自己破産すると銀行口座は凍結される?新規口座開設は可能?
「自己破産すると銀行口座が凍結されるってほんと?」
「自己破産では銀行口座は解約されるの?」
「自己破産すると新しい口座は作れなくなるの?」
自己破産すると一定の財産が処分されるため、ご自身が持っている銀行口座がどうなるか心配な方は少なくないはずです。
この記事では、自己破産による銀行口座への影響や自己破産における銀行口座の取扱いについて、次のとおり解説します。
- 自己破産すると銀行口座は凍結される?
- 自己破産で銀行口座が凍結されるとどうなる?
- 自己破産における銀行口座の凍結が解除されるのはいつ?
- 自己破産による口座凍結後に給与や年金が入金された場合はどうすればよい?
- 銀行口座の凍結に備えて自己破産前にすべきこと
- 自己破産で銀行口座はどこまで調査される?
- 自己破産で銀行口座が解約されることはある?
- 自己破産で銀行口座を隠してもバレる?
- 自己破産しても銀行口座は作れる?作れない?|新規口座開設について
自己破産を検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
自己破産すると銀行口座は凍結される?
自己破産すると銀行口座が凍結されることがあります。ただし、すべての銀行口座が凍結されるわけではありません。凍結されるのはどのような口座でしょうか。
ここでは、自己破産で凍結の対象となる口座について解説します。
借入先の銀行口座は凍結される
自己破産で凍結される口座は、借入れのある銀行口座です。同じ銀行に別支店の口座があれば、その口座でも凍結されます。
借入れには、銀行系カードローンやクレジットカードも含まれます。
自己破産で銀行口座が凍結されるとどうなる?
口座が凍結されると、具体的にどのようなことが起こるのでしょうか。
ここでは、口座凍結により生じる取引の制限内容を解説します。
出金・送金ができなくなる
銀行口座が凍結されると、一時的に出金・送金・口座振替(自動引き落とし)ができなくなります。
そのため、凍結された口座に給与や年金が振り込まれると、お金があるのに引き出せない状態になります。銀行によっては入金にも制限がかかることがあります。
預貯金残高と借金が相殺される
凍結された口座にあるお金は、借金と相殺(そうさい)されます。
相殺とは、預貯金残高を強制的に借金の返済にあてることです。相殺の対象となるのは、口座凍結時点の残高です。
自己破産における銀行口座の凍結が解除されるのはいつ?
ここでは、銀行口座が凍結される期間を解説します。
銀行口座が凍結されるタイミング
銀行口座が凍結されるのは、自己破産を弁護士に依頼した後、弁護士が送った受任通知を銀行が受け取った時点です。
受任通知は自己破産の依頼を受けて申立準備に入ることを知らせ、債権者からの取り立てをストップさせるものです。これを受けて銀行は債務者の口座を凍結します。
受任通知送付前でも、銀行への返済が長期間滞っていた場合は、銀行の判断により口座が凍結されるケースもあります。
銀行口座の凍結が解除されるタイミング
口座凍結が解除されるまでの期間は概ね1~3ヶ月です。
口座に残高がない場合や、残高があっても借金の返済に不足する場合には、残った借金を保証会社が債務者に代わって銀行に返済します。これを代位弁済(だいいべんさい)といいます。
代位弁済により銀行は借金を回収できるため、通常は、代位弁済後に口座凍結を解除します。代位弁済が終了するまでに1~3ヶ月程度かかります。
自己破産による口座凍結後に給与や年金が入金された場合はどうすればよい?
ここでは、口座凍結後に入金された預貯金の取扱いについて解説します。
銀行に払い戻しを依頼する
凍結後に入金されたお金は、法律上相殺が禁止されているため、借金と相殺されません。そのため、銀行によっては払い戻しに応じてもらえることがあります。
ただし、代位弁済との兼ね合いから手続きが複雑になるため、払い戻しまで時間がかかるのが一般的です。凍結後に入金されたお金をすぐに引き出すことは現実に困難なことを覚えておきましょう。
銀行口座の凍結に備えて自己破産前にすべきこと
口座凍結に備えて事前に対策をとることで、凍結によるリスクを最小限に抑えられます。
ここでは、銀行口座の凍結に備えて自己破産前にすべきことを解説します。
預貯金を引き出す
当面の生活費を確保するために必要なお金を引き出して口座凍結に備えましょう。
ただし、むやみに出金せず必要最低限の引き出しに留めなければなりません。頻繁な入出金や一度に数十万円の出金がある場合は、後の自己破産の手続きにおいて、浪費や財産隠しが疑われるからです。
自己破産では、過去2年分の通帳のコピーを提出します。裁判所に浪費や財産隠しを疑われないためには、口座からの出金の使途を説明しなければなりません。
お金を引き出す場合は、事前に自己破産を依頼する弁護士に相談するとよいでしょう。
給与・年金等の振込先を変更する
借入先の銀行口座を給与の振り込み口座に指定している場合は、あらかじめ勤務先に給与振り込み先の変更を申し入れましょう。
口座変更の手続きが間に合わない場合は、給与の支払方法を現金受取りに変更してもよいでしょう。
公共料金・家賃等の引き落とし口座を変更する
借入先の銀行口座を公共料金や家賃等の引き落とし口座に指定している場合は、事前に家引き落とし口座の変更手続きをとりましょう。
口座変更の手続きが間に合わない場合は、払込書等を送付してもらい現金で支払いましょう。
借金やクレジットカードの返済口座の残高をゼロにする
借入先の銀行口座を借金やクレジットカードの返済口座に指定している場合は、残高をゼロにしましょう。
弁護士から受任通知が送付された後に、クレジットカード等の返済金が引き落とされると、特定の債権者に優先して返済したと裁判所に疑われるおそれがあります。
特定の債権者に優先して返済すると、免責が許可されない可能性があります。自己破産では、すべての債権者を平等に扱わなければならないルールがあるからです。
なお、預金残高を一括で出金した場合は、その使途を裁判所に説明できるようにしましょう。
自己破産で銀行口座はどこまで調査される?
