鑑別所とは|少年鑑別所の生活や期間は?少年院と少年刑務所との違い

鑑別所(かんべつしょ)とは、正確には少年鑑別所と言い、罪を犯した少年の処分を決定するために、専門家が少年を調査する施設のことです。

鑑別所と聞くと、刑務所と同じだと思う人もいるかもしれませんが、全く別の施設です。

この記事では、鑑別所について次の点を解説します。

  • 少年鑑別所の概要や収容期間
  • 少年鑑別所と少年院との違い
  • 少年鑑別所の生活や面会について

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少年鑑別所とは

少年鑑別所は、罪を犯した少年の処分を決定するために、少年の精神面や生活など専門的な観点から調査を行うための施設です。

少年鑑別所は、法務省の管轄の施設で、2024年5月時点で全国52か所に設置されています。

成人が罪を犯した場合は、刑事裁判で処分を受けることになります。

まだ未成熟な少年の場合は、刑事罰よりも更正を目的として、処分を決定することになります。

少年が罪を犯す原因には、少年自身だけでなく、障害や家庭環境、親、学校などの複雑な理由があります。

未成熟な少年をしっかりと調査して、非行の原因を明らかにし、更正に必要な支援を判断する施設が鑑別所なのです。

ここでは、少年鑑別所の概要や収容期間について解説します。

少年鑑別所の目的

少年鑑別所の目的は次の3つです。

  1. 少年の鑑別を行うこと
  2. 収容された少年に対して健全な育成のための支援など必要な観護措置を行うこと
  3. 地域社会において、非行や犯罪防止の援助を行うこと

鑑別所では、子どものトラブルや家庭内のしつけについても、心理学の専門家による相談やカウンセリングなどの援助を行っています。

参考:こどもの非行問題などの相談 – 法務省

少年鑑別所で行われること

少年鑑別所では、少年の更生のために何が必要なのか、専門家のもとで専門的な調査が行われます

罪を犯した少年の処分については、家庭裁判所で行われる少年審判で決定します。

処分には、①保護観察、②児童自立支援施設などへの送致、③少年院送致がありますが、処分を下すにあたり、次の内容を調査する必要があります(社会調査)。

  • 非行事実:非行事実を行ったかどうか、非行の内容
  • 保護の必要性:少年が成長するために必要な援助を見極める

そのため、少年鑑別所では、心理学、教育学、社会学、医学などの観点から少年の調査が行われます。

鑑別所の収容期間は2~8週間

少年鑑別所に収容される期間は原則2週間です。

ただし、裁判所に継続が必要だと判断されれば1回の更新が認められます。

実務上は4週間収容されるケースが多いです(少年法第17条)。

また、次のケースでは、さらに2回の更新が認められており、最長で8週間収容されるケースもあります。

  • 死刑や懲役、禁固にあたる罪を犯したとき
  • 非行の事実認定に対して、証人尋問や鑑定や検証が行われることが決定しているとき
  • 収容鑑定を行わなければ審判に支障が生じるとき

鑑別所に収容されるタイミングは、①逮捕後に警察から検察に引き継がれた後と、②家庭裁判所に引き継がれた後です。

①のケースでも勾留に代わる観護措置として、鑑別所に10日間収容されるケースがあります。

鑑別所と少年院の違い

ここでは、鑑別所と少年院の違いについて解説します。

鑑別所は審判での処分を決めるための調査する

先述したとおり、少年鑑別所は、少年審判で少年の処分を決定する前に、調査を行う施設です。

鑑別所では、少年の調査や収容中に健全な育成に必要な支援などを行います。

例えば、心理テストなどで調査を行うほか、運動や読書などもできます。

収容中に学校の勉強に遅れないように、勉強をする子もいます。

鑑別所では、規則正しい生活を習慣づけるために、起床や就寝、食事の時間などが決まっていますが、それ以外では比較的自由に過ごすことができます。

少年院は社会復帰を目的とした矯正施設

少年院は、社会復帰を目的として、少年に矯正教育を行う施設です。少年審判で下される保護処分の1つです。

収容される理由 少年審判で、施設で矯正教育が必要だと判断された場合
収容されるタイミング 鑑別所で調査後に、少年審判で保護処分が下された後
少年院で行われること 社会復帰を目的として、生活指導、職業指導、学習指導(教科指導)、体育指導、特別活動指導(ボランティアなど)
収容期間 収容期間は1年

