不同意わいせつ(旧強制わいせつ)の示談のメリットと示談金の相場

強制わいせつ罪は、2023年7月13日から施行された改正刑法により、不同意わいせつ罪に変更されました。

従来の強制わいせつ罪とは異なり、積極的な暴行や脅迫がなくても、被害者が意思を示せない状態でわいせつ行為を行った場合、不同意わいせつ罪となる可能性があります。

不同意わいせつ罪も被害者との示談が成立することで、事件化や刑事処分が回避できることがあります。

なお、不同意わいせつ罪の示談金の相場は50~100万円程度とされています。

この記事では不同意わいせつ罪の示談について以下の点を解説します。

  • 不同意わいせつ罪における示談のメリット
  • 不同意わいせつ罪の示談金の相場や高額となるケース
  • 不同意わいせつ罪の示談交渉のポイント

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目次

不同意わいせつ(旧強制わいせつ)における示談のメリット

刑事事件の知識がない場合でも、トラブルが生じた場合に示談が成立すれば、解決できる可能性があると知っている人もいるかもしれません。

刑事事件や性犯罪の場合も、示談成立によるメリットは多岐にわたります。以下では、不同意わいせつ事件における示談成立のメリットを解説します。

早期の示談で事件化や逮捕回避の可能性がある

同意なくわいせつ行為を行った場合、被害者がすぐに警察に被害を訴えて、逮捕されるおそれがあります。

逮捕されると、会社や家族にも犯罪の事実が知れ渡るリスクがあります。

法務省によると、2022年(不同意わいせつ罪に法改正される前)の強制わいせつ罪の検挙率は86.3%、逮捕された割合は54.5%でした。

しかし、早期に被害者に謝罪を申し入れ、示談を成立させることで、刑事事件化や逮捕が回避できる可能性があります。

示談書に、被害届を出さない、刑事告訴をしないという旨を盛り込むことで、警察に犯罪の事実を知られずに済むことがあります。

示談が成立すれば、トラブルが解決したと判断され、警察が逮捕を行わないこともあります。

参考:令和5年版 犯罪白書 第1編 犯罪の動向 第2章 検察 第4節 被疑事件の処理 – 法務省

逮捕後の示談で不起訴処分・前科が避けられる

仮に不同意わいせつ罪で逮捕された場合でも、被害者との示談が成立することで、不起訴処分となる可能性があります。

示談が成立することで、被害者が加害者を許したり、加害者が被害者の受けた被害の回復に努めたと判断されるためです。

不起訴処分となれば事件は終了し、早期に身柄が釈放され、前科がつかずに済みます。

一方で、示談が成立せず刑事手続きが進むと、10~20日間身柄が拘束(勾留)されたり、有罪率99.9%の刑事裁判で裁かれたりする可能性があります。

刑事処分が軽くなる傾向がある

仮に起訴されて刑事裁判になる場合でも、被害者との示談が成立することで、言い渡される量刑が軽減されたり、執行猶予がついたりすることがあります。

執行猶予がつけば、すぐに刑務所に収容されることはなくなり、社会復帰できる可能性が高まります。

ただし、示談が成立しても逮捕、起訴、実刑判決となることはありますので、必ずしも処分が軽くなるとは限りません。

しかし、少しでも減軽を望むのであれば、最低限謝罪を申し入れて示談を行うべきです。

民事上の責任がなくなる

刑事事件とは別に、民法では、故意や過失により他人の権利や保護される利益を侵害した人は、生じた損害を賠償する責任を負います(民法第709条、710条)。

不同意わいせつの場合、被害者の性的自由を侵害し、精神的苦痛を与えたとして、損害賠償請求の対象となります。

しかし、被害者と示談が成立することで、民事上の責任も果たしたと判断されるため、民事訴訟などで損害賠償請求を受けずに済みます。

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不同意わいせつ罪の示談金

示談金は示談を行う上で重要な要素です。では、不同意わいせつ罪の示談金の相場や基準はどのようになっているのでしょうか。

ここでは、示談金の決定基準やケース別の相場について解説します。

不同意わいせつ罪の示談金が決まる基準

示談金には、被害者が負った金銭的な損失と精神的苦痛に対する慰謝料が含まれます。

傷害事件の場合は、治療費や入通院費、慰謝料が含まれますが、不同意わいせつ罪の場合は、被害者がケガを負った事情がない限り、主に精神的苦痛に対する慰謝料として支払われます。

