控訴、上告とは?両者の違いなどについて解説
多くの方がニュースなどで「控訴」や「上告」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
しかし、その内容について解説されることは稀で、多くの方にとって馴染みが少ないかと思います。
そこで今回は、控訴や上告について解説してまいります。
控訴とは
控訴とは、第一審の簡易裁判所又は地方裁判所が出した判決について不服がある場合に、高等裁判所に対して不服を申立てることをいいます。
なお、控訴と後記の上告を合わせて上訴といいます。
控訴できる期間(控訴期間)は、第一審の判決日の翌日から起算して14日(判決日を含めると15日)以内です。
控訴するのであれば、この控訴期間内に、判決を受けた第一審の簡易裁判所又は地方裁判所に対して「(高等裁判所宛の)控訴申立書」という書面を提出しなければなりません。
控訴期間を経過すると、いくら控訴したくても控訴できなくなってしまいます。
控訴申立書を提出した後は、裁判所から指定された期限内に控訴の理由等を記載した「控訴趣意書」という書面を高等裁判所へ提出します。
控訴期間が経過すると判決が確定します。判決が確定すると、実刑の場合は刑に服さなければなりません。
すなわち、懲役、禁錮の場合は刑務所で服役し、罰金の場合は罰金を納付しなければなりません。
他方で、執行猶予付き判決の場合は執行猶予期間が始まります。
控訴できる人は、主に、被告人(起訴され、第一審の裁判所で判決の言い渡しを受けた人)、被告人の弁護人、検察官です。
もっとも、被告人の弁護人は被告人が明示した意思に反して控訴することはできません。
すなわち、被告人の弁護人は、被告人が「控訴したくない、しないで欲しい」と明確に意思表示しているにもかかわらず、控訴はできないということです。
また、弁護人がいったんは控訴したものの、後になって被告人が「控訴を取り消したい」と言った場合は控訴を取り消さなければなりません。
控訴申立て理由
控訴の申立ては、刑事訴訟法に規定された事由があることを「控訴申立て理由」とする場合に限り、行うことが可能です。
控訴申立て理由は、下記に分類できます。
- 訴訟手続の法令違反(刑事訴訟法377条~379条)
- 法令適用の誤り(刑事訴訟法380条)
- 量刑不当(刑事訴訟法381条)
- 事実誤認(刑事訴訟法382条)
- 再審事由・刑の廃止等(刑事訴訟法383条)
訴訟手続の法令違反とは、第一審で行われた刑事裁判の形式、手続きに法律に反する事由があった場合をいいます。
訴訟手続の法令違反には、その違反が第一審の判決にどのような影響を及ぼしたかどうかにかかわらず控訴の申立て理由となる絶対的控訴理由と、判決に影響を及ぼしたことが明らかである場合に限って控訴の申立て理由となる相対的控訴理由があります。
法令適用の誤りとは、たとえば、傷害致死罪(刑法205条:3年以上の有期懲役(上限20年))を適用すべきなのに、誤って殺人罪(刑法199条:死刑又は無期若しくは5年以上の懲役)を適用したなどというように、第一審の刑事裁判で証拠により認定された事実に対する法律の適用が誤っている場合をいいます。
量刑不当とは、執行猶予付き判決にすべきにもかかわらず実刑判決とされた、懲役2年が相当であるにもかかわらず懲役4年とされたなど、事件の性質や過去の同種事例等と比較して、量刑が不当に重たい場合をいいます。
事実誤認とは、第一審の裁判官が採用すべき証拠を採用しなかった、あるいは採用すべきでない証拠を採用した、証人の証言が信用できないのに信用できると判断した、証拠からある事実を認定するために用いた論理法則・経験則の当てはめを誤るなどし、その結果として、事実認定を誤った場合をいいます。
なお、第一審の弁論終結前(検察官の論告求刑、弁護人の弁論の手続きが終わった後)に、裁判に提出することができなった証拠によって証明される事実(あるいは、第一審の弁論終結後判決前に生じた事実)が、上記の量刑不当や事実誤認の控訴申立て理由があることを信ずるに足りるものと認められる場合は、その事実の存在(弁論終結後の事情)を理由として控訴申立てをすることができます。
再審事由・刑の廃止等とは、有罪の判決の言い渡しを受けた被告人に対して無罪を言い渡すべきこと、第一審において認定した罪より軽い罪を認めるべきことなどを証明し得る明らかな証拠を新たに発見した場合、第一審の判決後に刑の廃止があった場合などのことをいいます。
なお、実務上は「量刑不当」、「事実誤認」が多いです。
控訴審の内容と裁判の種類
控訴審は事後審といわれています。
事後審とは、第一審の簡易裁判所又は地方裁判所に提出された証拠に基づいて、第一審で行われた手続きや判断に誤りがなかったどうかを審査することをいいます。
つまり、控訴審では原則として、証拠書類のやり取りや証人に対する尋問などの証拠調べは行われないということです。
なお、裁判所から出頭を命じられる以外は、被告人に出頭義務はありません。
もっとも、第一審の弁論終結後判決前にあらたに発見された新事実や量刑に影響を及ぼすべき事情に関する事実などを審理する必要がある場合は、例外的に、上記の証拠調べが行われることがあります。
控訴審の裁判は「控訴棄却」と「原判決(第一審の判決)破棄」の2種類です。
控訴棄却は「決定による控訴棄却」と「判決による控訴棄却」があります。
前者は、控訴期間経過後に控訴された場合など形式上の不備を理由とするもの(いわゆる、門前払い)です。
後者は、控訴申立て理由が認められない場合を理由とするものです。
原判決破棄とは、要は、原判決の判断をなかったものにするという意味です。
その上で、高等裁判所は、事件を第一審の裁判所に差し戻す(破棄差戻し)、第一審と同等の裁判所に移送する(破棄移送)、あるいは、自ら判決を行う(破棄自判)かのいずれかの措置を取ります。
上告とは
上告とは、控訴審が出した判決について不服がある場合に、最高裁判所に対して、不服を申立てることをいいます。なお、上告も上訴の一種です。
上告するには、控訴(高等)裁判所に対して「(最高裁判所宛の)上告申立書」を提出します。
期限は控訴審の判決の翌日から起算して14日以内です。
また、裁判所から指定された期限内に「上告趣意書」を提出しなければならない点は控訴の場合と同様です。
上告を申立てできるのは(上告申立て理由は)、原則として憲法違反と判例違反に限られています。
まとめ
控訴は高等裁判所で審理を開いてもらうために行うもの、上告は最高裁判所において審理を開いてもらうために行うものと覚えておきましょう。
もっとも、両者とも、手続きは極めて複雑ですから、控訴、上告を希望する方は弁護士に相談した方がよいでしょう。
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