少年院に送致された場合の収容期間は1年です。

ただし、少年院は非行から立ち直らせる教育施設であるため、少年の非行の深刻度により、期間が左右されます。

短ければ半年程度、長ければ2年ほど収容されるケースもあります。

また、少年院は原則20歳まで収容されますが、収容期間が短い場合や、家庭裁判所の決定で26歳まで収容も可能です。

参考:少年院 – 法務省

少年刑務所は更生を目的とした刑事施設

少年院と聞くと、刑務所なのではと誤解する人もいますが、未成年者で刑事罰を受けた場合は少年刑務所に収容されることになります。

少年刑務所は、罪を犯した少年を服役させ、罪の重さや責任、反省をうながし、社会復帰を支援する刑事施設です。

少年刑務所に収容されるのは、刑事裁判で実刑判決を受けた、16歳以上20歳未満の少年です(14歳~16歳未満は少年院に収容)。

収容される理由 成人同様刑事裁判で実刑判決が下された場合、刑事罰を科すべきだと判断された場合
収容されるタイミング 刑事裁判で実刑判決が下された後
少年刑務所で行われること 強制労働である刑務作業が中心

更正のために職業訓練や教科指導なども行われる

収容期間 言い渡された判決による

犯した罪が重大であり、矯正教育よりも刑事罰を科すべきだと判断された場合、成人と同様に刑事手続きが行われます。

刑事裁判で実刑判決を受けた場合、少年刑務所に収容されることになるのです。

少年の場合は、成人と比較して、早期に更正できる可能性があるため、不定期刑が選択されます。

一般的に量刑は懲役〇年と言い渡されますが、不定期刑の場合は懲役5年以上10年以下という形で幅を持たせた期間が言い渡されるのです。

何をしたら鑑別所に収容される?鑑別所に入る基準

鑑別所に収容されるのは、家庭裁判所で観護措置が決定された場合です。

観護措置の要件は、少年法上審判を行うため必要があるときと定められています(少年法第17条)。

実務上は次のようなケースで、鑑別所に収容される可能性があります。

  • 少年が非行を犯したと疑うに足りる相当な理由があること
  • 審判を行う必要性があること
  • 逃亡や証拠隠滅のおそれがあること
  • 少年の身に危険があり保護が必要であること
  • 処分を決定するにあたり調査が必要であること

