誹謗中傷は逮捕される?訴えられた事例と誹謗中傷の加害者の末路

SNSやネットで気軽に書き込みができる昨今、何気なく投稿した内容が、誹謗中傷になる可能性があります。

もし誹謗中傷をしてしまった場合は、被害者から慰謝料の請求を受けるだけでなく、刑事事件として捜査されるおそれがあります。

実際に誹謗中傷で逮捕された事例もあります

この記事では、誹謗中傷の逮捕について、下記の点を解説します。

  • SNSや掲示板への誹謗中傷で逮捕される?
  • ネットの誹謗中傷で訴えられた事例
  • 誹謗中傷をした加害者の末路

誹謗中傷をして警察から連絡を受けた人は、刑事事件として捜査されている可能性があります。

誹謗中傷をしてしまい、被害者から訴えられるのではないかと不安な人は、この記事を参考にして、誹謗中傷をやめましょう。

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誹謗中傷とはどこから?

一般的に言われている誹謗中傷や、逮捕されるようなケースでは、どのような言葉が誹謗中傷に該当するのでしょうか。

どのような言葉が誹謗中傷に該当するのか、法律上の明確な基準は存在しません。

しかし、一般的には、悪口や根拠のない嘘などを言って、他人を傷つける行為だと定義されています。

後述するような刑法に触れる内容が含まれている場合は、刑事処分を受ける可能性があります。

同様に、相手に対して精神的な苦痛を与えた場合も、民法によって慰謝料請求の対象となります。

軽い気持ちでネットなどに書き込んだ内容でも、処罰される可能性があるということです。

SNSやネットの誹謗中傷で逮捕されることはある?

では、実際にネットの誹謗中傷で逮捕されることはあるのでしょうか?

ネットで誹謗中傷をすると、法的措置を受ける可能性があります。

ここでは、誹謗中傷で受ける法的措置について解説します。

逮捕されることはあり得る

誹謗中傷で行った行為が、犯罪を定める刑法に違反している場合は、逮捕される可能性があります。

ただし、逮捕される割合はそこまで多くありません。

ネットの誹謗中傷だけの統計はありませんが、法務省によると2022年に刑法違反などで逮捕された人の割合は約34.3%でした。

ネットの誹謗中傷で問われる名誉毀損罪や侮辱罪は、親告罪です。

被害を受けた本人が、刑事告訴をして処罰の意思表示をしなければ、刑事裁判で裁くことができません。

これは、裁判で被害者の受けた被害内容が公開されることになり、被害者のプライバシーなどが侵害されるおそれがあるため、被害者保護の観点から、本人の希望に応じて手続きが行えるように配慮されています。

親告罪の場合は、被害者から刑事告訴を受けていて、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断された場合は、逮捕される可能性があります。

仮に逮捕が行われなくても、定期的に検察などから呼び出しを受けて、最終的に刑事事件で起訴されるケースもあるため、逮捕されないからといって、罪に問われないとは限りません

参考:令和5年版 犯罪白書 第3節 被疑者の逮捕と勾留|法務省

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損害賠償を請求される可能性もある

仮に、誹謗中傷で逮捕されなかったとしても、損害賠償を請求される可能性があります。

これは民法が根拠となります。

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用:民法第709条|e-Gov

民法では、他人の権利や法律上保護される権利を守っており、その権利を侵害した場合に、加害者は被害者の損害に対して、賠償する責任を負うことになります。

誹謗中傷は被害者の名誉を傷つける行為であり、投稿者は、被害者が受けた精神的な苦痛や、誹謗中傷によって受けた金銭的な損害を賠償しなくてはなりません。

民法と刑法は別の法律であり、手続きも異なります。

そのため、刑事処分を受けなくても、損害賠償請求をされる可能性がありますし、刑事処分とは別に損害賠償請求をされるケースもあります。

誹謗中傷で問われる可能性のある罪

ここでは、誹謗中傷によって問われる可能性のある罪を解説します。

  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪
  • 脅迫罪
  • 信用毀損罪
  • 威力業務妨害罪

名誉毀損罪

名誉毀損罪とは、不特定多数にわかる形で、事実を適示し、人の社会的評価を低下させた場合に成立する犯罪です。

(名誉毀損)

