当番弁護士とは?当番弁護士制度を徹底解説【私選・国選との比較も】
ご家族が突然警察に逮捕されたら。
ご自身が逮捕され、留置場にいるとしたら。
こうした状態にある被疑者やそのご家族にとって、当番弁護士は重要な役割を担います。
当番弁護士制度は、逮捕という突然の事態に直面した人々に、法的なアドバイスと心理的な安心感を提供するための制度です。
この記事では、当番弁護士の基本的な知識から、その具体的な利用方法、活動内容、そして私選弁護人や国選弁護人との違いを解説します。
ぜひ参考にしてください。
目次
当番弁護士とは
当番弁護士とは、各地の弁護士会が運営する当番弁護士制度を通じて、逮捕・勾留された人やそのご家族などの依頼に応じて派遣される弁護士です。
1回無料で会いに来てくれる心強い味方
当番弁護士制度の特長は、1回に限り・無料で利用できる点です。
初回に限り、相談料や弁護士費用を支払う必要はありません。
弁護士に支払われる報酬は、利用者が負担するのではなく、弁護士会が負担する仕組みになっています。
逮捕直後速やかに利用できる
当番弁護士制度の目的は、経済的な余裕がない人や知っている弁護士がいない人でも、逮捕直後の緊急性の高い段階で、速やかに弁護士のアドバイスを受けられるようにすることです。
逮捕直後は、弁護士以外の外部との連絡が制限されるため、弁護士との接見は、状況を把握し、今後の対応を考える際の重要な機会となります。
法的な面だけでなく精神面でも支えに
逮捕された被疑者が弁護士と面会することは、法的な観点だけでなく、心理的な面でも支えとなります。
警察署に連行され、突然外部との連絡を断たれた被疑者は、不安や混乱でいっぱいのことでしょう。
このような状況下で、弁護士が駆けつけ、今後の手続きの流れや権利について説明することで、精神的な支えを得て、冷静さを取り戻せるでしょう。
逮捕直後に弁護士との接見が重要な理由
逮捕後72時間は弁護士しか接見ができません。
原則として、家族も面会はできません。

逮捕後は、通常、警察官による取り調べが行われます。
逮捕後、弁護士と接見せず、自分が置かれている状況がわからないまま手続きが進むと、知らないうちに不利益を被る可能性が高いです。
弁護士は、被疑者が置かれている状況や今後の手続きの流れを説明し、取り調べに対するアドバイスをします。
さらに、弁護士との面会は、警察官や検察官の立ち会いなく自由に行えるため、被疑者は安心して、事件の経緯や警察の取り調べ状況を話せます。
したがって、逮捕直後に弁護士と接見することは、今後を左右する重要な要素でしょう。
当番弁護士制度について知っておくべき5つのこと
当番弁護士制度の利用を検討している方が抱える、具体的な疑問について一問一答形式で解説します。
当番弁護士はいつ呼べる?
逮捕されてから起訴が決定されるまでの間です。
当番弁護士制度は、逮捕・勾留されている被疑者が利用できる制度であり、在宅事件(逮捕されていない事件)や、任意同行を求められている段階では利用できません。
起訴された後は、当番弁護士ではなく、私選弁護人や国選弁護人の選任手続きを取る必要があります。
特に、逮捕前に弁護士のサポートが必要な場合は、当番弁護士は利用できず、私選弁護人をつける必要があります。
当番弁護士を呼ぶための費用は?
無料です。
当番弁護士制度は、逮捕・勾留された人が経済的な状況に関わらず、速やかに弁護士の助言を受けられるようにするための仕組みです。
被疑者やそのご家族が金銭を支払う必要はありません。
家族や友人も当番弁護士を呼べる?
家族や友人も当番弁護士を呼べます。
当番弁護士を呼べるのは、逮捕・勾留されている被疑者本人だけではありません。
ご家族(配偶者、親、子、兄弟姉妹など)や友人、勤務先の関係者など、被疑者本人と何らかの関係がある方であれば、基本的には当番弁護士を呼べます。
逮捕直後の約3日間は、ご家族が被疑者と面会できないため、ご家族が弁護士を派遣することは、被疑者本人と外部を繋ぐ重要な手段となります。
逮捕された被疑者本人だけでなく、その安否を心配するご家族のためにも、当番弁護士制度が存在します。
当番弁護士の呼び方は?被疑者本人と家族でどう違う?
