刑事事件の示談交渉を自分でやる手順と注意点

自分でできる?示談交渉の流れと注意点

刑事事件の加害者の中には、弁護士に依頼せず、「示談交渉を自分で行いたい。」と考える方も少なくありません。
弁護士を介さずに自分で交渉を進めれば、費用を抑えられるメリットがあります。
しかし、自分での示談交渉は、一歩間違えると不利益を被る可能性があるため、リスクの高い行為でもあります。
この記事では、自分で示談交渉を進める方のために、交渉を始める前に知っておくべき基本的な流れや、ポイント・注意点を解説します。
自分での交渉は決して不可能ではありませんが、その道のりには多くのリスクが潜んでいることを理解し、慎重に進めましょう。

刑事事件の示談交渉は自分でも可能だがリスクが高い

刑事事件の示談交渉は、法律上、加害者本人が自分で行うのも不可能ではありません。
しかし、数々のリスクが伴います。
示談交渉は、単に金銭を支払えばよいものではなく、被害者の心情に配慮し、複雑な法的手続きを正確に踏む必要があります。
不起訴処分を目指すための示談交渉には、数多くのハードルが存在します。
これらのハードルを乗り越えられなければ、不起訴どころか、かえって事態を悪化させる危険性もあるでしょう。
自分で示談交渉を行うメリットは、弁護士費用がかからない点です。
しかし、結果として、本来支払うべき金額を超える不当な示談金や、後々のトラブルに発展するリスクを招き、最終的には費用以上の損失を被る可能性があります。
費用を抑えようとした結果、かえって代償を払うことになるかもしれません。

示談交渉を自分で行う場合の5つのリスク

示談交渉を自分で行う場合には、次の5つのリスクが伴います。

  1. 被害者と連絡が取れない・交渉を拒否されるリスク
  2. 被害者の処罰感情を高めるリスク
  3. 宥恕文言や清算条項が漏れるリスク
  4. 不当に高額な支払いを強いられるリスク
  5. 時間的・精神的負担を負うリスク

以下、詳しく解説します。

被害者と連絡が取れない・交渉を拒否されるリスク

被害者と連絡が取れない・交渉を拒否されるリスクです。
刑事事件では、加害者と被害者の間に面識がないケースが多々あります。
この場合、加害者本人やその家族が被害者の連絡先を入手することは困難です。
通常、警察や検察官は、加害者やその家族に対しては、被害者の情報を教えません。
もちろん、被害者本人やそのご家族も、加害者と直接対面することは拒むでしょう。
そのため、示談交渉の入り口にすら立てない事態が発生します。
仮に被害者の連絡先を知っていても、被害者は加害者本人からの接触を強く拒絶することが多いです。
これは、事件によって加害者への恐怖心や不信感が強くなるためです。
加害者側が善意で謝罪の連絡をしても、被害者にとっては脅迫行為と受け取られかねません。
このような事態に陥れば、交渉は始まる前に決裂し、かえって捜査機関の心証を悪化させる可能性もあります。
弁護士であれば、被害者の連絡先を秘匿扱いすることを前提として、被害弁償や示談交渉のために、連絡先を開示してもらえる可能性があります。
弁護士に依頼することで、示談交渉の道が開けるでしょう。

被害者の処罰感情を高めるリスク

被害者の処罰感情を高めるリスクです。
示談交渉の目的は、金銭的な解決だけでなく、被害者の怒りを鎮め、許しを得ること(宥恕)です。
しかし、加害者本人と被害者との間で直接交渉を行うと、互いに感情的になり、冷静な話し合いが難しくなります。
被害者が抱える強い処罰感情や被害認識と、加害者が考える事件の軽重に乖離がある場合、話し合いは決裂し、被害者の感情をさらに逆なでることも珍しくありません。
示談交渉が破談し、被害者の処罰感情が強まったと判断されれば、不起訴処分を得ることは一層困難になります。
弁護士が間に入ることで、感情的な対立を避け、冷静かつ適切な交渉を進められます。

宥恕文言や清算条項が漏れるリスク

宥恕文言や清算条項が漏れるリスクです。
示談交渉が合意に至ったとしても、その内容を正確かつ法的に有効な書面(示談書)に残さなければ意味がありません。
示談書には、加害者が不起訴処分を獲得するために重要な宥恕文言(被害者が加害者を許し、処罰を望まない旨の条項)を確実に含める必要があります。
後から民事裁判などのトラブルが蒸し返されないようにするためには、清算条項も不可欠です。
しかし、法律の専門知識がない方が示談書を作成すると、これらの重要な文言が漏れるリスクがあります。
せっかく示談が成立しても、刑事処分に良い影響を与えられなかったり、将来にわたる予期せぬトラブルを招いたりする可能性があるでしょう。
弁護士に依頼すれば、不起訴処分に効果的な適切な示談書を作成してもらえます。

