実名報道とは?実名報道されやすいケース・されないケースを解説

刑事事件が起きて被疑者が逮捕されると、報道機関は被疑者の名前とともに事件の概要を報道します。すべての刑事事件が報道されるわけではなく、場合によっては匿名で報じられるケースもあります。

本コラムでは、実名報道の基準や実名報道されやすい事件、また実名報道されないケースについても解説します。

 

実名報道とは

実名入りで事件・事故を報道することを実名報道といいます。

刑事事件をニュースにする場合、報道機関は原則として被疑者の氏名や年齢、職業、住居、逮捕容疑などを報じます。事件によっては、被害者を含む関係者の名前を報じる場合もあります。

 

実名報道されるタイミング

では、どのようなタイミングで実名報道されるのでしょうか。

 

実名報道のタイミングに明確な決まりはありません。とはいえ、警察など捜査機関が被疑者を逮捕して事件概要を発表した後に、実名報道されるケースがほとんどです。捜査機関から発表があれば通常はその日のうちにニュースサイトに記事が掲載されます。

 

捜査機関が事件概要を発表するタイミングについても、一概にはいえません。被疑者を逮捕してから間を置かずに発表する場合もあれば、共犯者の逮捕を待ってまとめて発表する場合もあります。

 

逮捕前に被疑者の実名が報道されるのはまれです。警察が指名手配に踏みきったり、社会的に名の知れた被疑者が任意で事情聴取を受けたりした場合などに、実名が報じられることがあります。

 

実名報道に基準はある?

実名報道をするか否かについての明確な基準はありません。被疑者、被告人に関しては、原則実名で報じられると考えておいた方がよいでしょう。実名報道されないケースについては後述します。

 

実名報道されることによるデメリット

実名報道されれば、逮捕されたことが周囲に伝わるだけでなく、社会復帰が難しくなったり、家族が迷惑をこうむったりする恐れがあります。

 

会社や学校に知られる

実名報道されれば会社や学校に逮捕の事実が伝わる可能性が高くなります。

会社は従業員が逮捕されたとわかれば、会社の信用を傷つけたとして懲戒解雇を言い渡すかもしれません。学生であれば、退学処分を受けるおそれもあります。

 

社会復帰が難しくなる

逮捕後に新たに仕事を探す場合、採用されにくくなる可能性があります。

 

事件の内容を伝える実名入りの記事がインターネット上に残っていれば、採用担当者は名前を検索しただけで記事にたどり着くことも想定されます。

 

家族が迷惑をこうむる

実名報道されると、家族にも悪影響を及ぼします。

 

逮捕の事実が広まれば、家族が暮らしにくくなる可能性も否定はできません。

 

子どもが学校で嫌がらせを受けたりいじめに遭ったりするおそれもあり、実名報道の影響は小さくありません。

 

実名報道されやすい事件

もっとも、すべての刑事事件が実名報道されるわけではありません。法定刑が比較的軽い犯罪に関する事件などは、捜査機関から発表があったとしても、ニュースとして報道されない可能性があります。

ここでは、実名報道されやすいケースについて説明します。

 

殺人など重要犯罪

殺人、強盗、放火、強制性交、略取誘拐、強制わいせつといった重要犯罪に関する事件の場合、実名で報じられる可能性が高いといえます。

 

犯行態様が悪質だったり、被害者が複数いるなど犯行結果が重大だったりすれば、報道は一度で終わらず新たな情報が出てくるたびに実名入りでニュースとして取り上げられることもあります。

 

新たな犯行手口など特異な点がある場合

新たな手口によって実行されるなどニュース性があれば、実名報道されやすくなります。

 

被疑者が有名人

被疑者が有名人である場合も、実名報道される可能性が高いといえます。一般の人であれば報道されないような内容の事件であっても、報道される可能性は高くなります。

 

被疑者が公務員

被疑者が公務員の場合も、ニュース性は高いと判断され、実名報道されやすくなります。犯罪を取り締まる立場にある警察官や、子どもを指導するはずの教師などが逮捕された場合、実名報道の可能性は上がります。

 

被疑者が有名企業に勤める会社員

また、被疑者が会社員の場合で、勤め先が地域や社会の中で広く知られている企業のときは、ニュースになりやすいといえます。

 

実名報道されないケース

匿名で報道されるケースには、次のようなものがあります。

 

少年犯罪

少年事件に関しては、氏名など本人と推定できる情報を報道してはならないと少年法で定められており、実名報道は禁止されています。そのため、報道機関が少年事件を取り上げる際は通常、少年、少女と匿名を用います。

 

しかし、令和4年4月1日から施行される改正少年法では、18、19歳が「特定少年」と位置付けられ、特定少年に限り起訴された段階で実名報道の禁止が解除されるようになります。

 

精神障害の疑いがある場合

刑法39条は「心神喪失者の行為は罰しない」と定めており、逮捕後に刑事責任能力がないと判断されれば、不起訴になったり裁判で無罪が言い渡されたりします。

 

逮捕後の初報の段階で、被疑者に精神障害に関する通院歴があることが判明している場合などは、報道機関が実名報道しないケースもあります。

 

被害者が特定される場合

このほか、性犯罪に関する事件などで、被疑者の実名を報じた場合に被害者が特定されるようなときは、被疑者を匿名で報道することもあります。

 

実名報道を回避するための対応

逮捕された後に、実名報道を回避すべく講じられる対策はあるのでしょうか。

 

実名報道を回避するための方策としては、報道機関に対して実名報道を控えるよう求める意見書を提出することが考えられます。

 

もっとも、意見書を提出されたからといって報道機関がそれに応じる義務はなく、意見書の提出が実名報道の回避を約束するわけではありません。

 

より重要なのは、逮捕されないよう対策を講じることで、被害者との早期の示談成立が効果的といえるでしょう。

 

まとめ

少年事件など被疑者が逮捕されても実名が報じられないケースはありますが、刑事事件の被疑者に関する報道は原則、実名で行われます。実名報道を回避するための意見書を報道機関に提出することも可能ですが、より重要なのは逮捕されないことです。

逮捕されないためには、被害者との間で早期に示談を成立させることが肝要で、示談交渉は経験豊富な弁護士に任せた方が円滑に進みます。刑事事件の加害者になってしまった場合は、ネクスパート法律事務所にお気軽にご相談ください。

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