なお、法務省によると、2022年に検挙された少年は2万912人、鑑別所に収容されたのは4,658人、およそ22%が収容されています。

参考:令和5年版 犯罪白書 – 法務省

少年が非行を犯したと疑うに足りる相当な理由があること

少年を鑑別所に収容するということは、強制的に隔離することになります。

少年にとっても、学校に通えないなどの不利益があるため、少年が非行を犯したとする事実や証拠がなければ、鑑別所に収容はできません。

審判を行う必要性があること

また、少年の非行の程度が軽微であり、保護も不要であれば、観護措置は行われません。

そのため、審判を行い、少年の矯正が必要であると判断されるような重大な事件や、非行を繰り返すなど、非行の程度が深刻な場合は、観護措置がとられる可能性があります。

なお、法務省によると、2022年に鑑別所に収容された罪名の割合は次のとおりです。

罪名 男子 女子
窃盗罪 23.6% 27.9%
傷害・暴行 20.1% 13.7%
詐欺 8% 9.2%

上記以外にも、不同意性交や不同意わいせつ、道交法違反、覚せい剤取締法違反、恐喝などがあります。

参考:令和5年版 犯罪白書 – 法務省

逃亡や証拠隠滅のおそれがあること

鑑別所に収容される場合は、観護措置の必要性があるかどうかも重要です。

例えば、非行や犯罪行為があったが、住所不定や逃亡、証拠隠滅のおそれがあると判断された場合は、身柄を拘束するために鑑別所に収容される可能性があります。

少年の身に危険があり保護が必要であること

同様に、少年を保護する必要がある場合、例えば自殺や自傷、保護者からの虐待などのおそれがある場合も、鑑別所に収容されることになります。

鑑別所では、少年の安全を確保しながら、調査が行われます。

処分を決定するにあたり調査が必要であること

少年の処分を決定するにあたり、精密な調査が必要だと判断された場合も、鑑別所に収容されます。

例えば、精神的、発達上の問題があり、調査が必要な場合が考えられます。

逮捕から鑑別所までの流れ

刑事事件の基本的な流れは次のとおりです。

  1. 逮捕
  2. 身柄拘束(勾留)
  3. 起訴か不起訴
  4. 刑事裁判
  5. 処罰

成人は犯した罪に対して処罰が行われるのに対し、少年の場合は更正に重きをおくために、処罰ではなく適切な更正支援が行われます。

そのため、最終的には起訴か不起訴ではなく、家庭裁判所の少年審判で、処分が決定するのが一般的です。

ここでは、逮捕から鑑別所に収容されるまでの流れをわかりやすく解説します。

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逮捕後検察へ送致

14歳以上の少年が罪を犯した場合は、逮捕される可能性があります。

刑法では、14歳に満たない者の行為は処罰しないと定められているため、逮捕の対象となるのは14歳以上です(刑法第41条)。

逮捕された後は、成人少年関係なく、48時間以内に、身柄と事件が警察から検察に引き継がれます。

少年事件は、検察に引き継がれた後、最終的に処分を下す家庭裁判所に送致されます。

勾留に代わる観護措置

検察に送致された身柄は、拘束が必要だと判断されると勾留、もしくは勾留に代わる観護措置が行われます。

勾留 10~20日間留置場に身柄拘束をされる

勾留満期までに処分が決まる

勾留に代わる観護措置 10日間少年鑑別所に拘束される

その後家庭裁判所に送致される

少年事件の場合は、やむを得ない場合でなければ勾留ができないと定められています(少年法第48条、第43条)。

ただし、実務上は鑑別所の収容力の問題などから勾留といった判断がされるケースが多いです。

法務省によると2022年に鑑別所に収容されたケースのうち、家庭裁判所送致後の観護措置が87.2%、勾留に代わる観護措置は6.3%でした。

勾留に代わる観護措置がとられた場合のみ、少年鑑別所に10日間収容され、家庭裁判所に送致されることになります。

参考:令和5年版 犯罪白書 – 法務省

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家庭裁判所へ送致

勾留、もしくは勾留に代わる観護措置の後、事件は家庭裁判所に送致されることになります。

また、家庭裁判所に送致された後は、観護措置の要否に応じて、鑑別所に収容されることになります。

送致前に勾留に代わる観護措置をとられた場合は、引き続き、審判まで鑑別所に収容されることになります。

鑑別所へ収容

家庭裁判所で観護措置が必要だと判断されると、鑑別所に収容されます。

鑑別所では、少年審判の処分を決定するために、少年の調査が行われます。

先述したとおり、鑑別所に収容される期間は2~8週間です。

一般的にはおおよそ4週間程度収容されることが多いですが、重大な事件や非行が深刻だと延長される可能性があります。

少年審判で処分が決定

鑑別所の調査を経て、少年審判で処分が決定されることになります。

少年審判の処分は大きく分けて次のとおりです。

保護処分 保護観察:施設に入所せずに保護司の指導のもと更正する

児童自立支援施設送致:施設で更正を目指す

少年院送致:少年院で矯正教育を受ける

不処分 少年審判不開始、不処分など

処分が不要、事件が終了する

少年鑑別所の生活

少年鑑別所は、矯正教育が行われる少年院や、刑務作業が科される少年刑務所とは異なり、調査を行うための施設です。

入所後は、少年を自由に生活させて、様子を観察したり、心理テストなどを行ったりして調査をします。

また、非行と切り離し、乱れた生活を整える役割もあるため、集団の中で規則正しい生活をおくることになります。

法務省の少年鑑別所のしおりによると、一日のスケジュールは次のとおりです。

7:00 起床・洗面
7:30 朝食・点呼
9:00 運動
10:00 面接・心理検査
12:00 昼食
13:00 学習支援・講和
14:30 面会
15:30 診察・入浴
17:00 夕食・点呼
18:00 日記記入・自由時間
21:00 就寝
引用:少年鑑別所のしおり – 法務省矯正局

ある程度のルールはありますが、私語が禁止されるなど、刑務所のような生活を強いられることはありません。

少年鑑別所では面会できる?