不当に高額な支払いを強いられるリスク

不当に高額な支払いを強いられるリスクです。
示談金の金額は法律で一律に定められているわけではなく、事件の悪質性、被害の程度、加害者の資力などによって変動します。
自分で交渉を行う場合、適正な示談金の相場を知らないため、被害者から不当に高額な金額を請求された場合には、その妥当性の判断が難しいでしょう。
精神的なプレッシャーから法外な要求に応じ、損害を被る可能性があります。
相場より低い金額で示談を試みた場合には、被害者の感情をさらに害し、交渉決裂に繋がるリスクも高まります。
弁護士は、過去の事例や裁判例をもとに、適正な示談金額を熟知しており、法的な根拠に基づいた交渉を行えます。

時間的・精神的負担を負うリスク

時間的・精神的負担を負うリスクです。
示談交渉は、被害者の連絡先を探し、何度も連絡を取り、謝罪文を作成し、示談書の文言を検討するなど、多くの時間と手間を要する煩雑な手続きです。
慣れない交渉は精神的ストレスを伴い、本業や日常生活に悪影響を及ぼすこともあります。
弁護士に依頼すれば、手続きを任せられるため、依頼者は再犯防止策の検討や生活再建に専念できます。

示談交渉を自分で進める場合の一般的な流れ

示談交渉を自分で進める場合の一般的な流れは、次のとおりです。

  • 被害者と連絡を取る
  • 被害者に謝罪と示談の意思を伝える
  • 示談金額やその他の条件について話し合う
  • 示談書の作成と署名押印をする
  • 示談金を被害者に支払う
  • 示談書を検察・裁判所に提出する

以下、詳しく解説します。

①被害者と連絡を取る

被害者と連絡を取りましょう。
示談交渉を始めるためには、被害者と連絡を取る必要があります。
ただし、被害者が連絡先の開示を拒否する可能性が高いです。
拒否された場合には、弁護士への依頼を検討することをおすすめします。

②被害者に謝罪と示談の意思を伝える

被害者に謝罪と示談の意思を伝えましょう。
連絡が取れたら、心からの謝罪を伝え、示談をしたい旨を真摯に申し出ます。

③示談金額やその他の条件について話し合う

示談金額やその他の条件について話し合いましょう。
話し合う主な事項は、次の5つです。

  1. 示談金額
  2. 示談金の支払い方法
  3. 被害者を許す文言(宥恕文言)の有無
  4. 被害届や告訴状を取り下げる文言の有無
  5. 清算条項の有無

示談書は、解釈に疑義が生じないように適切な文言で記載する必要があります。
疑義が生じる記載がされていると、せっかく示談が成立したのに後々トラブルが生じる可能性もあります。
示談書の記載事項に不安がある場合には、自分で作成せずに弁護士に相談することをおすすめします。

④示談書の作成と署名押印をする

示談書の作成と署名押印をしましょう。
合意内容に基づき示談書を作成し、双方の署名押印をもって示談が成立します。

⑤示談金を被害者に支払う

示談金を被害者に支払いましょう。
示談書の内容に従って被害者に示談金を支払います。
その後、示談金領収証に署名してもらい、可能であれば被害届取下げ書などにも署名押印してもらいます。

⑥示談書を検察・裁判所に提出する

示談書を警察・裁判所に提出しましょう。
被害者との間で示談が成立したことを示すため、起訴前であれば検察に、起訴後であれば裁判所に示談書の写しを提出します。
起訴前に示談が成立すると不起訴処分につながりやすく、起訴後であれば刑が軽くなる可能性が高くなります。

示談交渉を自分で行う際のポイントと注意点4選

示談交渉を自分で行う際のポイントと注意点は、次のとおりです。

  • できるだけ早く示談を行う
  • 心からの謝罪を伝える
  • 示談金の相場を把握する
  • 交渉内容を書面に残す

以下、詳しく解説します。

できるだけ早く示談を行う

できるだけ早く示談を行いましょう。
逮捕される前に示談が成立すれば、刑事事件化の回避・逮捕回避に繋がる可能性が高くなります。
起訴前に示談が成立すれば、不起訴獲得に繋がる可能性が高くなります。
刑事事件では段階ごとに時間制限があります。
できるだけ早く示談を行うことで、重い処分を下されるリスクを減らせます。

