一言に離婚といっても、実際にはいくつかの種類があります。
一般的に想像しやすいのは、夫婦で話し合いを行い、市役所に離婚届を提出する協議離婚です。
芸能人などでは、離婚裁判を経て別れるケースも見受けられます。
ここでは、6つの離婚の種類をわかりやすく解説し、それぞれの特徴や選び方について紹介します。
離婚の種類6つ
それでは、離婚の種類を紹介します。離婚の種類は6種類あります。
なお、裁判離婚の中には判決・和解・認諾の3種類が含まれるため、実質的には4分類とされることもあります。
下記はそれぞれの離婚方法を比較した表になります。
夫婦の合意 | 裁判所の関与 | 特徴 | |
①協議離婚 | 必要 | なし | ・夫婦で話し合って離婚届を提出する・最も多い |
②調停離婚 | 必要 | あり(調停委員が関与) | ・協議がまとまらない場合に家庭裁判所を交えて調整する ・夫婦の同意があれば離婚成立 |
③審判離婚 | 不要 | あり | ・調停が不成立でも離婚の必要性があると裁判所が判断した場合に成立 ・家庭裁判所が職権で離婚を決める |
④裁判離婚(判決離婚) | 必要 | あり(判決) | ・離婚原因の有無などを争い、裁判所の判決で離婚が成立・時間と費用がかかる |
⑤和解離婚 | 必要 | あり | ・離婚裁判の途中で夫婦が合意(和解)し、離婚が成立する |
⑥認諾離婚 | 不要 | あり | ・被告が原告の主張をすべて認めた場合に離婚成立 |
順番に各離婚方法について説明していきます。
協議離婚
協議離婚は、夫婦が話し合いによって合意し、市区町村役場に離婚届を提出することで成立する最も一般的な離婚方法です。
未成年の子どもがいる場合は、親権者の指定が必要です。
合意さえあれば第三者の介入なくスムーズに離婚できるのが最大のメリットですが、財産分与や養育費の取り決めが曖昧になりがちで、後々トラブルになるケースもあります。
「協議離婚とは|協議離婚の進め方や流れ・決めること」も参考にしてください。
調停離婚
調停離婚は、協議離婚が成立しない場合に家庭裁判所に申し立て、調停委員を交えて話し合いを行い、合意に至れば成立する離婚です。
冷静に話し合いができる環境が整っており、中立的な第三者の意見が入るため、感情的な対立を避けやすいメリットがあります。
離婚条件も、裁判所の関与により、平等なものとなりやすい特徴があります。
一方で、合意に至らなければ調停は不成立となり、次の段階である審判や訴訟に進む必要があります。
「離婚調停が不成立になる割合とその後の流れ」も参考にしてください。
審判離婚
審判離婚は、調停が成立しなかった場合に、家庭裁判所が職権で離婚を認める方法です。
例えば、夫婦の双方が離婚に合意しているにもかかわらず、下記のようなケースで調停が不成立になった際に用いられます。
- 一方が調停に出席しない、連絡が取れない
- 離婚条件などの細かい部分で折り合いがつかない など
裁判所が「このまま合意が整わないのは不合理」と判断すれば、審判によって離婚を成立させることがあります。
なお、審判に対して不服がある場合は、審判書が届いてから2週間以内に異議を申し立てることができます。
異議が出されると審判は効力を失い、離婚は成立しません。そのため、最終的には夫婦双方が審判内容を受け入れる必要があります。
裁判離婚
裁判離婚は、調停が不成立になった場合に家庭裁判所へ離婚訴訟を提起し、判決によって離婚を成立させる方法です。
離婚したい側(原告)が、裁判を起こし、離婚が認められるべき根拠(法定離婚事由)を主張します。
具体的には、不貞や暴力、長期間の別居などがあり、夫婦関係が破綻していると判断されると、裁判所が離婚を認めます。
公平な判断が得られる反面、費用や時間がかかり、精神的な負担も大きいのがデメリットです。
「離婚裁判で負ける理由と離婚できる確率|負けた場合離婚できない?」も参考にしてください。
和解離婚
和解離婚は、離婚裁判の途中で当事者が離婚に合意し、裁判所の関与のもとで和解調書を作成して離婚を成立させる方法です。
裁判を続けることによる精神的・経済的負担を避けたい場合に利用されることが多く、判決離婚よりも柔軟な条件で合意できる点がメリットです。
「和解離婚とは|協議離婚との違い・デメリット・流れなどを解説」も参考にしてください。
認諾離婚
認諾離婚は、離婚訴訟において被告側(配偶者)が原告の請求内容をすべて受け入れた場合に成立する離婚です。
裁判所の判決を待たずに、離婚が確定します。
争いを避けて早期解決を図れるのが利点ですが、離婚原因などを争うことなく終わるため、後で不満が残ることもあります。
離婚の種類ごとの割合は?
