迷惑防止条例違反に該当する行為とは?逮捕された場合の対処法

この記事では迷惑防止条例違反行為の内容、迷惑防止条例違反で逮捕された場合の流れなどについて説明いたします。
目次
迷惑防止条例とは
ここでは、迷惑防止条例について、簡単に説明いたします。
- 東京都の場合の正式名称は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不要行為等の防止に関する条例」
- 迷惑防止条例違反は非親告罪に該当
- 被害届と告訴の違い
- 迷惑防止条例の時効について
正式名称は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不要行為等の防止に関する条例」(東京都)
迷惑防止条例は各都道府県が定めているもので、都道府県ごとに多少違いがあります。もっとも、基本的にこの条例は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、住民生活の平穏を保持する目的で、制定されています。
迷惑防止条例とは国が定めた法律とは異なるため、違反しても軽いペナルティで済むというイメージがあるかもしれませんが、条例であっても刑罰が定められており、違反すれば刑事事件として扱われ、逮捕されることもあります。
勤務先の就業規則に、たとえば「刑事事件で有罪判決を受けたときは懲戒解雇に処する」などと記載がある場合には、懲戒解雇されるおそれもあります。
迷惑防止条例違反は非親告罪に該当
被害者からの告訴がなければ起訴できない罪を親告罪といい、告訴がなくても起訴できる罪を非親告罪といいます。迷惑防止条例違反は、「非親告罪」に該当するので、被害者が告訴しなくても起訴される可能性があります。
被害届と告訴の違い
被害届と告訴の違いはどこにあるのでしょう?
被害届とは
被害届とは、犯罪の被害を捜査機関へ申告する手続きです。被害届を端緒に捜査が開始されることもありますが、捜査機関に捜査義務はありません。
告訴とは
捜査機関に犯罪の被害を申告し、加害者への処罰を求める意思表示をする手続きです。捜査機関が告訴状を受理すると、捜査機関には捜査義務が生じます。
迷惑防止条例違反は非親告罪なので、被害者側が告訴を取り下げても捜査は進められ、公訴時効が成立するまでは逮捕・起訴される可能性があります。
迷惑防止条例の公訴時効について
公訴時効とは、一定期間が経過した場合に検察官が起訴できなくなる期間のことです。迷惑防止条例違反における時効は、犯罪行為終了時から3年です。
迷惑防止条例違反として逮捕される行為とは
迷惑防止条例違反として逮捕される行為とはどのようなものか、痴漢・盗撮・つきまといを中心に見ていきましょう。
- 東京都の条例をもとに解説
- 痴漢・盗撮・つきまといの罰則等について
- 痴漢行為
- 盗撮行為
- つきまとい行為
東京都の条例をもとに解説
東京都が定める迷惑防止条例には以下の8項目が記載されていますが、他地域の条例もほぼ同じような内容です。
- 乗車券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止
- 座席等の不当な供与行為(ショバヤ行為)の禁止
- 景品買行為の禁止
- 粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止
- つきまとい行為等の禁止
- 押売行為等の禁止
- 不当な客引行為等の禁止
- ピンクビラ等配布行為等の禁止
痴漢・盗撮・つきまといの罰則等について
以下、迷惑防止条例の中でも問い合わせの多い痴漢行為・盗撮行為・つきまとい行為について解説します。
禁止行為 |
罰則 |
態様 |
痴漢 |
6カ月以下の懲役
または50万円以下の罰金 ※常習として行った場合は 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
公共の乗り物や公共の場所で相手の同意なく衣服の上からもしくは直接身体に触れる行為等 |
盗撮 |
1年以下の懲役
または100万円以下の罰金 ※常習として行った場合は 2年以下の懲役 または200万円以下の罰金 |
通常衣服で隠されている身体または下着をカメラ等で撮影する行為、撮影する目的でカメラ等を向けるあるいは設置する行為等 |
つきまとい |
1年以下の懲役
または100万円以下の罰金 ※常習として行った場合は 2年以下の懲役 または200万円以下の罰金 |
正当な理由なく、悪意ある感情を満たす目的で不安を覚えさせるような行為であって、つきまとい・待ち伏せ等する行為のみならず、監視していると思わせるようなことを伝える行為や、拒否されているにもかかわらずSNS等を通じて連続で投稿する行為等、対象が広い |
もともと迷惑防止条例は、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為の取り締まり(ぐれん隊の粗暴行為の禁止)を目的として制定された条例ですが、その条文中に、痴漢行為・盗撮行為の禁止が記載されています。
痴漢行為
痴漢行為とは、公共の場所または公共の乗り物において、衣服その他の身に着けるものの上からまたは直接人の身体に触れることです。
公共の場所とは、例えば駅構内、店舗・商業施設内、路上等をいいます。公共の乗り物とは、例えば電車やバスをいいます。
これらの場所で、相手の同意なく衣類の上からもしくは直接相手の身体に触れた場合、迷惑防止条例違反として逮捕される可能性があります。
強制わいせつとの違い
痴漢行為が迷惑防止条例違反行為か強制わいせつ行為に該当するかは、痴漢行為の態様、状況を総合的に考慮して判断されます。
暴行・脅迫等を用いてわいせつ行為の場合には、強制わいせつ罪が成立し、6カ月以上10年以下の懲役となります。罰金刑はありません。
盗撮行為
盗撮とは、通常衣服で隠されている下着や身体を写真機その他の機器を用いて撮影、または撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、もしくは設置することです。
盗撮行為には、実際に撮影する行為だけではなくカメラを向ける行為も含まれるので、「カメラを向けただけで実際には撮っていません」という言い訳は通用しません。