心からの謝罪を伝える

心からの謝罪を伝えましょう。
示談交渉は、金銭的な解決よりも、加害者が反省し、被害者がその反省を受け入れることが大前提です。
反省の態度を示す反省文は、定型的な文章ではなく、なぜ事件を起こしたのか、被害者の気持ちをどう受け止めているか、今後どう更生していきたいかなどを自筆で具体的に記述することが重要です。
誠実さがなければ、交渉のテーブルにすらついてもらえない可能性があります。

示談金の相場を把握する

示談金の相場を把握しましょう。
被害者が提示する示談金額が適正かどうかを判断するためには、事前に同種事件の相場を把握する必要があります。
相場を把握しないことで、法外な金額で示談するリスクがあります。

交渉内容を書面に残す

交渉内容を書面に残しましょう。
口頭での約束は、後から言った・言わないのトラブルが生じる可能性が高いです。
示談の内容は必ず示談書として書面に残すことをおすすめします。
一度署名押印した示談書は、基本的に後から撤回ややり直しができません。
内容に漏れや不備がないか、細心の注意を払って確認する必要があります。

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不起訴を目指すなら示談交渉は自分で行わず弁護士に依頼すべき理由

不起訴を目指すなら示談交渉は弁護士に依頼すべき理由は、次の5つです。

  • 早期に被害者との交渉に着手できる
  • 適正な示談金額で合意できる
  • 適切な示談書を作成できる
  • 早期解決を目指せる
  • 有利な刑事処分を目指せる

以下、詳しく解説します。

早期に被害者との交渉に着手できる

弁護士に依頼することで、早期に被害者との交渉に着手してもらえます。
不起訴獲得には、できるだけ早く示談交渉に着手することが望まれます。
特に、逮捕・勾留されている事件では、起訴・不起訴の判断は逮捕から最長23日以内に下されるため、示談交渉は時間との勝負です。
弁護士であれば、被害者の連絡先を秘匿扱いすることを前提として、被害弁償や示談交渉のために、連絡先を開示してもらえる可能性があります。
弁護士に依頼することで、早い段階から被害者との示談交渉が可能となります。

適正な示談金額で合意できる

弁護士に依頼することで、適正な示談金額で合意できます。
弁護士は、過去の判例や経験から、事件の類型に応じた適正な示談金の相場を熟知しています。
被害者から法外な示談金を請求された場合でも、その根拠を法的な観点から精査し、適正な金額で交渉をまとめられます。感情的な対立を招くリスクも回避できます。
不当な金額を支払わされるリスクを防ぎ、最終的に費用対効果の高い解決を実現できます。

適切な示談書を作成できる

弁護士に依頼することで、適切な示談書を作成してもらえます。
示談書は、単に合意内容を記録するだけの書面ではありません。
適切な示談書を作成できないと、次のようなトラブルが生じる可能性があります。

  • 示談後に被害届を提出される
  • 被害届を取り下げてもらえない
  • 民事裁判を起こされる

弁護士は、加害者の刑事処分に直接影響する宥恕文言や、将来の民事トラブルを防ぐ清算条項などを漏れなく盛り込んだ、法的に不備のない示談書を作成します。
これにより、示談が成立したことの証拠を検察官に提出し、不起訴処分獲得への確実な一歩となるでしょう。

早期解決を目指せる

弁護士に依頼することで、早期解決を目指せます。
自分で交渉を進めた結果、話し合いが長引き、解決が遅れることは珍しくありません。
弁護士が介入することで、交渉がスムーズに進み、示談成立までの期間が短縮される可能性が高まります。
早期に示談が成立すれば、加害者は早期の釈放や、捜査の長期化による精神的な負担から解放され、生活の再建に速やかに着手できます。

有利な刑事処分を目指せる

弁護士に依頼することで、有利な刑事処分を目指せます。
弁護士は、示談交渉だけでなく、勾留阻止や検察官への意見書提出、裁判所での弁護活動など、刑事事件全体をサポートする専門家です。
被害者との示談交渉を確実に成立させることで、不起訴処分を獲得できる可能性を高めるだけでなく、起訴された場合でも、示談成立の事実が量刑判断に有利に働き、執行猶予付きの判決を獲得できる可能性が高まります。
実際に、弁護士が介入したことで不起訴処分を獲得した事例や、執行猶予付き判決を得た事例は数多く存在します。
弁護士に依頼することで、刑事事件全体のサポートをしてもらえ、加害者の社会生活への影響を最小限に抑えてもらえます。

まとめ

刑事事件の示談交渉を加害者本人が自分で行うことには、リスクがあります。
特に、示談交渉の目的でもある不起訴処分の獲得を目指すのであれば、弁護士に依頼することをおすすめします。
ネクスパート法律事務所では、刑事事件に強い弁護士多数在籍しています。
特に、被害者との示談では、経験豊富な弁護士が迅速丁寧に示談成立を目指します。
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