不倫された人が配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求すると「夫婦関係は破綻していたから支払う必要はない」と反論されることがあります。実際に、夫婦関係は破綻していたと判断され、妻からの慰謝料請求が認められなかった判例もあります。

夫婦関係が破綻しているかどうかは、慰謝料請求の認否を決める重要な判断材料となります。しかし、「夫婦関係が破綻している」とは、具体的にどのような状態なのでしょうか。この記事では、夫婦関係が破綻している夫婦の特徴や、破綻していることがわかる証拠など、詳しく解説します。

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夫婦関係の破綻の定義とは

「夫婦関係が破綻している」とは、「夫婦が婚姻を継続する意思がなく、修復不可能なほど関係が悪化している状態」をいいます。これは当事者間に夫婦関係修復の意思がないことだけでなく、客観的な視点で夫婦関係の修復は難しいとみなされなければ「夫婦関係の破綻」は認められません。

当事者間の主観だけでは判断されないのが「夫婦関係の破綻」の難しいところです。例えば、夫婦仲が悪く将来的に離婚も考えているという夫婦でも、家族で旅行に行ったり、子どもの学校行事などに両親揃って参加したりしているようなケースでは、客観的に見れば夫婦関係は円満であり夫婦関係は破綻したとはいえません。後述する長期間の別居や接触がない状態など、さまざまな要素を見た上での判断が求められます。

夫婦関係の破綻が認められる夫婦の特徴

どのような状態なら夫婦関係が破綻していると認められやすくなるのでしょうか。破綻していると認められやすい夫婦の特徴をご紹介します。なお、先述したように夫婦関係の破綻はさまざまな要素を見た上で判断されるので、下記のいずれかに該当したからといって必ずしも破綻しているとは認められない点を留意しておきましょう。

長期間別居している

民法では婚姻した夫婦に対して3つの義務を定めています。

  1. 同居義務…夫婦が一緒に住む義務
  2. 扶助義務…生活費を出し合ってお互いに同じ生活レベルが送れるようにする義務
  3. 協力義務…夫婦で協力して生活を維持する義務

この3つの義務を「生活扶助義務」といい、正当な理由なくこれらの義務に違反すると夫婦関係が破綻していると認められることがあります。

夫婦関係が悪化した末に別居している場合、婚姻関係が破綻しているとみなされることがありますが、半年や1年程度では長期間とはいえず、最低でも3年から5年程度は必要とされています。

別居から離婚までの平均期間は何年?

離婚について協議している

夫婦関係が破綻していなければ、離婚について話し合うことはないので、すでに離婚について話し合ったことがある場合は夫婦関係が破綻しているとみなされる可能性があります。

ほかにも、離婚に向けて行動を起こしているかどうかも重要になります。離婚届を手元に用意している、専業主婦の妻が離婚後の生活を想定して仕事を始めるなど、離婚のために何らかの準備をしていれば夫婦関係の破綻が認められるかもしれません。

夫婦関係が破綻する原因

夫婦関係が破綻する原因としてよくある事例をご紹介します。

配偶者の不法行為

ここでいう「不法行為」とは、浮気やDVモラハラなど、もう一方の配偶者に精神的苦痛を与える行為をいいます。このような不法行為は夫(または妻)に対する愛情を失うきっかけになり、夫婦関係の破綻につながります。なお、浮気やDV、モラハラは慰謝料を請求できるので、証拠を残しておくと良いでしょう。

精神的苦痛を受けて離婚する場合の慰謝料相場

性格の不一致

性格の不一致は、離婚原因の中で最も多い離婚理由です。性格の不一致と聞くと漠然としていてわかりにくいかもしれませんが、さまざまな「不一致」があります。

  • 価値観の不一致…金銭感覚や趣味、子育てなどの方向性の違いによるもの
  • 性生活の不一致…どちらか一方が特殊な性癖があるなど
  • 過度な宗教活動…どちらか一方が過度な宗教活動にのめり込み、家庭を顧みなくなるなど

ほかにも義理の家族と合わない、過度の飲酒、浪費など性格の不一致は夫婦によって態様が違います。なお、法律上で定められている離婚理由として次の5つがあります。

  1. 配偶者に不貞な行為があった(性的関係を伴う浮気など)
  2. 配偶者が結婚の義務を意図的に怠った(生活費を渡さない、勝手に家を出るなど)
  3. 配偶者が3年以上の生死不明(家出して行方不明など)
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと(精神病により家族を守る義務が果たせないなど)
  5. その他、婚姻を継続しがたい重大な理由があるとき(性格の不一致など)

性格の不一致で離婚する場合、5の「その他、婚姻を継続しがたい重大な理由があるとき」が該当し、婚姻を継続しがたいほどの性格の不一致があるかどうかも夫婦関係の破綻を見極めるポイントとなります。

性格の不一致で離婚が成立するケースと慰謝料の相場

夫婦関係の破綻を証明するための証拠

夫婦関係が破綻していることがわかる証拠の一例をご紹介します。

  • 別居している場合、不動産の賃貸借契約書など
  • 配偶者の浮気現場を写した画像や動画
  • DVを受けている場合は傷跡や医師の診断書
  • モラハラを受けている場合はモラハラ発言の録音や、発言内容と日時を書いたメモなど

夫婦関係の破綻は当事者間だけではなく、客観的な判断も求められるので、上記のような証拠が何よりも重要です。

夫婦関係の破綻でよくある質問

夫婦関係が破綻したといえるのかどうか、判断がつきにくいケースをまとめました。

家庭内別居で夫婦関係の破綻は認められる?

基本的に、別居していることが夫婦関係破綻の条件ですが、家庭内別居でも夫婦不仲の進行具合によっては破綻が認められる可能性があります。

例えば、顔を合わせても会話がなく、住環境が全く別で、家計管理も別々というように、夫(または妻)というよりは同居人のような状態が長く続いている場合は破綻していると認められるかもしれません。

しかし、家庭内別居状態で会話がなくて同じ寝室で寝ていた、家計管理をどちらか一方がしていたといった場合は、夫婦関係の破綻が認められない可能性があります。

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夫婦関係が破綻していたら浮気しても問題ない?

冒頭でも述べたように、不倫した人が慰謝料を請求された際に「夫婦関係は破綻していた」などと主張して自分たちの関係性を正当化するようなケースが見られます。しかし、夫婦関係が破綻しているかどうかは当事者だけでなく、客観的かつ総合的な判断が求められるものであり、当人たちが判断できるものではありません。

当人たちは夫婦関係の破綻を主張していても、客観的に見れば破綻したとは言えないために、不倫された側の慰謝料請求が認められる可能性も十分にあります。そのため、離婚が成立する前に浮気をするのはやめた方が賢明でしょう。

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まとめ

夫婦関係の破綻に明確な基準はなく、個別具体的な事情を考慮して判断するしかないのが現実です。自分たち夫婦は関係を修復するつもりはなく、将来的には離婚したいと思っているほど仲が悪くても、ほかの人から見たら普通の夫婦に見えることもあります。同居していれば尚更、夫婦仲が悪いとは想像しないものです。

夫婦関係が破綻していると認められれば、たとえ一方の配偶者が離婚を拒否しても調停や裁判で離婚が成立する可能性があります。自分たち夫婦の関係が破綻しているのでは?とお悩みの方は、ぜひ離婚問題に詳しい弁護士にご相談ください。