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目黒区西小山・日貸店舗業者に対し360万円の立退料が認められたケース

東京都目黒区西小山駅近くにある3階建の建物。その1階部分を月28万円で借り、日貸店舗として使用してきた借主。しかし、老朽化により建て替えるとして立退きを求められました!裁判所が借主に360万円の立退料を認めたポイントとは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成22年3月29日)
老朽化が激しく、また、天井にアスベストが使用されていた
本件建物は、築45年を超える建物で、天井にはアスベストが使用され、平成21年の駿河湾地震の際に外壁が崩落するなどの問題がありました。このような事情は、貸主の立替えの必要性を高める事情として考慮されました。
商業共同ビルを建築する建て替え計画は具体的ではなかった
貸主は、本件建物を取壊し、近隣建物の所有者と共に商業共同ビルを建築する予定であると主張しました。しかし、具体的な活動としては、目黒区に対し街づくりの構想案を提出するための検討しかまだされていない状況でした。そのため、裁判所は、実現可能性も不明で、具体的な日時も決定されていないとして、貸主の自己使用の必要性があるとは断定できないとの判断をしました。
借主の日貸店舗は移転が容易で、かつ、投資費用相当額の損害はほとんどなかった
借主は、その日貸店舗のために、それほど費用を投じていませんでした。そのため、移転をしたとしても投資費用相当額の損害はほとんど生じない状況でした。また、貸主は、日貸店舗により月20万円程度の利益を上げてきましたが、日貸店舗の性質上も移転は容易でした。このことから、裁判所は、立退き自体は認めました。
契約違反に関する貸主側の主張は考慮されなかった
貸主は、借主が本件建物に看板を勝手に設置し、無断で使用していることを主張し、契約違反による解除も主張していました。しかし、賃貸借契約書に看板の使用も目的とする旨の記載があったため、その主張は認められませんでした。
さらに、かかる事情は、立退料の算定においても考慮されていないものと思われます。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、契約違反による解除の主張と、期間満了による契約終了の主張がされている点にあります。契約違反があっても、それが軽微で解除事由としては弱い場合にも、立退料の算定の際には考慮される事情の1つになりえます。しかし、契約違反がそもそも存在していなければ、いずれの法律構成でも考慮されないのは明らかです。このことからわかることは、契約違反がありそうな場合、本当に契約違反があるのか、あるとして立退料の算定にどの程度影響を与えるのかを考えることが重要であるということです。