当番弁護士の呼び方は、誰が依頼するかによって異なります。
- 逮捕された被疑者本人が呼ぶ場合
警察官、検察官、または裁判官に対し、「当番弁護士を呼んでください。」と伝えるだけです。
これらの機関が弁護士会に連絡し、当番弁護士が派遣される手配をしてくれます。
- ご家族や友人が呼ぶ場合
逮捕された被疑者本人がいる警察署を管轄する各都道府県の弁護士会に直接電話をかけ、当番弁護士の派遣を依頼します。
この際、以下の情報を聞かれる場合があるため、あらかじめ準備しましょう。
- 被疑者名(逮捕された方の氏名)
- 生年月日
- 罪名
- 身体拘束されている警察署名
- 逮捕された日時
- 申込者の氏名・連絡先
- 申込者と被疑者との関係
弁護士会の中には、平日だけでなく休日や夜間でも、留守番電話などで依頼を受け付けているところもあります。
ただし、すぐに弁護士が来てくれるとは限りませんから、早めの連絡が肝要です。
各地域の当番弁護士を利用する際の連絡先はこちらです。
参照:日本弁護士連合会:当番弁護士連絡先一覧
同じ当番弁護士に継続して弁護を頼める?
当番弁護士による無料のサービスは、あくまで1回に限定されます。
そのため、2回目以降も無料で利用はできません。
ただし、当番弁護士として来てくれた弁護士に、引き続き私選弁護人として弁護活動を依頼できる場合があります。
この場合は、別途、弁護士との間で正式な有料の委任契約を結ぶ必要があります。
当番弁護士の具体的な活動内容
当番弁護士が初回接見で提供する主なサポートは、以下のとおりです。
逮捕後の流れや権利の説明
今後の刑事手続きがどう進むのか、勾留される可能性があるのか、裁判になる可能性はどの程度かなどの見通しについて、当番弁護士が説明してくれます。
取調べへの具体的なアドバイス
警察官や検察官など捜査機関による取調べへの対応について、当番弁護士からアドバイスを受けられます。
例えば、捜査機関による誘導的な質問に対してどのように対応すべきか、具体的な例を挙げて説明します。
取調べ終了後に作成される供述調書については、内容を必ず確認し、署名押印する前に誤りや不正確な点がないか確認するよう指導します。
場合によっては、黙秘権の行使について検討し、アドバイスすることもあります。
当番弁護士は、被疑者が自分に不利な供述をするリスクを抑えます。
ご家族への伝言と連絡パイプ役
逮捕直後はご家族との面会が制限されるため、当番弁護士は、被疑者本人に代わってご家族に状況を伝えたり、ご家族からの伝言を被疑者本人に届けたりする重要なパイプ役を担います。
これにより、被疑者本人とご家族双方の精神的な不安が軽減されます。
当番弁護士の活動には限界も
当番弁護士制度は、迅速な初回対応に特化した制度であるため、無料の活動には限界もあります。
無料の活動は初回接見のみ
当番弁護士は、あくまで1回の接見で任務を終えます。
その後の示談交渉や裁判に向けた準備、保釈請求などの継続的な弁護活動を受けたい場合には、私選弁護人や国選弁護人の選任手続きが必要です。
不起訴処分や早期釈放を目指す活動は含まれない
被害者のいる事件の場合、示談交渉は、不起訴処分を獲得し、前科を回避するための重要な活動です。
しかし、当番弁護士の活動範囲には示談交渉は含まれません。
早期釈放を目指すための活動(検察官や裁判官への意見書提出など)も、原則として当番弁護士の役割ではありません。
この活動範囲の限界は、当番弁護士制度が、あくまで逮捕直後の緊急対応を目的としているためです。
根本的な事件の解決を目指すのであれば、これに続く弁護活動が不可欠であり、その役割を担うのが私選弁護人や国選弁護人となります。
当番弁護士・国選弁護人・私選弁護人の違いを徹底比較
刑事事件の弁護を依頼する際の選択肢として、当番弁護士のほかに国選弁護人と私選弁護人があります。
これら3つの制度は、それぞれ異なる目的と特性を持っています。
| 私選弁護人 | 国選弁護人 | 当番弁護士 | |
|---|---|---|---|
| 選べるタイミング | いつでも可能 | 逮捕されている場合:勾留後 在宅捜査の場合:起訴後 |
逮捕・勾留されている間(ただし起訴前)かつ1度のみ |
| 主な活動範囲 | 初回接見のみ | 継続的な弁護活動 | 継続的かつ手厚い包括的な弁護活動 |
| 制度の目的 | 逮捕直後の支援 | 貧困者の権利保障 | 自由な弁護人選任権の保障 |
| メリット | ・盗撮事件を得意とする弁護士を選べる ・逮捕前の相談も可能 ・早期釈放や不起訴獲得、被害者との示談など手厚いサポートを受けられる |
・費用負担なし ・弁護士を探す手間がかからない | ・費用負担なし ・弁護士を探す手間がかからない ・逮捕直後の相談も可能 |
