ストーカーはどこから?ストーカーまがいの行動とは?
警視庁によると、2023年のストーカーの相談件数は1万9,843件、禁止命令が出された件数も1,963件と過去最多を更新しました。
ストーカー規制法は、数多くのストーカー事件を受けて、何度も改正が行われてきました。
自分はストーカー行為をしていないと思っていても、実際にはストーカー行為に該当しており、通報や逮捕される可能性があります。
この記事では、どこからストーカー行為になるのか、加害者だけでなく被害を受けている人に向けて、次の点を解説します。
- ストーカー規制法に該当するストーカー行為一覧
- つきまといやLINEはどこからストーカーになるのか
- ストーカーを警察に相談するとどうなるのか
目次
ストーカーとは
ストーカーとは、恋愛感情や怨恨などから、特定の相手に対してしつこくつきまとったり、相手の動向を監視したりする人のことです。
なお、ストーカー行為は、ストーカー規制法という法律で規制されており、規制されている行為をすれば、処罰の対象となります。
ストーカー規制法におけるストーカーの定義は、特定の人に対する恋愛感情や、好意が満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足させる目的で、特定の人やその家族、密接な関係のある人に対して、つきまとい等を行う人だと定められています。
例えば、別れた恋人や配偶者と復縁したい、片思いの相手に振り向いてもらいたい、一緒にいたいなどの理由でつきまといなどの行為を繰り返すケースが挙げられます。
一方で、恋愛感情のないつきまといなどの行為は、迷惑防止条例違反や軽犯罪法によって取り締まりが行われる可能性があります。
参考:ストーカー規制法|警視庁
ストーカー規制法に違反するストーカー行為一覧
ストーカー行為の理由が、相手と一緒にいたいというものであっても、繰り返しつきまといなどを行えば、ストーカー規制法違反に該当することになります。
ストーカー行為をする意図がなくても、相手が恐怖を覚えて警察に相談すれば、逮捕される可能性もあります。
ストーカー規制法に該当するストーカー行為をした場合は、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科されます(ストーカー規制法第18条)。
さらに、ストーカー規制法以外で、刑法に反する行為があれば、重い処分が科される可能性があります。
ここでは、ストーカー規制法に該当するストーカー行為一覧を解説します。
つきまとい・待ち伏せ・押しかけ・うろつきなど
ストーカー規制法のストーカー行為に該当するのが次の行為です。
- 相手を尾行するなどしてつきまとう
- 相手の行く先々や通勤経路などで待ち伏せをする・立ちふさがる
- 相手がよく行く場所(自宅・学校・職場など)や相手がいる場所に押しかけたり、うろついたりする
- 相手がよく行く場所やいる場所を見張る など
監視してると告げる
相手に監視していると思わせるような内容を伝えたり、監視していると知り得る状態に置いたりする行為も、ストーカー行為に該当します。
善意や相手とのやり取りをしたい欲求から、相手の帰宅時間におかえりと連絡をする行為なども、ストーカー行為に該当する可能性があります。
同様に、相手と直接会話ややり取りをしていないのに、今日○○に出かけていたねなどと告げる行為にも注意が必要です。
一度や二度、同じ場所でばったり出会うことはあるかもしれません。
しかし、何度も同じ場所で会ったり、見かけたことを伝えたりすれば、ストーカー行為だと判断される可能性があります。
面会や交際の要求
同様に、相手に対して面会や交際、その他相手に義務のないことを行うよう要求する行為もストーカー行為であると判断されます。
例えば、相手が拒否をしているのに、会うことや復縁、交際を求める行為が挙げられます。
相手に対して贈り物を受け取るように要求する行為なども該当します。
相手が拒否をしている場合、もしくははっきり言い出せないために無視をしているような場合は、拒否されていると考えた方が良いでしょう。
乱暴な言動
相手が自分の気持ちを受け入れないことなどから、乱暴な言動を行うことも、ストーカー行為に含まれます。
例えば、自宅前で大声で怒鳴ったり、クラクションを鳴らしたりする行為などが挙げられます。
また、次の行為をすれば、ストーカー規制法だけでなく、刑法に違反することになります。
