妻が妊娠している時は、新たな家族の誕生を楽しみに過ごす貴重な時期です。それにもかかわらず、さまざまな事情で離婚を考えている方もいます。

では、妊娠中に離婚する場合、子どもの親権や戸籍はどうなるのか?父親はどうなるのか?など、わからないことが多く不安を抱えているかもしれません。そこで今回は、妊娠中に離婚する場合の親権や認知、出産費用や養育費などのお金について知っておきたいことを詳しく解説します。

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妊娠中に離婚する確率は高い?

妊娠中に離婚する確率について正確な統計がないため一概には言えませんが、婚姻から2年以内が最も離婚率が高いと言われています。結婚して生活が落ち着き、お互いの良い面も悪い面も見えてくるようになる頃です。

相手に対する不満が募り、妻の妊娠と同時期に離婚にいたる可能性も十分にあります。本来であれば赤ちゃんが生まれてくるのを楽しみにしている時期ですが、それでも離婚の決断をするのは、夫婦間の問題がとても深刻な状況であることが伺えます。

妊娠中に離婚を切り出す夫の心理や理由

妊娠中という夫婦ともに幸せな時期でありながら、なぜ夫は離婚を切り出すのでしょうか。その心理について考察してみます。

妻に相手にされなくなった

お腹の中に新たな命を宿った妻は、つわりから始まって徐々にお腹が膨らみはじめるなど、体に変化が起こり、精神的にも赤ちゃんを迎え入れる準備を進めていけます。

しかし、夫には精神面でも肉体面でも変化はなく、妊娠中の妻を見守るしかありません。一例として、それまでは夫婦でフットワークが軽くデートに行けたのが、妊娠中で妻の体調を気遣い行動を制限されるようになってしまったことで寂しさを感じる男性もいます。

不倫をしている

妊娠中の妻の体調を心配して、妊娠中はスキンシップが減る夫婦は少なくありません。流産や切迫早産のリスクを考えると、以前のような性的なスキンシップを取るのは難しいのが現実です。

妻は体調の変化により性欲が落ちるのに対し、夫の性欲は以前のままです。妻の代わりになる女性を探して浮気したり、風俗に通ったりすることもあります。その結果、夫側の気持ちに変化が起き、妊娠中でも離婚を考えるようになるのです。

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お互いに精神的に不安定になっている

妻は妊娠により、ホルモンバランスの影響を大きく受けやすくなるため、今までは気にならなかった些細なことに対して苛立ったり気分が落ち込んだりして、精神的に不安定になりがちです。

いわゆる「マタニティブルー」と呼ばれるもので、妊娠中特有の症状なのですが、そうした妻の変化に戸惑った夫が離婚を切り出す可能性も考えられます。妊娠する前の妻と妊娠してからの妻の変化に夫も精神面で不安定になってしまうのです。

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妊娠中に離婚したらどうなる?

妊娠中に離婚した場合、親権や戸籍はどうなるのでしょうか。必要な手続きと併せて具体的に見ていきましょう。

親権について

子どもが生まれる前に離婚届を提出した場合、生まれてくる子どもの親権は母親になります。ただし離婚協議または調停が難航し、離婚成立する前に出生した場合は父親と母親の両方が親権者となります。

そして、離婚成立後に親権者をいずれか一方に決定します。とはいえ、日本では乳幼児の親権者は一般的に母親になることが多いため、元夫が親権者になるのは極めて稀なケースといえます。

親権者とは|親権者になれる人や意味をわかりやすく解説

戸籍について

戸籍は子ども出生した日によって扱いが異なります。

離婚から300日以内に生まれた子どもの場合

妊娠中に離婚した夫婦の多くは、離婚から300日以内に子が生まれています。この場合、子どもは元夫の戸籍に入ります。つまり、出生時は父親と母親の戸籍と名字が異なる状態になっています。そのため出産後は子を母親の戸籍に移し、苗字を母親と同一にする手続きが必要です。

離婚から300日以降に生まれた子どもの場合

300日以降に生まれた子どもの場合、戸籍ははじめから母親と同一になります。父親の欄は空欄です。

子の認知について

離婚から300日以内に生まれた場合、元夫の子どもと推定されることから、法律上の親子関係が認められるため、認知の手続きは不要です。

父親に認知してもらうことで後述する養育費を支払ってもらえるだけでなく、父親の相続権も発生します。父親が認知してくれるかどうか不安という方は離婚問題を取り扱う弁護士に相談のうえ、夫に交渉を依頼しましょう。

妊娠中の離婚で考えるべきお金のこと

妊娠中に離婚する場合、自分一人で育てていけるのかといった不安のほか、金銭面での不安も大きいことでしょう。妊娠中に離婚する際に知ってほしいお金の話もご紹介します。

出産費用

元夫が任意で出産費用を支払ってくれるのが理想ですが、そうでない場合、出産費用を請求するのは難しいといえます。

これは婚姻関係にある夫婦は婚姻費用を分担する義務があるのに対し、出産が離婚後となった場合は出産にかかる費用を夫が負担する義務はないためです。離婚をする前に、夫に出産費用の負担についても話し合っておきましょう。

婚姻費用

婚姻費用は先述した通り、婚姻関係にある夫婦間にのみ発生するものです。離婚前であれば婚姻費用の請求ができます。

婚姻費用とは|別居中の生活費を分担する義務や養育費との違い

養育費

養育費は子どもが出生した時期によって請求できる場合とできない場合があります。子どもが離婚後300日以内に生まれた場合、嫡出推定により生まれた子どもは元夫の子どもとされるため、養育費の請求もできます。

反対に離婚後300日以降に生まれた子どもは非嫡出子(法律上の夫婦関係にない男女間に生まれた子ども)とされます。先述したように親権は母親のみになるため、養育費の請求ができません。

非嫡出子で子どもの養育費を請求する場合、父親に認知してもらうことで請求できます。調停や裁判DNA鑑定などにより親子関係を証明すれば認知が認められます。

養育費はいつまで請求できる?支払い義務は何歳まで?

財産分与

財産分与は、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産を二人で分割することです。これはどの夫婦でもなされるもので、妻の妊娠や婚姻期間に関係なく離婚の際は財産分与をする必要があります。

離婚時の財産分与とは?財産分与の対象になるものと3つの決定方法

慰謝料

妊娠中の女性は出産前後で一定期間働けない時期があります。妊娠中に離婚する女性は、こうした働けない時期の経済的な不安が付きまとうものです。そのため、慰謝料は可能な限り多く受け取りたいと思われるかもしれません。

一般的に不倫やDV、悪意の遺棄など婚姻生活を破綻させるような原因を作った側が、慰謝料を支払う義務があります。離婚慰謝料の相場は100~200万くらいですが、妻が妊娠中の離婚は精神的苦痛が大きいとして、相場よりも高額な慰謝料を請求できる可能性があります。なお、不倫やDVなどはなく、「性格の不一致」という理由だけでは慰謝料の請求は難しいでしょう。

離婚で慰謝料請求できる条件や理由

まとめ

妊娠中の離婚についてご紹介しました。女性はホルモンバランスの影響を受け、精神的に不安を抱えているはずです。夫から離婚を切り出されたときは、離婚問題に詳しい弁護士にぜひご相談ください。

弁護士に依頼すれば夫との交渉を任せられるほか、交渉がうまくいかず調停や裁判になったときも妻が裁判所に出廷する必要はなく、一連の手続きを弁護士に任せられます。離婚問題を抱えたまま出産を迎えるよりも弁護士に依頼した方が、精神的にも体力的にも負担が大きく軽減されるはずです。