メンズエステで盗撮を疑われた場合の対応|弁護士相談のメリットも解説
メンズエステとは、広い意味では男性向けにリラクゼーションを提供するエステティックサロンを指しますが、その中には、男性が紙パンツ1枚で女性のセラピストからオイルマッサージなどの施術を受けるタイプのものがあります。
後者のタイプのメンズエステは、法的には性風俗店ではないので、セラピストが全裸やトップレスになることはありません。しかし、ビキニなど露出度の高い衣装を着用して身体全体を使ってマッサージを行うため、セラピストの姿態を盗撮してトラブルに発展するケースがあります。
この記事では、メンズエステで盗撮を疑われた場合のリスクや対処法について解説します。
目次
メンズエステで盗撮を疑われたらどうなる?
ここでは、メンズエステで盗撮を疑われたらどうなるのかについて解説します。
出入り禁止になる
メンズエステでは、以下の行為が禁止されています。
- サービス外の要求(性サービスおよびそれを強要する言動)
- セラピストに触ろうとする行為
- 露出行為
- 暴言・暴力
- 盗撮・盗聴行為
このルールに反して、セラピストを盗撮すると、お店から出入り禁止客として予約や入店を拒否されたり、セラピストからNG客に指定されたりすることが考えられます。
高額な金銭の支払を要求される
メンズエステで盗撮をすると、店側から罰金・示談金・慰謝料などの名目で高額な金銭の支払いを要求されることがあります。
例えば、「利用規約に、『利用者が利用規約に反して盗撮行為に及んだ場合は、◯◯万円を支払う』と書いてあるから支払え」「支払わないなら、警察に通報する」と言われるケースが多いでしょう。
メンズエステでの盗撮がバレた時のNG行動
ここでは、メンズエステでの盗撮がバレた時のNG行動を紹介します。
その場から逃げる・セラピストやスタッフに暴行を加える
メンズエステでの盗撮がバレた場合、セラピストや店側に撮影機器や記録媒体を取り上げられることが多いでしょう。
これを回避するために、その場から逃げ出すと、警察に通報されたり、金銭の支払いを要求する電話がしつこくかかってきたりすることがあります。予約時に電話番号を把握されているため、逃げ切ることは難しいでしょう。
カメラなどの撮影機器やSDカードなどの記録媒体を取り上げられる際、これに抵抗してセラピストやスタッフに暴行を加えると暴行罪・傷害罪などに問われるおそれもあります。相手を傷つけるつもりはなくても、揉みあっている時に意図せず怪我を負わせた場合も、過失傷害罪が問われることもあります。
事態を悪化させないためにも、その場から逃げたり、抵抗したりせずに素直に引き渡すのが賢明です。
その場で金銭を支払う・書面にサインする
盗撮がバレて、店側から金銭の支払いを要求されても、応じてはいけません。
ホームページや店内の張り紙に、店側が定めた禁止行為や禁止事項に違反した場合の罰金や違約金などが明記されていても、法的に支払う義務は生じないからです。
罰金とは法律的には刑事罰であって、民間の事業者が利用客に刑事罰を科すことは許されません。違約金とは、債務不履行があった場合に、債務者が債権者に支払うとあらかじめ約束する金銭ですが、店側が一方的に取り決めた高額な違約金を請求された場合は、暴利行為にあたり、法律上無効となる可能性があります。
金銭を支払う約束をする書面(示談書・念書・和解書など名目は問いません)へのサインも絶対に控えてください。
それらの要求には従わず、「弁護士に依頼するので、弁護士からの連絡を待ってください。」と伝え、なるべく早く弁護士に相談しましょう。
メンズエステに盗撮がバレたらすぐに通報されて警察に逮捕される?