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

引用:刑法第230条|e-Gov

公然と 公然とは不特定多数にわかること

インターネット上の誹謗中傷を含む

事実を適示し 事実でも嘘でも、具体的な事実を示すこと

例えば、○○株式会社の経理部の○○さんは、営業部の○○さんと不倫をしているといった具体的な内容を示し、本人の社会的な信用を低下させた場合に成立します。

法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金です。

禁錮刑とは、懲役のように刑務作業が科されない身柄拘束を受ける刑罰のことです。

侮辱罪

侮辱罪の場合は、事実を適示しなくても、不特定多数にわかる形で人を侮辱した場合に成立します。

法定刑は1年以下の懲役もしくは禁錮、もしくは30万円以下の罰金、または拘留、もしくは科料です。

拘留 1日以上30日未満身柄拘束を受ける刑罰
科料 1000円以上1万円未満の罰金

(侮辱)

第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

引用:刑法第231条|e-Gov

侮辱罪の場合は、不特定多数にわかる形で、具体的な事実のない悪口を言うと該当する可能性があります。

例えば、相手に対してバカやブスといった悪口を言うようなケースが挙げられるでしょう。

下記は侮辱に該当した書き込みとして法務省に紹介されているものです。

  • SNSの配信動画で豚、ブス、死ねなど放言した
  • ネットの掲示板に、便器みたいな顔、ブスなどと掲載した
  • ネットの掲示板に、○○店勤務の尻軽女と掲載した
  • ネットの掲示板に、○○は自己中でわがまま、変質者など掲載した
  • 路上において、大声でくそばばあ、死ねなどと言った

参考:侮辱罪の事例集|法務省

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脅迫罪

脅迫罪は、相手の生命、身体、自由、名誉、または財産に対して害を加える旨を告知して、人を脅迫した場合に成立します。

法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

(脅迫)

第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

引用:刑法第222条|e-Gov

脅迫罪の場合、具体的にどういった言葉を発すると脅迫になると明確に定められているわけではありません。

脅迫と聞くと、生命を呼びやかすような殺すといった言葉を連想するかもしれませんが、それだけではありません。

間接的な表現であの世におくるといった言葉や、この写真をばらまくぞといった名誉に対して危害を加える告知をした場合も成立します。

脅迫を受けた状況、加害者と被害者の関係や、体格差、恐怖を感じたかどうかによっても成立するかどうか異なります。

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信用毀損罪

信用毀損罪とは、嘘の噂や情報を流して、他者の信用を傷つけた場合に問われる犯罪です。

(信用毀損及び業務妨害)

第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用:刑法第233条|e-Gov

信用毀損罪は、法人だけを対象としているわけではありませんが、法人に対して、嘘を流して経済的な信用を損なった場合に問われるケースが多いです。

例えば、あの会社はもうすぐ潰れる、あの飲食店は料理に虫が混じっているなど事実ではないことを流すようなケースが挙げられるでしょう。

法定刑は3年以下の懲役または50万円の罰金ですが、企業に対してこうした書き込みをして、実際に損失が出た場合は、損害賠償請求を受けるおそれもあります。

威力業務妨害罪

威力業務妨害罪とは、威力を用いて、人の業務を妨害した場合に成立します。

法定刑は信用毀損罪と同様に、3年以下の懲役または50万円の罰金です。

(威力業務妨害)

第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

引用:刑法第234条|e-Gov

威力業務妨害罪の威力とは、人の意思を制圧する程度の勢力のことで、わかりやすく言えば、相手にプレッシャーをかけるような行為をして、かけて、業務を妨害した場合に成立します。