不同意わいせつ罪の示談金は、以下の要素を考慮して決定されます。

  1. 不同意わいせつ罪の犯罪の内容や悪質性
  2. 被害者の年齢
  3. 被害者と加害者の関係
  4. 被害者の精神的苦痛の度合いや処罰感情
  5. 加害者の社会的地位や経済状況 など

加害者の社会的地位や経済状況に応じて示談金が決定されることに納得できない人もいるかもしれません。

しかし、加害者が大学生の場合と会社経営者の場合では、同じ示談金でも経済的な負担が異なるため、加害者の経済状況も考慮されます。

示談交渉は裁判外で紛争を解決する手段です。そのため、交渉の内容や経過、刑事処分までの期間、被害者が納得するかどうかなどによっても、示談金は異なります。

不同意わいせつ罪の示談金の相場

示談金は個々の事案によって異なるため、明確な相場はありませんが、一般的には不同意わいせつ罪の示談金は50~100万円程度であることが多いです。

事案によっては、50万円以下となることもあれば、100万円を超える場合もあります。

無理矢理キスした場合の示談金の相場

無理矢理キスをした場合も、不同意わいせつ罪に問われる可能性があります。この場合の示談金の相場もおおよそ50~100万円程度です。

具体的な金額は、被害者の年齢や被害者と加害者の関係性、被害者が受けた精神的苦痛の度合い、処罰感情などを考慮して決定されます。

被害者の精神的苦痛の度合いが高く、処罰感情が強い場合、相場の示談金を提示しても被害者が納得せず、示談金が高額になることもあります。

不同意わいせつ罪の示談金が高額になるケース

以下のケースでは、不同意わいせつ罪の示談金が高額となる可能性があります。

  • 犯行が悪質である
  • 被害者の処罰感情が強い
  • 被害者が未成年
  • 被害者が以前のように生活できなくなった

犯行が悪質である

同じ強制わいせつ行為でも、衣服の上から触る行為と直接性器に触れたりする行為では違います。

以下のような場合も悪質であると判断され、示談金が高額になる場合があります。

  • 同じ人に繰り返しわいせつ行為をしていた
  • 不同意性交手前の強度なわいせつ行為をした
  • 複数人でわいせつ行為をしていた
  • 犯行が計画的である

わいせつな行為を行うために、事前に被害者の生活環境を調査し、満員電車や夜道で待ち伏せするなど、計画的な場合は悪質と判断され、示談金が高額になる可能性があります。

被害者の処罰感情が強い

強度なわいせつ行為を受けた被害者は処罰感情が強いケースが多いです。

被害者からすれば、合意がないまま自分の望まない相手から性的自由を侵害され、強い怒りを覚えていることがほとんどです。

許しを得るためには、精神的被害の対価が加わるため、高額になる場合があります。

被害者が未成年

被害者が未成年の場合、被害者の保護者が示談交渉の相手となります。

自分の子どもが不同意わいせつの被害に遭った場合、保護者の処罰感情も強くなるため、その分示談金が高額となる傾向があります。

被害者が以前のように生活できなくなった

不同意わいせつにより、被害者が心的外傷後ストレス障害や精神疾患となったり、以前のように生活できなくなったりした場合も、被害者の被害の程度や処罰感情により、示談金が高額となる傾向があります。

不同意わいせつの示談の流れ

不同意わいせつ罪で示談をする場合は、以下の流れで示談を進めることになります。

  1. 示談の意思確認
  2. 被害者への謝罪と示談交渉
  3. 示談書作成
  4. 示談金の支払い
  5. 示談書を検察や裁判所に提出

示談の意思確認

不同意わいせつで示談をする際は、まず被害者に示談を申し入れて、被害者の意思の確認を行います。

不同意わいせつ罪が刑事事件化している場合は、弁護士を通じて、警察や検察から被害者に連絡をとってもらい、被害者の承諾の上で連絡先を教えてもらって、示談を申し入れます。

被害者への謝罪と示談交渉

被害者が話を聞いてもよいと判断した場合は、被害者に謝罪を申し入れて、被害者の心情に配慮しながら示談交渉を進めます。

被害者の怒りの程度によっては、すぐに示談交渉を開始せず、一定期間時間を置いて交渉を申し入れるなど、被害者の気持ちに気を配りながら、粘り強く進めることが重要です。

示談書作成

被害者との示談交渉の結果、被害者が納得して示談が成立した場合は、示談内容を示談書にまとめます。

示談書の作成は、示談成立の証となるだけでなく、示談成立後のトラブルを防止する上でも有効です。

不同意わいせつ罪の示談では、以下の条件を交渉して、示談書に盛り込むことが一般的です。

盛り込む内容 説明
謝罪条項 加害者が起こした行為について被害者に謝罪する旨
示談金の支払いに関する条項 示談金の金額、支払い方法、支払い期限など
宥恕条項 合意に基づき謝罪を受け入れ、示談金を受領したことにより、加害者の行為を許すという意味
接触禁止条項 当事者の接触を禁止する
誓約条項 お互いの誓約を記載する
口外禁止条項 事件の内容を第三者に口外しない(口頭、SNS等も禁止)
清算条項 示談書で定めたもの以外の請求がないこと

