穏便に済ませたい離婚話ですが、親権や財産分与など譲れない一線もあります。話し合いがスムーズに行かない、冷静に向き合うことが難しい場合には「離婚調停」も視野に入れましょう。
では、離婚調停は解決までどの程度の期間を要するのでしょうか。今回は離婚調停にかかる平均的な期間や、調停の仕組みについて紹介します。
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目次
離婚調停にかかる平均的な期間はどのぐらい?
離婚調停の申立から成立(もしくは不成立)までは平均どの程度の期間を要するのでしょうか。令和元年度の司法統計を基に解説します。
令和元年度の司法統計によると、離婚調停を含む、婚姻関係事件の審理にかかった期間は6ヵ月以内の割合がピークとなっています。一般的にスムーズに調停が進行すれば半年から1年以内には離婚調停は終了します。
審理期間 | 件数 | 割合 |
---|---|---|
1ヵ月以内 | 3,309 | 5.5% |
3ヵ月以内 | 15,752 | 26% |
6ヵ月以内 | 20,479 | 33.8% |
1年以内 | 15,954 | 26.4% |
2年以内 | 4,772 | 7.9% |
2年を超える | 276 | 0.5% |
※総数:60,642件
※参照:婚姻関係事件数―終局区分別審理期間及び実施期日回数別―全家庭裁判所
離婚調停の平均回数
調停期日は1ヵ月に1回程度の目安で開催されることが多いですが、様々な都合でもう少し期間が開くことがあります。期日回数の平均回数としては「2~3回」で終了するケースが多いようです。
実施期日回数 | 件数 | 割合 |
---|---|---|
0回 | 4,399 | 7.27% |
1回 | 8,361 | 13.81% |
2回 | 12,660 | 20.91% |
3回 | 11,158 | 18.43% |
4回 | 7,782 | 12.85% |
5回 | 5443 | 8.99% |
6~10回 | 9,458 | 15.62% |
11~15回 | 1,117 | 1.85% |
16~20回 | 139 | 0.23% |
21回以上 | 25 | 0.04% |
※総数:60,642件
※参照:婚姻関係事件数―終局区分別審理期間及び実施期日回数別―全家庭裁判所
離婚調停は夫婦双方のスケジュールはもちろんのこと、調停員や家庭裁判所側のスケジュール、場合によっては代理人である弁護士のスケジュールも加えて調整されます。そのため、早く進行させたくても毎週のように開かれるということはありません。
離婚調停が長期化するケース
親権を争う場合
家庭裁判所の調査官による「子の監護」の調査などが実施される場合は、調査期間を開けて次回期日が指定されます。
そのため、数ヵ月の期間を開けて次回期日が指定されることもあります。一般的に親権を争う場合には、調停が長期化する傾向があります。
争点が多い
離婚の際には、親権や養育費、慰謝料や財産分与など多くの事柄を話し合う必要があり、争点が多いほど調停が長期化する可能性が高いです。また、必要な書類なども多くなり、準備や用意するのにも時間を要するでしょう。
双方が条件を譲らない場合、離婚調停は不成立となり、その場合は離婚裁判に進みます。
一方が離婚を望んでいない
一方がそもそも離婚を望んでいない場合も調停が長期化することが多いです。
離婚する原因が曖昧だったり法定離婚事由に該当しない場合、双方が離婚を望まない限り次の話合いに進むことができず、不成立になったり調停が長引く可能性が高いです。
離婚調停の期間は短い方が良い?