ここでは、自己破産で調査される銀行口座の範囲について解説します。
債務者名義の全ての口座が調査される
自己破産では、債務者名義のすべての預貯金口座が調査されます。預貯金の種別(普通・定期・当座)を問わず、自己名義の口座を開示しなければなりません。
裁判所は、過去2年分の取引履歴をチェックして、以下のような、免責不許可事由に該当する行為がないか調査します。
- 無駄遣いや浪費がないか
- 収入のほとんどをギャンブルに費消していないか
- 財産を隠していないか
- 債権者一覧表に記載されていない借入れがないか
家族名義の口座が調査されることもある
次のような場合、家族名義の口座も調査されることがあります。
- 公共料金や家賃を家族名義の口座で支払っている場合
- 債務者名義の口座から多額の資金が家族名義の口座に移されている場合
- 債務者が契約者である生命保険の保険料を家族名義の口座で支払っている場合
自己破産で銀行口座が解約されることはある?
自己破産で銀行口座が強制的に解約されることはあるのでしょうか?
ここでは、自己破産における銀行口座の取扱いについて解説します。
管財事件では破産管財人が口座を解約することもある
自己破産では、残高が20万円を超える預貯金は処分の対象となります。具体的には、破産管財人が口座を解約して回収したお金を債権者の配当にあてます。
処分対象となる金額の基準は、一つの口座の預貯金残高が20万円を超える場合だけではありません。複数の口座があり、それぞれの残高が20万円以下でも、合計が20万円を超えると、原則としてすべての預貯金が処分対象となります(裁判所による)。
自己破産で銀行口座を隠してもバレる?
ここでは、自己破産で処分を免れるために銀行口座を隠した場合のリスクを解説します。
裁判所や破産管財人の調査でバレる
銀行口座を隠しても裁判所や破産管財人の調査で必ずバレます。
複数の口座を持っている場合は、お金の流れを追うことで銀行口座を隠していないかどうかが判明します。具体的には、裁判所は提出された通帳の入出金履歴を見て、以下の点をチェックすることで、申告していない口座の有無を確認します。
- 給料の振込先口座の通帳が提出されているか
- 公共料金の引き落とし履歴があるか
- クレジットカードの利用料金や借金返済の引き落とし履歴があるか
- 家賃の振込履歴や引き落とし履歴があるか
- 生命保険料の引き落とし履歴があるか
- 給料の振込先の銀行口座はあるのか
- 電気ガス水道などの公共料金の引き落とし履歴があるか
- 家計収支表に記載のある収入や支出を確認できる履歴があるか
- 定期預金の自動引き落とし履歴があるか
破産管財人は、必要に応じて、金融機関に対して口座の有無や預金残高を照会したり、取引履歴を取り寄せたりすることがあります。
そのため、預貯金残高を過少申告したり、裁判所に申告した口座以外に別口座を持っていたりしても、自己破産では隠し通せません。
財産隠しは免責不許可事由に該当する
財産隠しは免責不許可事由に該当するため、意図的に財産を隠した場合は免責を受けられなくなる可能性があります。
財産隠しが悪質な場合は、詐欺破産罪に問われ、以下のいずれかもしくは両方が科せられることもあります。
- 懲役10年以下
- 1,000万円以下の罰金
自己破産しても銀行口座は作れる?作れない?|新規口座開設について
ここでは、自己破産しても新規口座を開設できるかどうかを説明します。
自己破産しても新たな口座は開設できる
自己破産しても新たな口座は開設できます。口座開設においては、申込者の個人信用情報はチェックされないからです。
ただし、借入先の銀行では、新規口座開設ができない可能性もあります。自己破産中や自己破産後に新たに口座を開設する場合は、借入先以外の銀行を選びましょう。
同一銀行で複数の口座は開設できない可能性がある
同一銀行では、別支店であっても複数の口座を開設できない可能性があります。
借入先の銀行口座が自己破産で解約された場合は、同銀行では以後口座が開設できない可能性があることを覚えておきましょう。
まとめ
自己破産すると借金先の銀行口座は凍結されます。
口座の凍結期間は、代位弁済が完了するまでの2~3ヶ月程度です。一時的とはいえ、口座が凍結されるとお金が引き出せなくなったり、各種料金の引き落としができなくなったりします。
借金先の銀行で給与を受け取っている場合や、公共料金を引き落としている場合は、事前に指定口座または支払方法を変更しましょう。
自己破産しても借入先以外の銀行であれば、いつでも新たな口座を開設できます。