被害者が不安とならないよう、今後の接触禁止を約束として示すことで、示談に応じてもらえる可能性があります。

事件によっては、被害者が利用する路線を使用しないこと、加害者が引っ越しするなどを約束して盛り込むこともあります。

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示談金の支払い

示談書の取り交わしを行い、示談金がある場合は示談金の振込の終了により、示談が成立します。誓約条項で定められた事柄がある場合は速やかに対応します。

示談書を検察や裁判所に提出

示談が成立した後は、示談書と明細書のコピーなど示談金を支払ったことを証明できる資料を検察や裁判所に提出します。

検察や裁判所は、示談成立などの事情を踏まえて、刑事処分を判断します。示談成立により、不起訴や執行猶予となる可能性があります。

不同意わいせつ事件の示談交渉のポイント

不同意わいせつなどの性犯罪では、被害者が加害者に対して強い処罰感情や嫌悪感を抱いていることが多く、示談交渉も難航しやすい傾向があります。

示談交渉を成立させるには、以下の点がポイントとなります。

  • トラブルとなりやすい当事者同士の交渉は避ける
  • 被害者の立場に立ち真摯に謝罪する
  • 適切なタイミングで謝罪を申し入れる
  • 不同意わいせつ罪の示談が得意な弁護士に依頼する

トラブルとなりやすい当事者同士の交渉は避ける

不同意わいせつ事件の示談を成立させるには、当事者同士の交渉を避けたほうがよいです。

当事者同士で示談交渉を行うことで、以下のようなトラブルに発展するリスクがあります。

  • 被害者が恐怖を覚えて警察に訴えることで、脅迫や強要行為があったと判断される
  • 示談金の相場がわからずに、相場よりも高額な金額で示談することになる など

示談を強要したと判断されると、脅迫罪や強要罪に問われるおそれがあります。被害者が警察に相談している場合は、逮捕される可能性もあります。

被害者の連絡先がわからない場合は、当事者で示談を申し入れることもできません。弁護士に相談することが重要です。

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被害者の立場に立ち真摯に謝罪する

不同意わいせつ事件で被害者と示談交渉を進めるには、示談を申し入れる前に、まずは被害者に対して真摯に謝罪することが不可欠です。

当事者で交渉を行った場合、反省していない態度が被害者に伝われば、示談を成立することは不可能となります。

弁護士であれば、被害者の立場に立ち謝罪をすること、そして被害者の心情に配慮して粘り強く交渉することができます。

当事務所でも、被害者が未成年者で、保護者と示談交渉を行う事案において、粘り強く謝罪と交渉を行うことで、解決策を提示してもらえるに至り、被害者と二度と接触をしないことや引っ越すことを条件に示談が成立した事例があります。

適切なタイミングで謝罪を申し入れる

刑事事件の示談交渉は早い方がよいと言われています。

しかし、不同意わいせつ事件の場合は、事件直後は被害者の処罰感情が強いこともあり、示談を申し入れるタイミングを見極めることも重要です。

逮捕された人が反省を示していることなどを警察経由で伝えてもらったタイミングなどで、示談を申し入れた方が示談が成立する可能性が高まります。

事案によっては少し時間を置いてから示談交渉を申し入れた方がよいケースもあります。

逮捕されている場合は、逮捕から最速で13日以内で起訴・不起訴が決まることがあるため、こうした刑事処分の期限も意識して示談を行う必要があります。

不同意わいせつ事件の示談が得意な弁護士に依頼する

不同意わいせつ事件で示談に応じてもらう可能性を高めるなら、不同意わいせつ事件の示談が得意な弁護士に依頼することが重要です。

不同意わいせつ事件や示談交渉に豊富な実績のある弁護士であれば、適切なタイミングで示談交渉を申し入れ、被害者の心情に配慮しながら交渉を進めてくれます。

結果的に刑事処分が決定する前に示談が成立する可能性が高まります。仮に示談が成立しなかった場合でも、他の方法で処分を軽くするためのサポートが受けられるため安心です。