暴行罪(刑法第208条) | 相手に暴行をした場合 | 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金 |
傷害罪(刑法第204条) | 相手を暴行してケガをさせた場合 | 10年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料(1,000円以上1万円未満の罰金) |
脅迫罪(刑法第222条) | 生命や身体、自由、名誉、財産に対して危害を加える旨を告知して脅迫した場合 | 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金 |
無言電話や連続した電話やメール・SNSなど
ストーカー行為の代表的な例が無言電話です。無言電話や連続した電話、LINEやDM、メール、手紙などを送る行為も、ストーカー行為となります。
相手が返答してこないのは、気づいていないのではなく、恐怖で反応できない、もしくは明確に拒否していると受け取った方が良いでしょう。
また、相手の職場にしつこく電話をかけるなどの行為は、ストーカー規制法違反だけでなく、業務妨害罪に該当する可能性があります。
業務妨害罪の罰則は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です(刑法第234条)。
汚物などの送付
相手に対して、汚物や動物の死体、その他著しく不快感や嫌悪させるものを送付する行為も、ストーカー行為に該当します。
名誉を傷つける
相手が自分の好意に応えないからといって、腹いせに相手の名誉を傷つける行為をすることも、ストーカー規制法のストーカー行為に該当します。
例えば、名誉を傷つける内容を告げる、中傷メールを送る、SNSに投稿する行為などが挙げられます。
場合によっては、名誉毀損罪や侮辱罪が成立する可能性があります。
性的羞恥心の侵害
相手に対して性的に不快になるような行為をすることも、ストーカー行為に該当します。
例えば、性的な写真を送りつける、LINEやSNS、電話で性的に不快になる言葉を告げる行為が該当します。
GPS機器の取り付けやGPSによる位置情報の取得
2021年5月には、ストーカー規制法が改正され、GPS機器を用いた位置情報の取得や、承諾のないGPS機器の取り付けが、ストーカー行為に含まれるようになりました。
例えば、相手に無断で位置情報共有アプリをダウンロードして、位置情報を送らせたり、相手の所有物にGPS機器を設置したりする行為が該当します。
つきまといはどこからストーカー?
恋愛感情にもとづく行為はストーカーに該当
前述のとおり、相手と交際や復縁をしたいなどの恋愛感情や、好意に応えてもらえなかった事に対する嫌がらせを目的とした行為は、ストーカー規制法で規制されているストーカー行為に該当します。
つきまといなどを行う対象として、特定の相手だけでなく、その相手の家族や密接な関係のある人に対して行うことも含まれます。
嫌がらせなどを目的としたストーカーは軽犯罪法違反
一方で、恋愛感情を発端としない嫌がらせなどを目的としたストーカー行為は、迷惑防止条例違反や、軽犯罪法の追随等の罪で取り締まられる可能性があります。
それぞれの違いは次のとおりです。
ストーカー規制法 | 恋愛感情や、好意に応えてもらえなかった怨恨による反復したつきまとい行為など |
迷惑防止条例違反 | 相手に対する妬みや恨み、悪意の感情の充足目的とした反復したつきまとい行為など |
軽犯罪法の追随等の罪(軽犯罪法第28条) | 目的の制限なしで反復しないつきまとい行為でも違反になる |
迷惑防止条例違反や軽犯罪法の罰則は次のとおりです。
迷惑防止条例違反(※各自治体による) | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金、常習の場合は2年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
軽犯罪法の追随等の罪 | 拘留(1日以上1か月未満の身柄拘束)、科料 |
16歳未満に面会を強要すると面会要求罪
16歳未満に対して、わいせつ行為を目的に面会を強要すると、面会要求罪に該当することが考えられます(刑法第182条)。
面会要求罪は、2023年7月から施行された犯罪です。
脅したり騙したり、誘惑や金銭などの利益を与えるなどして面会を要求するだけでなく、拒まれたのに、しつこく会うことを要求する行為も含まれます。
面会要求罪の刑罰は、1年以下の拘禁刑(懲役のようなもの)、または50万円以下の罰金です。