| デメリット | ・費用は自己負担 | ・盗撮事件を得意とした弁護士とは限らない ・逮捕直後の相談はできない ・在宅捜査の場合は起訴されるまで利用できない ・資産50万円未満の人に限られる |
・盗撮事件を得意とした弁護士とは限らない ・一度しか利用できない ・継続的サポートをうけるためには、私選弁護人・国選弁護人の選任手続きを必要とする |
以下、詳しく説明します。
私選弁護人
私選弁護人とは、被疑者や被告人本人、その家族が自ら選ぶ弁護士です。
インターネットや知人の紹介などで弁護士を探します。
刑事事件を得意とする弁護士、自分に合った弁護士を選べるでしょう。
私選弁護人は、いつでも依頼が可能なため、まだ警察に事件が発覚していない段階や逮捕される前に依頼することで、逮捕を回避するための活動もできます。
早期釈放や不起訴獲得、被害者との示談など手厚いサポートを受けられます。
デメリットは、弁護士費用がかかる点でしょう。
国選弁護人
国選弁護人とは、国が選任する弁護士です。
経済的理由で私選弁護人を選任できない被疑者・被告人のための制度です。
事前に準備された弁護士名簿の中からランダムに選ばれるため、刑事事件を得意とする弁護士が選任されるとは限りません。 国選弁護人は国が選ぶので、原則弁護士費用も国が負担します。
そのため、国選弁護人を利用するためには、現金や預貯金などの資産が合計50万円未満でなければ利用できません。
逮捕前はもちろん、逮捕後も、勾留決定がされるまでの間は選任できません。
逮捕されず在宅捜査の場合には、起訴後でなければ選任できません。
私選弁護人と比較すると、選任されるタイミングは遅いと言わざるを得ないでしょう。
早期釈放や不起訴獲得を目指すには、私選弁護人の選任を検討する必要があります。
私選弁護人への依頼を検討すべき理由|後悔しないために
当番弁護士が緊急時の重要なサポートである一方で、事件の根本的な解決を目指すのであれば、その先の弁護活動を考える必要があります。
そこで検討すべきなのが私選弁護人です。
私選弁護人は、以下の点で当番弁護士や国選弁護人とは異なるメリットがあります。
逮捕前から動けるスピード感
私選弁護人は、当番弁護士のように逮捕後のタイミングに限定されず、逮捕される前の段階から活動を開始できます。
例えば、犯行後その場を離れて不安を抱えている段階や警察から任意での取調べを求められている段階、在宅事件の段階からでも依頼が可能です。
逮捕前の段階から刑事事件に強い弁護士に依頼することで、警察への捜査に対するアドバイスをしたり、被害者との早期示談を目指したりするなど、逮捕を回避するための弁護活動が可能になります。
このスピード感は、身柄拘束の期間を最小限に抑え、早期釈放や不起訴処分獲得の可能性を高めます。
示談交渉や不起訴に向けた手厚い弁護活動
当番弁護士の活動が初回接見に限られるのに対し、私選弁護人は、事件の解決に向けた包括的で手厚い弁護活動を継続して行います。
特に重要な活動の一つが、被害者との示談交渉です。
被害者との示談が成立することは、不起訴処分を獲得するための決定的な要素となることが多く、前科を回避するためにも重要です。
その他にも、私選弁護人は勾留阻止に向けた意見書を検察官や裁判官に提出したり、保釈請求を行ったりと、被疑者の身柄の解放を目指して多角的に活動します。
刑事事件に強い弁護士を自由に選べる
当番弁護士や国選弁護人が名簿順などでランダムに選ばれるのに対し、私選弁護人は、ご自身で自由に選べます。
弁護士に何を求めるかは人それぞれですが、特に刑事事件では、解決実績や経験豊富な弁護士を選ぶことが、最善の解決を目指すための第一歩です。
逮捕という人生の一大事に、誰に弁護を任せるかは、今後の人生を左右するかもしれません。
信頼できる弁護士を自ら選び、密なコミュニケーションを取りながら弁護活動を進めてもらえることは、何にも代えがたい安心感につながるでしょう。
まとめ
当番弁護士は、逮捕という突然の事態に直面した被疑者やご家族にとって、費用を気にすることなく、迅速に弁護士と面会できる緊急連絡口としての役割を果たします。
当番弁護士制度を利用して、現状を把握し、今後の対応について最初に弁護士から助言を得ることが大切です。
しかし、事件の根本的な解決のためには、その後の本格的な弁護活動を視野に入れることが不可欠です。
早期釈放や不起訴処分などの結果を得るためには、示談交渉や裁判所への働きかけなど、継続的かつ手厚い弁護活動が不可欠であり、それは私選弁護人だからこそ実現できることです。
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