少年鑑別所でも面会は可能です。

鑑別所では、今後少年が更正していくために、家族などと接する機会を持たせることを重視しています。

面会ができるのは、親や兄弟、配偶者、祖父母などの身内や、付添人(弁護士など)、学校の先生などです(少年鑑別所処遇規則第47条)。

他にも、保護司が少年に必要だと判断すれば、面会できるケースがあります。

交際相手や友人の面会については、認められない可能性があります。

面会ができる日や時間は次のとおりです。

面会ができる日 月曜から金曜

午前8:30~12:00/午後13:00~17:00

面会時間 基本10~30分

面会の申し込みが多ければ短縮されることも。

最低でも10分は行われる

面会できる人数 1回の面会で3人まで

面会時は、少年刑務所のようにアクリル板ごしに会話するということはありません。

ただし、付添人の面会以外は、基本的に少年鑑別所の職員が立ち会います。録音や録画することもあります。

こうした面会人との様子なども少年の調査の一環となるからです。

また、面会の他に差し入れも可能です。

  • 現金(鑑別所で日用品を購入する用)
  • 衣類、下着や靴下
  • 書籍 など

また、手紙のやり取りも可能です。面会ができない人は手紙を送りましょう。

少年鑑別所で行われる調査とは

鑑別所では、少年の非行の原因や更正に必要なものを、面接や心理テスト、生活や環境などから調査します。

ここでは、鑑別所で行われる調査を解説します。

身体検査

鑑別所に入所した場合は、少年の発達に問題がないかどうか、身体検査や健康診断が行われます。

面接調査

入所後は何度か面接での調査が行われます。

心理学の知識や技術のある法務技官が面接を行い、面接や心理試験を実施して、家庭裁判所に提出する資料を作成します。

面接では次のような話をします。

  • 生まれ育った環境や家族のこと
  • 過去の非行歴や事件について
  • 事件の動機や原因
  • 学校や職場の人間関係
  • 被害者への気持ちや事件についてどう考えているのか
  • 今後の生活 など

他にも、IQテストや心理テストなどが行われ、少年の性格などが調査されます。

行動観察

行動観察では、心理学や教育学の知識を持つ法務教官が、少年の日常生活を観察します。

行動観察では次の部分を観察します。

  • 知的能力
  • 対人への行動傾向
  • 情緒や意欲
  • 価値観や社会的な態度
  • 生活習慣 など

日常生活の観察はもちろん、絵画や作文、はり絵などを通して心理状況なども調査します。

鑑別所では、他にも家庭裁判所からの資料、保護者らとの面接、学校や職場へ照会を行い、少年の環境を調査するのです。

少年鑑別所についてよくある質問

ここでは、少年鑑別所についてよくある質問に回答します。

鑑別所に収容される期間は最短でどのくらい?

鑑別所に収容される期間は最短で2週間です。ただし、4週間程度収容されるケースが多いです。

鑑別所に収容されると進学などに影響する?

鑑別所に収容されたからといって、学校側がただちに処分を下すわけではありません。

学校側は、校則などにしたがい、状況を考慮して処分を下す可能性があります。

長期間収容されると出席日数が足りずに、進級に影響することも考えられます。

また、進学先の試験の時期などは鑑別所から出られないため、観護措置が取られないように、早期に弁護士に相談した方がよいでしょう。

鑑別所に収容されると少年院は確定?

鑑別所に収容されたからといって、少年院への送致が確定するわけではありません。

少年院への送致が必要かどうか、調査するために鑑別所に収容されることになります。

非行が深刻で、矯正教育が必要だと判断されれば、少年院に送致される可能性があります。

一方で、逮捕から審判までの過程で、反省を深めていれば、少年審判不開始や不処分といった結果もあり得ます。

まとめ

鑑別所は少年院や少年刑務所と違い、少年の更正のために必要な支援を見極めるための施設です。

収容されれば長期間拘束されることになりますし、進学に影響する可能性もあります。

一方で、少年自身が自分を見直すきっかけになる可能性もあるため、鑑別所に収容されることが悪いことばかりではありません。

少年事件に関して、家族で溝があり悩んでいる方や、少年事件の流れに不安がある人は弁護士に相談しましょう。

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