ひと言で公務員と言っても色んな職種があります。警察官や消防職員、市役所などの職員から自衛隊のような特別職国家公務員もあります。公立の場合は美術館職員や教諭、保育士、医師や看護師なども公務員です。

公に仕える仕事である公務員は採用が狭き門であることが多いですが、就職をすると収入が安定していて待遇にも優れているため、離職しないイメージがあるのではないでしょうか。

抜群の安定性から公務員を結婚相手に、と考える人も多いですが、もしも離婚に至ってしまった場合には気を付けるべきポイントはあるのでしょうか。今回は「公務員が離婚する時の注意点」と題し、公務員ならではの離婚事情に迫ります。

公務員の離婚で多い理由は?

公務員はどういった理由で離婚をしている人が多いのでしょうか。給与が安定しており待遇にも恵まれている公務員ですが、以下のような理由で離婚に至っている人が多いようです。

公務員夫婦でお互い収入が安定している

公務員夫婦でお互い収入が安定している場合、離婚をしてもそれぞれが自立して暮らしていけるため離婚しやすいとも考えられます。

妻側も専業主婦やアルバイト・パートタイマーとは異なり安定した収入を得ているため、離婚に踏み切りやすいのです。

転勤や残業などの職場環境

公務員は意外と転勤や残業も多く過酷な勤務をこなす人も少なくありません。冒頭に触れたように医師や警察官、消防職員など安定性はあっても勤務形態としては激務の職種もあります。

自然とストレスを抱えてしまう人も多く、不貞行為やモラハラなどの行為に走る人も少なくありません。また、公務員は守秘義務が多い仕事です。秘密を順守する立場はストレスを感じやすく、家庭内不和に陥りやすいのです。

価値観や性格の不一致

公務員を目指す方の中には堅実で倹約志向の方も多くおられます。質素倹約に過ごすことを家族に要求することもあり、経済的な価値観の相違が夫婦関係を悪化させることも堅実さゆえにモラハラと取られてもおかしくない行動に走るケースもあります。

また、公務員の方は代々公務員家系のケースも多く、子どもの教育にも安定志向を求める傾向があります。教育方針の不一致に見られるような価値観・性格の不一致も離婚理由として考えられます。

性格の不一致で離婚が成立するケースと慰謝料の相場

公務員の財産分与で注意すべきポイント

公務員が離婚をする際には「財産分与」について注意すべきポイントがあります。一般的なサラリーマン夫婦の離婚とは異なり、共済組合や退職金など公務員ならではの問題があるのです。

共済組合の貯金

公務員の場合、「共済組合」と呼ばれるところに貯金をしている場合があります。共済組合とは、公務員を対象とした社会保険制度の組合です。国家公務員共済組合連合会(通称:KKR)や公立学校共済組合など、さまざまな共済組合があります。

共済組合の貯金は給与や賞与から天引きされており、一般的には財形貯蓄のようなスタイルです。勤務年数が長いと共済組合に貯蓄されている貯金が相当な金額になっている場合があります。こちらもその他の預貯金と同様に財産分与を行う必要があります。

離婚時の財産分与で対象となる預貯金|共働きのケースや結婚前の貯金は?

退職金

公務員は給与収入が民間企業よりも安定している傾向があり、真面目に勤務を続けていると退職金が大きい額となることがあります。退職金についても婚姻期間中に積み上げたものは財産分与の対象とみなし、協議に至る可能性があります。

公務員は仕事の性質上倒産などの事情によって退職金が払われないことは考えにくく、一般的な企業よりも退職金を巡って財産分与で争う可能性は高いのです。特に国家公務員や危険性の高い職種に従事している方は退職金が高額になることが多く、注意が必要です。

公務員の年金分割について

公務員の方であっても通常の離婚と同じように「年金分割」についても財産分与の対象として対応をする必要があります。では、公務員における年金分割の注意点とはどんな点でしょうか。