ここでは、メンズエステに盗撮がバレた場合、すぐに警察に通報されて警察に逮捕されるかどうかについて解説します。
わいせつ行為をした場合に比べて通報の可能性は低い
メンズエステにおける盗撮がバレた場合、セラピストへのわいせつ行為に至った場合に比べて、通報の可能性は低いと考えられます。
店やセラピストは、金銭的解決を望むことが多いからです。
ただし、誠意ある対応をせず、店やセラピストからの連絡を無視していると、当然のことながら警察に通報される可能性が高まります。
通報されても逮捕を回避できる可能性はある
その場で通報されたら、店から逃亡せず、警察の捜査に協力しましょう。
警察が到着したら、身分証明書を見せ、スマホやカメラなどの撮影機器を素直に渡すことが重要です。身元を明らかにし、証拠を渡すことで、逮捕の要件である逃亡・証拠隠滅のおそれがないと判断してもらえる可能性があります。
逮捕されず在宅事件となれば、警察などから呼び出されて取り調べなどを受ける以外は、通常通りの生活を送りながら捜査が進みます。
ただし、その場で逮捕されなくても、その後の捜査で逃亡・証拠隠滅のおそれがあると判断されれば、後日逮捕されることもあります。
メンズエステでの盗撮で成立しうる罪
ここでは、メンズエステでの盗撮で成立しうる罪について解説します。
2023年7月12日以前の盗撮行為|迷惑防止条例違反
2023年7月12日以前に出張型メンズエステを利用し、自宅でセラピストの姿態を盗撮した場合は、各都道府県の迷惑防止条例による処罰の対象となり得ます。
盗撮行為の罰則は各都道府県が定める迷惑防止条例の内容によって異なりますが、東京都の場合は以下のとおりです。
- 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(常習の場合)
東京都の条例では、撮影した場合だけでなく、撮影機器を差し向けたり設置したりしただけでも処罰の対象となるため、たとえ盗撮が失敗しても罪に問われる可能性があります。
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(前略)
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
引用元(一部抜粋):公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
店舗型メンズエステの施術ルームは[住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所]にあたらないため、盗撮をしても東京都では迷惑防止条例の適用はありません。

2023年7月13日以降の盗撮行為|撮影罪
2023年7月13日、性犯罪規定に関する刑法等の改正により、撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)が施行されました。
同日以降に行われた盗撮行為については、性的姿態撮影等処罰法に基づき、撮影罪として処罰される可能性があります。
以下のいずれかの行為をした場合、撮影罪が成立します。
- 正当な理由がないのに、ひそかに、性的姿態等(性的な部位、性的な部位を覆う下着等、わいせつな行為・性交等をしている姿態)を撮影すること
- 暴行・脅迫・障害・アルコール・薬物・不意打ち・フリーズ・虐待・立場による影響力等を原因としてNoと思うこと、Noと言うこと、Noをつらぬくことが難しい状態にさせて(あるいはその状態に乗じて)、性的姿態等を撮影すること
- 性的な行為ではないと誤信させたり、特定の者以外はその画像を見ないと誤信させて(またはそのことに乗じて)、性的姿態等を撮影すること
- 正当な理由がないのに、16歳未満(相手が13歳以上16歳未満の子どもである時は、行為者が5歳以上年長である場合に限る)の子どもの性的姿態等を撮影すること
撮影罪の法定刑は、3年以上の懲役又は300万円以下の罰金です。迷惑行為防止条例とは異なる、非常に重い罰則が定められています。
メンズエステ施術中の撮影は撮影罪に該当する可能性が高い
メンズエステのセラピストはビキニを着用していることが多いことから、施術中のセラピストをひそかに盗撮すると性的姿態等を撮影したものとして撮影罪に該当することになるでしょう。
性的姿態撮影等処罰法では、盗撮行為は発生場所を問わず一律に処罰の対象となります。
各都道府県の条例のように、同じ行為でも盗撮場所によって犯罪が成立しなくなることはありません。
