【勾留延長の基本知識を解説】手続きの流れや延長阻止・延長後の対策

勾留延長の流れ 阻止・延長後の対策

刑事事件で逮捕・勾留された後、その期間がさらに延長されると、被疑者本人だけでなく、そのご家族も不安が増すでしょう。

しかし、勾留延長は、日本の刑事司法において決して珍しい例外ではありません。

この記事では、勾留延長の基本知識から、勾留延長される具体的理由、勾留延長に対する弁護活動について解説します。

刑事事件は、事件発覚から逮捕、勾留、起訴など、スピーディーに進みます。 勾留延長されそうな方・逮捕されそうな方は、早めに弁護士に相談することが重要です。

【勾留延長の基本知識】勾留延長は何日?誰が決める?いつわかる?

勾留延長がされると、逮捕・勾留後、さらに身柄拘束が続きます。 逮捕から合わせると、最大23日間の身柄拘束がされます。

勾留延長とは?

勾留延長とは、検察官の請求に基づき、裁判官が当初の勾留期間をさらに延長することを許可する制度です。

勾留延長は何日?

勾留延長は最大10日間です。

逮捕後の流れ

逮捕されてから勾留が決定するまで、最長で72時間(3日間)の身柄拘束があります。 その後、裁判官が勾留を認めると、原則として10日間の勾留期間が始まります。

この10日間で捜査が完了しないなど【やむを得ない事由】がある場合に、検察官の請求によって勾留が延長されます。この延長期間が最大10日間です。

つまり、勾留が延長されると、逮捕から起訴されるまでの身柄拘束期間は、合計で最大23日間(逮捕3日間+勾留10日間+勾留延長10日間)にも及びます。

なお、一部の特殊な事件(内乱罪など)では、例外的にさらに勾留期間が延長される場合があります。

【やむを得ない事由】とは?

勾留延長が認められるには、【やむを得ない事由】が必要です。

最高裁判所の判例( 昭和37年7月3日判決)によると、
【やむを得ない事由】とは、事件の複雑困難、あるいは証拠収集の遅延もしくは困難等により、勾留期間を延長して更に取調をしなければ起訴、不起訴の決定をすることが困難な場合とされています。

具体的には、次の場合が挙げられます。

  • 事件が複雑である

共犯者が多数いる、被疑事実が多数ある、証拠が膨大であるなど、事件が複雑で捜査に時間がかかる場合です。

  • 証拠収集に困難が伴う

重要な証人の所在が不明、鑑定に時間がかかる、供述が食い違うなど捜査を完了させるのに障害がある場合です。

  • 被疑者が容疑を否認・黙秘している

被疑者が容疑を否認したり、黙秘を続けたりしている場合、事実関係の確認に時間がかかるため、勾留延長が認められやすくなります。

勾留延長は誰が決める?

勾留延長を最終的に決めるのは、裁判官です。 勾留延長の手続きは、以下の流れで進みます。

  1. 検察官が請求する

10日間の勾留期間で捜査が完了しない場合、検察官が勾留延長の必要性を判断し、裁判官に対して勾留延長請求書を提出します。

  1. 裁判官が判断する

検察官の請求を受けた裁判官が、勾留延長を認めるかどうかを判断します。 この際、裁判官は以下の点を慎重に検討します。

  • 延長が【やむを得ない事由】に基づくものか
  • 引き続き勾留の必要性(逃亡や証拠隠滅のおそれ)があるか
  • 被疑者の人権が不当に侵害されていないか

裁判官が【やむを得ない事由】があると判断すれば、勾留延長が許可され、最大10日間の身柄拘束が認められます。

勾留延長は、捜査機関である検察官が請求し、中立な立場の裁判官がその適否を判断します。 被疑者本人は、勾留延長の審査において、裁判官に直接意見を述べる機会がありません。

勾留延長を阻止するためには、弁護士が、検察官や裁判官に対して勾留延長の不当性を訴えることが重要です。

勾留延長はいつわかる?

勾留延長の決定は、通常、最初の勾留期間が満了する日に行われるため、勾留延長が認められると、その日に被疑者本人に伝えられます。

ただし、勾留満期日が土日や祝日になる場合、その直前の平日(金曜日など)に、勾留延長の請求が行われるのが一般的です。

勾留延長の連絡は家族に来る?