公務員における年金分割とは

財産分与をする際には夫婦が「婚姻期間中に共に積み上げてきた財産」を分ける必要があります。つまり、年金についても対象です。年金分割は婚姻期間中に既払いとした年金保険料を夫婦で分割します。

公務員の場合には、かつては共済年金とよばれる年金制度に加入していましたが、現在では一般の方と同様に厚生年金に加入しています。婚姻期間が長い場合には共済年金・厚生年金をセットで分割できます。

分割には2つの方法がある

年金分割を行う場合には、「合意分割」と「3号分割」から方法を選択します。この2つには合意方法に明確な違いがあります。

合意分割とは

合意分割はその名称にあるように夫婦双方が合意する、もしくは調停や訴訟で決定します。分割の割合は2分の1までと決められています。

3号分割とは

3号分割とは合意が不要な年金分割方法です。正式な名称は「被扶養配偶者である期間についての特例」と言い、専業主婦やアルバイトの方等の第3号被保険者から年金分割請求を行う制度です。請求すれば合意は不要で、家庭裁判所で調停や訴訟をする必要もありません。便利な制度ですが平成20年以前の分割は制度上できません。分割は2分の1と定められています。

年金分割の注意点とは

3号分割の場合には合意が不要ですが、合意分割の場合には夫婦間もしくは裁判手続きにて「どのぐらいの割合で分割するのか」を決めた上で手続きを進める必要があります。

割合を決めるためには事前に公務員の方が加入している共済先に情報提供を求める必要があります。

公務員の離婚でよくある質問

公務員の離婚でよくある質問を下記にてまとめています。

離婚したら出世に影響する?

お堅いイメージのある仕事、公務員ですが離婚をしたら出世に影響するでしょうか。結論から言うと、離婚は公務員であってもよくあることであり、出世に影響することはありません。但し、DVによって逮捕された、公務員同士の不倫が露呈したこと等により離婚に至った場合には、この限りではありません。

逮捕された事実や同僚同士の不倫を事由に懲戒免職などに至る可能性はあります。実際に令和3年5月には兵庫県で警察官同士の不貞行為が発覚し、訓戒処分などに至った事件は全国ニュースとなりました。行為が明るみに出たことにより出世に影響する可能性はあります。

不倫やDVで離婚したら懲戒処分になる?

不倫やDVで離婚した場合には、公務員として懲戒処分を受けるでしょうか。先に触れたように逮捕などの事実が露見した場合には懲戒処分となる可能性が高いですが、夫婦間のトラブルを懲戒処分を求めて勤務先に打ち明けても、思うような処分には至らない可能性もあります。あくまでも処分を決めるのは自治体側です。

退職金を取られない方法はありませんか?

地道に働き積み重ねてきた退職金を離婚によって財産分与をする場合、抵抗感がある人もいるでしょう。しかし、結論から言うと退職金は財産分与の対象であり一方的に拒否をすることはできません。

夫婦の話し合いによって財産分与をしない、退職金は含めないなどの合意をすれば退職金を取られることはありません。しかし、財産分与を求められている場合には、退職金の情報を隠すことは必ずしも得策ではありません。

調停や訴訟になり裁判所が調査嘱託を命じると、裁判所に対して勤務先が退職金に関する金額を本人の同意がなくても回答します。また、退職金の金額の開示を拒否していても相手方の弁護士による弁護士会照会によって情報が開示されることもあります。

これは法律によって認められている手続きだからです。このようなことから安易に隠していても開示される可能性はあると知っておきましょう。

離婚時に財産分与をしない方法とは|財産分与は拒否できる?

まとめ

この記事では公務員の方が離婚をする際の注意点を詳しく解説しました。公務員の方は収入も安定しており、離婚時には共済組合の年金や貯金が争点になる可能性があります。トラブルが悪化しないためにも、適切な対処が必要です。まずはお気軽に弁護士にご相談ください。