どこからがストーカー?ストーカーまがいの行動との違い
何から何までストーカー扱いされたら恋愛もできない、と主張する人もいるかもしれません。
実際にどこからどこまでがストーカー行為となるのか、恋愛的なアプローチとの境界線はどこなのでしょうか。
ここでは、ストーカー行為やストーカーまがいの行動と、恋愛的なアプローチの違いなどについて解説します。
常識の範囲を超えて接する
恋愛的なアプローチが、ストーカー行為としてとらえられてしまうのが、常識の範囲を超えた接し方です。
好意を寄せた相手の情報を知人などから仕入れて、さりげなくプレゼントを贈るという手法はよくあります。
しかし、頻繁に会話をする相手でもない人に、自分の休日の過ごし方や趣味を把握されていたり、プレゼントを贈られたりすると、恐怖や嫌悪感を覚える人もいます。
その後も相手との距離感が変わらないのに、何度も頻繁に、こうした行動を行えば、相手からストーカー行為だと判断される可能性があります。
被害者が拒否しているのに執拗に接触する
被害者が拒否や拒絶をしているのに、いつかは自分の良さをわかってもらえると思い、執拗に接触すれば、ストーカー行為だと思われる可能性が高いです。
相手が明確に拒否を示していない場合でも、恐怖心や仕事上の立場から、明確に拒否できないことがあります。
例えば、次のような行為は、社内ストーカーだと思われる可能性があります。
- 勤務時間だけでなく、プライベートでも執拗に連絡を取る
- 出勤や退勤時間を合わせて待ち伏せをする
- 意図的に同じ電車やバスに乗って監視する
- 相手の最寄り駅や自宅近くを徘徊する
- 社内の個人情報を私用に流用する など
こうした行為は、相手の業務を妨げるだけでなく、ハラスメントとして会社から処分を受けることもあります。
相手が何も言わないから自分を好きになったと判断するのは危険です。
返信がないのにLINEやSNSで何度も連絡する
LINEやSNSで何度もしつこく連絡するなど、次のような行為は、ネットストーカーだと判断される可能性があります。
- LINEやSNSでしつこく連絡をする
- SNSでしつこく連絡や投稿をする
- SNSで相手の個人情報を拡散する、誹謗中傷をする など
こうした行為も、ストーカー規制法のストーカー行為に該当します。
相手からすれば、拒否やブロックをしてもしつこく連絡が来ることで、強いストレスや恐怖を感じている可能性が高いです。
自分自身がネットストーカー被害に遭っている場合は、SNSに現在地がわかるような内容を投稿しないなどの注意が必要です。
いずれにしても、ストーカー行為と恋愛的なアプローチの大きな違いは、相手の拒否や事情、感情を無視して執拗に行われる点にあります。
相手は非常に恐怖を覚えて、住所や仕事などを変更を余儀なくされ、生活にも大きな影響が生じます。
恋愛では、相手にも拒否する権利があります。アプローチしても相手から反応がない場合は、潔く諦めた方が良いでしょう。
ストーカーは警察に相談したらどうなる?
もし自分が、前述のようなストーカー被害に遭っている場合は警察に相談することをおすすめします。
ここでは、ストーカーを警察に相談した場合に、どのように対処するのか、流れなどを解説します。
警察に相談する
ストーカーを警察に相談すると、まずは警察安全相談員などが、ストーカー被害の詳細について話を聞いてくれます。
警察でストーカーについて相談すると、状況に応じていくつかの選択肢を提示してくれます。
- ストーカー行為が明確である場合は、被害届の提出
- ストーカー相手にどのように対応すればいいのかの助言
- 必要に応じて専門機関の紹介
- 希望に応じて警告、指導、説得
相談内容から生命への危険性がなく、犯罪に至るおそれがない場合や、被害者が大ごとにせずに自分で解決を図りたいと希望する場合は、援助の申し出を行います。
援助を申し出ると、次のようなサポートが受けられます。
- 被害者の自宅周辺の警戒
- 防犯ブザーや通報機能付きGPS端末などの貸し出し
- 相手と話し合いを行う場合には、相手の連絡先の提供してもらえる
- 相手と話し合いを行う場合に、警察から相手に連絡をしてもらえる
- 相手との交渉の場として、警察の施設の利用
- 警告や禁止命令を実施した書面の交付 など
場合によっては、警察がストーカーに対して直接電話で注意し、ストーカー行為をやめるよううながすこともあります。
警察に相談をすると、ストーカーが逆上するのではないかと、相談をためらいがちですが、ストーカーの初期に警察から注意してもらうことで、手を引くケースもあります。