勾留延長の決定は、原則として被疑者のご家族へ連絡が入ることはありません。

最初の勾留決定時は、被疑者に弁護人が居ない場合で、かつ被疑者本人が希望する場合には、裁判所から被疑者が指定した家族に連絡が来ます(勾留通知が届きます)。

しかし、勾留延長時は、裁判所からの連絡も来ないため、勾留延長の有無や期間を迅速かつ正確に確認するためには、弁護士に依頼することをおすすめします。

勾留延長されやすい典型的な4つのケース

勾留延長されやすい典型的なケースは、次の4つです。

  1. 共犯者や関係者が多数いるケース
  2. 鑑定結果の待機が必要なケース
  3. 被疑者が否認・黙秘しているケース
  4. 組織的な犯罪や余罪が疑われるケース

以下、詳しく解説します。

共犯者や関係者が多数いるケース

共犯者や関係者が多数いるケースです。
事件の全体像を解明するために、関係者全員の取り調べが必要となるため、勾留延長される可能性が高いです。

鑑定結果の待機が必要なケース

鑑定結果の待機が必要なケースです。
薬物事件における尿や薬物自体の鑑定、精神鑑定など結果が出るまでに時間を要する場合には勾留延長される可能性が高いです。

被疑者が否認・黙秘しているケース

被疑者が否認・黙秘しているケースです。
被疑者が一貫して容疑を否認したり、黙秘を続けたりすることで、起訴・不起訴の判断にさらなる捜査が必要とされる場合には勾留延長される可能性が高いです。

組織的な犯罪や余罪が疑われるケース

組織的な犯罪や余罪が疑われるケースです。
複数の事件が関連している場合や捜査の進展によって新たな余罪が判明した場合に、それが同種犯罪であったり、密接に関連していたりする場合には勾留延長される可能性が高いです。

勾留延長を阻止するために弁護士ができること

勾留延長を阻止するために弁護士ができることは、主に次の3つです。

  1. 検察官に対する働きかけ|意見書の提出・供述状況の確認
  2. 裁判官に対する働きかけ|意見書の提出・法的な主張
  3. 被害者との示談交渉

以下、詳しく解説します。

検察官に対する働きかけ|意見書の提出・供述状況の確認

勾留期間が満了する前に、検察官に対して勾留延長を請求しないよう求める活動を行います。

  • 意見書の提出

勾留延長の必要がない理由をまとめた意見書を検察官に提出します。
例えば、証拠収集が十分に行われたこと、被疑者が容疑を認めており証拠隠滅のおそれがないことなどを具体的に主張します。

  • 供述状況の確認

弁護士が被疑者と接見し、取調べでの供述状況を正確に把握します。
捜査機関の主張する捜査の必要性を否定できる事実がないかを確認し、意見書に反映させます。

裁判官に対する働きかけ|意見書の提出・法的な主張

検察官が勾留延長を請求した場合、弁護士は裁判官に対して勾留延長を認めないよう求める活動を行います。

  • 意見書の提出

検察官の延長請求に反論する意見書を裁判官に提出します。
この意見書では、事件の性質、被疑者の状況(定職・家族の有無)、逃亡・証拠隠滅のおそれがないことなどを、客観的な証拠(家族の上申書や診断書など)を添えて主張します。

  • 法的な主張

勾留の要件(罪証隠滅や逃亡のおそれ)が満たされていないことを、法的な観点から主張します。

被害者との示談交渉

被害者のいる事件では、被害者との示談交渉を進めます。
被害者との示談が成立することで、勾留の必要性が薄れる場合があるからです。
勾留は、証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合に認められます。
被害者との示談が成立し、被害届が取り下げられたり、被害者が「厳罰を求めない。」との意思を示したりすると、検察官や裁判官は、証拠隠滅のおそれが低いと判断しやすくなります。
これにより、勾留の必要性が薄れたとみなされ、検察官が勾留延長の請求をしない、または裁判官が延長を許可しないとの判断に繋がる可能性が高くなります。

勾留延長がされた後の弁護士の活動

勾留延長がされた場合でも、弁護士の活動は終わりません。
裁判に向けた準備や、さらなる身柄解放の可能性を探るための活動を行います。
勾留延長後の弁護士の活動は、主に以下の3つです。

  1. 準抗告(不服申し立て)
  2. 起訴・不起訴の判断に向けた活動
  3. 裁判(公判)に向けた準備

以下、詳しく解説します。

準抗告(不服申し立て)