「離婚の種類別にみた年次別離婚件数及び百分率」を参考に、2023年の離婚の種類ごとの割合を表で紹介します。
件数 | 割合 | |
協議離婚 | 161,178 | 87.69% |
調停離婚 | 13,943 | 7.59% |
審判離婚 | 4,079 | 2.22% |
判決離婚 | 2,074 | 1.13% |
和解離婚 | 2,529 | 1.38% |
認諾離婚 | 11 | 0.01% |
見てわかる通り、全体の90%近くが協議離婚で成立しています。
裁判所を介して離婚をすることはあまり多くないことがわかります。
離婚の種類の選び方
ここでは、一般的な離婚の種類の選び方を紹介します。
協議離婚から始めるのが一般的
まずは協議離婚からスタートするのが一般的です。
協議離婚は、夫婦が話し合いのうえ合意できれば、役所に離婚届を提出するだけで成立します。費用も時間もかからず、精神的負担も比較的軽いのが特徴です。
離婚の手続きの負担は少ないですが、離婚条件(財産分与、親権、慰謝料など)の取り決めは、不平等であったり、抜け漏れが発生したりしやすいので注意しなければなりません。
協議離婚が難しいときは調停離婚
夫婦の話し合いだけでは離婚の合意に至らない場合や、感情的な対立がある場合は、家庭裁判所での調停離婚を検討しましょう。
調停では、中立的な調停委員が間に入り、話し合いをサポートしてくれます。直接顔を合わせずに意見を伝えることもできるため、冷静な対応がしやすくなります。
調停で合意が成立すれば、調停調書が作成され、法的な効力を持つ離婚が成立します。
調停も、合意がなければ成立しませんので、片方は離婚したくて、片方は離婚したくないような状況では、あまり効果がない場合もあります。
調停が不成立のときは裁判離婚
調停でも合意に至らなかった場合は、最終手段として裁判離婚に進みます。
離婚裁判をいきなり起こすことはできません、離婚裁判ができるのは、調停が不成立になったあとです(調停前置主義)。
裁判離婚では、配偶者の不貞や暴力など、民法で定められた法定離婚事由が必要となり、それを立証する証拠も求められます。
訴訟には費用や時間、精神的負担が伴いますが、裁判所の判断により最終的な決着がつくメリットもあります。
離婚時に行う財産分与の種類
離婚をする際は、夫婦で築いたお金や財産も清算(分け合う)ことになります。それを財産分与と呼びます。
ここでは、離婚時に行う3種類の財産分与の方法を紹介します。
なお、これら3つの分類は法律で明確に定義されているわけではなく、実務上の便宜的な整理です。
清算的財産分与
清算的財産分与は、夫婦が結婚生活の中で協力して築いた財産を公平に分けるための制度です。
一般的に財産分与といえば、清算的財産分与のことを指している可能性が高いです。
分与の対象となるのは、結婚後に夫婦が得た預貯金・車・株式・不動産などで、名義に関わらず、共有財産として扱われます。
離婚時には、これらの財産を精査し、原則として2分の1ずつ分け合います。
専業主婦(主夫)など収入がなかった配偶者でも、家庭の運営に貢献していたと認められれば、等しく請求が可能です。
「財産分与の割合はどのようにして決めるか?原則と例外を解説」も参考にしてください。
扶養的財産分与
扶養的財産分与は、離婚によって経済的に困窮してしまう一方の配偶者を支えるための制度です。
例えば、長年専業主婦だった方が離婚後すぐに働けない、高齢で収入が得にくい、病気や障害があって自立が難しい、といったケースで使われます。
清算的財産分与が、結婚生活で築いた財産を平等に分けることを目的としているのに対し、扶養的財産分与は、離婚後の生活を助けることが目的です。
そのため、扶養的財産分与は支払いに期限があったり、一定期間だけ生活費を補助する形になったりします。
支払い方法は、まとまった一時金や、毎月の生活費として分割で支払われる場合があります。
慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与は、離婚の原因となった配偶者の行為によって精神的な苦しみを受けた側が、そのつらさに対して金銭的な補償を受けるためのものです。
