ストーカーへの措置とは?警告・禁止命令・逮捕の概要と傾向

ストーカー行為に対しては、どのような措置がとられるのでしょうか。
この記事では主に、以下の4点について解説します。
- どのような行為がストーカー行為にあたるか
- ストーカー規制法に違反するとどうなるか
- ストーカー事件の傾向
- 弁護士に刑事弁護を依頼した場合の対応
今後の対応にご活用ください。

目次
ストーカーとして逮捕される行為
ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」といいます。)は、その第2条第1項各号において、以下に示す行為をつきまとい等と規定し、規制対象にしています。
同一の人につきまとい等を繰り返し行うと、ストーカー行為として処罰される可能性があります(ストーカー規制法第2条、第18条)。
つきまとい・待ち伏せ・押しかけ・うろつき(第1号)
- つきまとい:特定の人を尾行し、つきまとうこと
- 待ち伏せ:勤務先など行動先で待ち伏せすること
- 押しかけ:自宅や学校など、実際にいる場所に押しかけること
- うろつき:自宅や学校など、実際にいる場所の付近をみだりにうろつくこと
監視していると告げる(第2号)
特定の人の行動や服装などをメールや電話で知らせるなど、監視していることを告げる行為は規制対象です。帰宅したタイミングで「おかえり」と電話することなども該当します。
面会や交際の要求(第3号)
面会や交際、復縁など、義務のないことを要求する行為も規制対象です。
乱暴な言動(第4号)
乱暴な言動とは、「バカヤロー」などと大声で怒鳴ったり、「コノヤロー」などと粗暴な内容のメールを送ったりすることを指します。
無言電話、拒否後の連続した電話・メール・SNSメッセージなど(第5号)
無言電話や、相手が拒否しているにもかかわらず連続して電話をかけたり、電子メール、SNSメッセージなどを送ったりすることも規制対象です。
汚物等の送付(第6号)
汚物等の送付は、汚物や動物の死体など、相手に不快感や嫌悪感を与えるものを、自宅や職場に送り付ける行為です。
名誉を傷つける(第7号)
相手を中傷する内容のメールを送るなど、名誉を傷つける行為も規制対象です。
性的羞恥心の侵害(第8号)
相手にわいせつな画像をメールで送り付ける行為などが、性的羞恥心の侵害に該当します。
ストーカー規制法に違反するとどうなる?
ストーカー規制法に違反すると、警察などから警告や禁止命令を受けるだけでなく、場合によっては逮捕される可能性があります。
警告(ストーカー規制法第4条)
つきまとい等を受けた人から申し出があった場合、警察署長などはつきまとい等を行った者に対して、当該行為を繰り返さないよう警告できます。
禁止命令(ストーカー規制法第5条)
つきまとい等を受けた人から申し出があった場合、都道府県公安委員会は、つきまとい等を行った者に対して、当該行為を繰り返さないよう禁止命令を出せます。禁止命令は公安委員会の職権でも可能です。
逮捕
警告や禁止命令を受けたにもかかわらず、つきまとい等を繰り返すと逮捕される可能性があります。
ストーカー規制法違反での逮捕は、警告や禁止命令の発出など段階を踏んで行われるケースが多いようですが、段階を踏まなければならない決まりはありません。警告なしに逮捕される可能性もあります。
罰則
ストーカー行為に対する罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です(ストーカー規制法第18条)。
ただし、禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金と罰則が重くなります(ストーカー規制法第19条)。
禁止命令に違反した場合で、ストーカー行為をしたとまでは認められないケースの罰則は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金です(ストーカー規制法第20条)。
ストーカー規制法以外の罪名で逮捕された場合はより重い罪に問われる
ストーカー行為に及ぶ中で、相手を押し倒したり殴ってケガを負わせたりすれば、刑法の規定に基づいて逮捕される可能性があります。その場合、ストーカー規制法違反よりも重い罪に問われるおそれがあります。
器物損壊(刑法第261条)
相手につきまとう中で、相手の車の一部を壊すなど他人の物を損壊した場合は、器物損壊罪が適用されます。器物損壊罪の法定刑は3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料です。
住居侵入(刑法第130条)
相手の自宅に正当な理由なく入る行為は住居侵入罪に該当します。法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。