例えば、暴行や脅迫、大声をあげる、過度のクレームなどで、業務を妨害したようなケースが挙げられます。

ネットの書き込みで言えば、店舗や学校、市役所やイベント会場などに対して、犯行予告を書き込んだ場合も威力業務妨害罪が成立します。

ネットの誹謗中傷で逮捕や起訴された事例

ここでは、実際にネットの誹謗中傷により逮捕や起訴され、処分を受けた事例を紹介します。

SNSで池袋暴走事故の遺族に侮辱行為で男を起訴

池袋暴走事故の遺族を誹謗中傷した男性が、侮辱罪で起訴されました。

男性は、遺族に対して金や反響目当てで闘っているようにしかみえない、新しい女を作ってやり直せばいいなどと書き込んでいました。

男性は逮捕されていませんが、身柄拘束を受けない在宅での起訴となりました。

このように、逮捕や身柄拘束を受けなくても、刑事事件として起訴される可能性があります

参考:池袋暴走事故の遺族に「金や反響目当て」「新しい女作ってやり直せば」…侮辱罪で異例の正式起訴|読売新聞オンライン

5ちゃんねるに誹謗中傷を書き込んだ男を起訴

5ちゃんねるに誹謗中傷を書き込んだ投稿者が、名誉毀損で起訴されました。

投稿者は5ちゃんねるに、美容クリニック医院長の個人名を書き込み、【緊急速報】ガチで逮捕などの名称で3回にわたりスレッドを作成。

不特定多数が閲覧可能な掲示板で、死亡事故を起こした医院長が逮捕されたとする虚偽の内容を書き込んで、名誉を貶めたとされています。

医院長は書き込みに対して刑事告訴を行っていました。

参考:「ガチで逮捕」スレッド作り高須克弥氏を中傷の罪、大学生を在宅起訴|朝日新聞デジタル

弁護士に殺害予告をした男性が逮捕

トランスジェンダーを公表している弁護士に対して、殺害予告のメールを送った男性が脅迫罪の疑いで逮捕されました。

男性は弁護士のホームページに、メッタ刺しにして殺害するなどと書いたメールを9回送信した疑いが持たれています。

裁判では、身勝手な考えにもとづく犯行で、9回にもわたり命を脅かす内容を送っており、被害者に与えた恐怖は大きいと裁判官が指摘しました。

反省の態度は見られるものの、これまでの前科や同様の罪での服役経験も含めて、実刑にせざるを得ないとして、懲役10か月の有罪判決が下されています。

参考:トランスジェンダー弁護士に殺害予告した男性に有罪判決|LGBT.jp

ネットの誹謗中傷で訴えられた事例

ここでは、ネットの誹謗中傷に対して、被害者から訴えられて賠償命令が下された事例を紹介します。

SNSで女性を誹謗中傷をした投稿者に129万円の賠償命令

恋愛リアリティーショーと呼ばれる番組に出演していた女性に対して、誹謗中傷をした投稿者に、約129万円の支払いが命じられました。

投稿者はX(旧Twitter)で、お前の死でみんな幸せになった、番組はお前の自殺で中止、地獄に落ちろなどと投稿。

出演者の女性は、多数の誹謗中傷を受け、自ら命を絶ち、大きな社会問題となりました。

この事件がきっかけで、侮辱罪が厳罰化、投稿者の情報を開示する手続きである発信者情報開示請求の手続きが簡略化されるなど、法改正が行われました。

参考:木村花さんツイッター中傷、投稿者に129万円賠償命令|朝日新聞デジタル

作家を5ちゃんねるで誹謗中傷し約323万円の賠償命令

ネット掲示板5ちゃんねるに、芥川賞作家の女性に対して誹謗中傷をした投稿者に、約323万円の賠償を命じる判決が下されました。

投稿者は掲示板やブログに、作品は盗作、危害を加えるなどの書き込みをしたとのことです。

投稿者は裁判で、危害を加えるつもりはなかったと主張しましたが、投稿者の主観的な事情は関係ない、社会的評価に相当の影響を与えかねないとし、慰謝料200万円、投稿者の情報開示の手続き費用を含めて、賠償が命じられました。

