公務員逮捕4つのリスク|禁錮以上で失職・2年間公務員になれません
公務員が逮捕されたらどうなるのでしょう?
具体的なリスクは、主に以下のとおりです。
- 失職することがある
- 失職すると公務員としての転職は困難
- 比較的実名報道されやすい
この記事では、公務員が逮捕された場合のリスクを具体的にご説明します。
失職を避けるために弁護士ができることもご案内しますので、ぜひご確認ください。

不起訴になれば刑事裁判が行われないので、有罪判決は下されません。
逮捕されてから起訴されるまでは長くても23日しかありません。
一刻も早くご連絡ください。
目次
公務員が逮捕された場合特有のリスクとは
禁錮以上の刑に処されると休職や免職になる恐れがあります。
逮捕されただけで失職するわけではありません。
公務員の場合は国家公務員法や地方公務員法に、公務員特有の休職や免職に関する法律が定められています。
禁錮以上の刑に処せられると職を失う
国家公務員法や地方公務員法には、禁錮以上の刑罰に処する旨の判決がなされた場合に職を失うと定められています。
国家公務員法
第76条(欠格による失職) 職員が第38条各号(第2号を除く。)のいずれかに該当するに至ったときは、人事院規則で定める場合を除くほか、当然失職する。
引用:国家公務員法
第38条(欠格条項) 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則で定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
1 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
(抜粋)
引用:国家公務員法
地方公務員法
第28条(降任、免職、休職等) 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
第4項 職員は、第16条各号(第2号を除く。)のいずれかに該当するに至ったときは、条例に特別の定めがある場合を除くほか、その職を失う。
(抜粋)
引用:地方公務員法
地方公務員法
第16条(欠格条項) 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
1 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
(抜粋)
引用:地方公務員法
欠格条項に該当した時点で、自動的に失職すると定めています。
懲役刑・禁錮刑であれば、執行猶予付き判決であってもこれらの条項に該当しますが、罰金刑であれば該当しません。
執行猶予が付いても懲役刑・禁錮刑を言い渡されると自動的に失職します。
国家公務員については当然失職の例外はありませんが、地方公務員については多くの自治体で例外が定められているため、失職しないこともあります。
不起訴でも懲戒処分が下されることも
公務員が刑事事件を起こした場合、欠格条項に該当せず、罰金刑や不起訴であったとしても国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があった場合に該当するとして、懲戒処分を受ける可能性があります。
国家公務員法
第82条(懲戒の場合) 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
3 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合
(抜粋)
引用:国家公務員法
懲戒処分には以下4つの処分が記載されています。懲戒処分を行うのは任命権者です。「懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職-68)」と題する文書が公表されています。各処分についてそれぞれ解説します。
- 免職:免職とは任命権者が公務員の職を一方的に免じ、身分を失わせる処分です。公務員にとって免職は最大の罰則といえます。
- 停職:停職とは、身分は失わないが一定期間職務に従事させない処分です。停職期間は1日以上1年以下(国家公務員法第83条)と定められており、その期間中は原則として給与の支払いがされません。
- 減給:減給とは、一定期間給与を減額して支給する処分です。
- 戒告:戒告とは、将来を戒めるために、文書又は口頭で行われる厳重注意のことです。
国家公務員法
第83条(懲戒の効果) 停職の期間は、1年をこえない範囲内において、人事院規則でこれを定める。
2 停職者は、職員としての身分を保有するが、その職務に従事しない。停職者は、第92条の規定による場合の外、停職の期間中給与を受けることができない。
引用:国家公務員法
なお、懲戒処分の指針について(平成12年3月31日職職-68)には、どのような事由でどのような処分が下されるか、標準例一覧も記載されています。

例えば欠勤21日以上で免職の可能性があるので、逮捕後勾留され、最大23日間身柄拘束されることは極力回避すべきです。
実名報道されやすい
公務員特有の問題点として、実名報道のされやすさが挙げられます。
公務員といっても勤労の対価に給与を受ける労働者であることに変わりはありませんが、その職務に公共性がある点が一般の会社員と異なります。
職務に特に公共性が求められる警察官、教員、自衛官、あるいは国家公務員などの場合は実名報道されやすいように見受けられます。
実名報道するか否かは、各報道機関の判断によります。弁護士に依頼したとしても、実名報道を完全に回避することは難しいですが、捜査機関や報道機関に実名報道しないよう意見書などを提出することは可能です。
実名報道されるタイミングは、以下4つの時点が多いです。
- 逮捕時
- 送検時
- 起訴直後
- 判決時
失職すると、公務員としての転職は難しくなる
国家公務員法および地方公務員法にはそれぞれ欠格条項があります。欠格条項とは、公務員としての資格が欠けてしまう条件のことです。
国家公務員法
第38条 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則で定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
1 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
2 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
(抜粋)
引用:国家公務員法
地方公務員法
第16条 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
1 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
2 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
(抜粋)
引用:地方公務員法
国家公務員が懲戒免職になった場合、処分の日から2年間は再び国家公務員になることができません。地方公務員の場合も、懲戒免職の処分から2年間は職員になれず、職員採用試験の選考を受けることもできません。
公務員は失職してしまうと再就職が難しいので、失職しないためにできる限りの手を尽くす必要があります。
公務員特有のリスクを回避するための弁護活動とは
公務員が逮捕された場合に失職しないためには、早急に弁護士に相談することをお勧めします。以下、弁護士ができることについてお伝えします。
刑事事件化を回避し、懲戒処分を防ぐ
公務員は不起訴でも懲戒処分を受ける恐れがあるので、刑事事件化に先んじて対応するに越したことはありません。
事件を犯してしまった場合、逮捕される前にできることは、被害者と示談をすることです。刑事事件化する前に示談ができれば、職場に知られることなくその時点で終了します。
被害者が判明しているのであれば、事件後すぐに弁護士に依頼して示談交渉してもらいましょう。示談交渉は自分でもできますが、被害者の感情を逆なでし、かえって事態を悪化させてしまったり後々トラブルになったりすることがあります。
刑事事件の示談交渉は弁護士を介して進めた方が安心です。
不起訴を目指し、失職を回避
被害者の情報がわからない場合には、逮捕前に示談交渉することはできないので、逮捕後早急に被害者と示談交渉を始めます。逮捕段階で示談が成立すれば、すぐに身柄解放される可能性もあります。
身柄拘束が長引き欠勤日数が増えると職場に知られる危険が高まります。欠勤日数が21日以上になると、免職のおそれもあります。なるべく早く身柄解放してもらうことが失職を回避するために重要です。
日本の刑事裁判においては、起訴された場合99%以上が有罪となります。示談成立により不起訴を獲得できれば前科は付かないため、法で定める欠格事由に該当しません。不起訴を獲得し、失職する可能性をなるべく低く抑えるため、できる限り早期に弁護士に相談しましょう。
実名報道をしない旨の意見書を提出
公務員が逮捕されると、実名報道される可能性が一般人より高い傾向にあり、実名報道されると職場に事件のことが知られてしまいます。
免職にならなくても職場に居づらくなり、自分から退職する方もいますが、公務員は公務員としての再就職も一般企業への転職も難しいので、実名報道されるか否かは今後の生活に大きく関わってきます。
失職しないためにも弁護士から捜査機関や報道機関に実名報道しないように意見書を提出してもらいましょう。
周囲に知られる前に解決し、失職を避けましょう
公務員の方が逮捕されると、刑の重さによっては失職する恐れがある旨をお伝えしました。懲戒免職になると2年間は公務員として転職できません。
今後も仕事をし続けるためには不起訴の獲得が欠かせません。すぐにご相談ください。