東京都では、以下のような場所での盗撮行為を禁止しています。
- 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所
- 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定または多数の者が利用し、または出入りする場所または乗物(1を除く)
住居侵入罪との関係
カメラを設置するなどで人が管理する場所に侵入した場合、管理者の意思に反する立ち入りとなり、住居侵入罪が成立します。
住居侵入罪に該当した場合、3年以下の懲役または10万円の罰金になります。
児童ポルノとの関係
盗撮の被写体が18歳未満であれば、児童ポルノ規正法違反(児童ポルノ製造罪)が成立する可能性があります。
児童ポルノ規正法違反(児童ポルノ製造罪)に該当した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金になります。
つきまとい行為
つきまとい行為とは、正当な理由なく、特定の者に対する恨みや妬みなどの悪意ある感情を満たす目的で、特定の者または特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、不安を覚えさせるような迷惑行為をすることです。
ストーカー規制法との違い
つきまとい行為が、特定の相手に対する恋愛感情を満たすなど一定の目的の場合には、ストーカー規制法が適用されます。
なお、ストーカー規制法の対象行為は、尾行・待ち伏せのほか、自宅・職場などへの押しかけ、監視していることを告げる、面会や交際の要求、無言電話やしつこいメッセージ送信などです。広い行為を「つきまとい等」と定義しています。
迷惑防止条例違反で逮捕された場合の流れ
迷惑防止条例違反として逮捕された後の流れを説明します。基本的に通常の刑事事件と同じ流れになります。
- 逮捕されると警察官からの取り調べを受けます。
- その後48時間以内に検察官に送致されるか、軽微な犯行の場合には微罪処分により厳重注意後,釈放されます。
- 検察官に送致され、勾留請求されて勾留されるか、勾留請求されずに釈放されます。釈放後は在宅で捜査が続けられることもあります。
- 勾留されると、検察官・警察官から取り調べを受けます。また、犯行現場における実況見分への立ち合いなどの捜査が行われます。
在宅の場合にも、捜査機関から呼び出されて、同様の捜査を受けることもあります。
- 一連の捜査が終了すると、検察官は起訴するかどうかを決定します。
- 起訴されると刑事裁判が行われ、有罪であれば刑罰が科されます。
迷惑防止条例違反で逮捕された場合の早期解決方法
迷惑防止条例違反で逮捕された場合に、なるべく早期に解決するための方法を解説します。
- 示談交渉
- 弁護士の役割
示談交渉
迷惑防止条例違反を犯したかもしれない、あるいは警察から事情を聴かれた、そういった方は、なるべく早く弁護士に相談しましょう。
迷惑防止条例違反行為のうち、痴漢、盗撮、つきまとい行為には被害者がいます。
弁護士への相談・依頼が早ければ早いほど、
- 被害者との示談交渉
- 事件の早期解決・早期釈放
- 不起訴処分の獲得
ができる可能性が高まります。
被害者は加害者との直接の示談には応じないケースが多いですが、加害者ではなく弁護士であれば示談交渉に応じる可能性があります。
犯罪事実を認めている場合には、特に被害者との示談が大切です。
弁護士が代理人となり被害者との示談交渉を進めることができれば、加害者に有利な事情として考慮され、不起訴になることもあります。
たとえ犯罪行為をしたとしても、不起訴になれば刑事裁判が行われず、前科がつくこともありません。

迷惑防止条例で警察沙汰になってしまった方や、ご家族が逮捕された方は、一度ご相談ください。
弁護士の役割
弁護士の役割について解説します。
逮捕前
迷惑防止条例違反行為をしたかもと不安に思う場合には、逮捕前であっても弁護士に相談しましょう。今後の見通しや、取り調べを受けたときにどのように対応すべきかについて、適切なアドバイスがもらえます。
逮捕後
逮捕後は、警察署内の留置場に身柄を拘束されます。逮捕後勾留請求されるまでの72時間は家族であっても本人と面会できません。
しかも、この期間の取り調べは逮捕当時の供述として重視されます。
犯罪事実を否認していても捜査官から自白を迫られた場合、自分一人で無実の主張を貫き通すことは難しく、罪を認めてしまうケースもあります。
弁護士に依頼すると、弁護士は接見に行き、ご本人と会うことができますので、ただちに取り調べに際してのアドバイスをしてくれます。弁護士のサポートを受けることで、ご本人が適切な判断をすることができ、前科がつく事態を回避するための行動を早く取ることができます。
逮捕後に勾留された場合には、準抗告という不服申立てができますが、この申立てにより勾留が不当であると認められた場合には、釈放される可能性があります。
このような申立てを行いたい場合には速やかに弁護士に相談しましょう。
また、逮捕までは要しないと捜査機関が判断した場合には在宅事件となりますが、身柄が拘束されていないだけで事件としては立件されています。
在宅事件の場合には当番弁護士や国選弁護士を呼べませんが、警察の呼び出しに正当な理由なく出頭しないことは許されません。
しかも、勾留されている場合と違い、「何時間以内に次の手続きに進める」という時間制限がありません。通常の社会生活を続けられますが、手続きが長引く傾向があります。
長時間捜査の対象となり、いつ呼び出されるかわからないという不安は、計り知れません。
どちらの場合であっても弁護士は加害者本人のサポートをしながら、被害者との示談交渉を進めます。
まとめ
迷惑防止条例違反で刑罰が科される可能性があります。刑事事件はスピードが大事です。
なるべく早く弁護士に相談することによって
- 逮捕の阻止
- 示談の締結
- 事件の早期解決、早期釈放
- 不起訴処分の獲得
ができる可能性が高まります。
後悔することのないように、刑事事件に強い弁護士に依頼することをお勧めします。