強制わいせつ(不同意わいせつ)の示談の成功事例

ここでは、当事務所で対応した強制わいせつ罪の示談の成功事例を紹介します。

【不起訴処分獲得】電車内での未成年者へのわいせつ事件

未成年者に対する電車内での強制わいせつで逮捕。ご依頼者は、同種前歴もあったため、起訴される可能性が非常に高く、示談交渉をする相手の保護者の処罰感情も強く、難しい事案でした。

しかし、保護者に対して粘り強く交渉を行うことで、具体的な解決策を提案してもらえました。

接触禁止条項や犯行現場となった路線を使用しない、実家に帰るなどの誓約条項を丁寧に説明しました。示談が成立したのち、未成年者であることから被害者が裁判を望まないこともふまえた意見書を提出し、不起訴処分を獲得できました。

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【示談金75万円・不起訴処分獲得】逮捕・勾留されたわいせつ事件

被疑者は帰宅途中に女性に対してわいせつ行為を行ったことで被害届が出され、後日逮捕。

被疑者は大学生であることから身体拘束が長引くと留年のおそれもあったために、早期釈放を目指して勾留に対する準抗告申立書を裁判所へ提出。

その後被害者と示談交渉を行い、被害者が事件により引っ越しを余儀なくされたため、引っ越し代も考慮して示談金75万円を支払い、不起訴処分を獲得できました。

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不同意わいせつの示談についてよくある質問

不同意わいせつの示談交渉で示談金が引き上げられることはある?

不同意わいせつの示談交渉では、犯罪行為の内容、被害者の年齢、被害者の精神的苦痛の度合い、被害者の処罰感情などによって、示談金が高額となるケースもあります。

示談交渉においては、刑事処分が決定する前に被害者の許しを得たい加害者はどうしても弱い立場となります。

そのため、被害者が示談に応じてもよいと納得できる金額を提示する必要があります。

ただし、法外な示談金の要求には応じる必要はありません。あくまでも上記内容や過去の裁判例などを参考にした範囲内で示談金を決定することになります。

高額な示談金でなければ示談に応じないとして示談が不成立となった場合は、こちらが示談に尽くした交渉の経緯を報告書として検察に提出したり、供託や贖罪寄付といった方法をとったりすることもあります。

【被害者向け】加害者からの示談に応じるべきか?

不同意わいせつ事件で、加害者から直接示談交渉の申し入れがあった場合、応じるべきか悩む人も少なくありません。

しかし、加害者と直接示談交渉を行うことで、加害者から脅迫行為を受けるなど別のトラブルに発展することも考えられます。

当事者同士の示談交渉では、適切な示談金の金額がわからないことで、不当な条件で示談を成立させるリスクもあります。

もし加害者から示談交渉を持ちかけられた場合は、刑事事件の被害者側の対応が得意な弁護士に、示談交渉を受けるべきかアドバイスももらってから判断してください。

被害者から示談を持ちかけられたが応じるべき?

事件の当事者同士で連絡先がわかる場合、被害者から示談交渉を持ちかけられることもあります。

しかし、当事者間での示談交渉は、別のトラブルに発展するおそれがあるため、おすすめできません。

特に、示談金の相場がわからないことで、高額な示談を支払ったり、示談書を作成していないことで刑事処分を受けたり、追加請求を受けたりすることが考えられます。

被害者から示談を持ちかけられた場合でも、刑事事件や不同意わいせつ罪の対応実績がある弁護士のアドバイスを聞いた上で判断するのが得策です。

不同意わいせつで示談金500万円は高額?妥当な金額?

不同意わいせつ事件の示談金が500万円となる場合、示談金は高額ですが、妥当かどうかはその事案や被害の程度によって異なります。

特に、被害者がケガをしたり、受けた損害が大きかったりした場合や、加害者側が強く刑事事件化を避けたい場合、被害者の許しを得たい場合には、示談金が高額となることもあります。

示談金は当事者間の合意で決定するものであり、双方が問題ないとすれば高額な金額で示談が成立することもあります。

ただし、示談金が妥当かどうかは、個々の事案によって異なるため、不安な場合は弁護士に相談した方がよいです。

まとめ

不同意わいせつ事件の示談は、被害者が加害者との接触を嫌うために当事者が行うことは難しく、弁護士にまかせた方が良いケースがほとんどです。

示談が成立しなければ起訴され、懲役刑が確定する可能性があります。

経験が豊富な弁護士にご依頼いただくことで、適切な金額で示談を成立させ、正確な示談書の作成が可能です。

ネクスパート法律事務所では、ご相談を24時間受け付けておりますので、まずはお電話、メール、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

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