離婚調停は平均的に半年から1年は期間を要します。その間離婚話は前進しないように感じるため、手短に済ませたいと感じる方もいます。では、離婚調停は短くした方がメリットはあるのでしょうか。
まず、離婚調停に発展したということは、協議離婚は難しい状態であった方が多いはずです。争うべき問題が無かったら協議離婚で終わるため、本来なら離婚届を提出すれば終了します。しかし、争うべき点があったため調停に発展しています。
申立を行うにせよ、申立てられた側にせよ、離婚調停は家庭裁判所の中で調停員を挟んで円満な解決を模索できるチャンスでもあります。調停員との話し合いには相性もあり、こちらにとって負担感がある質問が続くこともあります。
しかし、早く終わらせたいからといって調停員に結論を任せてしまい、主張を行わない場合には不利な結果を提示される可能性も否定できません。短く調停を済ませることがメリットとは限らないので注意しましょう。
場合によっては時間をかけた方が双方にとって良い着地点を見つけられ、離婚後に円満な関係を築けることもあるのです。
離婚調停の流れとスケジュール期間の目安
離婚調停は家庭裁判所に申し立てることでスタートします。それぞれに要する期間や流れについては以下のとおりです。
【関連】離婚調停申し立ての手続きや流れ|有利に進める3つのポイント
①申立準備
離婚調停に申し立てる際には必要書類準備を整えます。
②申立
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に必要書類を提出し、申立を行います。なお、提出先については双方の同意の元であれば別の家庭裁判所でも可能です。
③期日の調整
書類が無事に受理され、相手方にも書類が無事に届いたら次に調停の期日を家庭裁判所が調整します。期日とは、家庭裁判所に出向き調停員と話し合う日のことを指しています。
④第一回期日
離婚調停の期日の日は家庭裁判所に出向きます。相手方も参加していますが、同時に話し合いのテーブルに着くのではありません。待合室に待機し、双方が入れ替わるような形で調停員と面談を行います。
なお、申立てから約1ヵ月~1カ月半後に第一回期日が行われるケースが多いです。
⑤期日を繰り返す
話し合いがまとまるまで、複数回の期日が行われます。こちらも大体1ヵ月半程度のスパンで期日が行われます。
⑥調停成立もしくは不成立
話し合いを経た結果、調停が成立すればそこで事件は終了します。一方で双方の折り合いがうまくつかない場合には不成立に至ることもあります。不成立後は訴訟に移行することが多いでしょう。
離婚調停をスムーズに行うには
調停期間の長短はメリット・デメリットを分けるものではありませんが、先行きが見えない調停は当事者にとって大変な負担です。では、離婚調停をスムーズに行う方法はあるのでしょうか。スムーズな進行は次の3つを踏まえておくことが大切です。
1.婚姻費用分担請求で生活を支える
離婚調停は先にもご紹介のとおり、様々なスケジュールを調整しながら進行します。そのため「思っていたよりも時間がかかる」という声も多いです。そこで、事前に婚姻費用分担請求に関して仕組みを知っておくことがおすすめです。
離婚の話し合いを焦る背景の1つに、生活費の不安がある方がいます。調停が長期化することがある、と事前に知っておき婚姻費用分担請求も申立を行うことを検討しておきましょう。例として、夫側から離婚調停の意向を示した場合、妻側が専業主婦やパートタイマーなどの場合は経済的に困窮する可能性があります。
この場合、妻側から婚姻費用分担請求を行い、離婚成立まで困窮しないように備えることで離婚調停も焦らず進行させることができます。婚姻費用の金額については、収入・養育の状況などを踏まえた算定表が存在し、相場がある程度決まっています。
急に別居へ踏み切ったケースや協議中に関係が悪化している場合には、冷静に生活費の請求を相手へ行うのは大変難しいでしょう。こうした場合も婚姻費用分担請求を家庭裁判所へ申立することで生活費を確保することができます。
2.調停への準備を念入りに行う
離婚調停を申立する場合には、入念な準備を行ってから申立を行うことで調停の進行もスムーズになります。協議中にこじれたポイントはどこか、自分の譲れないポイントはどこか、など事前にきっちり整理し、争点を予め減らしておくことで期日の回数は減る傾向があります。
例として、財産分与や親権などは争いがなく、養育費の金額についてのみ争いがあるケースは1,2回程度の期日で終わりやすいでしょう。争点が多ければ多いほど調停は長期化しやすい、と言うことを踏まえて準備をしておきましょう。
また、調停が実際に始まったら調停員にわかりやすく説明できるように、気持ちを整理しておくことも大切です。また、申立てられた側の方も1つ1つの期日に向けてしっかりと準備をし、自分の主張を行うことが大切です。
加えて調停の進行中は譲歩するポイントを決めることも進行のスムーズ化を助けてくれます。
3.弁護士へ相談を早めに開始する
離婚調停は準備から調停の対応まで大変な道のりです。また、離婚に至る原因は不貞行為や借金問題、長年の感情のすれ違いやDVなど人それぞれですが、離婚に至った以上できる限り証拠を集めることが大切です。
弁護士は数多くの離婚事件を経験しており、証拠集めから別居のアドバイス、婚姻費用の算定から調停への申立もカバーできます。弁護士がしっかりとサポートをすることで調停もスムーズに進行が可能です。
しかし、調停はあくまでも話し合いの段階のため、折り合いがつかない場合には打ち切りになることも不成立になることもあります。訴訟も見据えて当初から弁護士と二人三脚で準備を進めていくことが離婚への近道と言えるでしょう。
まとめ
この記事では離婚調停の期間に注目し、平均的な期間やスムーズな進行についてご紹介しました。離婚のご相談に来られる方の多くは、たくさんの悩みを抱えてから法律事務所に来られます。
離婚に至る原因には不倫や借金などの問題があり、人には相談しにくいと感じる方もいます。しかし、離婚は新しい人生を切り拓くためのスタートラインです。些細な不安も離婚実績が多い弁護士に遠慮なく相談をすることで、離婚後の人生の不安も減らすことができます。
加えて、離婚の問題は協議の段階から法的なアドバイスを受けることで調停や訴訟を見据えた準備が可能です。まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。