階や、逮捕された後~勾留状が発付されるまでの段階では選任されません

 

逮捕される前の任意取調べの段階でも弁護人のサポートが必要な場合がありますが、国選弁護人のサポートは受けられません。

 

逮捕された後~勾留状が発付されるまでの72時間は、取調べに適切な対応ができるかどうかが大変重要です。その段階で国選弁護人のサポートが得られないというのが、国選弁護人の大きなデメリットです。

 

また、国選弁護人は国が選任するため、被告人や被疑者、あるいはその家族などの関係者が国選弁護人の弁護活動に不満を持ったとしても、国選弁護人を解任できません。

 

国選弁護人を解任できるのは国だけです。よほどのことがない限り、国は国選弁護人を解任しません。

 

つまり被告人らは、その意向に沿わない、納得のいく弁護活動をしてもらえない、あるいは刑事弁護の経験のない弁護士が国選弁護人になったような場合でも、最後までその弁護活動を受け入れなければなりません。

 

また、国選弁護人は、国から支払われる安い報酬で弁護活動をしているため、「最低限のことしかしない」という弁護人も少なくありません。被告人や被疑者の家族に連絡をする義務はないので、家族へ連絡をしない弁護人もいます。

 

反対に、非常にやる気があり、経験豊富な国選弁護人が選任される場合もあります。その国選弁護人が勾留決定に対する準抗告申立て(刑事訴訟法429条1項2号)などを行い、それが認められた場合、被疑者は身柄を解放されます。しかし、「勾留されている」要件が消えるため、国選弁護人は自動的に解任されてしまいます。

 

釈放されても手続は続きますので、その後の手続は国選弁護人がいない状態で、自分で対応することになります。

 

私選弁護人のメリット・デメリット

私選弁護人のメリット

私選弁護人のメリットは、いつでも選任できることです。逮捕される前、逮捕された後~勾留状が発付されるまでの間はもちろん、勾留後や保釈中でも選任できます。

 

逮捕される前であれば、例えば逮捕を回避して在宅事件にしてもらう、身に覚えのない事件についての容疑であれば容疑を晴らすために具体的なアドバイスをしてもらう、などの弁護活動をしてもらえます。

 

また、私選弁護人の場合、その弁護活動に不満があれば、自分の納得のいく弁護活動をしてくれる別の弁護士を探し、不満のある弁護人を解任できます。

 

国選弁護人は家族による選任はできませんが、私選弁護人であれば、家族でも依頼できます。

 

私選弁護人のデメリット

私選弁護人のデメリットは、弁護士費用がかかることです。私選弁護人は、被告人や被疑者、あるいはその家族などの関係者と弁護士との間で合意して、被告人等が依頼し弁護士費用を支払います。

 

弁護士に被告人等の弁護を依頼すると、少なくとも数十万円、困難な事件になると百万円単位の弁護士費用を支払わなければなりません。

 

弁護士に依頼後、その弁護士の弁護活動に不満が出てきた場合には、その弁護士を解任して別の弁護士に依頼することもできます。しかし、前の弁護士にすでに支払った着手金は戻ってこないので、金銭的負担はかなり大きいといえます。

 

国選弁護人と私選弁護人どちらに依頼するべき?

国選弁護人がおすすめできるケース

勾留後に、弁護士に相談したいけれども資力がない場合には、国選弁護人の利用をおすすめします。

 

私選弁護人がおすすめできるケース

逮捕される前の取調べ段階から、あるいは逮捕されてから勾留状が発付されるまでの期間や保釈中は国選弁護人の選任を請求できません。

 

以下の場合には私選弁護人への依頼をおすすめします。

  • 勾留前に取調べに向けたアドバイスをしてもらいたいとき
  • 示談交渉を進めてもらいたいとき
  • 逮捕や勾留されないように弁護活動をしてもらいたいとき
  • 釈放後も裁判手続きの弁護人をしてもらいたいとき 等

 

勾留後であっても、金銭的にある程度余裕があり、納得のいく弁護活動をしてもらいたいときには、刑事弁護活動の経験が豊富で熱心な弁護士を探して依頼することをおすすめします。

 

国選弁護人から私選弁護人に変更する方法

被疑者や被告人が私選弁護人を選任すると、国選弁護人は解任されます。起訴前であれば裁判官が、起訴後であれば裁判所が国選弁護人を解任します。

 

被疑者や被告人、その家族等が自分で国選弁護人の解任手続を行う必要はありません。私選弁護人を選任すると、私選弁護人が弁護人選任届を提出します。その時点で、国選弁護人が自動的に解任されると思っていただいて構いません。

 

まとめ

国選弁護人とはどのようなものか、私選弁護人との違いも含めてご紹介しました。

 

国選弁護人であろうと、私選弁護人であろうと、刑事弁護を熱心にやってくれるかどうかは弁護士次第ですが、熱心に弁護活動をしてくれる国選弁護人を選任してもらえるかどうかはわかりません。

 

金銭的にある程度余裕があり、納得できる弁護活動をしてもらいたいときには、刑事弁護活動に熱心できちんと状況を説明して弁護活動をしてくれる弁護士をご自身で探し、なるべく早い時点から私選弁護人として依頼することをおすすめします。

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