例えば、浮気(不貞行為)やDV(家庭内暴力)、モラハラなどがあった場合に用いられることがあります。
一見すると「慰謝料」と似ていますが、あくまで財産分与の中で慰謝料の要素を加味して金額を調整するという位置づけです。
清算的財産分与は、公平な財産の分け方を重視します。
対して、慰謝料的財産分与は、どちらに非があったかや、どれだけ傷つけられたか背景を踏まえて金額が変わるのが特徴です。
離婚慰謝料の種類
離婚時には、慰謝料が発生することがあります。そして慰謝料にもいくつかの種類が存在します。
ここでは、離婚時に発生する慰謝料の種類や、どのような場面で発生するのかをわかりやすく紹介します。
離婚自体への慰謝料
離婚自体への慰謝料は主に2つのパターンがあります。
【離婚に合意してもらうための慰謝料】
法的な離婚原因がないにもかかわらず、一方的に離婚を求められた側が精神的苦痛を受けた場合に支払われる慰謝料です。
例えば、「離婚したくないのに一方的に切り出された」といったケースで、離婚の合意を得るための交渉の一環として支払われることがあります。
これは、あくまで当事者間の合意に基づくものであり、法的な請求権が発生するわけではありません。
【離婚に至った事実に対する慰謝料】
もう一つは、不倫や暴力など、相手に明確な非がある場合に、結果として離婚に至ったときに発生する慰謝料です。
このケースでは、「離婚せざるを得なかった」という精神的苦痛そのものに対する補償として慰謝料が請求されることがあります。
こちらは後述の、離婚原因に対する慰謝料と重なる部分もありますが、あくまで、“離婚という結果”への補償という位置づけです。
離婚原因に対する慰謝料
離婚原因に対する慰謝料は、配偶者の不貞行為(浮気)、DV、モラハラ、生活費を入れないなど、明確な法的離婚事由がある場合に発生します。
これは、精神的苦痛に対する法的な損害賠償の性質を持っており、被害を受けた側が当然に請求できる権利があります。
証拠があれば裁判でも認められやすく、当事者間の合意がなくても裁判所が支払いを命じることがあります。
離婚自体への慰謝料が話し合いに基づく合意的な性質であるのに対し、こちらは加害行為に対する責任追及としての意味合いが強い点が特徴です。
補足:慰謝料は合算されるのが普通
例えば、不倫が原因で離婚する場合、不倫そのものに対する慰謝料と、離婚に伴う精神的苦痛への慰謝料の両方が発生する可能性があります。
しかし実務上は、それぞれを明確に分けて請求することは少なく、ひとまとめにして合算した金額として請求・交渉・判断されるのが一般的です。
以下のようなケース別に整理しておくと、理解しやすくなります。
- 不倫が発覚したが、離婚には至らなかった場合(離婚原因に対する慰謝料のみが発生)
- 不倫が発覚し、それが原因で離婚に至った場合(両方の慰謝料が発生)
このように、慰謝料の内容や請求の仕方はケースによって異なるため、具体的な状況をもとに判断することが大切です。
「離婚後に慰謝料請求はできる?時効や証拠について」も参考にしてください。
離婚の種類でよくある質問
子供のありなしで離婚の仕方は変わる?
離婚の仕方は大きく変わりませんが、未成年の子どもがいる場合、協議離婚でも離婚届に親権者の記載が必要です。
離婚の仕方がわからないときはどうすればいい?
まずは協議離婚を目指すのが一般的です。話し合いが難しい場合には、家庭裁判所の調停を利用しましょう。
中々離婚に合意できない場合や、問題が深刻な場合には、弁護士などの専門家に相談するのも有効です。
離婚の種別で離婚届の出し方は変わる?
記入の仕方や提出の義務など、細かい違いはあるものの、離婚届の提出の仕方は、離婚の種別によって大きく変わることはありません。
まとめ
離婚には協議離婚や調停離婚、裁判離婚など、複数の種類があり、それぞれに特徴や手続きの流れ、必要な条件が異なります。
最も多いのは協議離婚ですが、状況によっては調停や裁判を経ることもあります。
さらに、財産分与や慰謝料など、離婚に伴うお金の問題も、離婚方法や原因によって変わってきます。
離婚方法や金銭面の取り決めで悩んだときは、早めに弁護士などの専門家に相談することで、スムーズで後悔のない解決につながります。