脅迫(刑法第222条)
ストーカー行為の中で、「殺すぞ」などと相手を脅せば、脅迫罪に問われる可能性があります。脅迫罪の法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
暴行(刑法第208条)
相手を押し倒すなど暴力をふるえば、暴行罪が適用されます。暴行罪の法定刑は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。
傷害(刑法第204条)
暴力をふるって相手にケガを負わせば、傷害罪に問われます。傷害罪の法定刑は15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
殺人(刑法第199条)
相手を殺せば、殺人罪に問われます。殺人罪の法定刑は死刑または無期もしくは5年以上の懲役です。
【事件の傾向】ストーカーをすると逮捕されるのか?
ストーカーをすると逮捕されるのでしょうか?令和3年版犯罪白書をもとに、事件の傾向を見ていきましょう。
件数 | 相談件数に対する割合 | |
相談件数 | 20189 | – |
警告の件数 | 2146 | 10.6% |
禁止命令の件数 | 1375 | 6.8% |
検挙の件数 | 985 | 4.8% |
ストーカー被害の相談件数
令和2年に警察に寄せられたストーカー被害の相談件数は2万189件でした。そのうち、交際相手(元交際相手を含む)によるものが最多の8239件で、次いで多かったのが知人・友人間の2552件、勤務先同僚・職場関係が2437件でした。
警告の件数
警察署長などによる警告の件数は2146件で、令和元年の2052件から増えました。平成26年から29年までは3000件を超えていたことを考えると、ピーク時よりは低い水準にあります。
禁止命令の件数
増加傾向を示しているのが禁止命令の件数で、令和元年の1375件から令和2年は1543件に増えました。平成29年から急増しており、同年から警告を経なくても禁止命令を出せるようになったことなどが背景にあるとみられます。
検挙の件数
ストーカー規制法違反での検挙件数は985件で、令和元年の864件から14%増えました。暴行罪などストーカー規制法以外の法令で検挙した件数は1518件で、こちらも前年の1491件から増加しました。
両者を合わせると令和2年は2503件で、検挙件数としては高い水準にあるといえます。
警告・禁止命令が下されたら
警察にストーカーの相談がなされた場合でも、4.8%しか検挙されないようです。
警察は殺人のような悪質性が高い事件から対応するので、事件が起きていないものについては対応しにくいのかもしれません。
逆に、警告や禁止命令がなされた場合は事件に発展する可能性が考えられるので、直ちに当該行為をやめるべきでしょう。
ストーカーで逮捕された後の流れ
ストーカーで逮捕された後は、以下のような流れで刑事手続きが進みます。
警察は被疑者を逮捕した場合、逮捕から48時間以内に被疑者を検察官に送致しなければなりません(刑事訴訟法第203条第1項)。被疑者を送致された検察官は、さらに被疑者の身体拘束が必要と判断した場合、送致から24時間以内に裁判所に勾留を請求しなければなりません(刑事訴訟法第205条第1項)。
勾留が認められると、身体拘束は原則10日間、最長で20日間続きます(刑事訴訟法第208条)。
検察官はこの勾留期間中に被疑者を起訴するか不起訴にするか判断し、起訴されればさらに2か月間勾留される可能性があります。その後の勾留については、1か月ごとに更新することが認められています。
逮捕後の流れをより詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
ストーカーで逮捕された場合の対応
ストーカーで逮捕された場合は、すぐに弁護士に刑事弁護を依頼することが重要です。
刑事弁護を依頼する
まずは、刑事弁護を弁護士に依頼しましょう。
逮捕から勾留の可否が決まるまでの72時間は、家族すら被疑者に面会できません。しかし、弁護士はこの期間でも接見できます。
この72時間に行われる取調べにどう臨むかは、その後の刑事処分に影響します。早期に弁護士と相談して対策を講じるのが得策です。
接見をする
刑事弁護を依頼された弁護士は被疑者と接見し、弁護方針を立てます。被疑者に対しては、取調べで注意すべき点などを伝え、被疑者が不利にならないようサポートします。
被害者と示談交渉をする
被疑者との接見とあわせて、弁護士は被害者と示談交渉を行います。示談によって被害者と和解できれば、不起訴になる可能性が高まるなど刑事処分が軽くなる効果が期待できます。
まとめ
ストーカー行為に対してはまず、警告や禁止命令が出されるケースが多いといえます。ただし、ストーカー行為が悪質な場合などは段階を踏まずに逮捕される可能性もあります。
ストーカーで逮捕されたときは、すぐに弁護士に刑事弁護を依頼することが肝要で、弁護士は取調べ時のアドバイスをしたり示談交渉を進めたりして、刑事処分が軽くなるよう弁護活動を行います。
ストーカー行為に心当たりのある方は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。