もっとも、2023年7月13日以降の行為で撮影罪が成立しない場合でも、場合によっては、迷惑防止条例違反として処罰される可能性は否定できません。各都道府県の迷惑防止条例で規定されている犯罪が成立する撮影対象は、必ずしも性的な部位に限られない場合があるからです。
盗撮未遂も撮影罪の処罰の対象となる
性的撮影等処罰法2条2項には、未遂犯の処罰規定を設けられているため、実際には盗撮行為に至っていない場合(撮影に失敗して未遂に終わった場合)でも、撮影罪の未遂犯として処罰される可能性があります。
例えば、次のような場合です。
- 撮影しようとしてカメラを差し向けたけど周囲にバレて撮れなかった
- 撮影しようとしてカメラを設置したけど撮れていなかった
盗撮に関連する行為も処罰の対象となる
盗撮行為そのものだけでなく、盗撮した画像・動画を第三者に提供したり、提供する目的で保管したり、ネットなどを使った不特定多数に送信したり、送信された盗撮画像・動画を保管したりする行為も処罰対象となります。
罪名 | 該当する行為 | 罰則 |
提供等罪 | 性的姿態等撮影罪の処罰対象となる行為によって撮影・記録された性的姿態等の画像(性的影像記録)を第三者に提供する行為 | ①特定・少数の者に提供した場合:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
②不特定・多数の者に提供又は公然と陳列した場合:5年以下の懲役又は500万円以下の罰金 |
保管罪 | 第三者への提供や公然陳列を目的として、性的映像記録を保管する行為 | 2年以下の懲役又は200万円以下の罰金 |
送信罪 | ・不特定・多数の者に、撮影罪に該当する行為と同じ方法で性的姿態等の影像を送信する行為
・送信罪に該当する行為によって送信された性的姿態等の影像を、その事情を知りながらさらに不特定または多数の者へ送信する行為 |
5年以下の懲役又は500万円以下の罰金 |
記録罪 | 送信罪に該当する行為により影像送信された性的姿態等を、その事情を知りながら記録する行為 | 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 |
盗難防止目的でメンズエステの施術中の室内を撮影するのもNG?
「(利用者の)シャワー中に財布からお金がなくなっていた。」「(出張中のセラピストの)衣装チェンジの準備中に、売上金が入ったバッグからお金が抜き取られていた。」など、密室で利用者とセラピストが長い時間を過ごすことになるメンズエステの現場では、盗難トラブルが発生することがあるようです。
このようなトラブルを防止または抑止する目的で、カメラを設置して撮影する場合も、撮影罪に該当する可能性はあるのでしょうか?
メンズエステの施術中は、利用者は紙パンツ1枚、セラピストもビキニ姿などになることが多いようです。メンズエステは性的サービスを提供しない業務形態であるものの、利用客が無意識のうちに性的興奮を覚え、意図しない生理現象を引き起こすこともあります。
下着姿のセラピストが映り込む可能性がある、あるいは相手に性的な行為ではないと誤信させた状況下で、許可を得ずに撮影した場合は、処罰の対象となるでしょう。
性的撮影等処罰法は、未遂犯の処罰規定が設けられているため、カメラを設置したが録画に失敗し撮影できていなかったというような場合でも、実行に着したと認められる場合には、未遂罪として処罰対象となり得ると考えられています。
撮影罪に該当しない場合でも、撮影の態様によっては迷惑行為防止条例の卑わいな言動として処罰される可能性も残ります。
あらぬ疑いをかけられぬよう、防犯対策は、次のような別の手段を講じるべきでしょう。
- (出張型の場合)盗られて困るものはきちんと隠しておく
- (店舗型の場合)財布や貴重品類はシャワーを浴びる際なども脱衣所まで持っていく
- 貴重品ボックスやロッカーが用意されている店を選ぶ
メンズエステで盗撮を疑われた場合に弁護士に解決を依頼するメリット
ここでは、メンズエステで盗撮を疑われた場合に弁護士に解決を依頼するメリットを解説します。
不当な要求を拒否できる
弁護士に依頼することによって、メンズエステ側から罰金や違約金と称して不当な金銭の支払を要求された場合に、その要求が妥当なものか判断したうえで、支払いの拒否または減額を交渉できます。
