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足立区北千住・住居からの立退きに際し100万円の立退料が認められたケース

東京都足立区北千住駅近くにある木造瓦葺2階建の建物。これを月5万8000円で借り、住居として使用してきた借主。しかし、老朽化により建物としての効用が終了したとして立退きを求められました!裁判所が借主に100万円の立退料を認めたポイントとは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成22年5月28日)
築80年を超える建物で、倒壊する危険もある状態だった
本件建物は、築80年を超える建物で、本件建物が傾く可能性がある状態にあり、また瓦が脱落する可能性がある状況でした。また、地震の際には、倒壊する危険もある状態でした。このようなことから、裁判所は、本件建物の効用が失われたとまではいえないとしつつも、立退きを認める方向で判断をしました。
補修費用は高額で新築費用にも匹敵
本件建物が、上記のような状態にあったため、補修費用に1500万円ほどかかる見込みにありました。そのため、新築費用に匹敵する補修費用が必要な状況でした。このことからも、裁判所は、立退きを認める方向の判断をしました。
貸主は長年本件建物を使用してきた
貸主は、先代と併せて約70年もの間本件建物を使用してきました。裁判所は、この事情と上記の老朽化とを併せて、賃貸借契約の目的が相当程度達せられたとして、立退きを認めました。
裁判所は借主が本件建物を中心に生活をしてきたため、使用し続ける利益を考慮
貸主は、本件建物に隣接する土地を借り、その上に建物を建てて使用していました。そのため、貸主が本件建物を使用し続ける利益も多くありました。裁判所は、このことを考慮して、正当事由の補完として100万円の立退料を認めました。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、借主が本件建物を長年使用してきた事実が、貸主側に有利な事情としては用いられていないことです。目的建物を使用して店舗を経営していた場合には、その土地に固有の固定客が多くいる場合があり、これを考慮するときには立退料の算定にあたり、賃借人側に有利に作用します。しかし、住宅の場合、確かにその土地で築いたコミュニティー等もありますが、これが本当に失われるのか、失われるとして具体的にいくらの損害が生じるのかは判断が困難です。一方、建物にはいずれ寿命が来ることは明らかで、その点で賃貸借契約の目的が達せられたとの判断もされうるものといえます。
このことからわかることは、一見有利に見える事情も、金銭の請求という議論にどのように結びつくのかをよく考える必要があるということです。