勾留延長の決定が不当であると考えた場合には、弁護士は、準抗告(不服申し立ての手続き)を行います。
準抗告は、裁判官の延長決定を取り消し、被疑者の釈放を求める手続きです。 準抗告が認められる確率は高くありませんが、認められた場合には、被疑者は釈放されます。

起訴・不起訴の判断に向けた活動

勾留延長期間中(最大10日間)は、検察官が被疑者を起訴するか、不起訴にするかを最終的に決定する重要な期間です。 弁護士は、この決定を有利な方向に導くため、以下の活動を行います。

  • 示談交渉の継続

示談が成立していない場合、被害者との示談交渉を粘り強く継続します。
示談が成立すれば、不起訴処分の可能性が高まります。

  • 被疑者にとって有利な証拠の収集

被疑者のアリバイを示す証拠、反省の態度を示す家族の上申書、病気の診断書など情状酌量を求めるための資料を集めます。

  • 検察官との面談・意見書の提出

弁護士は、検察官と面談し、被疑者の状況や反省の態度、示談交渉の進捗状況などを伝えます。
さらに、被疑者を不起訴にすべき理由をまとめた意見書を提出します。

裁判(公判)に向けた準備

勾留延長期間の満了後、被疑者が起訴される可能性が高い場合、弁護士は来るべき裁判(公判)に備えて準備を開始します。
被疑者との接見を継続し、取調べの状況や供述内容を確認します。
被疑者の供述や集めた証拠をもとに、無罪を主張するのか、情状酌量を求めるのかなど、具体的な弁護方針を策定します。

勾留延長に関するよくあるQ&A5選

勾留延長に関するよくある質問について、一問一答形式で解説します。

勾留延長の期間は必ず10日間?

勾留延長の期間は最大で10日間ですが、必ず10日間延長されるわけではありません。
裁判官の裁量で、例えば5日や7日などの短い期間が認められることもあります。

勾留延長と再延長の違いは?

勾留延長は、当初の10日間の勾留期間をさらに10日間(合計20日間)まで延長する制度です。
再延長は、ごく一部の重大犯罪で、勾留延長後さらに5日間の延長が認められる制度です。
勾留期間の再延長が認められる犯罪は、刑事訴訟法第208条の2で定められています。

  • 内乱に関する罪
  • 外患に関する罪
  • 国交に関する罪
  • 騒乱の罪

勾留再延長が認められた場合、勾留期間は最大で25日間となります。

勾留延長されると不起訴獲得は難しくなる?

勾留延長がされた場合、不起訴の獲得が難しくなる可能性は否定できません。
勾留延長が不起訴の獲得を難しくする理由として、検察官の起訴意思が強い可能性が挙げられます。
勾留延長は、検察官が「このままでは捜査が不十分であり、被疑者を起訴するためにはさらなる捜査が必要だ。」と判断した結果です。
これは、検察官がすでに被疑者を起訴する方向で考えているとも捉えられます。

しかし、勾留延長後でも不起訴になる可能性は十分にあります。
その鍵となるのは、弁護士の積極的な活動です。
弁護士が、被害者との示談交渉など不起訴獲得に向けた活動を行うことで、勾留延長された場合でも不起訴を獲得できる可能性が高まります。

接見禁止がついている場合は勾留延長によって接見禁止も延長される?

勾留延長がされると、原則として接見禁止も自動的に延長されます。
一度接見禁止処分がつくと、いつまでとの期間制限はありません。
接見禁止処分が解除される時期(終期)は、事件ごとに異なります。
例えば、起訴されたとき、第一回公判期日後、証人尋問後等が終期として考えられます。
場合によっては起訴前に解除されることもあります。

勾留延長の決定時に再度勾留質問は実施される?

勾留延長の決定時に、改めて勾留質問が実施されることはありません。
勾留質問は、被疑者が逮捕後、初めて裁判官と面会し、勾留を決定する際に実施される手続きです。
裁判官は被疑事実の要旨を告げ、認否を尋ねたり、被疑者の言い分を聞いたりして、勾留の要件を満たしているかを判断します。

しかし、勾留延長は、検察官が提出した書類に基づき、裁判官が書面のみで判断するのが一般的です。 したがって、被疑者本人から直接話を聞くための手続きは設けられていません。

まとめ

勾留延長がされると、逮捕から起訴されるまでの身柄拘束期間は、最大23日間にも及びます。
ご家族が勾留延長の事態に直面するなど、不安を抱えている場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
ネクスパート法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が多数在籍しています。
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