盗撮トラブルの相手方(当事者)はセラピストとなるのが通常なので、店側の請求自体に法的な根拠がないことも多いです。セラピストからの請求であっても、法外な慰謝料を請求された場合は、妥当な金額まで減額できるように弁護士が粘り強く交渉します。
刑事事件化の回避を望める
セラピストが、被害届や告訴状を提出すると刑事事件になる可能性があります。
早い段階で弁護士に依頼して、セラピストとの示談交渉を通じて警察に被害届や告訴状を出さないことに合意できれば、刑事事件化を防げる可能性が高くなります。
既にセラピスト警察に被害届や告訴状を提出している場合でも、弁護士による適切な交渉で示談を成立できれば、逮捕や起訴を免れる可能性が高くなります。
トラブルの蒸し返しを防いだ適切な示談が期待できる
弁護士は、トラブルの内容や状況に応じて妥当な示談金額を提示できます。トラブルの蒸し返しを防ぐ適正な内容で、法的に効力のある示談書を作成できます。
万が一、メンズエステ側に強要されて示談書や念書にサインをしてしまった場合には、弁護士が当事者の言い分などを聞き、示談書や念書の無効を主張した上で根気強く交渉することで、適正額まで示談金を減額する合意を得られることもあります。
周囲に知られずに穏便に解決できる可能性が高まる
依頼を受けた弁護士は、代理人として窓口となり、店やセラピストに、今後依頼者やその家族、職場等に連絡をしないように求めます。
事業者によっては、弁護士との交渉を心得ている、あるいは店側も弁護士をつけて交渉を代理させていることもあるので、家族や職場に知られずに解決できる可能性が高くなります。
メンズエステでの盗撮トラブルを弁護士に依頼した後の流れ
ここでは、メンズエステでの盗撮トラブルを弁護士に依頼した後の流れを解説します。
事実関係を確認する
ご依頼者様が、どのような状況で、どのような行動をとったのか、盗撮等を実際に行ったのかなどを確認します。盗撮目的ではなくても撮影した場合には、セラピストの同意があったのかなどの事実関係も詳しくお聴き取りします。
弁護士には守秘義務がありますので、他人に話すのが恥ずかしい内容でも、真実を包み隠さず安心してお話しください。
メンズエステ側に連絡をする
事実関係が確認できたら、相手方に連絡を入れます。
ご依頼者様の代理人として事件解決のための交渉にあたること、セラピストの言い分や解決に関する意向などを聞き取り、必要であれば謝罪します。
示談交渉を開始する
当事者の意向に基づいて、示談交渉を進めていきます。
示談交渉では、できるだけセラピストと直接話をして依頼者への要求を聞き取り、双方が和解できる解決案を探ります。相手方の請求額が不当に高額な場合は、相場に合わせて減額を交渉します。
ご依頼者様が相手方から脅迫や恐喝等を受けたと認められる場合は、刑事告訴もあり得る点なども伝えます。
示談書を作成する
示談交渉によって各種条件に合意ができた場合は、示談書を作成します。
トラブルの蒸し返しや第三者への口外等を防ぐために、示談書には以下の事項をできる限り盛り込みます。
- 行為の日時・場所
- 当事者の特定
- 示談金額・支払方法・支払時期
- 被害届や告訴状を提出しない・取り下げる旨を約束する条項
- お互いに接触や連絡をしないことを約束する接触禁止条項
- 示談書で定めたこと以外に債権債務が存在しないことを確認する清算条項
- トラブルの事実を第三者に口外しないことを約束する守秘義務ないし口外禁止条項
示談書で定めた事項に違反した場合の賠償額を予定する違約金条項
示談書を2部作成し、双方(または双方代理人)で署名・押印を行い、各自が1部ずつ保管します。
必要に応じて、店側が取得した身分証明書のコピーや会社の名刺等、ご依頼者様の個人情報が記載されたものを破棄するように通知します。
逮捕回避のための弁護活動を行う
セラピストが被害届や告訴状を提出し、捜査が開始されている場合は、被害者との示談が成立したことを示すため、捜査機関に示談書の写しを提出します。被害届や告訴状を取り下げる旨の合意を得ていれば、逮捕を回避できることもあります。
まとめ
メンズエステで盗撮行為をすると、店側やセラピストから罰金・違約金・慰謝料の名目の如何を問わず、不当に高額な金銭を繰り返し請求される可能性があります。
店側から罰金や違約金名目で金銭を請求された場合は、法的な義務はないので支払う必要はありません。
弁護士に対応を依頼することで、事態の悪化を防ぎながら、周囲に知られずに穏便に解決できる可能性が高まります。
メンズエステでの盗撮トラブルにお困りの方は、盗撮事案の解決実績が豊富なネクスパート法律事務所にご相談ください。