参考:芥川賞作家の川上未映子さんをネットで中傷、投稿者に323万円賠償命令…「責任追及の前例に」|読売新聞オンライン

政治家に対して誹謗中傷をした投稿者に330万円の賠償命令

大阪府知事選の前に市長を誹謗中傷した投稿者に、330万円の支払い命令が下されました。

投稿者は、市長に対してX(旧Twitter)で過去に女子中生を強姦して自殺に追いやったと匿名で投稿。

裁判官は、客観的な裏付けや立証がない発言であり、政治家の社会的評価を低下させ、精神的苦痛を与えたとして、判決を言い渡しました。

近年SNSなどで著名人と気軽にやり取りができることから、直接誹謗中傷をするケースも増加しています。

しかし、匿名で投稿を行っても、プロバイダー側に請求することで、投稿者の情報を得ることは可能です。

匿名だからと誹謗中傷を行っても、投稿者を特定して、損害賠償請求を受ける可能性があります。

参考:松井一郎氏をネット中傷 埼玉の女性に賠償命令 大阪地裁|産経新聞

誹謗中傷で逮捕・訴えられた加害者の末路とは

SNSやネットで自由に書き込みができる昨今、今や誰でも誹謗中傷の加害者となる可能性があります。

もし誹謗中傷で逮捕されたり訴えられたりした場合、どのようなリスクを負うことになるのでしょうか?

ここでは、誹謗中傷で逮捕・訴えられた加害者の末路を解説します。

多額の慰謝料を請求される

誹謗中傷を書き込むと、被害者から多額の慰謝料を請求される可能性があります。

匿名で書き込んだとしても、発信者情報開示請求という手続きを行えば、投稿者のIPアドレスや氏名などを特定することができます。

投稿者が特定されれば、被害者から裁判や弁護士を通じて慰謝料の請求を受けることになるでしょう。

誹謗中傷の慰謝料の相場は、個人の場合10~50万円ほどと言われています。

ただし、誹謗中傷の内容や、被害者がどの程度の損害を受けたのかによっても金額は左右されます。

手続きにかかった弁護士費用なども併せて支払うよう求められる可能性があります。

有罪になれば前科がつく

もし誹謗中傷で被害者に刑事告訴された場合は、捜査の末に刑事的な処分を受けることもあるでしょう。

刑事裁判で有罪となった場合は、前科がつくことになります。

誹謗中傷の場合は、被害者にしっかり謝罪をして示談をすることで、不起訴や執行猶予となる可能性があります。

しかし、犯罪の内容や反省の程度などによっては、実刑判決が下されるケースもあります。

また、逮捕から勾留(留置場に身柄拘束されること)された場合は、10~20日間拘束されることが考えられます。

長期間拘束を受ければ、生活にも大きく影響することになるでしょう。

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会社を解雇される可能性もある

誹謗中傷で有罪判決が下された場合は、会社を解雇される可能性があります。

逮捕された段階では裁判で有罪になっておらず、罪を犯したと断定できません。

そのため、就業規則と照らし合わせて、最終的な処分の結果も踏まえた上で判断されるのが一般的です。

プライベートでの軽微な犯罪行為の場合は、有罪となっても解雇されないケースもあります。

ただし、誹謗中傷によりSNSなどでも炎上して、会社の名誉や信頼を損なわせた場合や、業務に直接影響を及ぼすような場合は、解雇や退職勧奨を受けることも考えられるでしょう。

誹謗中傷で逮捕・訴えられたときの対処法

もし誹謗中傷をしてしまい、逮捕されたり、警察から連絡が来たりした場合、もしくは被害者から訴えられた場合は、弁護士に相談してください。

刑事事件の場合は、被害者と示談をすることで、被害回復に努めたと評価され、刑事処分が軽くなる可能性があります。

早期に交渉をすることで、刑事告訴を取り下げてもらえることも考えられます

被害者から訴えられた場合や、内容証明郵便が送られてきた場合は、弁護士に依頼することで、慰謝料の減額交渉をしてもらうことも可能です。

被害者との示談や減額交渉に関しては、投稿者が直接行っても、さらなるトラブルに発展する可能性があります。

こうした交渉や刑事手続きのサポートは、弁護士に依頼するのが一番です。

まとめ

誹謗中傷をした場合に、逮捕される確率は低いかもしれませんが、捜査の対象となり、最終的に刑罰が科されることがあります。

有罪判決が下されれば前科がつくことになります。

刑事事件とは別に、民事裁判などで慰謝料の支払いが命じられる可能性もあるでしょう。

このように何の気なしに書き込んだ内容でも、大きなリスクを負うことになるのです。

もし誹謗中傷に心当たりがある人は今すぐやめましょう。

警察や検察から連絡があった場合は、刑事事件として捜査されている可能性があるため、すぐに弁護士に相談しましょう。

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