性犯罪の慰謝料相場|示談金との違いは?示談が不可欠な理由とは?
性犯罪の加害者にとって、被害者との示談は重要です。
しかし、「慰謝料はどのくらい支払うのか?」「示談はどのように始めるのか?」など多くの疑問が生じるでしょう。
警察の捜査や刑事処分の見通しも分からず、一人で悩みを抱えている方も多いかもしれません。
この記事では、性犯罪における慰謝料の相場や示談の重要性について解説します。
目次
性犯罪事件の慰謝料と示談金は違う?刑事事件における意味
慰謝料と示談金は、日常会話で混同されがちですが、法的な意味合いとしては明確な違いが存在します。
慰謝料は精神的苦痛に対する賠償金
慰謝料とは、不法行為によって生じた精神的・肉体的苦痛を償うために支払われる金銭です。
性犯罪の場合は、被害者が受けた深い恐怖、羞恥心、怒りなどの精神的な損害に対する賠償です。
精神的苦痛は目に見えない損害のため、その金額は過去の裁判例や事件の性質、被害者の状況などを総合的に考慮して算定されます。
示談金は被害者が被った損害全体の補償
示談金とは、慰謝料を含む、被害者が被ったあらゆる損害をまとめた金銭です。
具体的には、精神的苦痛に対する慰謝料に加え、以下のものが含まれます。
- 事件によって発生した治療費・通院費
- 被害者が会社を休まざるを得なかった場合の休業損害
- 被害者が安全のため転居を余儀なくされた場合の費用など
つまり、示談金の枠組みの中に慰謝料が含まれていると理解するのが正確です。
刑事事件で両者が混同される理由と示談の本質
法的な意味合いとしては上記のように分かれていますが、刑事事件の実務では、両者はしばしば区別されずに用いられます。
なぜなら、示談が成立すれば、その示談金が被害者の受けた損害全体(精神的苦痛や経済的損失など)を包括的に補償する性質を持つためです。
示談交渉を通じて支払われる金銭は、示談金として扱われ、その中に慰謝料が含まれる形で解決が図られるのが一般的です。
性犯罪の慰謝料相場【犯罪類型別】
性犯罪における慰謝料は、事件の態様や被害の程度によって変動します。
ここでは、各犯罪類型における慰謝料の相場について解説します。
これらの金額はあくまで目安であり、個別の事情によって増減することを理解しましょう。
不同意性交等罪(旧強制性交等罪)の慰謝料相場
不同意性交等罪(旧強制性交等罪)の慰謝料相場は、100万円から300万円程度です。
不同意性交等罪は、性犯罪の中でも悪質性が高い犯罪の一つです。慰謝料相場も高額になる傾向にあります。
不同意わいせつ罪の慰謝料相場
不同意わいせつ罪の慰謝料相場は、50万円から100万円程度です。
胸や陰部を触るなど、より悪質な態様であれば、金額は高くなるのが一般的です。
痴漢(迷惑防止条例・不同意わいせつ)の慰謝料相場
痴漢行為は、適用される罪名によって慰謝料相場が異なります。
都道府県が定める迷惑防止条例違反に該当する場合の慰謝料相場は、30万円から50万円程度と比較的低い金額となる傾向があります。
不同意わいせつ罪に該当する場合の慰謝料相場は、50万円から100万円程度と高額になることも珍しくありません。
盗撮の慰謝料相場
盗撮の慰謝料相場は、10万円から50万円程度です。
公然わいせつ罪の慰謝料相場
公然わいせつ罪の慰謝料相場は、10万円から50万円程度です。
児童ポルノの慰謝料相場
児童ポルノに関する事件の慰謝料相場は、30万円から100万円程度です。
性犯罪の慰謝料はどう決まる?慰謝料額を左右する6つの要素
前述の相場はあくまで目安であり、最終的な慰謝料の金額は個別の事情によって変動します。
慰謝料額を左右する要素として、次の6つが挙げられます。
- 犯行態様の悪質性
- 被害者の年齢
- 被害の大きさ
- 被害者の処罰感情
- 加害者と被害者の関係性
- 加害者の社会的地位や経済状況
以下、詳しく解説します。
①犯行態様の悪質性
犯行態様の悪質性です。
計画性の有無、凶器の使用、執拗な暴行、複数回にわたる犯行など、悪質性が高ければ高いほど、慰謝料も高額になる傾向があります。
②被害者の年齢
被害者の年齢です。
特に、被害者が未成年であったり、若年であったりする場合、慰謝料は高額になる傾向があります。
③被害の大きさ
被害の大きさです。
例えば、暴行によって被害者に怪我を負わせた場合などでは、身体的な苦痛も加わるため、慰謝料は増額されます。
④被害者の処罰感情
被害者の処罰感情です。
示談は、最終的に被害者との合意によって成立します。
被害者が加害者に対して強い怒りを抱き、厳罰を望んでいる場合、示談を成立させるためには、相場を超える金額を提示する必要が生じる場合があるでしょう。