警察がストーカー行為に対する被害届を受理してくれない場合は、どのような証拠が必要なのか後述します。
警告が行われる
相手の行為がつきまといや位置情報の無断取得などであり、更にこうした被害が反復して行われるおそれがある場合は、被害者の申し出により、ストーカーに警告が行われます。
具体的には、警察署所長からストーカーに対して、警告内容について書かれた文書が送られることになります。
この警告を無視してストーカー行為をした場合は、禁止命令が出される可能性があります。
禁止命令が出される
警告同様に、つきまといや位置情報の無断取得などがあり、被害が反復して行われるおそれがある場合は、被害者の申し出や、警察本部長や公安委員会の職権により、禁止命令等が出されることがあります。
2021年には、ストーカー規制法の改正が施行され、警告をせずとも、禁止命令や緊急禁止命令ができるようになりました。
禁止命令とは、ストーカーに対して、つきまといなどのストーカー行為を反復して行わないように文書や口頭によって行います。
禁止命令が行われる際は、ストーカー行為をしている人の意見を聞く聴聞が行われるため、ストーカー行為について事情を伝えることも可能です。
禁止命令の効果は1年間で、被害者の申し出や職権により延長が行われることもあります。
禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は、禁止命令犯罪として、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されます。
逮捕される
ストーカー行為が、ストーカー規制法に違反する場合は、警告や禁止命令が行われずに、逮捕される可能性もあります。
次の行為があった場合は、110番通報をすることで、逮捕されることも考えられます。
- 暴行や傷害(暴行罪や傷害罪)
- 脅迫(脅迫罪)
- 自宅に押しかけ、帰ってくれない場合(不退去罪)
- 無理やり体に触れる(不同意わいせつ罪)
- 職場に押しかけて仕事を邪魔する(業務妨害罪)
- 郵便物を盗んだり、開封したりする行為(信書隠匿罪や信書開封罪)
ストーカーでよくある相談
ストーカー被害に遭った場合にすべきことは?
ストーカー被害に遭った場合は、次の対応が考えられます。
- 無視をする前に、相手に対して明確に拒否の姿勢を示す
- 話し合いをする場合は、第三者に同席してもらう
- SNSでは場所が特定できる情報を発信しない
- できる限り一人にならないようにする
- 警察に相談するために、ストーカー行為の証拠を残しておく
- ストーカー行為の初期段階であれば、警察に警告してもらう
ただし、ストーカーによっては、嫌がらせを行う可能性もあるため、一人で抱えず必ず周囲に相談しておくことが重要です。
警察が動いてくれない場合どうしたらいい?
被害届の受理や、禁止命令を出してもらいたい場合は、ストーカー被害の証拠を示して相談するのが有効です。
例えば、次のような証拠が挙げられます。
- ストーカーからのLINE、メール、SNSのメッセージや着信履歴などのスクリーンショット
- ストーカーとの会話ややり取りの録音記録
- ストーカーからの手紙やプレゼント
- ストーカー被害を記録した日記(いつ、どこで、誰に、何をされたのか、どう感じたのか) など
警察が動いてくれない場合は、ストーカーの相談を受けているNPO法人などに相談する方法もあります。
場合によっては、警察や弁護士など関係機関への連携や、被害届提出の手助けをしてくれる可能性もあります。
ストーカーの冤罪で警告されたら逮捕される?
ストーカーの冤罪で警告を受けた場合、冤罪であっても、それ以上つきまといなどの行為をやめた方が良いでしょう。
反復してつきまといなどを行えば、ストーカー規制法に違反したとして、逮捕される可能性もあります。
もし何か用事があり、相手と話し合う必要があるのであれば、弁護士を介した方が安全です。
まとめ
ストーカー行為に該当するのは、ストーカー規制法で定められた行為をした場合です。
自分のしている行為がストーカーかもしれないと感じた場合は、相手がどのような反応を示していたのか今一度考えてみましょう。
相手の明確な拒絶だけでなく、はっきりと好意を示さない場合は、拒絶されていると考えた方が良いかもしれません。
ストーカー被害に遭っている場合は、一人で行動せず、必ず周囲の人や警察に助けを求めて、対策を講じるようにしましょう。