検察官の職務とは?検事、副検事の特徴についても解説
検察官よりも警察官の方が私たちの暮らしにとって身近な存在といえます。
そのため、警察官の職務についてはイメージがつくものの、検察官の職務についてはイメージがつかない方も多いのではないでしょうか?
今回は、検察官の職務などについて詳しく解説します。
目次
検察官の種類
検察官は、検事総長、次長検事、検事長、検事及び副検事に区分されます。
このうち現場の第一線で職務を行うのが検事、副検事です。
検事は司法試験に合格した者の中から選ばれ、副検事は一定期間、職務経験を積み、かつ、検察庁の内部試験を合格した者の中から選ばれます。
なお、副検事が一定期間、職務経験を積み、検察庁の内部試験に合格すると検事(特任検事)に昇任することができます。
検察官の職務とは
検察官の職務は検察庁法という法律の第4条に規定されています。
検察庁法
第4条
検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。引用:検察庁法第4条
以下、この規定について細かく解説します。
刑事について、公訴を行う
「公訴」とは別名、起訴といいます。
検察官は、捜査の結果を踏まえて起訴するか不起訴とするか判断します。
起訴した場合は、みずから刑事裁判の原告となって、刑事裁判に関与します。
また、上記のとおり、検察官が起訴か不起訴かの判断を下すためには、刑事事件の捜査を行う必要があり、この捜査も検察官の重要な職務の一つです。
したがって、「刑事について、公訴を行い」には検察官の捜査権限も含まれると解されています。(検察庁法第6条は、「検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる。」と規定しており、検察官の捜査権限はここでも明らかにされています。)
なお、警察官にも刑事事件の捜査権限が付与されていることは皆さんもよくご存じのとおりです。
多くの刑事事件では、まず警察が捜査を行って、送致(送検)後に、検察官の捜査(取調べなど)が行われます。
もっとも、このことは検察官の捜査権限が警察官の捜査権限より狭い、制限されているということを意味するものではありません。
つまり、検察官は、必要があると認めるとき(特に、政治家が刑事事件に絡む場合)は、自ら捜査することもあります。
また、警察官から送致されてくる事件についても、すべて警察官に任せきりにしているわけではなく、必要によっては、送致前後に警察官に対して捜査を指揮、監督することもあります。
裁判所に法の正当な適用を請求する
具体的には、弁護人から出された保釈請求に対して意見を述べる(裁判所に意見書を提出する)、刑事裁判の判決前の期日で、事件の事実及び法律の適用について意見を述べる(論告といいます)、求刑する、違法又は不当な判決に対して上訴(控訴、上告)する権限などがこれに含まれます。
また、検察官は、刑事裁判における原告にとどまらず「公益の代表者」であることから、稀に、被告人の利益のために上訴、再審請求する、あるいは無罪又は公訴棄却の論告をすることもあります。
裁判の執行を監督する
「裁判の執行」で典型なのが、判決で言い渡された実刑を実行に移すことを指揮することです。
具体的には「執行指揮書」という書面を作り、これを検察官のサポート役である検察事務官に渡します。
検察事務官はこの執行指揮(受刑者)を刑務所に収容する手続きを取ります。
そして、執行指揮書は受刑者が収容される刑務所の長に渡され、刑務所の長はこの執行指揮書に基づいて実際の刑の内容を実行に移します。
また、検察官は、受刑者の受刑中も刑の執行の指揮を執ることがあります。
すなわち、受刑者が受刑中に刑の執行によって著しく健康を害するとき、又は生命を保つことができないおそれがあるとき、受刑者の年齢が70歳以上であるときなどは、検察官の指揮によって刑の執行を停止することができるのです。
刑の執行を停止された受刑者は釈放され、刑務所で服役する必要がなくなります(ただし、あくまでも「停止」であって「免除」されたわけではないため、再度、服役しなければならない可能性はあります)。
公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う
「他の法令」で代表的なものが「民法」です。
本来、民法は一般市民に権利の行使を認める規定ですが、その権利を行使することができない場合に、公益の代表者たる検察官に一般市民の権限を行使することを認めているのです。
- 後見開始の審判、保佐開始の審判又は補助開始の審判の請求権、それらの取消請求権
- 不在者の財産の管理に関する処分請権、その取消請求権
- 不適法婚の取消請求権
- 親権又は親権による財産管理権の喪失宣告請求権
- 後見人の解任請求権
- 相続の承認、放棄期間の伸長請求権
- 相続人捜索の公告請求権 など
このように、検察官の職務は刑事のみならず民事にまで及んでおり、とても広範囲であることがお分かりいただけると思います。
検事と副検事の特徴
冒頭で「検察官の種類」についてご紹介しましたが、ここでは刑事事件で目にすることが多い、検事と副検事の特徴について解説します。
検事、副検事の任官ルート
冒頭でも解説したとおり、検事は司法試験合格者です。
現在の受験制度では、法科大学院卒業者又は予備試験合格者が司法試験を受験できることとなっており、検事はいずれかのルートを経て司法試験を受験し合格したということになります。
20歳前半から遅くても30歳前半で任官することが多いです。
他方で、副検事は検察庁の内部試験合格者です。
内部試験を受験できる者は、検察事務官のほか、一定の階級以上の警察官、自衛官など様々です。
一定期間、職務経験を積む必要があり、仕事をしながら受験する必要があるため、早くて30歳前半、遅くて50歳後半で任官する方もいます。
検事、副検事の数
現在、検事、副検事の数とも必要数に足りていないと言われています。
人事局の「検察官在職状況統計表」によると、令和元年7月1日時点で、検事が1,941人、副検事が770人と公表しています。
検事、副検事が取り扱う事件の内容
検事は比較的難易度の高い刑事事件、副検事は比較的難易度の低い刑事事件を取り扱うというイメージです。
そのため、検事よりも副検事の方が取り扱う事件数自体は多いです。
しかし、前述のとおり、検察官の数が足りていない影響からか、副検事でも検事同等かそれ以上の難易度の高い事件を取り扱うこともあります。
また、検事も副検事も検察官であることは同じですから、双方に付与される権限(取調べ、刑事裁判の遂行、刑の執行指揮など)も同じです。
まとめ
検察官は刑事事件をメインに取り扱っていますが、ときに公益の代表者として民事の分野も取り扱うことがあります。