⑤加害者と被害者の関係性
加害者と被害者の関係性です。
事件の背景にある両者の関係性も金額に影響を与えます。
例えば、職場の上司と部下、教員と生徒など、特殊な関係性の中で犯行が行われた場合、被害者の受けた精神的苦痛がより深刻と判断され、慰謝料が高額になることがあります。
⑥加害者の社会的地位や経済状況
加害者の社会的地位や経済状況です。
地位が高い加害者は、高額な支払いを申し出ることで事件の早期解決を図ろうとするケースが見られます。
収入や資産が豊富な場合、その支払能力も考慮要因となり、慰謝料が高額になることがあります。
性犯罪の慰謝料は当事者間の話し合いで決まる
慰謝料の金額は、当事者間の話し合いで決定します。
当事者間の合意の目安として、民事裁判で認められる損害賠償額が参考にされるのが一般的です。
これは、もし示談が成立せず民事訴訟に発展した場合に、裁判所がどのような判断を下すかを予測することで、交渉を円滑に進めるためです。
性犯罪の慰謝料を支払うべき理由|加害者にとって示談が不可欠な理由
「なぜ、慰謝料を支払わなければならないのか?」と疑問を抱く方もいるかもしれません。
性犯罪事件の解決において、示談が不可欠な理由は、主に以下の3つです。
- 不起訴処分を獲得し前科を回避できる可能性
- 刑事処分が軽くなる可能性(実刑回避・減刑)
- 民事訴訟を起こされるリスクを減らせる
以下、詳しく解説します。
不起訴処分を獲得し前科を回避できる可能性
不起訴処分を獲得し、前科を回避できる可能性があります。
日本の刑事手続きでは、起訴便宜主義が採用されています。
これは、たとえ犯罪の事実があったとしても、検察官が諸般の事情(加害者の反省、被害者の処罰感情、被害弁償の有無など)を考慮し、起訴しない判断を下せる制度です。
示談の成立は、加害者が真摯に反省し、被害者への賠償を尽くした客観的な証拠となります。 これにより、被害者の処罰感情が和らぎ、検察官が不起訴処分を決定する可能性が高まります。
不起訴となれば、刑事裁判を受けることもなく、前科が付くことを回避できます。
刑事処分が軽くなる可能性(実刑回避・減刑)
刑事処分が軽くなる可能性(実刑回避・減刑)があります。
起訴された場合も、示談が成立していたか否かは裁判所の判断に影響を与えます。
示談が成立し、被害者が加害者を許している事実は、裁判での情状酌量事由となり、より軽い処分(例えば、罰金刑や執行猶予付き判決)が下される可能性が高まります。
民事訴訟を起こされるリスクを減らせる
民事訴訟を起こされるリスクを減らせます。
示談は、刑事事件の解決だけでなく、民事上の賠償関係も包括的に解決できる利点があります。
示談書には通常、「今後一切の請求を行わない。」旨の清算条項が盛り込まれます。
これにより、原則として、被害者は同一の事件について別途民事訴訟を起こせません。
もし示談が成立しなければ、刑事手続きが終了した後も、被害者から後日、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を起こされるリスクが残ります。
示談は、将来的な法的な争いを未然に防ぎ、包括的な問題解決を図るための賢明な対応策です。
性犯罪の慰謝料の示談交渉を弁護士に依頼すべき理由
性犯罪の慰謝料の示談交渉は、弁護士に依頼することが重要です。
示談交渉は、その成否が刑事処分の結果に直結するため、慎重に進める必要があります。
しかし、加害者本人が直接被害者と交渉することは困難であり、多くのケースで弁護士の介入が不可欠です。
示談交渉をするためには、当然、被害者との接触が必要ですが、通常、警察や検察官は、加害者やその家族に対しては、被害者の情報を教えません。
もちろん、被害者本人やそのご家族も、加害者と直接対面することは拒むでしょう。
いくら被害者との示談が大切と言っても、加害者本人が、直接示談交渉を行うことは困難です。
弁護士であれば、被害者の連絡先を秘匿扱いすることを前提として、被害弁償や示談交渉のために、連絡先を開示してもらえる可能性があります。
弁護士に依頼することで、早い段階から被害者との示談交渉が可能となり、示談が成立する可能性も高いでしょう。
まとめ
性犯罪事件において、被害者との示談の成否は、不起訴処分の獲得や刑事処分を左右する重要な要素です。
弁護士に依頼し、早期に被害者との示談成立を実現しましょう。
ネクスパート法律事務所では、性犯罪事件に強い弁護士が多数在籍しています。
特に、被害者との示談においては、経験豊富な弁護士が迅速丁寧に示談成立を目指します。
スピーディーな対応で、家族や勤務先にバレるリスクも最小限に抑えます。
ぜひ一度ご相談ください。