供述調書とは?調書作成の流れと注意点を解説

供述調書(きょうじゅつちょうしょ)とは、捜査機関が刑事事件の被疑者に取り調べを行い、供述内容を元に作成した書面のことです。
供述調書は裁判で証拠として使用されるため、取り調べに際する供述は慎重に行う必要があります。
この記事では、主に以下の4点について解説します。
- 供述調書とは何か
- 供述調書が作成される流れ
- 供述調書作成時の注意点
- 供述調書が証拠にならないケース
今後の対応にご活用ください。

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供述調書とは
刑事事件で逮捕されると、被疑者は警察官や検察官による取調べを受けます。警察官や検察官は被疑者が取調べで供述した内容を書面にし、署名押印するよう求めてきます。
この時に作成される書類を供述調書といいます。供述調書は後の刑事裁判で重要な意味を持つことがあります。
刑事裁判で証拠になり得る
供述調書はなぜ重要なのでしょうか。
それは供述調書が刑事裁判で証拠として採用され、裁判の帰趨を左右することがあるからです。
例えば、検察官による取調べで供述した内容と公判での証言が異なるとき、裁判官はどちらを信用するでしょうか。
刑事訴訟法321条第1項第2号、第3号は、被告人以外の供述調書について、公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況があるとき、供述調書を証拠にできると定めています。
つまり、公判での供述の信用性に疑義があれば、裁判官は取調べ時の供述を信用する可能性があるということです。
供述調書はどのように作成されるか
それでは、供述調書はどのように作成されるのでしょうか。供述調書の作成者や調書がつくられる流れを確認します。
供述調書は誰が作成するのか
供述調書を作成するのは、主に警察と検察官です。
刑事訴訟法198条第3項は、検察官、検察事務官、司法警察職員は取調べに際して、被疑者の供述を調書に録取することができると規定しています。
供述調書が作成される流れ
捜査官は取調べで被疑者にさまざまな質問をします。
質問の内容は例えば…
- 事件当日どこにいて何をしていたのか
- 被害者との関係
- 犯行に至った動機など
取調べにあたっては、捜査官はあらかじめ、被疑者に対して自己の意思に反して供述する必要がないことを告げなければなりません。自白の強要は違法捜査に該当します。
通常、供述調書を作成するのは取調べの終盤で、捜査官は聴き取った内容を基に供述を書面にします。文書の形式は物語式であることが一般的で、「私は」と一人称で綴られます。被疑者が犯行を否認しているときなどは、捜査官と被疑者のやりとりを記載する問答体が用いられるケースもあります。
文書の記載が終わると、捜査官は供述調書を閲覧させるか読み聞かせるかして、誤りがないかどうかを確認します。誤りがないと確認できれば、供述調書に署名押印するよう求めてきます。ここで被疑者が署名押印すれば、供述調書は完成です。
供述調書作成時の注意点
供述調書を作成するのは取調べを行う捜査官ですが、供述調書は被疑者が署名押印しなければ証拠として扱われません(刑事訴訟法第321条第1項柱書参照)。ここでは、供述調書が作成される際の注意点を説明します。
納得できない場合はサインしない
供述調書は、被疑者がサインすれば刑事裁判で証拠として採用される可能性がある重要な書類です。供述調書に何が記載されているかは、被疑者自身がサインをする前に入念に確認する必要があります。
検察官は刑事裁判で被告人が罪を犯したことを立証しなければなりません。それゆえ、捜査官が刑事裁判で有利になるよう、供述調書を恣意的に作成する可能性は否定できません。
供述調書の内容は、サインの前に捜査官が閲覧させるか読み聞かせるかするので、しっかりと確認し、納得できないときはサインしないようにしましょう。
訂正を求めることができる
供述調書の内容に納得できないときは、訂正を求めましょう。
刑事訴訟法198条第4項は供述調書に関し、被疑者が増減変更の申し立てをしたときは、その供述を調書に記載しなければならないと定めています。
黙秘できる
日本国憲法38条は何人も自己に不利益な供述を強要されないと定めており、黙秘権は憲法上保障された権利です。
黙秘すれば不利な供述をせずに済むという利点はありますが、自白している場合と比べて身柄拘束の可能性が高くなるようなデメリットもあります。
黙秘権を行使すべきかどうかは慎重な判断が必要で、逮捕されて黙秘するときはあわせて弁護士への接見依頼も行いましょう。
嘘をつかない
捜査機関は被疑者を取り調べるだけでなく、さまざまな物的証拠を集めます。指紋や防犯カメラ映像などの物的証拠によって、虚偽の供述をしていることがわかれば、供述の信用性は低下します。
供述の信用性の低下は刑事裁判で不利に働くため、取調べでは嘘をつかないようにしましょう。
供述調書が証拠として採用されないケース
供述調書が証拠として採用されないケースもあります。
刑事訴訟法319条第1項は、任意にされたものでない疑いのある自白は、証拠とすることができないと規定しています。
任意性に疑義を生じさせる取調べ方法とは例えば…
- 強制、拷問または脅迫
- 不当に長い抑留または拘禁
長時間に及ぶ取調べ
取調べが長時間に及んだ後に被疑者がサインした供述調書は、証拠として採用されない可能性があります。
被疑者が長時間の取調べに疲弊し、「早くこの取調べから解放されたい」と供述調書にサインした場合、自らの意思で行った供述かどうかは疑わしくなります。
深夜に及ぶ取調べ
取調べが深夜に及んだ後に作成された供述調書も、証拠にならない可能性があります。
事件が深夜に起きて逮捕されるなど、やむを得ないと認められる事情がある場合は証拠として採用される余地はありますが、合理性を欠いて深夜に作成された供述調書は任意性に疑義が生じます。
不利な供述を強要された場合
捜査官が大声で繰り返し「さっさと自白しろ」と迫るなど、不利な供述を強要された場合も証拠として採用されない可能性があります。
供述の代償として利益供与を持ちかけられた場合
「自白すればすぐに釈放してやる」などと捜査官が利益供与を持ちかけて供述を引き出した場合も、証拠として認められない可能性があります。
被疑者ノートを使って身を守ろう
被疑者ノートとは、取り調べの様子を被疑者が記録するために使えるノートのことです。違法または不当な取り調べがなされた証拠を残すことで、必要以上に不利な処分になることを回避しやすくなります。
被疑者ノートについてより詳しく知りたい方は、以下関連記事をご確認ください。
供述調書を取られる場合は弁護士に相談すべき理由
刑事事件で逮捕された場合など、供述調書を取られる際は弁護士に相談すべきです。以下、その理由を説明します。
家族が面会できないときでも弁護士は面会可能
逮捕から勾留の可否が決まるまでの72時間は原則、弁護士以外は被疑者に面会できません。この家族が面会できない72時間に、速やかに弁護士が被疑者と接見できるかが、その後の刑事手続きに大きく影響します。
取調べに関するアドバイスができる
被疑者が取調べで作成される供述調書の重要性を知らずに、捜査官に誘導されるがまま供述調書にサインしてしまうと、後々不利な状況に陥りかねません。
弁護士は被疑者に供述調書がどういった性格を持つ書類なのか説明し、取調べにどう臨むべきかアドバイスできます。
まとめ
供述調書は刑事裁判で証拠として採用される可能性がある重要な書類です。取調べでは嘘をつかず、事実関係を正確に供述しましょう。
供述調書の内容に誤りがあれば、訂正を求めることができ、納得できない場合は捜査官に求められてもサインしてはいけません。後の刑事裁判で不利になる可能性があります。供述調書を取られる際は、弁護士と相談して取調べへの対応を確認しましょう。